砂漠に囚われた花嫁 [オリヴィア・ゲイツ]
SHALOCKMEMO1066
「砂漠に囚われた花嫁 The Sheikh's Claim
(アズマハルの玉座 2) 」
オリヴィア・ゲイツ 中野 恵
「アズマハルの玉座」の第2弾です。第1弾の読了からかなり時間が経ってしまったので,再度前作「シークを愛した代償」を拾い読みしました。アズマハルの王座を巡る選挙。国王を選挙で決めるというのも前代未聞ですが,それぞれに特色がある中で,本作のヒーロー,ヤラル・アール・シャラーンがもっとも有力とされています。前作でヤラルの双子の兄ハイダールが愛のためにロクサーヌ・グレーソンとの結婚を選び,選挙戦から退くと宣言していたため,ヤラルの当選がかなり濃厚になってきました。兄ハイダールのこの選択を初めはヤラルは理解できませんでしたが,かつて愛したヒロインのルジェイン・モーガンがアズマハルに帰国していることを知り,にわかに愛に目覚めていきます。経済的困窮から大学進学を諦め,モデルとして働いていたルジェインは,もちろんスタイルも美貌も天下一品です。本国版ハーレクイン・ディザイアの表紙のイメージからもその美しさがうかがい知れます。しかもただ美しいだけではなく銀色の瞳をもつルジェインのエキゾチックな視線は国際的にも高く評価されていたのです。その後,富豪の夫との結婚によって大学に通って経営学などの学位を納め,今は修士への道を進もうとしているところ。頭脳と美貌の両方を持つことが,国王妃になるためには必要条件でしょうから。しかし身分的に双子の母で国を滅亡の危機に陥れ,ゾハイドの宝石をすり替えた極悪非道の王妃ソンドスの陰謀により,ソンドスの召使いだった瑠ジェインの母は,自分の娘をソンドスの魔の手から逃すためにヤラルとの交際には賛成せず,アメリカに娘を逃したのでした。アズマハルの選挙戦のゾハイドとの関係はかなり複雑で,何度読んでも文章だけで理解するのは難しいかもしれません。それでもゾハイドとアズマハルの王妃たちヨハラ,タリア,マラム,ロクサーヌとアリーヤがルジェインの結婚式の前日に集まると,それはもう素晴らしい王朝絵巻物のような壮観な集団になっています。
ヤラルもまた兄ハイダールと同じくルジェインと二人の間の息子アダムに全てを捧げようとし,愛に目覚めます。ところが結婚式の新婦入場の場面からドラマチックな大事件が起こります。新婦の誘拐? その犯人はヤラルは容易に想像できました。そう,ソンドスです。自分の母であり,これまでも許すことが多かった母の所業と,脅迫に屈せざるを得なかったルジェインの両方を果たしてヤラルは信じ,許せるのでしょうか。愛と憎しみと許しの物語。壮大なスケールで描かれたこのシリーズですが,最終巻で登場するラシッドに一体何があったのか。これも大きな興味を抱ける点です。
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