完璧なクリスマス [キャロル・モーティマー]
SHALOCKMEMO1067
「完璧なクリスマス His Christmas Virgin 2010」
キャロル・モーティマー 寺尾なつ子
登場人物の名前がクリスマス・ストーリーにふさわしく,聖書の人物名と一致します。ヒロイン,メアリーはマリア,ヒーロー,ジョナスはヨナ,ジョナスの祖父ジョセフがヨセフ等々。完璧なクリスマスというタイトルは第9章に出てきます。クリスマスまであと2週間,つまり12月の第1週目に物語は始まります。レストランでのキスからはじまり,二人の関係は日を追うごとに次第に深まっていきます。そしてそれぞれ誰かが邪魔したり,言い争いをしながら,どうにも二人ともとどまれないところまで気持ちが高まっていくところが,キャロル・モーティマーらしいストーリー展開の見事さです。もっとも深い関係は第10章で,ヒロインのメアリー・マグワイア(通称マック)の倉庫を改装したフラットの3階のアトリエで登場してくるので,他の作品に比べるとかなり遅いペースですが,これがストーリー・テラーとしての作者の本領発揮というところでしょう。そして,数日前から繰り返されてきたヒロイン,マックの家への小さないたずら,ガラスが割られたり外壁にペンキでいたずら書きされたり,車のガラスが割られたりといった小さな出来事の犯人が分かったとき,二人の関係は終わりを告げたかようになります。ジョナスから逃げるように実家のデヴォンに帰ったマックが,イブのミサに出かけようとしたとき,玄関にジョナスが立っている,という意外な(ある意味予想されたとおりというか)展開でハッピーエンドに進んでいきます。突然訪問してきたジョナスにマックの両親が歓迎の言葉をいうところなども,クリスマスらしいというか,実に暖かい感じがして良い場面です。
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