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偽りの復縁 [シャンテル・ショー]

SHALOCKMEMO1073
偽りの復縁 To Wear His Ring Again 2015」
シャンテル・ショー 柿原日出子





原題は「彼の指輪を再び嵌めるとき」。宝石や高級品を扱う「デ・セヴェリーノ・エクセレンザ」のCEOコンスタンティン・デ・セヴェリーノは,父を17歳で失い,叔父が会長を引き継いだが,現在35歳になり,会長職兼CEOになることが目標でした。仕事一筋のコンスタンティンが自分を理解してくれないと離婚を申し出たイザベル・セヴェリーノ。自立するために故郷の友人たちとバンド「ストーン・レディーズ」を結成し,歌手として活躍し始めます。次第に有名になり世界的なアーティストとなったイザベル(イジー)ですが,すでに別居してから2年が立っています。コンスタンティンの会社に離婚届を正式なものに使用と訪れますが,家を離れたのは君の方だと言われると,家を出た理由を自分だけのせいにされていることに腹が立ち,その原因を作ったのは夫の方だと認めさせたいと主張したい気持ちの方が先に立ちます。家を出た決定的な理由は二人の子供を流産して悲しみに暮れているイザベルをコンスタンティンは慰めることもなく冷たい態度を取っていたからでした。コンスタンティンの実家のあるイタリアに埋葬したイザベルは,お墓参りにいきたいと告げ,その後離婚届にサインしようと提案します。コンスタンティンとイザベルの間にはまだ夫婦生活的には引き合う関係が続いていました。2年ぶりに会ってもその関係が壊れていないものの,気持ちがすっかり切れてしまっているイザベル。そんなとき,コンスタンティンの会長職への就任に横やりが入ります。現会長の叔父が,コンスタンティンとイザベルの関係が復活しない限り会長職は自分の息子に継がせるというのです。経営者としては凡庸な能力しかない甥が会長職に就いたら会社の経営はすぐにも傾いてしまう。そんな思いで,コンスタンティンはなんとかイザベルの気持ちを自分に引き戻さなければならないことになってしまいます。ここからコンスタンティンのイザベルの気持ちにアプローチする活動が始まります。自分の自立を妨げ,自分の能力を認めてくれないコンスタンティンに,自分の父親と同じ圧力を感じていたイザベルは,夫婦としての相性には問題ないものの,結婚生活を続けたいという気持ちは起きませんでした。熱くなったり冷たくなったりする夫の行動に翻弄されるイザベルですが,読者から見ると若く我が儘な男性の気持ちの動きを読み取れない少女のようなイザベルの心理状況に,やきもきさせられたり,逆に自立を阻み対等な人間として妻を扱わないコンスタンティンの傲慢さに腹が立ったりと,登場人物に引き込まれていく自分に気付いたりするのです。こんな風に読者を引き込んでいく作者の手腕に,脱帽です。
やがて,同居していたときには知らなかったコンスタンティンの心の傷を知ったイザベル。そしてイザベルを大切に思う気持ちを素直に表現し始めたコンスタンティン。二人の関係が復活するかと思われたとき,叔父に復縁が会長職への条件であることを知ったイザベルは,すっかりコンスタンティンに騙されていたと思うのでした。そのときにはすでにコンスタンティンは会長職への就任よりイザベルを大切にしたいという思いを強くしていたのですが・・・。さて,二人の復縁や如何に。イザベルが心を込めて謳う歌の歌詞が,読者の心を打ちます。オススメの一作。


タグ:ロマンス
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