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秘書に哀れみのキスを [キャシー・ウィリアムズ]

SHALOCKMEMO1099
秘書に哀れみのキスを AScandalousEngagement 2000」
キャシー・ウィリアムズ 漆原 麗





 本国版のイメージと邦訳版のイメージが全く違います。ヒロインの髪の色も。これはちょっと珍しいですね。出版年の違いもあるのかもしれません。そして本国版のイメージの方がいいですね。特にヒロインが右手の人差し指をちょっと立てた姿。この図は何か有名な絵画で見たことがあるような・・・。
 さて,本作はいわゆる秘書ボスものです。しかし普通の秘書ボスものと決定的に異なるところは,秘書の面接をボスの母親がしてヒロインが採用されたという点ですね。ヒロインのテッサ(テス)・ウィルソンは,10代のころからずっと妹ルース(ルーシー)の面倒を見てきた真面目で物事をきちんと果たすタイプ。一方妹ルーシーの方は際立つ美貌を持ち,明るく活発で,男性がすぐに目をとめるタイプ。そんな妹をいつもうらやんでいるテスですが,ティーンエイジャーであるルーシーの年代にふさわしい行動をある程度認めつつも,しっかりした女性に育てようとしてきました。そして自分が生活や妹の学費のために懸命に働くことで満足してきており,ルーシーを恨んだりしたことは一瞬もありませんでした。そんなテスが就職したIT関連会社「ディアス・ヒスコック」のボス,カーティス・ディアスは経営者としては型破りな普段着的な服装で仕事をし,社員たちにも自由や発想や議論をするよう仕向けてきました。テスのように計画どおり仕事を進めようとする秘書は,この会社の社風には合わない,と一度は就職を断るのでしたが,テスの必死の頼みを聞き入れて3カ月の試用期間を設けることで手を打ったのでした。そして仕事を始めて見て,テスが有能であり,単なる表の顔の秘書ではなく,秘書以上に業務のことをよく知り,意見を持っていることに驚きを持つのでした。カーティスには亡き妻が残した一粒種アンナがいるのですが,10代の娘に対して過保護すぎるほど地味な服を着せ,自分の言うことを聞くことを当然と思っているのでした。妹を養育してきたテスならば,自分が1週間海外出張する間,アンナの面倒も見て欲しいと申し出ます。会社でテスの横でファイリングの仕事を懸命にするアンナを見て,残り一日というときに,テスは昼食を共に取ろうと外に出かけ,ふと思いついてあんなに年齢にふさわしい服を買おうと持ちかけます。長い昼休みを取って社に戻るとカーティスがすでに帰社しており,買った服を父親に見てもらおうと次々に報告するアンナに渋い顔を隠そうともしないカーティスでした。テスはそんな父親の顔のカーティスに何か一言言ってやらなければという思いを抱きます。結局その服は着られないままにクローゼットにしまい込まれることになるのですが,アンナはテスに親しみを感じているらしいのです。
 男性的魅力と仕事に対する情熱,「社員はファミリーも同然だ」という経営理論を持つカーティスに次第に惹かれ始めるテス。パーティを抜け出して帰宅しようとしたテスが道路で足首をくじいてしまったとき,カーティスは無理やりタクシーに乗せ,家まで送り届け,手当てをし,シャワーを浴びさせ,ベッドまで運んでいくというように面倒を見ていきます。そしてテスはカーティスの首に手を回して・・・。二人の深い関係はこの一夜だけでしたが,そこに妹のルーシーが帰宅してきます。玄関でカーティスとルーシーが話している声が聞こえ,「テスにはこのことを話さない方が・・・」という言葉に,テスは衝撃を受けます。やはり見栄えばかりの秘書を雇いたがるカーティスの本性は,自分よりも美貌に優れたルーシーの方に向くはず・・・。週が明けて,テスは辞表をもって社に向かいます。完全に誤解だったことが明らかになるのは数日後でした。カーティスはルーシーのデザイナーとしての才能を生かし,海外進出をしようとしている会社の新しいロゴをデザインしてみてはと持ちかけ,そのことはしっかり決まるまでテスには黙っているようにと言っただけだったのでした。しかし,誤解が解けてみてもテスは頑固に辞職を撤回しようとはしませんでした。数日休暇を取ろうと,ダブリンの小さなホテルで食事をしていたテスの前に意外な人が現れて・・・。
 ルーシー,アンナと大人になろうとしているティーンエイジャーの気持ちをしっかりと書き込んでいるこの作品はとてもすがすがしく,ヒロインだけでなく女子の気持ちの動きをその行動で描ききった成長譚でもあるようです。


タグ:ロマンス
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