秘書はシンデレラ [スーザン・メイアー]
SHALOCKMEMO1147
「秘書はシンデレラ Her Brooding Italian Boss 2015」
スーザン・メイアー 庭植奈穂子
まさにシンデレラ・ストーリー。ヒーローのアントニオ・バルトロッチ(イニシアルはAB)は世界的な画家で,しかも父親は引退した富豪の実業家コンスタンツォ。親友の結婚式でベストマンの一人を務めているアントニオは新婦側のブライズメイドの一人ローラ・ベスが気になり始めます。なにか悩みを抱えている様子に・・・。ローラ・ベスは今最悪の状況でした。ルームメイトが結婚してしまったので住む家を失い,仕事も失い,しかも妊娠して,その父親からは認知しないと宣告されてしまったのです。この三重苦からどうやって逃れよう,と悩みはつきなかったからです。祝賀パーティーでコンスタンツォからアントニオの秘書をしないかと誘われたローラ・ベスはたちまちその提案を承諾したのでした。これで一気に悩みが解決するかも・・・。自家用ジェットでイタリアについてみるとコンスタンツォの提案をアントニオは知らずにいて,腹を立てています。このままではすぐ首になってアメリカに帰されてしまうかも・・・。なんとかして仕事にしがみつこうとするローラ・ベスは,アントニオが2年前に世界的に名高いモデルで妻のジゼラを失った悲しみから抜け出せずにいるのではないかと思い,何とかしてその悲しみからアントニオを抜け出させたいと思います。その時点ですでにローラ・ベスはアントニオを愛し始めていたのですが,普通の娘の自分が富豪の生活について行けるはずもなく,別世界にいることを忘れまいとしています。自分が何故妊娠することになってしまったかをアントニオに尋ねられて説明し,替わりに亡妻とのことを話すように誘いをかけてみますがアントニオは頑なに口をつぐみます。やがて,ローラ・ベスを描いてみたいと考え始めたアントニオにローラ・ベスは創造こそ,アントニオが自分を取り戻すきっかけになるのではとモデルを買って出ます。しかしなかなかポーズが決まらず,何度か壁に当たっている様子。一度はドレス姿で納得したアントニオですが,どのポーズがいいかが決まらない様子。ついにバルセロナでのパーティに逃げるようにアントニオ。その様子をロレンツォが気付きローラ・ベスをバルセロナに伴います。そして自分は理由を付けてイタリアに帰ってしまったのでした。二人で観光しているときに,きっかけがあり「愛している」と言ってしまったローラ・ベスに突然機嫌が悪くなるアントニオ。しかしついにローラ・ベスの粘り勝ちでアントニオは亡妻との関係を告白するのでした。そしてポーズも決まった様子。しかし,子供を失い女性を信用できなくなったアントニオからローラ・ベスに対する愛の言葉は聞かれません。「これで私のいる場所はなくなったわ」とアントニオが出かけている間に,ケンタッキーの我が家に帰ってしまうローラ・ベスでした。
過去との決別,一人で抱え込んでいた芸術家としてのアントニオの心の苦悩がローラ・ベスによって解放され再び生きる目標が見つけられたとき,二人の愛が接点を持ち始めます。自分を捨てた父を許す気持ちもアントニオに芽生え,自分の子供でないローラ・ベスの子供とも,かつて子供を失ったアントニオの心の隙間を埋めてくれる存在になるでしょう。ちょっとご都合の良すぎる展開ですが,それだけに安心して読み進められるロマンスの王道を行く作品です。
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