二人のティータイム [ベティ・ニールズ]
SHALOCKMEMO1163
「二人のティータイム Dearest Mary Jane
(恋人はドクター) 1994」
ベティ・ニールズ 久我ひろこ
しゃれた邦題のベティ・ニールズ作品です。モデルで美貌にあふれた,しかし俗物の姉フェリシティを持った,特に綺麗だとも自分で思っていない,いわゆる目立たない性格美人の少女メリー・ジェーン・シーモアは,片田舎の生活に馴染み,叔父・叔母の残した遺産で建てた喫茶店を経営しています。小さな村で近隣の人たちと助け合いながら生活しています。背は高くなく,少しやせすぎていて,顔立ちはおとなしく,薄茶色の長い髪と長いまつげに縁取られた菫色の瞳をもつメリー・ジェーンですが,その瞳に見つめられたとき,誰でも始めて彼女がありきたりの娘ではないことに気付くのでした。スコーンや紅茶,コーヒーといった簡単なものを出し,村の人たちや,旅行途中の人たちが気軽に立ち寄る店で,なんとかぎりぎりの生活をしていても,メリー・ジェーンはいつかは素敵な男性が自分を見初めてくれるのではないかという夢は普通の女子と同じようにもってはいるのです。あるとき,閉店間際に美女を連れた大柄な男性が魅せに駆け込んできてお茶とスコーンを注文します。表には彼が運転してきたらしいロールス・ロイスの車が駐車され,きっとお金持ちなんだろうと想像できました。数日後,店の向かいの老女姉妹の病院への付添を頼まれて病院に行ってみると,先日訪ねてきた男性が医師としていたのです。看護師に名前を聞くとサー・トマス・ラティマーという名前だと分かりました。サーの称号をもつ医師。トマスとメリー・ジェーンの関係のスタートです。
細々とした日常を描きながら,少しずつトマスとメリー・ジェーンの人生が交差していきます。二人の関係を邪魔するのは,メリー・ジェーンの従兄弟のオリヴァー,そして姉のフェリシティです。姉は直接的にトマスの誘惑を試みますし,オリヴァーはなにかと噂をメリー・ジェーンに告げては不安をあおる役割を果たしていきます。特にトマスがオーストラリアに出張している時期にフェリシティもまたオーストリアに行っていたという事実をオリヴァーが告げた時は,もうメリー・ジェーンはトマスとの関係は絶望的だと思ったのでした。しかしトマスの母と家政婦や,ロンドンのトマスの家の使用人たちは,皆メリー・ジェーンを気に入ります。そして,最後の大どんでん返しは,作者ベティ・ニールズの得意とするところです。とても爽やかで愛らしく,礼儀正しいメリー・ジェーン。ヒロインとして,かなりナイスな存在です。
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