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心の扉 [エマ・ダーシー]

SHALOCKMEMO1173
心の扉 Don't Play Games 1985」
エマ・ダーシー 高田真紗子




HQB-711
16.02/¥670/224p

I-339
87.02/¥546/156p


 1987年のエマ・ダーシー作品です。オーストラリア上流階級の男女,親子の心理戦ゲームの虚々実々の戦いを見事に描き出した傑作です。さすがエマ・ダーシーと思わせる夫婦の心理の機微がゲームのようにとぎれることなく続き,最後に二人の愛が勝利を挙げるというストーリー展開になっています。
 夫スコットに良いように操られてさらに虐待寸前のことまでされていた妻メアリー・キャスリーン・アンドリューズ,通称ケイトは,歴史学者の秘書として働いていますが,夫の仲間たちのもてなしパーティで,この日は夫の取引相手アレックス・ダルトンに妻としての立場を超えてまで取り入るように要求されます。そんな夫の仕打ちに耐えられず離婚を決意するケイト。しかし離婚の条件として夫が持ち出したのは週末に開かれるアレックスのヨットでの船上パーティに参加し,アレックスに気に入られるようにという要求でした。この一日さえしのげば離婚に応じてくれるという期待でなんとか承諾したものの,自分をアレックスから守ることで精一杯のケイトです。しかしアレックスはそんなケイトの思惑を尊重してくれ,スコットの仲間たちの思惑どおり思わせるようしむけるのでした。スコットは愚かにも見てくればかり気にするフィオナという人妻の甘言に乗せられ遊泳禁止区域まで泳いでいってしまいます。その時,高速ジェットフォイルがスコットの頭上を通り過ぎ・・・。離婚寸前であっという間に命を落としてしまった夫。陸に上がったケイトたちは警察の事情聴取に応えたりしなければならなかったのですが,アレックスはケイトを気遣い全ての段取りをつけ,ケイトが尋問を受けずに済むように取りはからってくれるのでした。翌日以降,ケイトの元をスコットの仲間たちが互い違いに訪れ,後始末やケイトのその後の生活について,できれば触れたくないという本音を告げるのみで誰も力を発揮しようとは申し出てくれません。もともと仲間と言っても仕事上の付き合いで集まった人たちで,ケイトはスコットに付属するだけの存在だったため,スコット亡き後は付き合いも終わりということのようです。そんな時,ケイトの今後の生活を気遣い計理士や弁護士を紹介してくれたのはアレックスでした。スコットの葬儀も終わり,もう嫌な夫のことを気にせずに暮らしていけると思っていたケイトをアレックスが訪れ,プロポーズするのでした。しかも愛を伴わない,子供を作ることだけを条件とした便宜的な結婚を申し出たのです。これ以上夫の思い通りにされる生活はゴメンだと思っていたケイトですが,これからの住む家も含めた経済的な後押しと,子供という自分が愛を注げる存在があれば,意味のある人生を歩めるのではと思ったケイトは,結局アレックスの申し出を受け入れ,簡素な式を挙げてミセス・ダルトンとなるのでした。しかし,ケイトの本当の心理的試練はここから始まります。アレックスと長年にわたって心理戦を戦ってきた義母,そして周囲がアレックスと結婚するだろうと噂を立てていた元恋人のニコルとの対決。義母との対決はケイトが少し有利なうちに1回戦を終えるのですが,義母の主宰する結婚披露パーティーで,ついにニコルとの対決が待っていました。本作の圧倒的ハイライトとなるこの部分は読み応えがあります。そして,黙りこくったまま家にたどり着いたアレックスとケイトの言い争い・・・。この心理戦を最後に解決するきっかけとなるのが,なんとあの人だとは・・・。
 原題「ゲームをしないで」を「心の扉」と訳した邦題の見事さもあって,今年読んだ中で今のところ最大のイチオシ作品となります。


タグ:イマージュ
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