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メイドが愛した億万長者 [キャロル・マリネッリ]

SHALOCKMEMO1204
メイドが愛した億万長者 Sicilian's Shock Proposal
( Playboy's of Sicily 2 ) 2015」
キャロル・マリネッリ 井上絵里





 原題は「シチリア人の衝撃的求婚」
 舞台:ロンドン,シチリア島ボルド・デル・チエーロ(天国の縁)
 ヒロイン:ソフィー・デュランテ/ローマのフィシェラ・ホテルのメイド/長い黒髪,濃い茶色の瞳
 ヒーロー:ルカ・カヴァリエーレ/実業家/ネイビーブルーの目
 裕福な資産家で町全体を支配していると言ってもいいほど財力と権力を持つ父マルヴォリオの一人息子のルカ・カヴァリエーレですが,父親が妖しげな事業にかかわったり,あまりにも自分が支配的に町の人たちや息子に当たることを嫌い,自力で事業を興して成功しています。少女のころからそのルカに憧れ,親同士が婚約を決めた相手の娘ソフィーは,18歳のころには,美しい女性に成長しています。しかしロンドンで事業を成功させたルカにはソフィーとの結婚は親の言いなりになることを意味していました。そのためソフィーがロンドンの自分のオフィスを訪ねてきたとき,ルカはソフィーに婚約解消を申し出るつもりでいたのです。ソフィーにはクルーズ船で働いてみたいという夢がありましたが,今はしがないホテルのメイドをしています。「僕はロンドンで暮らしている。僕が付き合う相手はモデルや洗練された美女ばかりだ。親が結婚を決めた田舎娘に出番はない」という言葉をルカが父親に話しているのを聴いてしまったソフィー。ルカがそう言うのは,ルカが島を離れるときにソフィーに一緒にロンドンに行こうと誘ったにもかかわらず,ソフィーはついてこなかったことで,裏切られたという気持ちをソフィーに対して抱き続けてきたからでした。しかし当時まだソフィーは少女であり,親の庇護の元を離れることには躊躇する気持ちがあったのでした。その後ルカのロンドンの居場所がつかめず,ローマ市内の狭いフラットに友人のベラと住みながらメイド生活を続けていたのですが,刑務所に収監中の父の先が長くないことを知り,父の希望であるルカとの結婚を心待ちにしている様子を見かねてロンドンを訪れたのでした。しかし,ソフィーの父が収監されることになったシチリア島での放火事件の裁判で,カヴァリエーレ家の雇った弁護士は親子が無罪になり,ソフィーの父の単独犯であるかのように裁判を誘導し,結局父だけが罪を得て43年の刑を受けたことで,ソフィーはルカとその父を恨み続ける気持ちも抱き続けています。家同士の確執,そして再開した瞬間から互いに惹かれる気持ちを抱き合う二人の,まさしくロミオとジュリエット風なねじれた愛の行方はどうなるのか,それが本作の読みどころです。先の長くない父の夢を叶えてあげたいソフィーはルカに婚約が継続中であることを見せたいとルカに頼み込むのですが・・・。
 前作の「涙のエンゲージリング(SHALOCKMEMO1179)」でも,結婚に結びつくまでの二人の長い旅路が描かれますが,本作でも紆余曲折が続き,しかも数年前の事件の真相が次第に明らかになっていくというロマサス的要素も加わり,ちょっと複雑な内容になっています。それにしても,本作の魅力はなんといっても激情的で誇り高いシチリア娘ソフィーの人物造型でしょう。「わたしは気が強くて癇癪持ちだけれど,愛する人から別れを告げられたらその言葉には素直に従う」と宣言するだけのことはあり,なかなか一筋縄ではいかない女性です。そして「あなたもお父さんに似ているけれど,あなたはお父さんとは全く違う人だわ。あなたは傲慢で頭が切れる」とルカを評していることからして,以外とこの二人の相性は互いを補いつつ,ソフィーの父が評したようにベストカップルなのかもしれません。
 ハーレクイン・ロマンスも,この4月刊から表紙や体裁が変わり,これまでの黄色からイマージュの色だった白が基調の,上品にあしらわれた装丁になっています。素敵な装丁ですね。


タグ:ロマンス
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