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ギリシア富豪と愛の結晶 [ジュリア・ジェイムズ]

SHALOCKMEMO1221
ギリシア富豪と愛の結晶 Captived by the Greek 2015」
ジュリア・ジェイムズ 萩原ちさと





 原題は「ギリシア人に魅せられて」
 舞台:ロンドン/バミューダ諸島
 ヒロイン:メル・クーパー/サンドイッチショップ店員/高い頬骨,なめらかな顎の輪郭,まっすぐな鼻,サファイヤ色の瞳,ブロンドの髪,長身/
 ヒーロー:ニコス・パラキス/投資銀行パラキス銀行の後継者/身長180センチ,黒い瞳,高い鼻,頑固そうな頬骨,つり上がった眉,長いまつげ,黒い瞳に金色の斑点/
 両親を幼くして亡くした後に引き取られた祖父,その祖父が認知症にかかり,看護に明け暮れた日々。そして三年後に祖父も亡くなり,やっと自分のことに集中できるようになったメル。そのメルの勤めるサンドイッチショップにある日傲慢で命令になれきった裕福そうなハンサムな男性が入ってきます。それがメルとニコスの出会いでした。ニコスはその時であったメルが自分に対して不服そうに応対したことを気付いていました。普段人からそんな扱いを受けることはほとんどなかったニコスでしたが,メルの対応をちょっと新鮮なものと受け取ったのです。しかも後で思い出しても,メルの美しさは忘れられないほどでした。会社に戻るやいなや秘書に命じたのはサンドイッチショップに花を贈ることでした。父と母がいつも言い争いをし,その間にたたなければならないことにうんざりしていたニコスは,結婚はしたくないと思っています。最近自分にかなり言い寄ってきている女性投資コンサルタントの出席する慈善パーティに参加しなければならない週末のことを考えると気が重くなるのですが,その時ニコスの頭に名案が浮かびます。あのサンドイッチショップの女性を同伴させれば,女性コンサルタントのフィオナ・ペリングハムをうまく避けられるのではないかと・・・。とにかく一晩パーティに一緒に参加してくれないかというニコスの申し出に,メルはその誘いを断るだけの勇気がないほど,ニコスに惹かれている自分に気付くのでした。パーティではメルは女性たちの会話にもメルの周囲の金融関係者たちとも良好な話し合いをうまくこなし,ニコスを驚かせます。あのフィオナでさえも,ハンサムなスウェーデン人の男性を紹介され,ニコスに言い寄ろうとしなくなったぐらいでした。
 次にニコスは次の出張予定のバミューダにメルを誘おうとします。パーティでのスピーチの前後2週間の休暇を取ろうとしたのです。祖父の介護から逃れ,世界中を旅して回る夢を叶えるためにサンドイッチショップと夜のレストランでのウエイトレスのアルバイトを掛け持ちしているメルに,バミューダ旅行をプレゼントしたいというのがその言い訳でした。あの一晩だけでさらにニコスの魅力を認識したメルにこの誘いを断るだけの考えももはやありませんでした。そして夢のようなバミューダでの日々。二人は翌日の夜からはもう片時も離れずに二人の深い関係にどっぷり浸る日々でした。やがて2週間の休暇も終わりに近づき,ニコスはさらにニューヨークに一緒に行こうと誘いますが,ギリシアで急ぎの仕事が入ってしまい,メルをギリシアに伴おうとします。しかし,休暇を過ごす予定で,しかもニューヨーク行きのチケットもすでに手に入れていた矢先のニコスの申し出に,メルは従おうとせず,予定どおりニューヨークに向けて旅立ってしまいます。互いに永続的な関係は望まないと言い合っていましたし,今ギリシアにニコスとともにいってしまっても,その後はどうなるのか,メルには不安がつきまとうようになっていたからです。ニコスも呆然とメルを見送ることしか出来ませんでした。その後メルはニューヨークからアメリカ各地を回り,ロンドンに戻りますが,あれだけ望んでいた一人での気ままな旅もニコスがいないとちっとも楽しめませんでした。どこに行ってもニコスのことが頭から離れなくなっていたのです。ニコスもまた,メルを見送ったとたんにそれを後悔し始めていました。そして仕事に集中することでメルを忘れようとしますが,重要な会議中でもメルへの思いが頭に浮かんできて集中できません。探偵事務所にメルの行方を追わせる一方,とにかく忙しくすることでなんとか日々を過ごそうとしていたのです。ロンドンに戻ってメルは体の異変に気付きます。そう,ニコスとの間の子供が授かっていたのでした。ニコスにこのことを告げなければとニコスの会社のロンドン支店に行こうと地下鉄に乗ったメルでしたが,ボンヤリしているうちに乗り過ごしてしまい,慌てて降りた駅のホームに張ってあったポスターに引かれて,無料の相談所に入ってみます。望まない妊娠をした女性の相談に乗っているところでした。そして話しをするうちに,メルはこの子を自分だけで育てようと決心します。やがてスペインに旅立ったメルのところに思いがけない人が現れます。ニコスが探偵事務所が探り当てたメルを追ってきたのでした。そして産婦人科の予約票を見たニコスはメルが自分との間の子供を産まない決意をしたと誤解します。メルの行った無料相談所ではその選択肢も相談内容に含めているところだったからです。すっかり誤解したニコスとメルとの間に緊張が走ります。メルを話しを聞こうとしないニコス。あの傲慢さが戻ってきたのはやっとメルに出逢えたという喜びを隠すことが出来なかったからです。愕然としたメルは思わず道に出てしまい,そこを通りかかった車にぶつかってしまいます。幸い大怪我ではなく,子供も無事でした。病院で二人は互いの気持ちを素直にぶつけ合うのでした。
 両親の不仲,そして祖父の介護からの解放とそれぞれの事情で結婚や子供に囚われない自由な生き方を求めていた二人が,互いに結びつくことで自由を得るのだという逆説的結びつきに気付いていくという作者独特の愛の姿を描いた傑作です。メルの,そしてニコスの描き方もとても明確で,二人の間のすれ違いを見事に描ききっています。また,バミューダの魅力もたっぷりと,そしてエピローグでの登場人物たちの結末もすっきりと書かれており,爽やかな読後感を得られる作品です。


タグ:ロマンス
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