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伯爵と壁の花 [ジャニス・プレストン]

SHALOCKMEMO1237
伯爵と壁の花 From Wallflower to Countess 2015」
ジャニス・プレストン 高山 恵





 原題は「壁の花から伯爵夫人へ」
 ヒロイン:フェリシティ・ジョイ・プレストン(25歳)/伯爵家令嬢/卵形の顔は繊細というには少し長すぎ,顎は頑固そう,鼻筋は通っているが,優美とは言いがたい,褐色の髪,瞳は際立つ琥珀色/
 ヒーロー:リチャード・デュラント(32歳)/スタントン伯爵/チョコレート色の瞳,朗々としたバリトンの声,勇敢な騎乗と正確な手綱さばき,フェンシングの名手,銃の腕前も一級のスポーツマン/
 1810年8月から始まり1816年7月に終わる6年間の物語です。後見人であるチェリトン公爵レオ・ビーチャムの友人スタントン伯爵リチャード・デュラントは社交界のあらゆる母親から娘の相手にと望まれている最高の独身男性。しかし当分結婚する気はなかったのですが,「良家のおとなしい女性で屋敷を心地よく整え,子どもを育てることに何の不足も覚えない女性」であれば,と都合のいいことを考えています。現在の愛人のハリエットとの関係も諦めたくはありませんでした。一方,社交界では目立たない存在で,母や姉が注目を惹くだけの美貌をもっているのに対して,常に壁の花としてすでに社交界で6年。最近はパーティにもあまり顔を出さない伯爵家の令嬢フェリシティです。それでもなんとか結婚と子どもが欲しいという望みを捨てきれず,母の再婚相手が自分を見る目つきに怖れを感じて,ついに母に結婚相手を捜して欲しいと頼むのでした。この2人をマッチングさせたのが公爵レオ。話はとんとん拍子に進み二人の結婚はフェリシティの家では歓迎されてしまいますが,フェリシティは亡くなった姉のエマにシスターコンプレックスをもっていました。美貌の姉と比べて自分に自信がなかったのですが。その上,母親は常に亡くなった姉と自分を比較し,フェリシティを蔑むような発言を平気で周りの人がいるときにもしてしまうのです。結婚後そのことに気付いたリチャードは,このことに腹を立てるようになります。確かに眼を引くような美人ではないフェリシティですが,孤児院に多大な支援をし,孤児たちが学んで社会に出られるよう働きかけをしていることに,彼女の優しさと意志の強さを見抜いていました。フェリシティの義父は彼女の財産こんなことのために使われていると,彼女の行動を非難しています。リチャードはそのことにも腹を立てていきます。次第にフェリシティに魅力を感じ,惹かれていくリチャード。そしてフェリシティは夜の生活では驚くほど積極的にリチャードにすがっていくのですが,昼は他人の目を異常に気遣い,リチャードに触れるのを最低限にしようとするのです。この昼と夜のギャップの原因を不思議に思い始めたリチャード。その背景には,姉エマの死があったのでした。男性に捨てられて自ら命を絶ったと思われているエマ。いずれ自分もリチャードに捨てられてしまうという恐怖がフェリシティの心の奥にあったのです。また,リチャードも兄アダムの死によって,父が絶望のあまり自ら命を絶ち,それ以降母も自分を疎んじてきたと思い,母との折り合いが悪いまま10数年も経っていたのでした。ところが母とフェリシティはいつの間にか互いを気遣い寄り添うようになって行きます。自分の母に見捨てられたフェリシティにとってはリチャードの母には気を許すことが出来たのでした。そんな複雑でよじれた家族関係の中で二人の結婚生活は続いていきます。互いに心を寄せ合いながらも「愛」という言葉を発することなく・・・。そして不思議な人間関係はさらに複雑化していきます。なんとリチャードの愛人とフェリシティが仲良くなってしまい,相手を信頼したフェリシティは,夫の愛人だとも知らずに姉の秘密すら告白してしまうのでした。ところがある日偶然夫と彼女が手を握り合っているのを目撃し,最近の夫がフェリシティに触れたがらないわけが分かってしまったのです。全てのプライドを賭けて,フェリシティは平然としていようとします。しかしついに夫に感情をぶつけてしまったとき・・・。
 家族によって心を傷つけられた二人が,互いのために為したことで次第に過去を乗り越え,遂に愛を見つけて行くまでの軌跡を描いた作品です。時間経過を克明に描いてしまったためにちょっと大河小説的な説明口調な趣になってしまい,深いところでの感動を呼ぶまでにはいきませんが,なかなかの秀作だと思います。


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