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砂の檻 [ケイトリン・クルーズ]

SHALOCKMEMO1240
砂の檻 Protecting the Desert Heir 2015」
ケイトリン・クルーズ 水木はな





 原題は「砂漠の相続人を守って」
 ヒロイン:スターリング・マクレー(27歳)/元モデルで妊娠中/
 ヒーロー:リハド・アル・バクリ(?歳)/バクリ王国国王/
 作者得意のシークものです。ヒロイン,スターリングの美貌,男を惑わせるスタイルの良さなどが嫌というほど文中に表れているのですが,翻訳版もMB版もこの雰囲気を伝えるモデルさんを使っていません。まぁ強いていえばですが,MB版はそのアンニュイな雰囲気がちょっと感じられる表情は見えますが,あの意志の強さが十分には伝わってきていないのが残念です。5月5日刊のロマンス4作品の中では,やはり「授かりし受難」のヒロイン,グレイス・ドノヴァンのモデルさんがベストイメージでしょうか。
 さて,最近刊のケイトリン・クルーズ作品はほとんど読んでいるのですが,なぜかオススメやイチオシマークを付けられる作品と出会っていませんでした。しかし,本作は少なくともオススメは付けられる内容の深さが感じられました。強大な国に隣接するペルシャ湾岸の砂漠の国バクリ。現実にはサウジアラビア近隣の小国の一つと考えれば良いのでしょうが,ベドウィンが住み,かなり伝統的な考え方が色濃く残っている国柄です。父親が数年前に逝去して国王となった兄弟の長男リハドは弟オマールや異母妹アマヤが昔から何かとお騒がせな行動を取り,その尻ぬぐいをしてきました。ハリドはかつて結婚していましたが,妻をガンで亡くし,現在は独身のままでいます。今回弟オマールが自動車レースに出てクラッシュし,命を落としてしまうという不幸に見舞われますが,弟は国を離れてからのここ10年間,モデルの女性と同棲し,しかも彼女はオマールの子を宿していることがわかったのです。アメリカのオマールのフラットにこのスキャンダルを納めるためリハドは自ら出かけたのでした。初めはリハドを自分を迎えに来た運転手だと勘違いして横柄な言葉遣いをして自分のいうとおりにしようとしたスターリングですが,車が止まってみると私設空港。そして運転手は自分がハリド国王だと名乗ったのでした。そこからはスターリンのいうことなど誰も聞かずに,バクリ国に向かわざるを得なくなったスターリング。王子の子である彼女のお腹の中の子は,バクリ国の王族であり,継承順位第2位の位置にあることになります。しかしその子にはある秘密がありました。実はスターリングは処女懐胎だったのです。つまり同性愛者のオマールはその秘密を隠すため,精子提供者となりスターリングは妊娠したのでした。そのことをハリドが知るのは物語も後半に入った第7章です。スキャンダルにまみれた王国にはもう一つ,ハリドの異母妹アマヤが隣国ダール・タラースの王子カヴィアンとの婚約を拒否し,逃亡生活を送っていることでした。こちらは物語の進行上は小さな扱いになっていますが,本作の姉妹編が書かれれば,おそらくヒロインとなるでしょう。さて,ハリドはスターリングの子が王位継承権を持つことを盾に取り,スターリングとの結婚を強行します。断固これを拒否しようとするスターリング。しかしスターリングにも両親を失い里親の元で育ちますが,外に見えないところで養父から暴力を振るわれ続けていたという過去がありました。そのため男性から触れられそうになると思わず手を挙げて防御の姿勢を取る習慣が身についてしまっていました。自分には触れなかったオマールとの交際が長年続いたのもこれが原因でした。そして王宮についてハリドが結婚を強要しようとスターリングに思わず近づいたときこの防御の姿勢が出てしまい,ハリドはスターリングに大きな心の傷があることに敏感に気付いたのでした。しかしハリドはスターリングを殴ることをせず,あくまで尊大に自分に命じただけだったため,スターリングはハリドに対する緊張を少し解くことになって行きます。常に長男として国への義務を優先して生きてきたハリド。マスコミからたたかれ,自分がいかにも砂漠の国の王子を誑かしてきた妖婦のように喧伝されてきたスターリングを,ハリドもまた報道どおりの女性だと思い込んでいたのですが,この心の傷に気付いたとき,スターリングの美貌はその本姓とは別物であることに気づくのでした。美貌の陰に自分の悲惨な少女時代を隠してきた,しかも国王の権威などを恐れない意志の強い女性,そんなスターリングの新たな面を知ることになったハリドは,スターリングに対する認識を新たにするのでした。そして強く惹かれていることを知るのでした。スターリングもまた,言動とは異なったハリドの真のやさしさと,常に国に対する義務を背負って生きなければならないハリドの生き方に同情を覚え,と同時に愛しい人としてのハリドに深い尊敬の念を抱くのでした。スターリングは急に破水し,愛らしい娘レイラを出産します。出産後1カ月ほどして,ハリドとスターリングは砂漠のオアシスでのハネムーンに出かけます。しかし,王宮に戻って政治的なパーティに出席したとき,参加者から,さらにはマスコミの記者から悪意に満ちた中傷の言葉を向けられ,このままでは愛するハリドとレイラに今後も多大な迷惑をかけてしまうと王宮を離れる決心をするのです。しかし国境に向かったスターリングを追いかけたハリドはそんなことは気にしない,ただ君が一生を共にしてくれればいい,と愛の言葉を叫ぶのでした。エピローグは10年後,すでに二人の間にはレイラの他に3人の子どもが出来ています。10年経っても二人が互いを求める気持ちには変化がなく,返って強まる一方です。このエピローグの長さも本作の特徴かもしれません。長大なシリーズもののエピローグのような大団円に,読後の満足感もひとしおです。


タグ:ロマンス
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