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伯爵の悪戯なラプソティ [キャロル・モーティマー]

SHALOCKMEMO1244
伯爵の悪戯なラプソディ The Lady Confesses
(3姉妹シリーズ 3) 2011」
キャロル・モーティマー 古沢絵里





 原題は「淑女の告白」
 ヒロイン:エリザベス・コープランド(ベッツィ・トンプソン)(19歳)/伯爵家令嬢,貴婦人のコンパニオン/濃い青の瞳,黒檀の色の巻き毛,身長150センチあまり,形の良い黒い眉,小さな鼻,弓形を描く唇/
 ヒーロー:ナサニエル・ソーン(28歳)/オズボーン伯爵,エリザベスの雇い主の甥/流行の形に整えられた小麦色の髪と美しい茶色の瞳,顔立ちはどこまでも男らしく,高い頬骨と貴族的な鼻,くっきりと形の良い唇の下に意志の強そうな四角い顎/ケントとサフォークにに広大な領地を所有しロンドンにも美しい邸宅をもつ/
 いよいよ最終巻です。二人の姉が金髪なのに対して末娘のエリザベスはブルネットです。その他の特徴でも母に一番似ていると言われているのでした。さて,第1巻からしばしば登場していたのですが,偶然にも正体に気付かれずにきたエリザベス。実はミセス・ガートルード・ウィルソンにコンパニオンとして雇われていて,カロラインもロンドンでそれらしき人影をみていたのですが,遠距離であったことと,妹がロンドンにいるわけがないという思い込みで,二人は出会うことなく通り過ぎてしまっていたのでした。この当たりはもう,テレビドラマのようで目に見えるような場面ですね。カロラインが出奔してから数日後にエリザベスも家を出たのですが,偶然広場で道路に飛びだしたミセス・ガートルードの犬を助けたことから,コンパニオンとして雇われたのでした。その時,すぐに出自が知られないようにコープランドとは名告らずに,ショアレイ・パークの執事トンプソンの姓を借りていたのです。そして雇い主がコンパニオンにエリザベスは少し立派すぎる名前だということでベッツィと呼ばれるようになったのでした。そこにナサニエルがやって来ます。ナサニエルはミセス・ガートルードの甥。ブラックストーン伯爵ドミニク・ヴォーン,ガブリエル・フォークナー伯爵とは戦地で苦楽を共にした中で,第1巻で登場したようにドミニクの所有する賭博クラブ「ニック」での乱闘で,ドミニクに間違えられてぼこぼこにされ,その後治療に専念していたのでした。もちろんカロラインとはこの時点で出会っているのですが,なにせブロンドとブルネットの違いがあり,エリザベスとカロラインが姉妹であることは想像もしていませんでした。しかもそれが3姉妹で長女ダイアナとガブリエルが結婚することになることとは思いも寄らなかったからです。ミセス・ガートルードに押し切られて領地のマナーハウスで療養することになったナサニエルは,屋敷に見かけたことのない美女エリザベスがいることに驚きます。あくまでも叔母と飼い犬の世話係として雇われたこの娘が,伯爵である自分に対してもずけずけとものを言い,自分の出自について語りたがらないということにいささか腹を立て通しの生活が始まります。エリザベスが似ている,姉妹の母であるハリエット・コープランドは,10年前,エリザベスが幼い頃夫と三人の娘を捨ててショアレイ・パークを飛びだし,ロンドンの若い愛人の腕の中に飛び込みます。そして僅か数ヶ月後に駆け落ち相手に射殺され,相手の男も自殺してしまうというスキャンダルの持ち主でした。数ヶ月前に父を亡くしてガブリエルが新伯爵になって自分たちの後見人になって姉妹の誰でもいいから結婚する意向だということを知り,次姉に続いて家出したのですが,コープランドを名告れば,あのスキャンダルを思い出されてしまうということで貴族の館では本名を名告りたくなかったのでした。
 ナサニエルはなんとかしてエリザベスの本性を引き出そうとしますが,口が堅く,頭も切れるエリザベスのシッポをなかなか捕まえることが出来ません。しかも母の使用人に邪な気持ちをもつことにも世間からなんと言われるか分からないので遠慮もありましたが,しかしその話し方や身分が上の自分に対しても堂々と意見を述べることなどから,きっとどこかの没落貴族の娘だったのではないかと想像してみるのでした。未亡人で叔母のミセス・ガートルード・ウィルソンはまだ40代前半で自己主張が強く,伯爵の甥に対しても多大な影響力をもっていました。「息子を正しい道に導くべき母親がいない以上,本人にその気があろうとなかろうと甥が伯爵の妻としても伯爵家の子供たちの母としてもふさわしい女性を選ぶよう気を配るのが叔母である自分の務めだ」と公言してはばからないミセス・ガートでした。ところで,ソーンの館デヴォンシャーのヘプワース・マナーの隣人にルーファス・テナントという陰気な紳士が住んでいます。犬の散歩中に道端で出会い,エリザベスの美しさに惹かれたルーファスは頻りに館を訪ね,エリザベスを誘おうとします。実はこのルーファスは表面的な紳士らしさとは裏腹に,動物を嫌い,一人薔薇の新種づくりに熱中するいわゆるオタクでした。しかもなんとなくエリザベスに対して良からぬ思いをもっているようなのです。男性的なナサニエルとは違い,このねちねちして自分を追い回すルーファスに嫌悪感を覚えるエリザベスでしたが,雇い主の甥であるナサニエルと不適切な関係をもてば,解雇されてしまう危険性を避けるためにも,ルーファスの誘いに乗らざるを得ないという二重の苦しみを味わうことになってしまいます。そして,ルーファスの弟,ジャイルズが自分の母ハリエットと駆け落ちした相手であったことを噂で聞き及び,なんとしても事の真相を知りたいという欲求に勝てずにルーファスの誘いに乗って隣家の温室を訪ねるのでした。エリザベスの行方を聞いたナサニエルは,その実を心配し,ルーファス邸を訪れ,危ういところでエリザベスを救い出します。しかし,自分が使用人であるエリザベスとの間に不適切な関係を持てないという状態とどうしてもエリザベスに惹かれてします自分の気持ちとの間の葛藤に苦しむのでした。なんどかしつこくエリザベスを誘いに来るルーファスは,自分の育てた新種の白いバラをエリザベスに送りつけたり,散歩をしないかと誘いに来たりするのですが,なんとかナサニエルはその企てを阻止し,ルーファスとの間に緊張が高まります。そして母とルーファスの弟との真実を究明したいエリザベスはなんとかルーファスにそのことを聞き出そうとするのですが,するりと話しをすり替えられてしまいます。そして,ナサニエルが留守をしている時,ついにルーファスの魔の手がエリザベスに伸びてくるでした。母と似ているエリザベスをルーファスはハリエットと呼び,すっかり正気を失ってしまっていたのでした。そして,10年前に出奔した母ハリエットの亡くなった8年前の事件の真相が明らかになります。
 ミセス・ガートルードにはひた隠しにしてきたエリザベスへの思いは,敏感で何事も見逃さない叔母の関知するところとなりました。しかもエリザベスが出自に関して何か隠していることにも気付いているようです。ルーファスの事件の後,ナサニエルはかつて会ったことのあるハリエット・コープランドとエリザベスの共通点に思い至り,伯爵令嬢であることに気づくのでした。さて,エリザベスをどうやって説得しよう・・・。もしエリザベスが,エリザベス・コープランドならば,その後見人である親友ガブリエルの許可を得なければならず,最後の手段はガブリエルとの決闘となるかもしれない。
 19章からいよいよシリーズの大団円となります。3姉妹と3親友のそれぞれがくっついてしまうという都合のいいなりゆきに,いささか食傷する向きもあるかもしれませんが,私はこのシンプルでわかりやすいストーリー展開こそがキャロル・モーティマーの魅力であると思います。そして一度もロンドンの社交界に登場したことのない美人3姉妹がそれぞれ愛する人と出会い幸せな生活を送っていくだろうというハッピーエンディングに,うまい隠し味だなと作者に拍手を送りたくなってしまいます。
邦訳版のそれぞれのモデルが,ちょっと年代的に合わないようにも思えますが,なんとかそれぞれ愛らしいモデルさんを使っているのに比して,MB版の本作のモデルは,末娘と言うより長女といったほうがいいような,よくヒストリカルには登場するモデルさんですが,作品を無視した人選にはちょっと腹が立ちます。単にブルネットだからという理由しか思いつきません。いつもすばらしい表紙をつくっているMBにしては,なんともお粗末です。


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