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愛は一夜だけ [キム・ローレンス]

SHALOCKMEMO1248
愛は一夜だけ Her Nine Month Confession
( Oe Night With Consequences 11 ) 2015」
キム・ローレンス 山本翔子





 原題は「彼女の九ヶ月の告白」
 ヒロイン:リリー・グレイ(22歳)/大学の演劇科の助手,ホスピスのボランティア/両手つかめそうなほど細いウエスト,
 ヒーロー:ベネディクト(ベン)・ウォーレンダー(27歳)/投資家/端正な顔,彫刻刀で削ったような鋭角な顔,広い額,高い頬骨,がっしりした顎,濃い眉,高い鼻,大きい口,長い焦げ茶色のまつげに囲まれた青い目,オックスフォード大学出身/
 かつて女優で今は2歳の娘の子育てのため大学の演劇科の助手を務めるリリー。娘の父親で投資家のベン。リリーは母エリザベスにさえも娘エミリー・ローズの実の父親の名前を知らせていなかったのですが,実は母や家政婦をしているウォーレン家の屋敷ウォーレンコートの跡取りのベンこそ,その男性だったのです。約三年の間娘の父親であるベンにそのことを告げずにいたリリーですが,社会的にも地位があり,しかも自分の母,かつては父さえもその家の使用人であることで,スキャンダルを恐れて言い出せないままだったのでした。リリー自身も母が彼女を身ごもったことで父が結婚せざるを得なくなり,父が母に対して貧しいのはこの子のせいだと言っていたのを聞きつけ,自分が望まれずに生まれてきたという負い目を感じながら成長してきたのですが,自分もまた人に言えない子どもを出産してしまったことで,母と同じ運命をたどってしまったことを後悔しつつも,この子だけは誰の力も借りずに立派に育てていくことを決意し,全てを娘のために捧げていたのです。そんなリリーを母は陰ながら応援し,手伝い,リリーの幸せが一番大切だと言ってくれることに感謝の気持ちを抱いています。一方ヒーローのベンもまた自分のことを顧みず仕事一辺倒でいる母に対しては憎しみの気持ちしかもっておらず,事業の先行きが妖しくなっているにもかかわらず相変わらず古い手法で事業を自転車操業している祖父に,なんとか自分の実力で事業を再興したいと思って,いろいろと進言するのですが,頑固な祖父の気持ちを変えるところまでは行っていませんでした。屋敷でエリザベスがリリーの娘エミリー・ローズの世話をしているところに出くわしたベンは,コバルトブルーの目を見た瞬間,自分の子どもではないか気付いていてしまいます。子どもの年齢を聞いたベンは自分の子どもであると確信するのでした。やがて帰宅したリリーを問い詰めるベンに,リリーは「ごめんなさい」とあやまります。「嘘はついていない。ただ黙っていただけ」というリリーを非難するベンですが,リリーがベンに話さなかったのには訳があったのです。エミリー・ローズの妊娠中助産院の待合室で手にした本。そこにはベンの別れた恋人の手記が載っており,「ベンは婚約した五分後には怖じ気づき,すぐさまその気の毒な恋人を捨てた。彼は結婚恐怖症だ,破局の決定的な要因となったのは,彼が子どもを作るのを拒否したからだという。」と書かれているのを読んで,リリーはベンに妊娠のことを黙っていようと決意したのでした。「妊娠するまで,リリーは母親になりたいかどうかなんて考えたこともなかった。だが,ベンは父親にはならないと決めている。子どもを持ちたくないという理由で婚約を破棄した男性が,たった一夜の情事のせいで父親になると知って喜ぶはずがない。」というリリーの思いは,物語終盤まで根深く続いていくことになります。しかしベンに子どもの存在をしられた今,二人は今後どうしていくかを話し合わざるを得ませんでした。そして週末にベンは話し合いのためにリリーとの会合の場所を自家用ジェットで飛ぶ島に設定します。「片時も警戒を怠ってはだめよ,とリリーは自分に言い聞かせた。脅しには屈しないと心に決める。こちらが主導権を握らなくては。」というリリーの気持ちに母親としての子どもに対する強い思いが表れています。そんなリリーの思いをベンは自分の母と比較して,リリーに対する尊敬の念に打たれるのでした。二人で食事をしているとき,リリーの携帯に母からの連絡があります。娘が入院したというのです。取り乱すリリーを慰め,急いで自家用機に乗り込む二人。そして,イギリスに戻った二人にエミリー・ローズが血液の病気にかかっており,骨髄移植が必要だというのです。しかもリリーの骨髄は適合しないという医師に告げられ憔悴しきってしまうリリー。そんなリリーの様子に,ベンはリリーとエミリー・ローズを守ることが自分が最も望んでいることだと,自分の中の愛に気付くのでした。幸いベンの骨髄は適合し,移植も成功し,エミリー・ローズも健康を取り戻します。さて,リリーとベン,そしてエミリー・ローズの関係をどうするかという問題が残されるのですが・・・。ベンの祖父,そしてリリーの母の後押しも二人の関係によい結果をもたらすのですが,子どものことで頭がいっぱいのリリーにベンは愛していることを告げることがなかなか出来ずに読者をやきもきさせます。リリーもまた思い込みからベンの気持ちの変化に気付いてやることが出来ずにいます。そして相変わらずベンに惹かれてはいけないと自分に言い聞かせるのですが・・・。そんな時,リリーの双子の妹ララが突然訪ねてくるのでした。これをきっかけに二人が互いの気持ちを素直に打ち明けられるきっかけになるのです。
 エピローグはエミリー・ローズの愛らしい日記で締めくくられています。母親として子どもに対して最大限の努力を惜しまず,そして周囲の人たちにも頼ろうとしないリリーの独立心の強さ,そして最後には自分の弱さをさらけ出し,ベンとの関係に素直に身を委ねていく爽やかな態度に,ロマンス小説らしい充実感を得られる秀作です。


タグ:ロマンス
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