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永遠に失われた初夜 [キャシー・ウィリアムズ]

SHALOCKMEMO1269
永遠に失われた初夜 The Wedding Night Debt 2015」
キャシー・ウィリアムズ 山科みずき





 原題は「初夜の負債」
 ヒロイン:ルーシー(ルース)・ルイス(24歳)/ボランティアの教師/葦のように細い175センチあまりの長身,バニラブロンドの髪,数学学士/
 ヒーロー:ディオ・ルイス(?歳)/実業家/漆黒の髪,ブロンズの肌,銀灰色の瞳,黒く濃いまつげ,引き締まった口もと/
 6月20日刊の作品がダウンロードされましたので,購入した作品を整理しました。出版順からすると逆ですが,本作から読み始めました。ノンシリーズ作品です。5月刊の「いけない魔法(SHALOCKMEMO1246)」のヒロインが小学校教師でしたが,本作のヒロイン,ルーシーはあまり環境の良くない地区にある民間の放課後クラブ(児童館のようなもの?)でボランティアとして働きます。2年前,会社社長の娘だったルーシーが憧れていたハンサムなディオからプロポーズされときは天にも昇るような気持ちでした。育ちが良く世事に疎かったルーシーは,このプロポーズが企業買収がらみの便宜的なものだという婚約者と父の話を立ち聞きしてしまいます。「父は娘を身代わりに生き延び,ディオは大金を積むだけでは手に入らないものを,つまりは家柄の良い妻を得るというわけだ。」ということに気付いたルーシーですが,父から認められたいと幼い頃から頑張ってきたルーシーはおとなしくこの便宜的結婚に従います。それから一年半もの間,ルーシーは夫の社交的な行事に付き合い,寝室は別にするいわゆる仮面夫婦を演じてきたのでした。柳の木のように細く,髪はブロンドに輝き,圧倒的な美しさを備え,華やかな容姿の下に汚れのない気品を漂わせ,気高い美しさはモデルや社交界の女性たちも及ばない理想的な妻をルーシーは演じ続けます。そして,父の死。ルーシーはもはや仮面夫婦を演じ続ける意味は無いと判断して,ディオに離婚を申し出ようとするのです。しかしルーシーは自分の父が会社の経営を悪化させてしまったというぐらいのことしか父を理解していませんでした。実は父ロバート・ビショップはあくどい手法でディオの父を苦しめていたのです。そのためディオは復讐のため会社の乗っ取りを計画していたのでした。ルーシーはいわばそのためのおまけに過ぎなかったのです。おまけで結婚した女性,ところが,ディオにとってルーシーはそれだけの存在ではなく「彼女の顔立ちの何かが常に彼の心をとらえる。あからさまな性的魅力は無いし,親しみやすい美しさでもない。それでいて,彼女のもつこの世のものとも思えない魅力についてささやく声が,いつも彼の心を引きつけてきた」のでした。すでにこの時点でディオはルーシーを愛していたのです。離婚をいいだした妻に対し,この気持ちをあからさまにしたくないディオのプライドがルーシーを引き留めるのをためらわせます。そして,気付いたときにはルーシーはもう家を出ていたのでした。
行方を捜し当てて再会したルーシーは,白いTシャツに色あせたジーンズをはいてポニーテールに髪を結んだ若々しい女性に変身していました。これまで見たこともないルーシーの姿にディオは逆に若さと性的魅力を感じてしまうのです。そして家に戻るように説得しようとするディオにルーシーは真っ向から立ち向かおうとします。「そう,私はディオを憎んでいる。彼は不純な動機で私を結婚に追いやった。」教師になりたいという夢を結婚という檻の中に押し込めてしまったディオから逃れ,今は環境の良くない地域の恵まれない子供たちに勉強を教えるボランティナの教師として働いていたのです。しかしディオはこの環境の良くない地域に自分の妻が生活していることに危機感を持ちました。そしてルーシーが教えている崩壊しそうになっている建物を改装してやるから家に帰るようにルーシーを説得しようとするのです。お金で何でも解決できると考えているディオにルーシーは再び憤りを感じます。そしてそんなディオに惹かれている自分の体に最も憤りを感じてしまうのでした。その後のディオの素早い行動力に押しまくられるルーシー。そしてそれに気持ちは反抗しつつもつい従ってしまうルーシー,これまで父に従い,夫に従ってきた習性から逃れられない自分にいらだつ気持ち,そんな複雑なコンプレックス状況の中で,「ディオはプライドが高くて,頑固で,でも私はそんな彼をどうしようもなく愛している。」そして,その気持ちをディオに知られたくないというかなりねじ曲がった状態のルーシーでした。そして,昔語りに自分の父とディオの父のトラブルを聞き,自分が如何に世間知らずでディオの言葉を勘違いしていたかを知ったルーシーは・・・。キャシー・ウィリアムズお得意の揺れ動く主人公たちの気持ちの変化を見事に描ききった作品です。


タグ:ロマンス
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