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とっておきのキス [ベティ・ニールズ]

SHALOCKMEMO1278
とっておきのキス A Kiss for Julie 1996」
ベティ・ニールズ 竹生淑子




HQSP-111
16.05/¥540/206p

R-1386
98.04/¥672/156p


 原題は「ジュリーへのキス」
 ヒロイン:ジュリー・ベックワース(26歳)/セントブラーボ病院秘書/澄んだ緑色の目,褐色の髪,大柄だがスタイルが良く美人/
 ヒーロー:シモン・ファン・デル・ドリースマ(?歳)/血液学専門医,教授/オランダ人,2メートル近くある長身,淡い色の金髪,目はブルー/
 またまたベティ・ニールズです。今月すでに4冊目でしょうか。父のベックワース医師が心臓麻痺で突然亡くなり,住む家以外の財産はほとんど無く,兄は実習医,弟は大学生,14歳の妹,そして母と使用人とが残されたベックワース家。ジュリーの病院秘書としての給料で母,妹,使用人のラスコンと自分の4人の生活を支えていかなければなりません。豊かな暮らしではなくなりましたが,親子4人が仲良く肩を寄せ合いながら暮らしています。病院の秘書という職業,余りぴんときませんが,自分が行く大きな病院でも秘書という存在を余り見かけないせいでしょうか。ヒーローが教授ですので秘書がいてもおかしくないのですが,病棟の回診に医師と共に立ち会って供述筆記やカルテの整理など,日本では普通看護師の仕事のように思うのですが,仕事が専門化しているヨーロッパですから,そんなシステムになっているのかもしれません。作者の作品には時々登場する職業です。前のボスの教授が体調が悪く引退してしまい,代わりにやって来たのがシモン。きびきびと仕事に打ち込み,次々と仕事を言いつけるシモンに,ジュリーは緊張しながらも手際よく仕事をかたづけていきます。その様子にシモンは感心するのですがそんなことを一言も言わずに仕事を続けるのです。いつも素っ気ない返事に自分が嫌われているのではないかと思い込むジュリー。その背景には患者にはすごく丁寧に受け答えするのに自分にはいつも素っ気ない言葉しかかけないこと,オランダでの講演出張に同道させられたのに,長い車の移動の間はほとんど会話がないこと,オランダの病院で見かけた長身の美女にシモンが愛情のこもった態度で接していたことなどから,自分を嫌っていると思い込み,自分がシモンに惹かれているにもかかわらず期待してはいけないと自分に言い聞かせなければならなかったからでした。大きな事件としては病院で火災が発生し,古いカルテを捜していたジュリーが屋根裏の倉庫に閉じ込められてしまったとき,天窓を壊してシモンがジュリーを引き上げてくれ,かすり傷で済んだことが挙げられます。それまで何度もジュリーの家を訪れジュリーの家族と食事を共にしたり,母と妹も含めてショッピングやオペラに誘ってくれたりと,普通であれば恋人以上のことをシモンはしてくれていたのですが,ジュリーはそんなシモンの行動を自分に対する好意の表れだとは見抜けませんでした。ただ自分たちの経済的苦境を哀れんでくれるだけだ,オランダには愛し合う相手がいるのだと思い込んでいるのです。火災の翌日ジュリーの家を訪れたシモンを外に送りに来たジュリーの母はシモンに娘をどう思っているのか率直に尋ねると,「愛していて結婚したいと思っている」という言葉が返ってきます。こんなときにもジュリーの母の素晴らしいところは使用人のラスコンとちょっと情報を交換し合うだけで大騒ぎしない,ましてやジュリーには何も言わないところです。やがて二人の関係は落ち着くところに落ち着くでしょう,と考える辺りがすごく大人の対応です。ベティ・ニールズ作品の非常に洗練されているのはこんなところではないでしょうか。一人ジュリーだけが知らずに周囲を周到に固めていくシモン。そしていつものごとく終わりは突然に・・・。


タグ:ロマンス
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