灼熱の足枷 [メイシー・イエーツ]
SHALOCKMEMO1285
「灼熱の足枷 To Defy a Sheikh 2014」
メイシー・イエーツ 馬場あきこ
原題は「シークに反抗」
ヒロイン:サマラ・アル・アゼム(21歳)/ジャハール国王女(シーカ)/小柄,黒髪,黒い瞳,小麦色の肌/
ヒーロー:フェラン・バシャール(31歳)/カドラ王国シーク/黒い瞳,引き締まった長身/
16年前の事件がきっかけで親を失った二人。というより親同士の不倫がきっかけでサマラは国を失い,フェランはサマラの父を手にかけて復讐を果たします。そして復讐の刃は大人になったサマラがフェランを狙って仕掛けるという段階になったのでした。これはもうシェークスピア以上の国を賭けた復讐譚になるかと思いきや,一瞬の逡巡がサマラの手からナイフを奪ったフェランの勝利となり,フェランはサマラとの結婚こそこの長い間の復讐劇の終焉をもたらすものだと考えます。そこに愛情はなくともジャハールとカドラの民衆や政権を納得させられる方法だというフェランの説得にサマラも,それ以外の解決方法はなく,自分も復讐だけが生きる方法だと思っていたところから,未来に向けて生きることが出来るのだという希望が見えてくるのでした。オアシスでの二人だけの数日間ののちに,二人は宮殿に戻り,公式の場へと向かうことにします。ところがフェランにはサマラに告げなければならない事実がありました。15歳の彼が惨劇の間,ただ隠れていただけではなく,自らサマラの父に手をかけたのでした。それが自分を殺人者だという後悔の念に彼を駆り立てていたのです。サマラを愛し始めていたフェランはサマラに許しを得られるのか,というぎりぎりのところで愛を認められずに感情を押し殺す大人に成長させてしまっていたのでした。
そしてサマラもまた,感情を押し殺すことが唯一生き残り復讐を遂げるためには必要なことだったのです。二人の結婚には互いの許しが必要でした。それを積極的にフェランに解き始めるサマラ。こんな複雑な運命に翻弄される二人の若者の心理描写がとても見事な作品です。激しい言葉の応酬の中に真実の愛の姿を描ききったイチオシ作品です。
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