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愛し子の肖像 [キャシー・ウィリアムズ]

SHALOCKMEMO1320
愛し子の肖像 A Natural Mother 1997」
キャシー・ウィリアムズ 藤村華奈美





 原題は「生みの母」
 ヒロイン:アンジェラ・フィールド(25歳)/美術教師/澄んだ穏やかな目,金髪/
 ヒーロー:ニック・キャメロン(?歳)/多国籍企業経営者/黒髪,灰色の瞳,精悍な男らしい顔/
 ニックの姉アマンダとその夫クリーヴのストリートマン夫妻が車の事故で命を落としてしまいます。アメリカ人のニックの元に8歳になる夫妻の養女ナターシャが預けられますが,多忙で仕事一筋のニックには姪に対して十分に対応することは出来ません。次第にナターシャが学校に不適応を起こしてしまいます。それより少し前,姉アマンダの知り合いという女性からナターシャのナニーを引き受けても良いという手紙が来ていました。ロンドンに戻った方がナターシャにとって良いかもしれないと考えたニックは,家政婦のエヴァに少し超過勤務をさせてナターシャの面倒を見させていましたが,次第に反抗をつのらせ,学校でも全く勉強に身が入らず,友達もいないと面談でいわれ,先の手紙の主に連絡を取ることにしたのでした。その女性こそ,ナターシャの生みの母アンジェラだったのです。勿論そのことはアンジェラにとってはニックにもナターシャにも秘密にしておきたいことでした。高校生だった17歳の時男の甘言に乗せられてついて行ってしまい,予定外の妊娠をしてしまったアンジェラ。彼女自身は頼れる兄弟姉妹も母親もなく,いるのはアルコール中毒の父親だけ。その悲惨な生活環境の中に娘を住まわせることだけは絶対に避けようと,ナターシャを里子に出すしか方法がなかったのです。幸いストリートマン夫妻は娘の成長を毎年写真とともに送ってくれ,何か大きな病気にかかったりしたときも連絡をくれていました。しかし,しばらく連絡が取れなくなっていたので不安に思い,調べてみると,事故で二人ともなくなり,叔父の元で育てられるようになったことが分かり,思い切って手紙を出してみたのでした。その後数週間も返事がなく,諦めかけていたところに面接をしたいと連絡があり,娘に会えるのではないかと期待を膨らませながらイギリス中部からロンドンに出てきたのでした。1カ月の試用期間で結果を出せば継続するという条件で3人での暮らしが始まります。初めは反抗心一杯のナターシャでしたが,アンジェラは自分の娘と一緒にいられるという歓びに浸って幸せでした。思いつきで始めたナターシャをモデルにしての人物画を描き始めた頃から少しずつナターシャの気持ちもほぐれ,学校でも学習に真面目に取り組むようになって行きます。アンジェラが独身のニックの家に住み込んだということを聞きつけたニックの元恋人で会社の財務部長フィリッパ・エイムズがここで登場します。アンジェラの魂胆を疑い,ニックに想いを寄せないようにと釘を刺すために嫌みを言い,自分がニックと結婚したら真っ先にアンジェラをクビにしてナターシャを寄宿学校に入れてしまうからと脅迫めいた言葉を吐いていきます。これをニックに告げ口すれば良いのにと読者は思うのですが,ナターシャが傷つくことを恐れてアンジェラは怒りを飲み込みます。と同時にいつか自分がナターシャの実母であることが分かってしまうのではという不安と,なぜか始めに会ったときからニックに惹かれてしまった自分の気持ちもあり,このことをニックには告げずに済ますのでした。自分などよりもフィリッパのような美貌と知的能力と育ちの良さをもつ女性こそニックにふさわしい,例えそこに愛がなくとも,と自分に言い聞かせるアンジェラ。しかしフィリッパのような底意地の悪い女性にニックが捕まるとかわいそうだという気持ちも芽生えてきます。そして17歳の時の嫌な記憶から,男性とは最後まで関係を持つことが出来ないというトラウマにも苛まれます。そんなアンジェラの行動をニックは自分にお預けを喰わせるだけの狡猾な女性というふうに誤解するのでした。そしてフィリッパの脅迫を受けた直後,アンジェラはニックを誘惑しにかかるのですが・・・。あるパーティの席にニックはアンジェラを同伴していきます。そしてバルコニーで身を寄せ合う二人をアメリカ出張だと思っていたフィリッパが突然現れ,二人を難詰するのですが,それに対してニックは決然とフィリッパに首を言い渡します。そしてその脚でニックの家に行き,アンジェラの秘密にしていたニックの姉から送られていた写真と日記を見つけられてしまいます。と同時にアンジェラが実母であることをナターシャに告げたらしく,帰宅後気付いてみたらナターシャは行方不明になってしまったのです。半狂乱でナターシャを捜し回るアンジェラ。そしてかつて住んでいたストリートマン夫妻の家の納屋で隠れるようにしゃがみ込んでいたナターシャを発見するのでした。即日アンジェラはイギリス中部のかつていたフラットに戻り,以前勤めていた学校に復帰できることが分かりました。
 いつしかニックを愛するようになってしまったアンジェラ。しかしニックには愛されていないというその切ない想いと,ナターシャへの母としての愛,この二つの思いに板挟みで揺れ動くアンジェラの気持ちが克明に描かれた作品です。登場人物も少なく,まるで舞台芝居を見ているかのような気分にさせられる作品です。20年ほど前の作品ですが,古さを感じさせないのは,テーマがしっかりしているせいでしょう。フィリス・ホールドーソンの「花嫁の告白(SHALOCKMEMO1311)1994」とほぼ同じ設定ながら,二つの作品は全く印象は異なります。それはヒロインの人物造形や生い立ちの違いなどが大きく影響しているからのように思います。


タグ:ロマンス
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