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嫉妬 [シャーロット・ラム]

SHALOCKMEMO1338
嫉妬 Disturbing Stranger 1978」
シャーロット・ラム 林 真澄




HQSP-121
16.08/¥540/224p

R-0107
81.06/¥525/173p


 原題は「平穏をかき乱す未経験者」
 ヒロイン:ローラ・ホーラム(20歳)/家事手伝い/山猫のような目と虎のような気性,緑の目,プラチナブロンドの髪/
 ヒーロー:ランドール・メルシエール(36歳)/メルシエール社社長/灰色の目,力強い顎の線,黒い髪,角張った顔/
 愛に不器用なヒーロー,ヒロインの互いの愛に気付くまでを描いた秀作です。ゆがんだ関係や深い,本当の愛の心理描写を描くのに優れた作者らしい作品。40年近く前の作品ですが,イギリス上流階級なら今でもありそうな描写で時を感じさせない静けさと激しさを併せ持つ作品です。
 病気がちな母の面倒を見ながら暮らしているローラは父の会社の新社長ランドールが,恋人のトムの仕事に関連した貧困地区で出会った年かさの男性であることを後に知ります。そして父が会社のお金を使い込みそれが会計検査でバレてしまったことで,社長のランドールとの間で盟約がかわされたことを聞かされたのでした。つまりローラとランドールが結婚すればこの件は見逃すということに・・・。トムへのローラの気持ちを知っている母親はランドールの申し出を受けてしまったローラを心配しますが,本当のことを母に知られてはならないという父の言葉を重く受け止め,平気を装って心配しないよう言うのでした。母親の様子を見に毎日家に寄るトムは,優しく親切でローラを大切にしてくれてはいますが,つっけんどんな態度を時々取るランドールとは違い,兄であり,友でもある存在です。ランドールとの間にあるのは,火花を散らすような激しい感情でした。そしてランドールに触れられたりするとうっとりしてしまう自分にローラは戸惑います。口では「大嫌い」という言葉を大声で直接ランドールに向けるくせに,かまわれないと寂しくなり,体を求められると自分からすがりついてしまう矛盾した自分の感情に余計腹を立ててしまうローラの行動に,思わず読者の笑いを誘います。ついにランドールとの結婚が決まり,ローラは式の準備に翻弄されます。二人にどんな将来と生活が待ち構えているのか。トムへの思慕の念を抱きつつも,ランドールはローラの心からトムを追い出そうと躍起になるのです。そして二人の間には便宜的で身体の関係のみの結婚という言葉が飛び交います。気持ちは別物,という合意でした。ベニスへの新婚旅行で二人の間に激しくも優しい時間が過ぎていきます。美貌のアメリカ人未亡人とランドールの間に過去に関係があったのではないかと嫉妬を覚えるローラ。そしてロンドンに戻り,メルシエール家での生活が始まります。母の様態を気にして実家に行ったローラはトムに出会いますが,別れ際ローラを迎えに来たランドールとトムの間に火花が散ります。そしてやがてランドールは家でもローラを無視するようになってしまいます。もう自分は飽きられてしまったと思い込んだローラ。ランドールは自分に気持ちを向けず,相変わらずローラがトムへの思慕を持ち続けていると勘違いしていたのでした。そしてローラは自分の妊娠に気付き,トムに診察をして欲しいと願い出るのですが,トムはインドへの医療奉仕に出かけることをローラに告げます。悪阻とトムの話に気を失ってしまったローラを屋敷のベッドにトムが連れて行ったところに間が悪くランドールが現れ,トムとランドールは殴り合いになってしまうのでした。離婚したいのかと問うランドールにローラは事情を話し,ランドールへの愛を告白するのでした。
 16歳の年齢差をどうやって乗り越えて行くか。自分の気持ちに気付くまでの紆余曲折も巧みに織り交ぜながら,ローラの精神的成長が描かれた秀作です。それにしても顔を見ただけでローラの気持ちがすっかり読み取れてしまうランドールが自分への愛を強くもっていることに気付かない若さがなんとも言えず歯がゆい感じで,面白く,一気読みできる作品です。HQSP版の表紙がローラの美しさ,若々しい純真さ,緑色に光る目,ふっくらした頬,透き通る肌がしっかり表されたモデルさんが,読者を引きつける抜群のイメージです。


タグ:ロマンス
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