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キリアカスの花嫁 [ジェニファー・フェイ]

SHALOCKMEMO1357
キリアカスの花嫁 The Greek's Ready-Made Wife
( Bride for the Greek Tycoons 1 ) 2016」
ジェニファー・フェイ 松島なお子





 原題は「ギリシア人の便利な妻」
 ヒロイン:キーラ・パパス(?歳)/ホテルの客室清掃スタッフ/艶のある黒髪,長めの前髪,大きな茶色の瞳/
 ヒーロー:クリスト・キリアカス(?歳)/ホテルチェーンCEO/濃い色の波打つ髪,青い瞳,日焼けした彫りの深い顔,身長180センチ以上/
 ジェニファー・フェイの初邦訳作品です。ヒーローのクリストが傲慢さや思い込みの激しいマッチョな男性ではなく,ちょっとユニークというか,仕事一筋で男女関係に疎く,しかもちょっとユーモラスなヒーロー,たぶんやせ形だろうとか,オタクっぽいなというイメージを抱いてしまう愛すべき人物です。連作で,次作の「The Greek's Nine-Month Surprise」のヒーロー,ヒロインもすでに本作で登場し,結構活躍します。邦訳が楽しみです。
 自分のルーツを探すことも含めてアメリカのホテルからギリシアのリゾートホテル「ブルー・タイド・リゾート」に移ってきたキーラ。パパスという苗字が表すように祖父母の親戚がいるはずだ,でもどうやって捜せばいいかわからない。とりあえずホテルの清掃係として雇ってもらったので合間に調べることにしようと考えています。仕事を始めて二日目,スイートルームの掃除をしようとすると「ぼくと結婚してくれ」と突然言われたのです。他の人が言われたのだと思い周囲を見渡すと,ハンサムな男性が目にとまり,部屋には後は自分しかいません。その男性は昨日も自分に声を掛けてくれた男性でした。すると冗談ではなく,便宜的な婚約を頼み込んでくるではありませんか。理由を聞いてみると重要な取り引きの相手が独身の自分を信用してくれないので,妻が必要なのだと言います。突然のことに一度は断りますが,とても困っているようなのとハンサムな男性なので,親戚捜しを手伝ってくれることを条件にキーラは承諾の返事をしに再度部屋に行ってみるのでした。この間,キーラはギリシアでの唯一の友人ソフィア・ムーアにメール(SNS)で相談をしています。このソフィアが次作のヒロインです。さて,とんでもない話を持ちかけてきた相手がこのホテルを含めたホテルチェーン「グラマー・ホテル・アンド・カジノ」の経営者クリストだと知り,「私に婚約者の役が務まるかしら,自分を偽ることなんてできる?そんなのは偽善者のすることじゃないの?」と自問します。大金持ちのハンサムな男性に頼み事をされたらそれを利用しようとする女性が普通なのでしょうが,こんなふうに相手のことを先に考えて自分がうまくできるだろうかと自問するところがキーラの特別なところですね。キーラの母は父を亡くしてすっかり経済的な困窮を深めてしまい,父の残した借金を返すためには少しでも高い給料が欲しいという状況ではありましたが,お金のためだけではなく,親戚捜しを手伝ってくれるという条件を認めてくれたので,承諾することにしたのです。すぐにスタッフ部屋からスイートルームに移動して婚約者としての演技が始まります。二人とも人のいるところでは婚約者のふりをし,二人だけになると互いのことをするという奇妙な生活が始まるのですが,責任感の強いキーラはただ表面的な振りだけでは納得できません。互いのことを少しでも知っていないと偽りの関係がバレてしまうということで,質問し合う二人。通常とは異なる婚約者としての二人の関係がなぜかユーモラスです。クリストの思わせぶりや欲望ギラギラ感がない言動がなぜか爽やかで,同時にキーラの好奇心旺盛でなんとかクリストの役に立とうと考える優しさがとても好印象です。ちょっとかわいい高校生の恋人同士のような関係に読者は引き込まれていきます。やがてクリストの重要な取引相手ニコラオス・ストラヴォスの息子ニコラオス・ストラヴォス三世(通称ニコ)から邸宅への招待があり,クリストとキーラはヘリで邸宅に向かいます。商談はうまくいくのですが最終決定はニコの父親。これがまたなんとも古めかしい考えを持つ頑固者。帰ろうとしていたところにちょうど父ニコラオスが帰宅し,クリストとキーラはほとんど相手にされずに,反って不満を持たれてしまうのでした。おそらく商談は失敗だろうとクリストは諦めようとしますが,キーラはがっかりしているクリストをなんとか励まそうとします。そしてなぜこの取り引きがそんなにクリストにとって重大なのかを知りたくなるのでした。なかなかクリストは理由を言おうとしませんが,ついに幼少の頃弟のマックスがスキーで事故死したのが自分のせいだと思っていることが明かされます。子供だったあなたに責任はないとキーラは励ましますが,クリストの気持ちが和らぐことはありませんでした。それでもこれほど自分を心配してくれるキーラの存在が次第に自分にとっては欠かせないものになりつつアルのでした。そして数週間後に迫った結婚式の準備にキーラはなんとかクリストの手助けを求めることで取り引きがうまくいかなかったことを忘れさせようとします。そんな時,クリストが雇った探偵がキーラの親戚を見つかられるかも知れないと知らせてきます。かつて祖父母が住んでいたらしいオルキドスという村を二人で訪れます。ニコラオスの家につきあってくれたキーラへの感謝の気持ちで仕事をそっちのけでクリストが連れて行ってくれるのですが,残念ながら村の長老のところでも証拠は見つかりませんでした。しかもそれと思しき時期の書類がごっそりと亡くなっているようなのです。何かここに謎があるかも知れない。そして今度はニコラオスの方から二人に来て欲しいと正体があります。取り引きを正式に断られるだろうとおそるおそる出かけた二人を待っていたのは,なぜ自分の周りをかぎ回るのかという叱責でした。実はキーラの祖母はニコラオスの姉だったのです。しかし祖父との結婚を反対された祖母は駆け落ちしてアメリカに渡っていたのでした。初めて自分のルーツと親戚を見つけたキーラは喜びに溢れます。しかしだからといって取り引きを承諾したわけではないとニコラオスに釘を刺されてしまいます。もうそのことは考えていない,ただキーラのルーツが見つかったことが嬉しいというクリストの言葉に誰もが驚くのでした。偽物だったはずの婚約,そして実行する予定のない結婚式,その二日前,ついにクリストは本当に自分と結婚して欲しいとキーラにひざまずきますが,キーラはそれを断ってしまいます。それはクリストの両親と兄たち二人が結婚式への参列を断ってきたからでした。愛に溢れた結婚生活が夢であったキーラにとってクリストの両親が出席しないまま結婚することはできなかったのです。ニコラオス親子からは結婚式の参列の返事とニコがクリストの花婿付添人を務めるという返事が来ていました。ついに式の前日,キーラはクリストの部屋を出てしまいます。その時頼ったのはもちろん親友で花嫁付添人を務める予定のソフィアでした。さぁ二人はこのまま別れてしまうのでしょうか。
 実はニコとソフィアが次作のヒーロー,ヒロインになるのですが,新郎新婦の付添人同士が結ばれるということはよくあるようですね。全編を流れるなんとものんびりふんわりした雰囲気,そしてキーラとクリストの性格の良さが本作を癒やしのいっぺんに仕上げています。新人作家ジェニファー・フェイの作風が気に入りました。


タグ:イマージュ
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