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愛なき一夜の贈り物 [クリスティ・ゴールド]

SHALOCKMEMO1369
愛なき一夜の贈り物 The Sheikh's Secret Heir
( Bajul 5 ) 2015」
クリスティ・ゴールド 藤峰みちか





 原題は「シークの秘密の相続人」
 ヒロイン:キラ・ダージン(?歳)/王宮の管理責任者/コバルトブルーの瞳,つんと上を向いた鼻,華奢な顎の線,金色の肌/
 ヒーロー:タレク・アズマル(?歳)/実業家,実はバジュールの王子/鍛えられた脚,割れた腹筋,広い肩,黒い瞳/
 石油産出国バジュールを巡る物語です。すでにラフィーク,ザイン,アダンの3兄弟が揃い,それぞれに愛する人たちと幸せな生活を送っている王宮ですが,その王宮の管理人キラ・ダージンがヒロインとなります。キラは宮廷の庭師,料理人であったダージン夫妻とともに王宮の敷地内に住み,3兄弟に可愛がってもらった,いわゆる妹的存在でした。その王宮に客が一人やって来ます。王国の事業に投資するためにやって来た富豪で事業家のタレク・アズマルでした。実はタレクは先王の婚外子だったのですがその証拠は彼自身も持っておらず,実父だった養父が亡くなる直前に彼に告げたことだけがその事実を伝えることだったのです。従って王家の誰もそのことを知るものがいませんでした。シリーズ第3弾で末弟アダンの母が兄弟のナニーだったエレナだということが判明しますし,その他にも兄弟姉妹がいるかも知れないというのが3兄弟の共通の思いだったようです。終盤でタレクがそれを明かす場面が登場しますが,3兄弟はそれを驚くことなくすんなり受け入れてしまうのは,そういう事情があったからなのでしょう。タレク自身は実父だと思っていた父からその事実を聞かされ,先王ばかりでなく王家全体に憎しみを感じていました。そしてその思いを直接ぶつけるのではなく,自分を認めてくれなかった先王に認めさせたい思いで懸命に働き,事業を発展させて富豪となったのです。そして投資を口実に宮廷に入り込むことに成功します。しかし父である王はすでにこの世を去ってしまっていました。
 6週間前,キラはタレクと熱い一夜を過ごしたのです。その後全く音信がなかったのに再び目の前に現れたタレクは,キラに数週間自分の仕事を手伝って欲しいと,しかも国王ラフィークの許可はすでに得ているというのです。自分の仕事はその間前ナニーだったエレンが引き受けてくれるというのです。キプロス島での新しいリゾートの開設に伴う細部の判断にセンスと知恵を貸して欲しいというのがタレクの依頼でした。翌朝キラは診察を受けに王妃でありラフィークの妻マイサの元を訪れますが,マイサが下した診断は「妊娠している」という衝撃的な言葉でした。6週間前のあの一夜でタレクの子を身ごもったことがわかったのです。キラには「母はカナダ人で偏見がありませんが,父はバジュール出身で伝統を重んじるたちであり未婚の娘が子供を産むと知ったら喜ばないだろう」という事情がありました。しかしその両親は実の両親ではなく,キラは養女だったのです。タレクが父親としてふさわしい男性かどうかをキプロスに滞在する2週間のあいだに確認できるかも知れない。タレクが父親にふさわしいと判断したら妊娠のことを話そうと心に決めたキラはタレクとともにバジュールを後にします。このタレクとの会談のときの堂々とした態度がキラの性格と物怖じしない人生に対する自身のようなものを読者に感じさせます。タレクはキラが王族メヘディ家のことをよく知り,情報源になってくれるのではないかという企てを持っていました。「キラを利用する計画がうまくいかなければあらゆる手段を講じて確証を見つけ出そう。そして王家の息子たちに取り入り,やがては自分がバジュールの先王の婚外子であることを公にする。僕は彼らの兄なのだ。」と第1章が締めくくられます。各章の末尾が意味深な言葉で次の章への興味を惹きつける効果を狙い,読者をどんどんと物語へ引き込んでいく,これが本作の面白い点の一つです。第2章ではその晩の王家の晩餐の後,キラはタレクの依頼に同意しキプロスに同行すると返事をします。その条件として互いを愛人ではなく友人として信頼し合っていきたいとキラは提案します。「彼との間の信頼なんて,もろい砂糖菓子のようなものだ。私が何を隠しているか知れば,彼は私を二度と信頼しなくなるだろう。」とキラは考えますがタレクの方にも秘密があることをこの時キラは考えもしませんでした。ただこれ以上二人の関係の再燃は困ったことになるという想いだけで友人としてという提案をしたのでした。翌朝出かける前にエレナと仕事の引き継ぎをしているとき,タレクとキラの間に何かあったとエレナに感づかれてしまい,妊娠のことまで気付かれていたことに驚くと同時に,8年前に無情に捨てられた過去の経験を思い出してしまい,男性を信じてはいけないという過去の経験から慎重にならざるを得ないことを固く心に誓うのでした。第3章ではキプロスのタレクの邸宅に到着し,月2万ユーロで借りており管理人夫婦もいることに驚きます。第4章はキラは元婚約者のことを打ち明けます。カナダの大学で出会ったサウジアラビアのスルタンの息子で2年間つきあって婚約し,別れたこと,その理由は彼女がバジュールの王族の娘ではないことだったこと,実の両親は王宮の料理人と庭師だったことなどを明かし,反対にタレクのことを聞き出そうとしますが,タレクはキラを再び誘惑しようとします。しかしキラの今回の目的はタレクが父親としてふさわしいかどうかの判断をするためだということを思い出しなんとか誘惑の手を逃れます。「私という人間を尊重してもらいたいの。自分が単なる火遊びの相手ではないという実感が欲しいのよ。」「君に関することでは僕の誠実さを疑わないでくれ。君は並外れて素晴らしい女性だ。高い知性を持ちながら,官能的でもある。」とキラに惹かれていることを隠そうとしないタレク。ところが翌日タレクの元に「黒い瞳に金色の肌をした古典的美人」がやってきます。アテナ・クレリデスと名告る彼女は数年前からタレクの秘書兼恋人だった女性でした。キラに惹かれているタレクはアテナとの関係を清算しようとします。しかしアテナはキラがバジュールの料理人と庭師の娘であるという出自を話すと「あなたは使用人の娘なのね」といやみな言葉を残して去って行きます。タレクは庭で石工たちと一緒に作業していました。タレクは育ての父を尊敬し,母親が10歳の時に肺炎で亡くなったことを明かします。母親は先王との関係を自分に告げずに亡くなったことで心に傷を受けていたのかも知れないとキラは考えます。第5章の冒頭はタレクがキラに自分のプライバシーをあまり話したくないという述懐から始まります。プールで泳いでいるキラを見かけ,自分もプールに飛び込みます。「たいていの女は男性とは敗戦が違うのよ。女は時々自分の感情に支配されてしまうの。そうするとあの最も恐ろしい感情である愛が生じてしまったりするものなのよ。」「愛には論理が通じない」「愛はそもそも論理的じゃないわ。」「僕は人生において成功するために地に足をつけておくと決めたんだ」という二人の会話には男と女の気持ちの違いが見事に言い表されています。第6章では二人がパーティに出かけダンスをします。その後,タレクのヨットに行き,キラの方からタレクを誘惑します。「タレクはこれまで誰かを愛したことがなかった。タレクの人生において愛は裏切りを連れてやって来た。母親に裏切られ,父親だと思っていた男に裏切られた。自分の存在を否定した国王位裏切られた。だがキラは違うと思える。」ここでタレクはキラを愛しているのに気付いたのかも知れません。第7章でタレクはモロッコで引き取ったヤスミンという女の子の存在を明かします。「その子の養育であなたの果たす役割は何?」自分の子を愛してくれるかどうか判断するのにヤスミンに対するタレクの気持ちが役に立つかも知れない,そう考えたキラですが,捨てられた自分という過去を明らかにしてヤスミンへの同情を語ります。王宮の使用人だった両親とは別にカナダ人の実父母,たった15歳でキラを身ごもった母親とそのことを知った後に連絡を取ろうとしてもそれを拒否されたこと。しかし養父母である二人によって大切に愛情を持って育てられたことを感謝していることを話すキラに対してヤスミンは充分に世話を受けているからと愛を傾けることをしようとしないタレクの様子から,キラはこれから産まれる我が子にもタレクは愛情を注げないのではと落胆するのでした。そんなタレクを愛してしまっていることにキラは気付きます。キラはタレクに妊娠のことを話そうとしますが,それは二人の永遠の別れになるだろうとも思うのでした。第8章ではヨットから電話した王宮のエレナにヒントとなるタレクの母親のことを話すと,エレナは知っているかもしれないと言います。キラはタレクにヤスミンに弟か妹が欲しくないかと遠回しに言いながらついに妊娠のことを話すのでした。ここまでずいぶん引っ張ってきたなぁという感じですが,このことがタレクに知られることによって物語の展開が急転していくだろうと思っていたとおり,章の最後にタレクは自分の実の父親が先王のアーディル・メヘディであることをキラに明かすのです。これで双方の大きな秘密が明らかになります。そして,9章以降でタレクの母親と先王が実はタレクを捨てたのではなく当時の状況から王がスキャンダルに巻き込まれるのを防ぐために母はこの秘密を墓場まで持っていったこと。そしてそれを知っていた養父が先王も亡くなった今タレクにこのことを話してもスキャンダルにはならないだろうと判断して自分の死に際に秘密を明かしたこと,エレナが決定的な証拠をタレクの母親から預かっていたことなどが明かされていくのです。そして一族とキラの前で明かされるタレクの出自。ここが物語のクライマックスとなるのですが,その後の二人の関係とキラの出産,そしてその後の王家の人々との数年後が描かれていくので,本作がシリーズ最終巻の大団円だということが分かります。
 なにより美しさと知性と愛情深さを兼ね備え,堂々とタレクに太刀打ちしていくヒロイン,キラが全編を通じて煌めいているNICEなヒロインです。それまでの作品を読んでいなくても本作だけで楽しめるイチオシ作品です。


タグ:ディザイア
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