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過去を捨てた億万長者 [キャロル・マリネッリ]

SHALOCKMEMO1416
過去を捨てた億万長者 Billionaire Without a Past
( Irresistible Russian Tycoons 3 ) 2016」
キャロル・マリネッリ 山本翔子





 原題はそのまま
 ヒロイン:レイチェル・ケアリー(32歳)/元バレエダンサー/赤みがかった金色のまつげ,緑色の目,前歯に隙間,燃えるような赤毛,身長170センチで長く白い脚/
 ヒーロー:ニコライ・エリストフ(31歳)/海運業者/黒い髪,白っぽい肌,焦茶色の目,身長185センチ/
 「大富豪の約束なき情熱(SHALOCKMEMO1321)」「悲しみの白い薔薇(SHALOCKMEMO1340)」の翻訳出版からちょっと間が開いて第3作目の「氷の掟」シリーズの第3巻が出ました。おそらく4部作になるであろうシリーズですが,キーパーソンになるアーニャとローマンはいよいよ最終巻の登場となるのでしょうか。(「Return of the Untamed Billionaire」はすでに原作が出ています。)
 ロシアの養護施設で育った4人の若者をヒーローとした本シリーズですが,本作のヒロイン,レイチェルは第1作のヒロイン,リビーの親友で,やはりバレエダンサーです。そして大プリマドンナ,アーニャ・イリューシンに憧れていますが,年齢的にももうプリマになる夢はたたれているようです。親友リビーも出産間近,第2作のヒーロー,ヒロインのセブとナオミの結婚式の時には臨月を迎えているリビーに付き添っています。そこに長らく連絡の取れていなかったニコライがやって来ます。ニコライをなんとか仲間たちとうまくいくように,さらにはリビーの出産もうまくいくようにと何かと気を遣うレイチェルは,もうその時点でやさしく愛情深い人柄であることがわかります。そしてニコライを見た途端,そのすばらしい容姿にぐっと惹かれてしまうのでした。しかしそんなレイチェルの悩みは仕事上のことより,恋人だったアンドレが,自分の従姉妹(母の妹の娘)ショナと結婚しようとしていることでした。常に男性に頼って生きてきた母の様になるまいとバレエに明け暮れてきたレイチェルですが,そのレッスン代を負担してくれたのは母の何度目かの恋人でした。しかもレイチェルには誰にも言えない秘密を抱えていたのです。その何度目かの恋人が自分にDV行為をし続けていたのでした。そしてそれを母にも言えず,じっと耐えることしかできなかった悔しさを今でも引きずっています。明かりを付けたままでなければ眠れない。男性との行為にも必ず恐怖が先に立ってしまう。勿論恋人のアンドレにもそのことを告げることはできませんでした。いつになっても親密な行為を許してくれない自分に嫌気がさしてアンドレは従姉妹のショナに走ってしまったのです。しかも結婚式が数週間に迫っているのに,アンドレは相変わらず自分とコンタクトを取ろうとするのです。
 一方ニコライは,シリーズの前の巻でも明らかになっているように学校の教師から性的暴行を受け,川に身を投げて自殺したと思われていました。しかし死んだのは別の人で,ニコライはその後できるだけ学校から遠く離れようとウラジオストックまで逃げ続け,そこで密航した船の船長ユーリに実の息子以上に可愛がられ,航海術から船に関することすべてを学び,次々に資格を手にして船長にまで上り詰め,現在の富を蓄えることができたのでした。その恩人ユーリも亡くなり,豪華なクルーズ船を家として世界中を飛び回っていたのでした。ニコライもまた結婚式で自分に気安く話しかけて,自分の過去のことも仲間から聞いていて全く気にしていないレイチェルの美しさと冗談を言い合える気安さにすっかり惹かれてしまいます。
 互いに幼少の頃性的暴行を強要され,そのことで正常な男女関係を結べないでいる二人が,その経験から相手のことを本当に思いやることができる素晴らしい関係になっていくまでの見事な成長譚が繰り広げられます。過去を乗り越え,将来を思うことができるまでの二人の心の交流と成長がしっかりと描かれた傑作です。


タグ:ロマンス
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