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大富豪と灰かぶりの乙女 [ジュリア・ジェイムズ]

SHALOCKMEMO1457
大富豪と灰かぶりの乙女 A Ciderella for the Greek 2016」
ジュリア・ジェイムズ 麦田あかり





 原題は「ギリシア人のためのシンデレラ」
 ヒロイン:エレン・マウントフォード(20歳代)/私立学校地理教師,ラクロス部顧問,ホートン邸在住/大柄,身長175センチ,丸い眼鏡,まとまりのない髪/
 ヒーロー:マックス・ヴァシリコス(30歳代)/不動産王/身長190センチの長身,オリーブ色の肌,広い肩幅,チャコールグレーの目,黒髪,大理石から切り出したような頬骨と顎のライン/
 継母と継娘に虐められて生きてきたイギリス人女性エレン・マウントフォードがギリシア人不動産王マックス・ヴァシリコスによって女性としての美しさに目覚め,その愛を獲得していくまでの王道派シンデレラストーリーです。ギリシア人富豪とイギリス人女性のカップルを描くのは作者ジュリア・ジェイムズお得意の設定ですが,本作でもそれを踏襲しています。
 さて,ヒロイン,エレンは継母ポーリーンと連れ子のクロエと一緒にイギリスの片田舎ホートン邸に在住していますが,母が交通事故で亡くなり,その数年後継母と継娘が父エドワードと結婚します。ところがこのまま母親子が父の財産を湯水のように使ってしまい,最近病のうちに亡くなってしまいます。継母親子は最後に残されたこのホートン邸まで売り払ってしまおうとしていますが,エレンも館の権利の三分の一をもっており,なんとかして館を守りたいと思っています。ハンプシャー州の内陸部にある田園地帯にあるこのホートン邸は昔からの伝統的な部分と継母親子がやって来てから改修した一流のインテリアデザイナーによる部分とが混在していますが,館を心から愛しているエレンは,なんとかかつての家具などを屋根裏に保存するのが精一杯でした。ギリシア人不動産王マックス・ヴァシリコスは,投資物件を改修しては高額に売り,財を成してきたのですが今回は投資物件としてではなく自分の家としてホートン邸を買い取ろうと考えています。実際に物件を見に来て「屋敷を取り囲む森や庭にも,使われている柔らかな色合いの石や規模や建築様式に,我が家のような親しみを」感じたからです。マックスは非嫡出子として父から認められず,母とともに使用人として育てられた幼少期を過ごします。母亡き後アテネで建築業者となり,5年働いてためた金で最初の不動産を購入し,2年かけて改修して高額で売買し,売った金でさらに不動産を安く買い取ってを繰り返して成長し,数年で今は世界規模の不動産帝王となっていました。昨年まではイギリス人女優タイラー・ブレントリーと交際して浮名を流していましたが,タイラーが離れていったのを機に交際を止め,今は独身のまま誰とも真剣交際をしていませんでした。そんな時,購入しようとしてやって来たホートン邸でまさに真逆の二人の女性と出会います。アッシュブロンドの髪を流行のカットにし,磨き上げた爪にはマニキュア塗って非の打ち所のない化粧をしたハート形の顔とブルーの目と驚くほどほっそりした小柄なクロエ,そして血のつながりのない娘エレン。収まりの悪い髪をポニーテールにしただけで,化粧っ気もなく,大柄で「象のような」体型で野暮ったい服を着た十人並みの器量のエレン。ところが,庭を見回っているときに見かけたランニングウェアを着たエレンは,健康的な輝きと運動着を着て初めて分かる長く素晴らしい脚,特にふくらはぎの形,豊かな胸に女神のような素晴らしい引き締まった造形美の体型をもっているではありませんか。屋敷は絶対に売らないとけんか腰のエレンに興味と欲望を抱いたマックスは,エレンが屋敷にこだわり自分の本来の美しさを犠牲にしていることを指摘します。話しの中でエレンがロンドンの恵まれない子供のためのキャンプを開くことを聞いたマックスは慈善事業の残金を寄付することを持ちかけロンドンの舞踏会にエレンを誘います。断っても5000ポンド,承認されたら1万5000ポンドという破格の寄付金を提示し,ロンドンでエレンを変身させようと密かな謀をするのでした。プロの手によって仕立て上げられたエレンは「ウエストのきゅっと締まった濃いルビー色のシルクのドレスは,形のいい腰にピタリと張り付き,スカートが滝のように足先へと流れている。身頃の上からは首と肩があらわになっていて,両肩は羽根飾りで覆われ,持ち上げられた前髪の廻りも肩と同じ羽で飾られていた。アーチ型の眉の下の目は大きく,濃い黄褐色をしていて,まつげは濃く長い。頬は大理石のようにすべすべし,唇はスモモのような色に塗られてつやつやしている」自分が鏡の中にマックスとともに映っていることにすっかり固まって動けなくなってしまいます。これまで継母と継娘から象のように醜いと散々言われ続け,すっかり自分もそのように思い込まされていたことに改めて気づくのでした。しかも横からマックスから何度も美しい,女神アルテミスのようだと持ち上げられ,それでも継娘クロエと比べると・・・と卑下するエレンにマックスは「クロエと張り合う必要などないと分からないか?彼女には流行の痩せた体で満足させておけばいいんだ。紀美には彼女と全く別の美しさがあるんだから」と自信をもたせてくれます。初めはホートン邸を買い取るための策略だと思っていたエレンですが,それでもシンデレラのように舞踏会に誘い自分を変身させてくれたマックスに感謝の気持ちをもちます。そしていつしかマックスに恋してしまったことに,でも有名女優と浮名を流すような美形で富豪のマックスが自分などを相手にしてはくれないという諦めの気持ちも捨てきれません。ところが銀のスプーンをくわえて生まれてきたわけでなくマックスが自分の自分でたたき上げで富豪になったことを聞き,ますますマックスに惹かれていきます。二人の間になにか将来はあり得ないと思いながらも自分に欲望を抱いている様子を目の中に見たエレンはマックスと体を重ねるのでした。女性としての自信のなさから男性との親しい交わりを諦めていたエレンは初めて女性として目覚め,マックスから離れられなくなります。その後夏休み中の休暇を生かしてマックスに付き添いヘリコプターに搭乗したり,有名レストランで食事をしたり,カリブ海の島のリゾート地の下見,アメリカのローク国立公園でのキャンプ体験などで夢のような時間を一緒に過ごします。しかし帰国したときエレンははっと気づきます。マックスとの時間はあくまでもカボチャの馬車が有効な間だけだと。いずれ自分は捨てられ何もかも失ってしまうのだと。砂漠の国への出張にも誘われたエレンですが,その申し出を断り,エレンはホートン邸に帰っていきます。そしてラクロス部の引率でカナダに研修にやって来た先で,交換研修でカナダで働かないかと誘われたエレンは,マックスから離れ,ホートン邸も手放す決意をします。女性としての自信を与えてくれたマックスを諦めるためと新しい生活を始めるために。
 カナダから帰国してホートン邸に戻ったエレンはマックスが先に来て契約書へのサインを求めていることにこれでもう二度と会うこともないのだとすっかり気落ちしてしまいますが,そのときマックスは思いも書けない提案と申し込みをするのでした。「たった100ポンド」この意味は作品を読んだ人にしか分からないキーワードになります。まさに正統派シンデレラストーリー。さいごはちょっとエピローグがくどいような気もしますが,読んでいて温かい気持ちになれる良作です。


タグ:ロマンス
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