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契約結婚は天使のために [モーリーン・チャイルド]

SHALOCKMEMO1156
契約結婚は天使のために Triple the Fun
Billionaires and Babies 56 ) 2015」
モーリーン・チャイルド 高山 恵





 関連作「夢から覚めたシンデレラ(SHALOCKMEMO984)」と同じように,女性から利用されたり信頼を裏切られたりした経験を持つコルトの双子の片割れコナー(コン)がヒーローです。男性側の心の動きを中心に語られるロマンス作品ですが,ヒロインのダイナ(ケータリング業者ですがレストラン経営を目指すシェフでもあります。つまり,ダイナーのもじりではないかと?)・コルテスというメキシコ系の美女の葛藤も,前作ペニーの時と同じように,というか,キング家の男たちを相手にする女性に共通したストーリー展開となります。紋切り型ではありますが,先が読める展開に安心感もあり,読後,あぁやっぱりという満足感も得られるのがシリーズものの良さだと思います。さて,コナー(コン)と3つ子(サム,セージ,セイディ)の関係は,同性愛者だった友人のジャッキー・フランシスとエレナ・コルテスに端を発します。二人は子供が欲しくて養子をもらうよりも,信頼できる男性の精子提供者としてコンに依頼するのです。妊娠は失敗したとコンに思わせ,ジャッキーは実は3つ子を生んだのでした。エレナはダイナの妹。ジャッキーとエレナが事故で亡くなるとき,二人は3つ子の後見人にダイナを指命していたのでした。弁護士からジャッキーの遺言を知らされたコンは始めてその事実を知ります。と同時にジャッキーに裏切られ,しかも自分の子供がいて,それを何年も知らされていなかったことに怒りを感じます。そしてその怒りを後見人に指名されたダイナにぶつけるのでした。親権争いを覚悟でダイナに会いに行くコン。ダイナもまた3つ子の存在を姉たちの死まで知らされていなかったのですが,すでに3つ子たちとの間には本当の母子のような心の絆を感じていました。大金持ちのキング家のもつ力で,いずれ真剣裁判になったら自分に勝ち目はないことはよく分かっていましたが,コンの,というよりキング家の傲慢さと強引さを肌で感じ,その都度抵抗を試みますが,次第にコンの思惑どおりに事が運んでしまい,結局は3つごと共にコンの家で暮らすことになってしまいます。そしてアイルランドへの出張に一緒に行き,モーラとジェファーソン夫婦に出会って,家族を何より大切にするキング家の伝統を思い知るのでした。旅の開放感からかダイナとコンはその夜,ついに一夜を共にするのでした。もう,コンを愛さずにはいられなくなったダイナ。しかしコンは二人の関係を便宜的なものと考えている。ダイナは,二人の関係が永続的に続くはずがないとも覚悟しています。帰国後コンのプロポーズを承諾し,二人は夫婦になりますが,3つ子はコルテスの苗字のままです。そして,地元の有力者を招いたパーティで,友人の妻から「ダイナがキング家の人間になったのは,ビジネスにとって最高の決断だったと言っていた」という言葉を聞いたコンは,やはり自分は利用されただけで裏切られたという気持ちを持ってしまうのでした。翌朝,ダイナと3つ子は家を出たことをコルトから聞いたコンは,さぁどんな行動を取るのでしょうか・・・。
 次々に広がっていくキング家の人間関係。まだ2作品読んでいなかったことに気付きました。読書計画に入れなくっちゃ。


タグ:ディザイア
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国王の許されぬ愛人 [シャンテル・ショー]

SHALOCKMEMO1155
国王の許されぬ愛人 Sheikh's Forbidden Conquest
( Howard Sister 1 ) 2015」
シャンテル・ショー 麦田あかり





 ヒロインがヘリコプターのパイロットということでどんな女性か愉しみに読み始めました。4歳で母親に捨てられ二度目に引き取ってもらった養父母に大切にされたのですが,養父母は実の子供が出来てしまうとその子を溺愛し,ヒロインは寄宿学校に追いやられてしまいます。誰にも愛されない自分。そんな想いを抱きながら成長してきたレクシー・ハワード(28歳)でした。長じて王立空軍のパイロットになり,アフガン戦争でも活躍して勲章をもらい,1年間の契約で沿岸警備隊で働いているのでした。そんな彼女が嵐の中で転覆したヨットから救出したのは地中海沿岸の砂漠の国ゼンハブの国王カディル・アル・スレイマルでした。父王から王位を譲り受け32歳の若さながら人々の尊敬を集める立派な君主で,しかもハンサム。さらには母方から受け継いだモンゴメリー伯爵という爵位も持っています。そんなカディルに向かって,「嵐を予想してヨットを待避させる行動を取らなかったリーダー」と真っ向から非難したのがレクシーでした。国王に向かってこんな怒りをぶつけてくる女性を始めてみたカディルですがなぜかレクシーの言葉に反論できず,しかもそんな彼女に魅力を感じたのでした。しかし,カディルは現王権を確保するために国内の反体制派の叔父との約束,つまり北部地区のシークの妹との結婚が決まっていました。カディルは沿岸警備隊との契約が切れるレクシーを王室専用のヘリコプターパイロットとして雇うことを計画します。次第に惹かれ合うカディルとレクシーですが,このカディルの婚約が大きな障害となります。そして婚約者に会うためにレクシーの操縦するヘリで北部地区に向かおうとしたとき,ヘリはカディルの叔父の計略で乗っ取られ,カディルの所有する無人島に二人は取り残されてしまいます。島に二人きりになったその夜,二人の愛は爆発的に燃え上がります。そして救出された二人ですが,カディルは王権をかけて婚約の解消を北部地区のシークに申し出るのでした。政略結婚を誤ったことと理解して婚約解消に応じたシークと婚約者に感謝して王宮に戻ったカディルは反逆の罪で叔父を逮捕し,二人の間の障害はなくなったように見えますが・・・。
 島での情熱的な夜の愛の結晶の可能性を理由にカディルはレクシーをゼンハブに留めますが,レクシーは自分の実母の過去や実父が誰かを知らないことを理由に,カディルのプロポーズを断るのでした。そして数週間が過ぎ,レクシーが妊娠していないことがはっきりするのでした。自分の母が自分を捨ててイギリスに帰ってしまったことで,父には愛されたもののカディルもまた母の愛情を信じられずに育ったのでした。そのため自分の子供には思い切り愛情を注ぎたいと考えていたのですが,それよりもレクシーと離れては自分が生きていけないことにやっと気付くのでした。
 美しく,しかも自分ひとりの力で優秀なヘリのパイロットとしてのキャリアを作り上げてきたレクシーの魅力が十分に伝わってくる[Nice Heroin]な作品です。


タグ:ロマンス
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青い傷心 [アン・メイザー]

SHALOCKMEMO1154
青い傷心 Take What You Want 1975」
アン・メイザー 馬場あきこ





 継母の息子たち,ロバートとサイモン。4歳の時初めて出会った二人のうち,兄のロバートに憧れを抱き続けてきたソフィーは,寄宿学校を卒業し,やっとロバートと一緒に暮らせると喜びにあふれていました。かつて嵐の夜に恐ろしさのあまりロバートのベッドに潜り込み,じっと抱きしめていてくれたロバートは,その後,大学を卒業したあと建設会社に勤め,北部の町で暮らすようになっていました。そしてソフィーの想いに気づいていたロバートは継父や母からソフィーとの関係を諦めるように説得され,会社の秘書のエマとの結婚をすることでソフィーとの関係を打ち切ろうとしていたのです。エマとロバートの関係はソフィーには知らされずロバートもソフィーに対する想いを振り切るようにワザと冷たく接さざるを得なかったのです。さらに,ロバートの弟サイモンもまた女性らしくなったソフィーに対する想いを抱いている様子。しかしソフィーはロバートと違って優しく接してくれるサイモンには兄妹の関係以上の気持ちは抱けないのでした。さらに地元の有力者でロバートの大学の同窓生ジョンも婚約者がありながらソフィーに想いを抱いている様子。そんな複雑な男女関係の中で本当に愛する人にはどんな行動を取ったらいいのか,高校を出たばかりのソフィーには見当がつきません。つい,自分に優しくしたり冷たく接したりするロバートの行動に振り回され,ついには自分の興味のあるギリシア語を生かした仕事を提供してくれるハリエット・タラントとともに,ギリシアのコルフ島に出かけてしまうのでした。数ヶ月後,継母からの手紙でロバートが工事現場で事故に遭って大怪我をしたという知らせが来ます。急ぎ,イギリスに帰るソフィーですが,継母や父の態度は硬く,特に継母はロバートとエマの関係を強調するばかりです。ロバートもまた病室で,誰との面会も断っているとのこと。思い切って看護師にロバートとの面会を申し入れるソフィーですが・・・。
 ロバートとの関係を清算しようとしていたソフィーにハリエットが伝えた聖書の言葉をもじった[Take What You Want]が原題になっています。


タグ:ロマンス
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赤い薔薇とキス [ベティ・ニールズ]

SHALOCKMEMO1153
赤い薔薇とキス A Match for Sister Maggy 1969」
ベティ・ニールズ 朝戸まり





 「オランダの大女(Amazon)看護師」という連作ものの一つで,[strong heroine]と書評を書いている人もいるベティ・ニールズ傑作作品です。ハイランド出身の主任看護師マギー・マクファーガスの勤めるセント・エセルバーガ病院に老婦人が入院してきます。ヘンリエッタ・ファン・ベイエン・ドゥールスマという心臓を病んだ上品な婦人でした。そしてその息子でオランダのフリースラント出身の専門医パウル・ファン・ベイエン・ドゥールスマという,数代前から医師の家系につらなる富豪貴族の依頼で,病院の上級専門医サー・チャールズの手術を受けたのでした。手術は無事終わり予後の療養のためにマギーが病院の特別の配慮で,ヘンリエッタの付添看護師としてオランダに赴くことになったのです。看護師ばかりでなく老齢の入院患者たちからも目を向けられるほどのハンサムなパウルと一緒にヘンリエッタに付き添えることになったマギーは,病院内でもピカイチの看護師としててきぱきと仕事をこなせる女性でしたが,身長180センチの長身に見合う男性はなかなかおらず,自分も決して美しいとは思っていませんでした。しかしパウルは2メートルの長身で,マギーと並んでも身長を気にしなくても済む数少ない男性だったのです。時折仕事ぶりを褒められ,しかもハンサムな医師から是非にと請われ,断り切れなくなったマギーは同時に女性としてパウルから認められたいという思いをもったのでした。ロンドンからオランダへの飛行機の旅,そしてオランダ国内でも独特の言葉と文化を持つフリースラント州内の土地柄,さらには首都アムステルダムへの休暇での旅など,多くの名所や地名がマギーの訪れる先として紹介されます。ファン・ベイエン・ドゥールスマ家のオランダ国内のいくつかの家での親戚や雇い人たちとの交流,そしてかつて病院の入院患者だったマダム・リヴォーとの偶然のオランダでの出会い,さらにはパウルが何度も足を運ぶ美しく小柄な女性医師の住むユトレヒトへの謎の行動など,いくつかの挿話を重ねながら,期待と失望を何度も繰り返すマギーの心の葛藤を中心のエピソードとして物語は進行していきます。年齢差12歳と,ハイランダーとフリースランダーという異なった文化と歴史を持つ男女のマッチングを,作者がどう果たしていくかが克明に描かれた秀作です。最期の大どんでん返しがドラマチックに,二人がその後どうなったのか,あと50頁は語れそうな余韻を残し感動を呼びます。


タグ:イマージュ
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秘書の条件 [キャシー・ウィリアムズ]

SHALOCKMEMO1152
秘書の条件 Secretary on Demand
Nine to Five 18 ) 2001」
キャシー・ウィリアムズ 本城 静





 すごくハッピーな秘書ものです。疲れている人や悩んでいる人なんかはとてもいいんじゃないかなと思わせる作品です。ヒロインのシャノン・マッキーは7人兄弟で父親は亡くしたものの幸せな家族生活を送っていました。しかし,故郷のダブリンの会社でセクハラに遭い,ロンドンに出てきます。ウエートレスをしていたレストランに毎朝やってくる素敵な男性。それが出版社を経営するケイン・リンドレーでした。巻末でわかりますが,ケインがレストランに通うようになったのはシャノンに会いたいがタメでした。そしてある昼食時ダブリンで自分にセクハラをして騙したエリック・ガルウェイがケインとの商談でやってきたのです。しかもシャノンを覚えていない様子。熱いステーキをワザとひっくり返し,エリックに仕返しをします。もちろんウエートレスとしては首になるだろうと予想して・・・。でもそんなことではめげない強さを持つシャノンに,ケインが秘書にならないかと仕事の話を持ちかけます。そして秘書の条件というのは,自分の娘の面倒を見て欲しいとナニーのアルバイトも掛け持ちすることでした。シャノンとケインの8歳の娘エレノアはすぐに打ち解けます。そしてシャノンの住む治安の悪い地区のアパートの部屋をおとずれたケインは,新しい安全なフラットを見つけるまで自分の家に数ヶ月住むようにと,シャノンをむりやり連れて行くのでした。その時にはシャノンはケインの家でロンドンでの親しみの持てる家族としての気持ちを持ち始め,それはやはりケインへの愛だと気付いていくのです。やがて弱いお酒を飲んで気が大きくなりケインとベッドを共にしたシャノン。そしてそれは新しい生命への入り口でもありました。それに気付いたシャノンは慌ててダブリンに逃げ帰ってしまいます。もうこれ以上ケインに負担をかけることはできないと・・・。数日後,ケインがシャノンの実家を訪れるのですが・・・。 エピローグでの愛らしい女の子ソフィーの誕生も含めて,読者がこうなって欲しいなと思う展開が見事にストーリーに現れすっきりした読後感を得られる作品です。自分を年寄りだといいつつ包容力のあるケインと,少々短期で思ったことをズバリ口に出したり行動に移してしまう若い(25歳の)シャノンのコンピが息もぴったりと生き生きと描かれている秀作です。


タグ:イマージュ
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純潔の囚われびと [ケイト・ヒューイット]

SHALOCKMEMO1151
純潔の囚われびと Captured by the Sheikh
( Rival to the Crown of Kadar 1 ) 2014」
ケイト・ヒューイット 小泉まや





 カダール国の王位継承問題を軸にしたシリーズの第1弾です。国王アジズとの結婚のためにカダールを訪れたサリア国の女王エレナ・カラスは空港に着いたとたんに誘拐されてしまいます。情報操作によりエレナの到着は一日早く,その間隙を縫って王位を狙う現国王の異母兄カリル・アル・バキールにより,誘拐されたのでした。その狙いは身代金目的ではなく,前国王の遺言によるものでした。つまり,前国王の死後六週間以内に結婚していなければ王位を継ぐことはできないというものです。サリア国内でも女王であるエレナは枢密院議員たちからの圧力で王政そのものを否定されるかもしれず,結婚によって自分の立場を確固たるものにしなければならない事情がありました。そこで計画されたエレナとアジズの結婚でしたが,借りるに寄ってインターセプトされ,砂漠のオアシスに連れて行かれたエレナは,大切にされながらもなんとか逃げ出したいと考え,行動を起こそうとするのですが,その都度失敗し,さらに毒蛇に襲われそうになったところをカリルによって救われたり,砂嵐に襲われたりします。その都度王女としてのくじけない態度で毅然としながらも,いつしかカリルに寄りかかることが心地よいことに気付いていきます。やがて期限の日が来ますが,アジズはエレナの替わりに身代わりの女性と結婚したという情報が入ります。もう人質としての価値のなくなったエレナは,カリルに愛されたいと切実に思うようになります。エレナの方からカリルに一夜を共にしたいと持ちかけますがカリルの方もエレナに対する気持ちがこれまで女性に感じていたものとは違うことに気付き,惹かれる気持ちが強くなっていました。そして翌日,エレナとカリルは契約結婚によって互いの立場を強くしようと話し合います。カリルを伴ってサリアに帰国したエレナは枢密院議員との対決に臨み,カリルの後押しで二人の結婚を承諾してもらいます。次はエレナがカリルを助ける番。カダールへの帰国の前にパリの叔母の元を訪れたカリルは,そこで衝撃の事実に出くわします。互いの利益のために本当の気持ちを押し隠して便宜的結婚に踏み切った二人ですが政治的状況の変化によっても変わらないもの,つまり愛を手に入れるまでのロマンスです。激しさと悲しみとが交錯した場面,エピソードに思わず目頭が熱くなるオススメ作品です。カダールの王位はそのどうなるか,アジズがヒーローとなる次作が気に掛かります。


タグ:ロマンス
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地下室の令嬢 [ベティ・ニールズ]

SHALOCKMEMO1150
地下室の令嬢 Dearest Love
永遠の愛をこめて 4) 1995」
ベティ・ニールズ 江口美子





 昨年7月にKINDLEで購入した作品。やっと読了できました。SHALOCKMEMOの1150号となる切れ目の作品にベティ・ニールズ未読作を選ぶことができて良かったと思います。ベティ・ニールズ作品読了11冊目となる本作ですが,初めに読んだ彼女の作品に対する印象について,「片思いの日々(SHALOCKMEMO232)で,「これほど音のない世界を見事にロマンスに仕立てるベティ・ニールズの手腕に脱帽。まるでヒストリカルのようでいて,ヒストリカルですらもっと派手やかな場面や騒がしい場面があるのではないかと思われるほど。この作品で唯一音が感じられるのは村のパーティでのダンスの場面ぐらいか。」と書いていたのですね。本作でもその印象は変わりません。しかし,ヒロイン,アラベラ・ロリマーが夫タイタスを追いかけてしつこく迫る知り合いの女性医師ジェラルディーンに対して普段の様子や外見からは想像できないほどの熱く煮えたぎる嫉妬と怒りを感じている様子が,まるで魔女がぐつぐつと鍋で妖しげな薬を煎じているように感じられて,それはそれでかなりの熱と音が感じられるのも,作者の筆力によるものかと思い,改めてすごさを感じました。そして原題の「いとしい人へ」が作品末尾で夫から妻への愛の手紙の書き出しであるところも,実に計算され尽くされたしゃれた展開であることに驚きを感じます。原作は1995年(邦訳は97年)とされていますから,もう20年以上前ですが,その独特な雰囲気の作風は,まだ20年しか経っていないの?というふうに思えるのも,ベティ・ニールズらしさかもしれません。イチオシの作品です。


タグ:イマージュ
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燃える砂丘 [ヴァイオレット・ウィンズピア]

SHALOCKMEMO1149
燃える砂丘 The Burning Sands 1976」
ヴァイオレット・ウィンズピア 石川妙子





 「燃える砂丘」というタイトルは,直訳的なタイトルですが,本作の雰囲気を伝えているタイトルだと思います。イギリス人のモデル,セーラ・イノセンスは落馬によって左足に故障を負ってしまい,モデルウオーキングができなくなったため失職してしまいます。さらに馬に乗るように進めた婚約者も自分を捨ててしまい,自分のペントハウスも失いつつありました。そんな時ふと見つけた新聞の求人広告に応募してみると,面接通知があり,指定されたレストランに行ってみるとベルベル人の王の使いという人でした。モロッコのはずれの砂漠の国ということで二の足を踏むセーラでしたが,経済的事情が止むに止まれぬ状態だったことと,自分を捨てた婚約者から遠ざかりたいという気持ちから承諾してしまうのでした。この決断をセーラは後日かなり悔やむことになるのです。さて,ベルベル人とは,北アフリカの広い地域に住むコーカソイド系の独自の文化を持つ人々で,アフリカに住んでいても東洋人と本作の中でも何度も紹介されています。イギリス人セーラからしてみると野蛮な文化を未だに持つ人々ということになるのですが,厳しい砂漠で生きて行くためにはそのような考え方や生活習慣,そしてイスラムの教えが欠かせない文化ということになるのでしょう。アフリカ北西部が東洋という認識にはいささか首をかしげざるを笑ませんし,アラブとの違いというのもよく分かりませんが,ヨーロッパの人たちから見るとそうなのでしょう。とにかく男性は頑固で融通が利かず,プライドが高いというイメージが定着しているようです。そんなヨーロッパの人たちの認識に沿う形で本作は書かれていますし,かなりステレオタイプを全面に押し出した作品なので,まぁそこは物語としてアラブといえばアラビアンナイトというのと同じなのかもしれません。
 モロッコの空港に着いたセーラを迎えに来た謎の男性は,なかなかのハンサムで,自分をここに来るようにとりはからった砂漠の国ベニ・ザインの首長ザイン・ハサンの家臣だと思い込んだセーラは,かなり自分勝手な要求や非難をするのでした。しかしそんなセーラの言葉や態度にめげずに繰り返しベニ・ザインや砂漠の暮らしのことを教えようとする男性。実はその男性こそザイン・ハサン本人だったのです。首都の城に着いて始めてそのことを知ったセーラは,その後もなんとかイギリスに帰りたいと訴え続け,いろいろと頭の中で逃げ出す算段をするのですがどれも実現不可能。そしてザイン・ハサンから妻にしたいと申し渡されてしまうセーラでした。過去に,愛する妻を亡くしさらに跡取りの息子をも亡くしてしまったザイン・ハサンは,愛する心は亡き妻の眠る砂漠に葬ってきたとセーラに素直に告げるのでした。つまりセーラとの結婚は,亡き息子の代わりに跡取りを生んでもらうための結婚だというのです。そしてこの砂漠の国に来てしまった以上もはや,絶対的権力を持つザイン・ハサンの命令に逆らうことは死を意味することだということも周囲の人たちやザインの妹たちからも何度も聞かされていくのです。もはや逃れる手段はないのかと思いかけたある時,庭に咲く花を摘んで香りを嗅ごうとしたときに,花にいた蜂に唇を刺されてしまい,セーラは意識を失ってしまうのでした。この事故がザインに与えたショックの大きさに,逆にセーラも驚き,かつて妻と息子を失ったザインに熱い想いを抱いていることに気付くのでした。さて,二人の愛は成就するのでしょうか。
 非日常的な状況の中での愛の姿をセーラをとおして描いた野心作だと思います。


タグ:ロマンス
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罠に落ち,恋に落ち [シャロン・ケンドリック]

SHALOCKMEMO1148
罠に落ち,恋に落ち Valentine Vendetta 1999」
シャロン・ケンドリック 橋 由美





 親友のロージーに自分を捨てた男への復讐の機会を作ってくれと頼まれたパーティ・プランナーのフラン。著作権代理人のサム・ロックハートの家を訪ねます。ところがサムはとびきりのハンサムな男性で,自らがサムに惹かれてしまい,ロージーの言っていることが本当だとは思えなくなってきます。そしてヴァレンタインの日のパーティを完璧に仕上げたつもりのフランを襲った計画外のロージーの行動に驚き,後片付けもしないまま自宅に逃げ出してしまうのでした。翌日のマスコミにはこのパーティの様子が大々的に報じられてしまいます。すぐに怒りの電話があるかと思っていたフランですが,サムからは数日経っても音沙汰がありません。そして入ってくる電話はフランとの契約をキャンセルする電話ばかり。あぁついに自分の仕事は失敗に終わってしまうかもしれない。ロージーには連絡は取れなくなってしまうのでした。そしてついにサムがフランのフラットを訪れてきます。しかも怒りの言葉ではなく,もう一つ,母の誕生日パーティを企画してくれないかという依頼でした。そしてそのためには,二日間サムの家に泊まり込んで最期までパーティを仕上げて欲しいというものでした。サムには借りがあると思っていたフランはこの申し出を承諾し,再びサムの家を訪れます。そして翌日の夜,誘われるままにサムと一夜を共にしてしまうのでした。フランをサムに推薦したサムの友人のコーマックがサムの家を訪れ謎の言葉を残します。実はサムがフランに復讐すると言っていたというのです。それではこの誕生パーティでサムの復讐劇が行われるのだろうか。不安なままのフランとサムの元にサムの母親と妹たちがやってきます。女優の母と,若い女優のサムの妹ともう一人の学者肌の目立たない妹の3人に,サムとの関係をあからさまに訪ねられるフラン。仕事できていると否定はするものの,もはやサムへの気持ちに嘘はつけないことはフランに分かっていました。さてサムは本当に復讐に走るのでしょうか。
 復讐の罠を仕掛けようとしていたフラン,そしてその復讐の復讐を企てたサム,どちらも復讐の罠にはまり,そして二人とも恋に落ちてしまうという,滑稽ながら深刻な興味深いお話しです。シャロン・ケンドリックの捻りのきいた素敵な復讐劇が楽しめるオススメ作品です。


タグ:イマージュ
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秘書はシンデレラ [スーザン・メイアー]

SHALOCKMEMO1147
秘書はシンデレラ Her Brooding Italian Boss 2015」
スーザン・メイアー 庭植奈穂子





 まさにシンデレラ・ストーリー。ヒーローのアントニオ・バルトロッチ(イニシアルはAB)は世界的な画家で,しかも父親は引退した富豪の実業家コンスタンツォ。親友の結婚式でベストマンの一人を務めているアントニオは新婦側のブライズメイドの一人ローラ・ベスが気になり始めます。なにか悩みを抱えている様子に・・・。ローラ・ベスは今最悪の状況でした。ルームメイトが結婚してしまったので住む家を失い,仕事も失い,しかも妊娠して,その父親からは認知しないと宣告されてしまったのです。この三重苦からどうやって逃れよう,と悩みはつきなかったからです。祝賀パーティーでコンスタンツォからアントニオの秘書をしないかと誘われたローラ・ベスはたちまちその提案を承諾したのでした。これで一気に悩みが解決するかも・・・。自家用ジェットでイタリアについてみるとコンスタンツォの提案をアントニオは知らずにいて,腹を立てています。このままではすぐ首になってアメリカに帰されてしまうかも・・・。なんとかして仕事にしがみつこうとするローラ・ベスは,アントニオが2年前に世界的に名高いモデルで妻のジゼラを失った悲しみから抜け出せずにいるのではないかと思い,何とかしてその悲しみからアントニオを抜け出させたいと思います。その時点ですでにローラ・ベスはアントニオを愛し始めていたのですが,普通の娘の自分が富豪の生活について行けるはずもなく,別世界にいることを忘れまいとしています。自分が何故妊娠することになってしまったかをアントニオに尋ねられて説明し,替わりに亡妻とのことを話すように誘いをかけてみますがアントニオは頑なに口をつぐみます。やがて,ローラ・ベスを描いてみたいと考え始めたアントニオにローラ・ベスは創造こそ,アントニオが自分を取り戻すきっかけになるのではとモデルを買って出ます。しかしなかなかポーズが決まらず,何度か壁に当たっている様子。一度はドレス姿で納得したアントニオですが,どのポーズがいいかが決まらない様子。ついにバルセロナでのパーティに逃げるようにアントニオ。その様子をロレンツォが気付きローラ・ベスをバルセロナに伴います。そして自分は理由を付けてイタリアに帰ってしまったのでした。二人で観光しているときに,きっかけがあり「愛している」と言ってしまったローラ・ベスに突然機嫌が悪くなるアントニオ。しかしついにローラ・ベスの粘り勝ちでアントニオは亡妻との関係を告白するのでした。そしてポーズも決まった様子。しかし,子供を失い女性を信用できなくなったアントニオからローラ・ベスに対する愛の言葉は聞かれません。「これで私のいる場所はなくなったわ」とアントニオが出かけている間に,ケンタッキーの我が家に帰ってしまうローラ・ベスでした。
 過去との決別,一人で抱え込んでいた芸術家としてのアントニオの心の苦悩がローラ・ベスによって解放され再び生きる目標が見つけられたとき,二人の愛が接点を持ち始めます。自分を捨てた父を許す気持ちもアントニオに芽生え,自分の子供でないローラ・ベスの子供とも,かつて子供を失ったアントニオの心の隙間を埋めてくれる存在になるでしょう。ちょっとご都合の良すぎる展開ですが,それだけに安心して読み進められるロマンスの王道を行く作品です。


タグ:イマージュ
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