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禁じられた罪の味 [マギー・コックス]

SHALOCKMEMO1181
禁じられた罪の味 A Taste of Sin
7つの愛の罪 4) 2015」
マギー・コックス みずきみずこ





 原題は「罪の味」
 ヒロイン:ローズ・ヒースコート(歳)/アンティーク・ショップ鑑定士/小柄でほっそり,髪は黒でボーイッシュ,高い頬骨,菫色の瞳
 ヒーロー:ウジェーヌ(ジェーヌ)・ボネール(歳)/レストランチェーン経営者/彫りの深い顔立ち,鋭い顎,髪は深みのあるダークブラウンで所々金色,青い瞳/フランス人
 スコットランドの島にあるヒーロー,ジェーヌの館フォー・ウィンズ館で繰り広げられる男女の虚々実々の駆け引きが見物です。「SF映画に出てくるみたいな巨大なガラス張りの建物」と地元の漁師が言うフォー・ウィンズ館。一流シェフであるジェーヌの厨房は,白と銀の色調に統一され,手をかざすだけで扉の開く戸棚や冷蔵庫など最新設備満載の誂えです。創造的なフランス料理のシェフとミスマッチなこの近未来的な設備の組み合わせがいかにも複雑な心を持つジェーヌにぴったりかもしれません。やがてロンドンでのランチの時,ジェーヌの仕事一筋の心の闇を指摘して怒らせてしまったローズは,恩人フィリップからの助言を得て再びフォー・ウィンズ館を訪れ,自ら進んでジェーヌに身を投げ出すのでした。
 ここからもう一波乱起きるのかと思いきや,以外とすんなりローズはジェーヌの手に落ちてしまってあっけない幕切れとなってしまいます。あんなに強情そうに見えたローズの情けなさ,そしてもっと傲慢さが欲しかったジェーヌ,もう少しカタルシスを感じたいと思う読者にとっては,なんとなく物足りなさを感じてしまう作品でした。フォー・ウィンズ館の魅力がなかったらなんともしまりのない作品です。


タグ:ロマンス
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花嫁の悲しい嘘 [メイシー・イエーツ]

SHALOCKMEMO1180
花嫁の悲しい嘘 Married for Amari's Heir
One Night with Consequences 6 ) 2015」
メイシー・イエーツ 山科みずき





 原題は「アマリの後継者のために結婚して」
 ヒロイン:チャリティ・ワイアット(22歳)/ウエイトレスで詐欺師の娘/黒髪の巻き毛
 ヒーロー:ロッコ・アマリ(35歳)/アマリ・コーポレーション社長/金色に近い肌,ごつごつした鋭角な頬骨と顎,官能的な曲線を描く唇/イタリア出身
 チャリティの父がアマリのお金を100万ドル持ち逃げし,残されたチャリティがアマリから代償を求められます。刑務所か一夜のベッドか。究極の選択肢を与えたアマリですが,もちろんチャリティには刑務所への選択肢は考えられません。この後もなにかとアマリはチャリティに刑務所をちらつかせ有無を言わさず言うことを聞かせます。卑劣で冷酷な男,そんなアマリの子どもを身ごもってしまったチャリティ。どちらが加害者でどちらが被害者か。この二人の縄の引き合いが前半から中盤へと続きます。二人の身体の相性は抜群で,チャリティも次第にアマリを求めるようになります。そして二人の過去が互いの関係に影を落としていきます。父を知らず,5歳で母親を失い捨てられ里親の元を転々としたロッコ・アマリ。母を失い父の詐欺の片棒を担がざるを得なく青春時代を過ごしてきたチャリティ・ワイアット。どちらも言葉にできないほど過去に傷つき,愛を知らずに育ってきたため,愛に不器用で人を信じず,自分にも自信がない。本作はそんな二人が互いに影響を与え,愛に気付いていくという成長と感動の物語です。特にエピローグでは15年後の二人の生活が描かれていますが,あのぎくしゃくした関係が嘘のように幸せに満ち,読者に本当に暖かい感動を与えます。
 さて,あのチャリティの父ノーラン・ワイアットはその後どうなったのでしょう。チラッとでもそのことが描かれていれば,物語にさらに深まりがあったのではないかと思われますが,ちょっと残念です。まぁそれも余韻となっているのかもしれませんが・・・。イチオシの作品です。


タグ:ロマンス
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涙のエンゲージリング [シャロン・ケンドリック]

SHALOCKMEMO1179
涙のエンゲージリング The Ruthless Greek's Return
Playboys of Sicily  1 ) 2015」
シャロン・ケンドリック 山口西夏





 ヒロイン:ジェシカ・カートライト/元テニス・プレーヤー/大手宝飾店ルル社専属モデル(26歳)/アクアマリンの瞳, ブロンドの髪
 ヒーロー:ルーカス・サラントス/元ボディガード/大手宝飾店CEO/黒い髪
 若い頃に才能を発揮しプロテニスプレーヤーとしての将来を嘱望されていたジェシカ。しかし丁度ルーカスと付き合っていた頃靱帯の故障でテニスを続けられなくなってしまう。そのことを知らずにプロポーズしたルーカスにジェシカは拒否の言葉を伝える。ジェシカに捨てられたと思い込んだルーカスはその後命を救ったロシア人のパトロンから,いくつかのダイヤモンドを含めた宝石をもらい,宝石商として大成するのです。一方ジェシカは18歳の時父と継母を失い,異母妹のハンナ10歳と二人きりで残され,ルル社の専属モデルとしてなんとか暮らしていけるだけの収入を得て,ハンナを育ててきたのでした。ハンナはこれから大学生活を送ろうとするところまで成長し,コーンウォールの一軒家から巣立っていきました。そんな時,ルル社から呼び出しがあります。何事かとロンドンまで行ったジェシカは,ルル社の新CEOがルーカスであることを知ります。これまでのイメージとは異なるモデルとなることを条件に契約更新するかどうかの決断を迫られ,一度は断ろうとしたジェシカですが,ハンナの学費と今の生活を維持しなければならない事情から,そして再びルーカスとの関係が改善できるかもしれないという期待もあって大人のイメージの新プロジェクトにモデルとして参加することになります。撮影はヴェネツィアで行われ,再び二人の関係は再燃します。ルーカスへの想いが復活したジェシカの妖艶なポーズが新聞やCMで大反響を呼びますが,撮影終了と同時に,ジェシカは置き手紙をしてコーンウォールに帰ってしまうのでした。連絡が取れなくなったジェシカをルーカスが訪ねてみると,8年前に住んでいた家には,すでに別の人が住み,さらに奥の海岸付近の小さなコテージで庭仕事をしているジェシカが見えたのです。
 「胸が至福の喜びに張り裂けそうになるのは決して普通のことではない。そんな気持ちになるのは,相手を心から愛しているときだけ。でもルーカスは愛を求めてはいない。」急遽休暇を取ることにしたルーカスはジェシカと小さなコテージでの生活を始めます。「二人は将来のことは決して話題にしなかった。愛という言葉も口にしなかった。」というある種微妙な境界線をもつ二人の生活。しかし,ルーカスの双子の兄アレックから連絡があり,ルーカスはロンドンに帰ってしまいます。将来の仕事にしようと始めた刺繍に精を出したりしている間に異母妹のハンナがオーストラリアに行くことにしたと連絡が入ります。ハンナが自分から離れ,ルーカスもまた帰ってこない・・・。寂しさを感じざるを得ないジェシカは,ルーカスから連絡を心待ちにしています。そんな時ヴェネツィアで一緒に仕事をしたスタイリストのパティからの電話で,あの時監督とルーカスがジェシカの対応で秘密にしていたことを教えてくれるのでした。裏切られた想いを抱くジェシカ。「8年前のことでどうしても私を許せなくて私を今回雇った」のかと詰め寄るジェシカ。その言葉に腹を立てて,コテージを去って行くルーカス。という具合に,どんどん二人の関係が深まったり離れたりを繰り返していく場面展開の速さが,読者を引き寄せるストーリーテリングの見事さが本作のの最大の魅力です。華やかなスポーツ界や宝飾界の裏側でうごめく男女の心の葛藤を見事に描いた作品。オススメです。さて,ルーカスがジェシカに渡したリングがなんとも洒落ていますね。


タグ:ロマンス
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非恋愛結婚 [マリオン・レノックス]

SHALOCKMEMO1178
非恋愛結婚 Dr. McIver's Baby
Prescription : Romance 3 ) 1998」
マリオン・レノックス 北園えりか





 原題は「ドクター・マカイバーの赤ちゃん」
 ヒロイン:小児科医 アニー・バロウズ(25歳)
 ヒーロー:外科医 トム・マカイバー(32歳)
 オーストラリア南部の小さな町バンノックバーンの町立病院に勤める同僚医師アニーとトムの住む病院裏のアパートの,トムの側の入り口の前に置かれていたのは,生後何週間かの小さな女の赤ん坊。中にメモが入っており,トムが最近まで付き合っていた女性が産んだトムの娘だというのです。メリッサというその女性はすでに外国で他の男性と暮らしており,娘はトムが育てるべきと書いてあります。小児科医であるアニーは,捨てられた赤ん坊がたどる道筋に精通しており,それを淡々とトムに説明するのですが・・・。ハンナと名づけられたその子は,結局病院中の人気者になり,トムも愛情を持ち始めて,トムが育てることになりました。さて,その時困ったのが母親が必要だということです。その時トムと付き合っていたサラは,他人の子を喜んで育てるような女性ではありませんでした。その時トムが年配看護師の助言で目にしたのは,これまで同僚としてしか見ていなかったアニーだったのです。自分と同じように地域医療に携わることを選択し,片田舎の町にやってきたアニーとの医師としての仕事ぶりは立派で,しかも若いのに派手な格好をせず,「歳を取っても独身でずっと働いてくれそうだ」と思われていたアニーが,眼鏡を外し,髪を下ろして身体のサイズに合う服を着てみると,素晴らしい美人であることが見えてくるではありませんか。「父は私が幼いころに出ていったの。母にとっては,私もいらない存在だった。私の姉は美人なの。それに比べて私はこんなふうだから」と自分の容貌に自信を持てないアニーは仕事一筋の人生を送ろうと決めていたのです。一方トムは女性なら誰もが振り向いてしまう容貌と医師としてのステータスをもち,アニーも密かにトムに対して憧れの気持ちをもっていたのでした。しかしトムがこれまでとっかえひっかえ付き合ってきた女性はいわゆるモデル体形と美貌を兼ね備えた女性ばかり。自分のような女性を振り向いてくれるはずがないと思っています。そんなトムが,赤ん坊が現れたとたんに自分と結婚したと言いだしたのですから,いくら自分の魅力や美辞麗句を告げられても信用できません。きっぱりと申し出を断るアニー。それが,看護師たちの目から見るとアニーも美人でトムとの相性もバッチリで,二人がこの病院に勤めてくれている間は町の医療も安泰だと勝手な憶測で噂をし出したのでした。2週間経ってもアニーの返事は同じです。このままではこの病院にもいられない,月末には辞職するとアニーは言い出しました。その後病院内だけでなく町のあらゆるところでアニーを説得する声が高まります。しかしトムの口からはこの結婚の有利性ばかり聞かされ,肝心の「愛」の一言も聞けません。しかし周りに説得される形でアニーは結局結婚を承諾するのでした。式の後も,トムは娘のハンナには愛情を注ぎますが,アニーとは病院のシフトの関係ですれ違いばかり。夜はベッドを共にするものの,朝になるとまた心は離れているように思えるのでした。休日に浜辺でおぼれかけた人を助けにトムが海に入り,アニーも命綱を投げて協力して助け上げるのですが,このときトムを失うことがどんなに辛くなるのか身をもって体験したアニー。そしてもう一つ大事件が起こり,アニーは脚に重篤な怪我を負ったとき,トムはアニーを愛していることに気付くのです。
 相手を失うようなことを体験したときに始めて分かる相手への愛。愛はもらうものではなく,与えるもの。そんなメッセージが伝わってくるハートウォーミングな作品です。それにしても,ヒロインの名前がアニー・バロウズ(有名なヒストリカルロマンス作家と同名)とはなんてことでしょう・・・。


タグ:イマージュ
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大富豪と偽りのシンデレラ [ジャニス・メイナード]

SHALOCKMEMO1177
大富豪と偽りのシンデレラ The Billionaire's Borrowed Baby
Billionaires and Babies 19 ) 2011」
ジャニス・メイナード 土屋 恵





 注目の作家ジャニス・メイナードの初訳本です。原題は「億万長者の借りてきた赤ん坊」。
 ヒロイン:休職中の高校の数学教師 ハッティ・パーカー(30歳)
 ヒーロー:繊維会社「R&D」のCEO ルック・カバロ
 ハッティの姉が自動車事故で亡くなり,娘のディーディー(本名は不明)が残されます。義兄のエディはディーディーの真剣を主張していますが,飲酒運転で事故を起こした罪をできるだけ酌量してもらうために幼い娘を利用しようとしていることは明らかでした。すっかりディーディーに愛情を注ごうとしているハッティは,勤めていた高校を休職して姉の最後のメッセージを成し遂げるため,10年前に付き合っていた昔の恋人ルックの力を借りることにするのです。おそるおそる会社を訪ねたハッティは,すげなく追い返されることも覚悟で,力を貸して欲しいとルックに頼み込みます。ルックは10年前突然自分の前から姿を消したハッティにちょっとした復讐をしようと,力を貸す見返りに,なんとディーディーのための契約結婚を申し出るのでした。ルックには経済力があり,優秀な弁護士を雇えるだけのつてももっており,必ずしもふたりが結婚しなくても裁判でハッティにディーディーの親権を確保できるだけの見通しはあったのですが,ちょっとした仕返しにハッティを困らせようと考えたのでした。この決断が,二人とディーディーの人生を大きく変えることになるのです。
 ハッティは大学を奨学金で卒業しようとする苦学生で大学卒業後すぐに父を亡くし,その父も実父ではなく継父でした。母もまたその後神経を病んで施設で昨年息を引き取っていたのです。姉だけが頼りの人生でした。その姉が亡くなり,一人残されたディーディーが唯一の家族と言っていい状況でした。義兄が娘を愛していないことは周知の事実だったのです。そしてルックは資産家の家に生まれ,繊維会社「R&D」を兄のレオと共同経営し,会社のCEOとして経営に携わっていたのでした。大学時代に愛し合っていた二人ですが,この社会的階級格差がハッティにルックの元を去らせる大きな要因だったのです。しかし持てる側のルックからしてみれば,自分が捨てられたとしか思えませんでした。当時何ヶ月もハッティのことを思い煩っていたことを知っている兄のレオがこの結婚に反対することは必至でした。ハッティは結婚を決めてから,数日でルックの住まいにディーディーと引っ越しますが,二人の間の関係はとても微妙なものでした。周囲にはこの結婚が本当の結婚であることを見せなければならず,しかしハッティが求めるまではベッドを共にしないとルックは心に決めていたからです。裁判になる前に早急に結婚し,ディーディーの親権をとるために二人は近親者だけの小さな結婚式を挙げ,ディーディーをルックの使用人夫婦と姪のナニーに預けてフロリダのキーウエストに新婚旅行に出かけます。しかし,初日からルックに仕事が入り,夜はフロリダに出かけてしまうなど,互いの波長はなかなかぴったりしません。しかし,互いを意識し求める気持ちは10年前と変わらなかったのです。翌日からは10年分を取り戻すかのように互いを求め合う二人。数日後ディーディーが熱を出したと連絡が入り,急遽ジョージア州の家に戻った二人ですが,幸いディーディーの熱は抗生物質の投与で落ち着きを見せるのでした。しかし,旅行中とは異なり急に冷たくなった二人の関係。近い将来ルックと別れなければならなくなることを気に病んだハッティがナイーブになり,考え事をしているうちにルックの求めを避けてしまったことが原因でした。ついにルックが出社している間に弁護士から裁判でハッティに親権が認められた連絡が入ったことでハッティはディーディーを連れて書き置きを残して家を出る道を選択します。その後ようとして行方が分からなくなったハッティとディーディー。ルックは探偵を雇って二人の行方を捜します。そしてディーディーの薬を取りに行った薬局を探し当てた探偵はハッティがモーテルに泊まっていることを突き止めるのでした。
 ここから先は互いの気持ちを率直に「愛している」という言葉と共に伝え合うことで二人の関係が改善されて大団円を迎えるわけですが,社会的階級の差を深刻に受け止め,決して安易に他人の力に頼ろうとしないハッティの南部女性らしい独立心の強さに拍手です。


タグ:ディザイア
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密会は午後の七時に [エマ・ダーシー]

SHALOCKMEMO1176
密会は午後の七時に TheCostarellaConquest 2011」
エマ・ダーシー 萩原ちさと





 ロミオとジュリエットとはちょっと状況が異なりますが,親の敵を父親に持つローラ・コスタレッラと,そのローラを愛してしまった会計事務所の所員で自分の事業でも成功したジェイク・フリードマンのロマンスを描いた作品,原題の[conquest]には征服するという意味となびいてきた女という意味があり,その両方に掛けていると思われます。ローラの父でかい兄事務所を経営しているアレックス・コスタレッラは,破産企業の清算人として,情け容赦ない仕事をして大もうけをしている冷酷な男性。そしてジェイクの父の会社もアレックスによって簒奪され,死に追いやられました。絶望した母も後を追うようになくなり,苦労して資格を得て復讐する機会をうかがいながら努力し,アレックスの会計事務所で仕事ができる男として認められるようになってきたのです。金曜の晩に母の日のパーティーを開くから参加しないかとアレックスに持ちかけられ,しかもうちの娘のローラは美人だぞとまるで娘との関係を持つように仄めかされたのです。復讐の対象であるアレックスの娘を利用できるかもしれないと密かに期待したジェイク。しかし,出会ってみるとローラはアレックスとは全く異なり,ただ美しいだけではなく知的で料理がうまく,しかも景観設計士としての勉強をしている大学生だということが分かります。作者の描いたローラの風貌はただの美人というだけでなく,いわゆる絶世の美女。ミルズ・アンド・ブーン版の表紙イメージは大概ハーレクインものより美しいのですが,そのMB版の本作のイメージモデルはどうもその美しさを伝え切れていないように思います。もっと若々しく,かといって幼いイメージではなく大人びた華やかさももつイメージです。「世界で最も美しい顔ベスト100(2015)」で言えば,第7位のクロエ・グレース・モレッツ(アメリカの女優)のような感じがふさわしいと思うのですが・・・。さて,アレックスは仕事上だけではなく,家庭内でも妻や息子,娘に対しても冷酷で常に家族を支配下に置きたがり,ちょっと逆らうと嫌みと皮肉で心を傷つけるような人でした。卑劣な男を100人集めてそのエキスを合わせたような人ということでしょうか。その父が招待したジェイクですから,きっと父と同じタイプの人だろうと予想していたローラの思惑とは違い,ジェイクは紳士的で母にも優しい言葉をかけ,しかもハンサム。とにかく礼儀上誘いを一度は受けてみようということで翌日かかってきた食事の誘いに乗ることにするのでした。料理好きのローラはジェイクの選んだ一流シェフの料理を堪能し,その後見事な夜景が見られるホテルで夢のような一夜を過ごすのでした。もうジェイクに惹かれていることを隠しきれないローラは,兄のエディのアパートに泊まるからと嘘をついてその後,数回ジェイクとの食事と,一夜の関係を続けていきます。二人がレストランで出会う時間がいつも午後七時でした。兄からの忠告でジェイクはお前を利用しているだけだと言われ,時折父からもジェイクと会っているのかと問われるのですが,二人の関係は父の仕事とは関係ないと割り切り,ひたすらジェイクのことが頭から離れない状況を愉しんでもいるのでした。3回目の食事が終わった後,ジェイクはさりげなくタクシーにローラを乗せ,「これまで楽しかったよ」と別れの言葉を口にするのでした。そしてその意味が分かったのは,数日後アレックスがジェイクに裏切られ訴えられたと家に帰ってきたからでした。自分を利用していたのかと一瞬疑いをもちながらも,再び自分を誘ってくれるのではないかという期待も捨てきれず,ジェイクの家を訪ねて行ってみると,もうすでに別の人が住んでおり,さらに,ジェイクと美しい女性が写っている写真を父から見せられ,完全にジェイクへの思いが冷めてしまったローラ。しかし心の中ではジェイク以外の男性との関係など想像もできないほどジェイクを愛してしまっていたのです。その後は大学での勉強に集中し,全科目で優秀な成績を収めて,景観設計士として就職を果たした6カ月後。いよいよ父の裁判が始まりました。その時にはすでにローラと母は父の家を出て,その影響下から完全に脱出しており,ジェイクと女性が写った写真も父のねつ造であることが分かっていたローラは,この裁判の時こそジェイクとのつながりを再確認する機会だと思い,裁判所へ傍聴に出かけるのでした。さて,二人の関係はどんなふうに修復されるのでしょうか・・・。
 美しいだけでなく屈託なく,料理や風景に対する興味を素直に抱き,それを正直に表現するローラはとにかくNiceHeroineです。


タグ:ロマンス
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ジャスミンの罠 [エマ・ダーシー]

SHALOCKMEMO1175
ジャスミンの罠 Climax of Passion
Page and Privileges 9 ) 1995」
エマ・ダーシー 久坂 翠





 すごい女性がヒロインです。アマンダ・ブキャナンはホテルの受付担当でありながら,人類学者である父をもち,その父が発見したアトラス山脈近くのザビア国の水晶に満ちた洞窟をザビアの首長ザシラクに否定されたため,単身ザビアに乗り込み自分の力で推奨度靴を見つけようと計画しているのですから・・・。ホテルでは副支配人のチャールズ・アーノルドにひどいセクハラとパワハラを受けながらもそれに耐え,支配人すらそれに味方するという状況でありながらじっと機会をうかがっています。ホテルのオーナーであるザビアの首長ザシラクに遭うチャンスを伺っています。丁度その頃,団体客と前後して謎の男性からのスイートの予約状況を尋ねる電話があり,さらにいかにも砂漠の民のような精悍で視線の厳しい男らしい人物が団体客の受付が終わるのじっと待っています。そして混乱が静まったころ,ザビア国のマークのついたいわゆる水戸黄門の印籠のような文書を差し出しながらスイートルームを取ろうとするのでした。名前を聞いても架空の名前を名告るばかりで正体を明かしません。副支配人も支配人もこの文書の正当性を信じず,ゴミ箱に捨ててしまうのですが,その時ザシラクの側近の男性が,支配人と副支配人をクビにしてしまいます。そしてアマンダを支配人にするというのです。スイートを確保しアマンダが男性を案内すると午後9時に部屋に来て欲しいという伝言が伝わってきます。女性としての自分に言い寄ろうとしているかもしれないと不安と期待を持ちながらアマンダは極限の緊張感の中でその男性の部屋を訪れるのでした。互いの本音をうかがいながらの神経戦が展開されます。そしてアマンダは翌朝,ゴミ箱に捨てられていた文書を拾い,ザビア国に単身乗り込むのでした。空港で出会ったモッカという案内人の若者が何から何まで道具をそろえてくれました。支払いは?と訪ねると,この文書がある限り請求は王宮にするというのです。とにかく自分の入国と不法な請求が行く前に急いで水晶洞窟を探しに出かけたアマンダ一行。ところが砂漠に入ったところで首長の親衛隊が警護という名目で待ち構えていました。ここまでかと思いきや一人の男性だけが残り,アマンダたちのトラックに乗り込んで案内をするというのです。有無を言わせない圧倒的なオーラを放つ男性。実はその男性こそ首長ザシラク本人だったのです。オアシスで一夜を明かしたアマンダ一行は翌日アトラス山中の水晶洞窟を目指そうとするのですが,謎の男性は馬を用意し,アマンダと二人だけで別行動を取ると言い出します。アマンダをからかうような言い方ではあれ,断ることもできない言外の力強さに負け,アマンダは二人での行動を選択するのでした。父が残した地図には書かれていない双子山の一方に男はアマンダを連れて行きます。そしてそこには水晶洞窟があったのでした。父の名誉を晴らしたいという気持ちは洞窟に案内されたことによりすっかりアマンダの心から消え去り,この場所を公開しないでおきたいという男性の言葉を信用することにするのでした。山を下りようとしたとき,アマンダの後ろで岩が洞窟の出入り口をふさいでしまいます。男性が押しつぶされ,出られなくなったのではと恐れたアマンダはとにかく村に帰って助けを呼ぶしかないと考え,一人,馬を駆っていくのでした。途中ヘリコプターの音が聞こえ,アマンダの近くに着陸し王宮に向かうようにアマンダを乗せてしまいます。男性を早く助けて欲しいという願いを強調しますが,首長からの命は絶対でそれ以外は誰も耳を貸そうとしません。男性の運命は・・・。王宮について身支度を調えさせられ,休憩を取らされ,救助の願いが聞き届けられた様子はありません。そして翌日首長の謁見に行ってみると,なんとあの男性がザシラクだと分かったのでした。何故自分より早く王宮に着くことができたのか。そうか,あのヘリコプターが・・・。やっと腑に落ちるアマンダ。そしてザシラクはアマンダが自分を見捨てて一人で逃げたのだと誤解しているのでした。なんとか誤解を解く方法を考えたアマンダ。二人の瞳の中には互いの欲望が渦巻いているのが見てとれるのでした。
 復讐譚かと思いきや,ジェットコースターのようにスピーディーな冒険譚であり,さらにはエキゾチックな雰囲気がふんだんに取り入れられたロマンス作品でもあります。自分の信念を曲げずに誰もが恐れるザシラクの愛を獲得していくアマンダのりりしくも愛らしい姿に脱帽です。邦題はザシラクが好む花ジャスミンの香りがアマンダの心に入り込んでいく様子を表していて,蓋し名訳だと思います。


タグ:イマージュ
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虹色のシンデレラ [エマ・ダーシー]

SHALOCKMEMO1174
虹色のシンデレラ The Billionaire's Captive Bride
Ruthless 15 ) 2007」
エマ・ダーシー 片山真紀





 エマ・ダーシーのシンデレラストーリーですが,本作はシンデレラを夢見る女性ではなく,シンデレラ物語を作る側の女性を描いた作品です。そんなちょっと変わった視点から,こんなにも面白いストーリーが描ける作者の才能にまずは感謝です。
 童話作家としてすでに世界的に名を知られていたエリン・ラヴェルは,いわゆる覆面作家。プライベートな部分をほとんど明かさず,マスコミからの取材もほとんど断っています。ペンネームではなく本名で創作していますが,ストーリーを思いつくと現実からちょっと離れたその世界に行ってしまうという癖があります。最初の作品が発表されたときのマスコミからの取材に嫌気がさし,その後はインタビューもほとんど断ってきたのでした。その日は伯母の経営する幼稚園の子どもたちと一緒に園の近くの公園に行って子どもたちに語り聞かせをすることになっていました。横断歩道で子どもたちを横断させようと待っていたとき,スポーツタイプの高級車に乗った男性が目につきます。にっこり笑いかけて子どもたちを横断させただけの出会いでしたが,これが後にエリンの人生に大きな転機をもたらすとはこの時予想もしていなかったことでした。この男性こそ,親の代からの企業帝国のリーダー,ピーター・ラムゼーだったのです。ピーターは車の中から横断中の子どもたちを何気なく眺めていたとき,にっこりと笑いかけた女性,この時は幼稚園の先生だと思い込んだのですが,が,とても印象に残ります。公園の近くに車を止め,目立たないようにそっとこどもたちの様子を見ると,先ほどの女性が語る語り聞かせがとても面白く,子どもたちもその話しにうっとりと聞き惚れている様子に思わず笑みが浮かびます。その時疲れ切った様子の男性が子どもたちの中に割り込み,男の子を一人さらおうとしたのでした。何人かの先生がその男性に警察を呼びますよと興奮している中,エリンが男性に落ち着くように声を掛けている様子を見て,ピーターは思わずそこに近づいて行きました。そして男性が子どもの父親であり,母親から子どもの養育権を奪われてしまって会うことが出来ずにいることを知り,就職先と弁護士を紹介すると約束するのでした。エリンはそんなピーターの様子を見て,他の子どもたちを落ち着かせるために再び話し聞かせを始めたのでした。男性が子どもを傷つける様子がないことを信じたエリンとピーターの息の合ったこの対応で,子どもたちはすっかり落ち着きを取り戻し,事件のことをでショックを受ける様子もなく幼稚園に戻っていくのでした。あとで母親の様子を聞かせて欲しいと名刺をエリンに渡すピーター。その時エリンも自分の名前を名告ったのですが,名刺を受け取り名前を聞いてもエリンはピーターの正体に気付いた様子はありません。またピーターもエリンの名前を聞いても有名な童話作家であることは気付きませんでした。そして夕方エリンから電話をもらったピーターは,母親の様子を聞くことを口実にエリンを夕食に誘います。レストランに現れたエリンは,気合いの入った服装で現れました。きっと自分の正体を知ったからだと思ったピーターですが,これまで女性たちが自分の財産狙いでさんざん自分を売り込もうとしてきたことに嫌気がさしており,エリンの魂胆もそんなところにあるのかどうかを確かめたかったのです。エリンもまた有名な作家であることが自分をありのまま見てもらえないことに嫌気がさしており,ピーターが自分に気付かない方が都合がいいという思いでいました。そしてその夜,誘われるままにピーターの家で愛を交わし合うのでした。一夜限りの関係だろうと思っていたエリンは,ピーターがその後自分との関係をどうしたいのかを推し量っています。ピーターはこれまで付き合ってきた女性とエリンは全く違っており,自分の差し出そうとするものを頑なに固持するところから,二人の関係を深めたくないのだろうと思ってしまいます。翌日の午後ピーターの所有する馬がレースに出ることになっており,競馬場にエリンを誘いますが,エリンもまた競馬を見たことがなく,喜んでこの誘いに乗るのでした。うっとりするほど素晴らしいスタイルで現れたエリンにピーターはすっかり心を奪われてしまいます。エリンもまたピーターが自分の白馬に乗った王子様であるかもしれないと夢見ごちですが,富豪のピーターが自分と住む世界が違うはずだとこれからの関係が深まるはずはないと思い込んでいます。この二人の気持ちのすれ違いが,翌日決定的になります。競馬場で二人が一緒にいる様子がマスコミに取り上げられ,新聞に出た二人の写真を見たピーターの母親から,エリンが有名な童話作家であることを明かされたのです。どうして正体を隠していたのかとエリンを詰問するピーター。ああ,またしても自分の正体が相手を傷つけてしまったと,エリンはピーターの部屋を去って行くのでした。その後数週間して,競馬場で見た馬たちを物語にしていたエリンは体調の変化に気付き,やがて妊娠に気付きます。ピーターに知らせなければと思いつつも,気まずい関係で終わったあの時を思い出すとなかなか言い出せないでいます。数ヶ月して,エリンの書いた物語「ミリマの不思議な馬たち」が映画化されることになり,お腹の大きくなっていたエリンは自宅でプロデューサーや映画監督との打ち合わせをすることになります。ところが一緒に現れたのは,ピーター。そしてピーターこそがこの映画のオーナーだというのです。そのことにショックを受けたエリンは妊娠を何故黙っていたと難詰するピーターの声を聞きながら陣痛が起こってしまうのでした。その後はピーターの手際よい段取りであっという間に出産までこぎ着けます。子どもを得たピーターに大切にされながらもエリンは子どもをピーターに奪われてしまうのではないかと不安に襲われます。そしてピーターと出会ったときにきっかけになった事件,あの男の子と父親との件を思い出し,ピーターが子どもに対して父親として常にかかわっていきたいと考えていることを信じることにしたのです。そして結婚の申し出。子どもだけでなく自分も愛して欲しいと結婚式当日まで悩むエリン。その想いをいつピーターに伝えようか,ピーターもまたエリンが自分を愛してくれているといってくれるだろうかという想い。このすれ違いが読者にカタルシスを与えますが,そこはやはりロマンス小説。そして数ヶ月後にアカデミー賞の授賞式にエピローグが飛ぶのです。
 夢見がちでロマンチストのエリンがとても愛らしく感じられ,ミルズ・アンド・ブーンの表紙の女性はエキゾチックすぎてちょっとイメージが違うのですが・・・。また,ピーターの妹シャーロットとダミアンの物語である本作の姉妹編「奪われた祝福の夜」もこれから楽しみたいと思います。


タグ:ロマンス
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心の扉 [エマ・ダーシー]

SHALOCKMEMO1173
心の扉 Don't Play Games 1985」
エマ・ダーシー 高田真紗子




HQB-711
16.02/¥670/224p

I-339
87.02/¥546/156p


 1987年のエマ・ダーシー作品です。オーストラリア上流階級の男女,親子の心理戦ゲームの虚々実々の戦いを見事に描き出した傑作です。さすがエマ・ダーシーと思わせる夫婦の心理の機微がゲームのようにとぎれることなく続き,最後に二人の愛が勝利を挙げるというストーリー展開になっています。
 夫スコットに良いように操られてさらに虐待寸前のことまでされていた妻メアリー・キャスリーン・アンドリューズ,通称ケイトは,歴史学者の秘書として働いていますが,夫の仲間たちのもてなしパーティで,この日は夫の取引相手アレックス・ダルトンに妻としての立場を超えてまで取り入るように要求されます。そんな夫の仕打ちに耐えられず離婚を決意するケイト。しかし離婚の条件として夫が持ち出したのは週末に開かれるアレックスのヨットでの船上パーティに参加し,アレックスに気に入られるようにという要求でした。この一日さえしのげば離婚に応じてくれるという期待でなんとか承諾したものの,自分をアレックスから守ることで精一杯のケイトです。しかしアレックスはそんなケイトの思惑を尊重してくれ,スコットの仲間たちの思惑どおり思わせるようしむけるのでした。スコットは愚かにも見てくればかり気にするフィオナという人妻の甘言に乗せられ遊泳禁止区域まで泳いでいってしまいます。その時,高速ジェットフォイルがスコットの頭上を通り過ぎ・・・。離婚寸前であっという間に命を落としてしまった夫。陸に上がったケイトたちは警察の事情聴取に応えたりしなければならなかったのですが,アレックスはケイトを気遣い全ての段取りをつけ,ケイトが尋問を受けずに済むように取りはからってくれるのでした。翌日以降,ケイトの元をスコットの仲間たちが互い違いに訪れ,後始末やケイトのその後の生活について,できれば触れたくないという本音を告げるのみで誰も力を発揮しようとは申し出てくれません。もともと仲間と言っても仕事上の付き合いで集まった人たちで,ケイトはスコットに付属するだけの存在だったため,スコット亡き後は付き合いも終わりということのようです。そんな時,ケイトの今後の生活を気遣い計理士や弁護士を紹介してくれたのはアレックスでした。スコットの葬儀も終わり,もう嫌な夫のことを気にせずに暮らしていけると思っていたケイトをアレックスが訪れ,プロポーズするのでした。しかも愛を伴わない,子供を作ることだけを条件とした便宜的な結婚を申し出たのです。これ以上夫の思い通りにされる生活はゴメンだと思っていたケイトですが,これからの住む家も含めた経済的な後押しと,子供という自分が愛を注げる存在があれば,意味のある人生を歩めるのではと思ったケイトは,結局アレックスの申し出を受け入れ,簡素な式を挙げてミセス・ダルトンとなるのでした。しかし,ケイトの本当の心理的試練はここから始まります。アレックスと長年にわたって心理戦を戦ってきた義母,そして周囲がアレックスと結婚するだろうと噂を立てていた元恋人のニコルとの対決。義母との対決はケイトが少し有利なうちに1回戦を終えるのですが,義母の主宰する結婚披露パーティーで,ついにニコルとの対決が待っていました。本作の圧倒的ハイライトとなるこの部分は読み応えがあります。そして,黙りこくったまま家にたどり着いたアレックスとケイトの言い争い・・・。この心理戦を最後に解決するきっかけとなるのが,なんとあの人だとは・・・。
 原題「ゲームをしないで」を「心の扉」と訳した邦題の見事さもあって,今年読んだ中で今のところ最大のイチオシ作品となります。


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秘密に満ちた恋 [キャサリン・ジョージ]

SHALOCKMEMO1172
秘密に満ちた恋 Evidence of Sin
( Pennington 6 ) 1994」
キャサリン・ジョージ シュカートゆう子




HQB-708
16.01/¥670/208p

I-0987
96.02/¥610/156p


 原題「罪の形跡」はなにやら意味深な感じがしますが,ヒーローが法廷弁護士なので,法的な別の意味があるのかもしれません。英語にあまり詳しくないのでよくわかりませんが・・・。
 マーカス,ジェシカ,そしてヒロインのクロエ。クロエは母の連れ子で教区牧師だった父の養女となりましたが,血の繋がらない義兄マーカスに小さいときから憧れをもっていました。自分では愛だと思い込んでいましたが,ヒーローのピアズ・オードリーと会った瞬間,その気持ちは憧れに過ぎなかったことに気付いたのです。しかし,ピアズにマーカスの婚約披露パーティで家の物陰で泣いているところを見られて以来,クロエのマーカスに対する秘めた想いを知る唯一の人として,ピアズとクロエの間に秘密の共有という深い関係ができていきます。これがこのストーリーの中核で,「秘密に満ちた恋」という邦題もここから来ているようです。
 クロエは元モデルとして複数のテレビCMにも登場したことのある身長178センチのスリムな体型と赤毛の美女。それも義父の教区牧師が亡くなりマーカス,ジェシカという義兄姉が医学生として学費を必要としていた時期だったことから経済的に苦しくなった家計を助けるためにしていたことでした。その後,二人とも医師になったことからきっぱりとモデルの仕事から足を洗い,今はロンドンから離れた家の近くの薬品会社の営業部に勤め,実力を買われて営業部長代理まで務めるキャリアウーマンとして活躍していたのでした。美貌と知力を兼ね備えた女性としてクロエに出会ったピアズも,理想的な独身男性として女性たちから狙われているハンサムな男性でしたが,二人は理想的なカップルになったのです。言葉の端端にマーカスとの関係を仄めかすピアズにちょっぴり腹を立てながらも,次第にピアズを愛することを認めるようになったクロエは,ついに自分からピアズに身を捧げるのでした。そしてピアズのプロポーズを受け入れたころ,マーカスはクロエが自分に想いを寄せていたことを知ってしまうのでした。婚約中だったマーカスがクロエの部屋を訪れたところに運悪くピアズが顔を出し,二人の関係を誤解してしまいます。クロエはマーカスを押しのけようとしていたのですが,戸口に立っていたピアズには二人が抱き合っているように見えたのでした。怒ったピアズと連絡が取れなくなってしまったころ,かつてピアズが弁護した人物が逆恨みをしてピアズに復讐と身代金目的でクロエを誘拐し,家から数十キロ離れた廃屋に閉じ込めるという事件が起こります。さぁ,この事件が二人の関係にどんな影響を及ぼすのでしょうか。
 義兄への秘められた想いというちょっと暗くなりがちなストーリー展開ですが,ピアズとクロエの互いをからかう軽口の応酬や,後半の閉じ込められた廃屋からのクロエの脱出劇がはなばなしく語られるサスペンス風味の爽やかな読後感を得られる秀作です。


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