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シークの隠された妻 [リン・グレアム]

SHALOCKMEMO1164
シークの隠された妻 The Sheikh's Secret Babies
( Bound by Gold 1 ) 2015」
リン・グレアム 春野ひろこ





 原題は「シークの隠された子どもたち」。オクスフォードでの大学生活の間に出会ったクリスティーナ・ホイッティカー(クリシー)と結婚した砂漠の国マルワンの皇太子ジャウルは,クリシーをマルワンに迎えるため一端帰国します。しかしその時内戦が起こりジャウルは部下と共にミサイル攻撃を受け大怪我をしてしまうのでした。その間,イギリスに残っていたクリシーの元を当時のマルワン国王ルットが訪れ,息子の嫁にはふさわしくないので別れるよう迫ります。そして多額の小切手を残し,ジャウルと住んでいたフラットから追い出したのでした。クリシーは姉のエリザベッタ(リジー)のもとに身を寄せ学業を続けようとしましたが,ジャウルとの関係で妊娠したことを知り,愕然とします。そして出産した双子にタリフ(男の子),ソラーヤ(女の子)と名づけ,二人を生きがいとして生きてきたのでした。最近,ルット国王が亡くなり,ジャウルが国王となります。そしてクリシーは臨時雇いの教師として小学校の幼児クラスを担当していました。学期が終了して長期の休みに入った日に,クリシーの元をジャウルが訪れ,自分を捨てたジャウルから衝撃の告白があります。二人の結婚は無効だと聞かされていたのに,ジャウルは双方のどちらからも離婚の申し立てがなく,実はあの時の結婚はまだ法的に有効であったというのです。
 若くして燃え上がった二人が,若いときの強情さで折に触れて喧嘩が絶えず,それでも情熱に任せて幸せだった初めの結婚から,互いに成長し,二人の結婚を阻もうとした父王,そして祖父母の不幸な結婚生活(祖母もまたイギリス人)の影響で,すっかり固定観念に縛られていたジャウルが,クリシーの側から,過去に受けた苦しみを聞かされて,それが真実であることを知り,互いの愛の深さに気付いていくという大きな流れのある成長譚です。イギリス式のウエディングドレスでの二度目の結婚式と,民族衣装での三度目の結婚式を経て,マルワンの国民に受け入れられ,専門の幼児教育に関する国政への参加など王妃としての役割をこなしつつ,ジャウルとの家庭を大切にしていくクリシーの成長を描いた余韻のあるシンデレラストーリーでもあります。


タグ:ロマンス
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二人のティータイム [ベティ・ニールズ]

SHALOCKMEMO1163
二人のティータイム Dearest Mary Jane
(恋人はドクター) 1994」
ベティ・ニールズ 久我ひろこ





 しゃれた邦題のベティ・ニールズ作品です。モデルで美貌にあふれた,しかし俗物の姉フェリシティを持った,特に綺麗だとも自分で思っていない,いわゆる目立たない性格美人の少女メリー・ジェーン・シーモアは,片田舎の生活に馴染み,叔父・叔母の残した遺産で建てた喫茶店を経営しています。小さな村で近隣の人たちと助け合いながら生活しています。背は高くなく,少しやせすぎていて,顔立ちはおとなしく,薄茶色の長い髪と長いまつげに縁取られた菫色の瞳をもつメリー・ジェーンですが,その瞳に見つめられたとき,誰でも始めて彼女がありきたりの娘ではないことに気付くのでした。スコーンや紅茶,コーヒーといった簡単なものを出し,村の人たちや,旅行途中の人たちが気軽に立ち寄る店で,なんとかぎりぎりの生活をしていても,メリー・ジェーンはいつかは素敵な男性が自分を見初めてくれるのではないかという夢は普通の女子と同じようにもってはいるのです。あるとき,閉店間際に美女を連れた大柄な男性が魅せに駆け込んできてお茶とスコーンを注文します。表には彼が運転してきたらしいロールス・ロイスの車が駐車され,きっとお金持ちなんだろうと想像できました。数日後,店の向かいの老女姉妹の病院への付添を頼まれて病院に行ってみると,先日訪ねてきた男性が医師としていたのです。看護師に名前を聞くとサー・トマス・ラティマーという名前だと分かりました。サーの称号をもつ医師。トマスとメリー・ジェーンの関係のスタートです。
 細々とした日常を描きながら,少しずつトマスとメリー・ジェーンの人生が交差していきます。二人の関係を邪魔するのは,メリー・ジェーンの従兄弟のオリヴァー,そして姉のフェリシティです。姉は直接的にトマスの誘惑を試みますし,オリヴァーはなにかと噂をメリー・ジェーンに告げては不安をあおる役割を果たしていきます。特にトマスがオーストラリアに出張している時期にフェリシティもまたオーストリアに行っていたという事実をオリヴァーが告げた時は,もうメリー・ジェーンはトマスとの関係は絶望的だと思ったのでした。しかしトマスの母と家政婦や,ロンドンのトマスの家の使用人たちは,皆メリー・ジェーンを気に入ります。そして,最後の大どんでん返しは,作者ベティ・ニールズの得意とするところです。とても爽やかで愛らしく,礼儀正しいメリー・ジェーン。ヒロインとして,かなりナイスな存在です。


タグ:ロマンス
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