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リトル・ムーンライト [ベティ・ニールズ]

SHALOCKMEMO1171
リトル・ムーンライト A Little Moonlight
(ベティ・ニールズ選集 7) 1991」
ベティ・ニールズ 三好陽子





 初訳は1992年のR-933です。原題「小さな月光」,ちょっとクラシック音楽の商品の香りのする題名ですが,本作後半でヒーローのマルクが自宅で聴く音楽がディーリアスの音楽です。ヒロインのサリーナもそれに気付くのですが,日本ではあまり知られていない作曲家でしょうか?(フレデリーク・シオドア・アルバート・ディーリアス 1862-1934 英-米-独-仏と世界各地で住み,多くの管弦楽曲,声楽曲,室内楽曲などを作曲したイギリスの作曲家)。あまり大上段に振りかぶらないディーリアス的魅力が本作の原題にも表れているように思います。そしてそれをむりに邦訳しないでそのままカタカナ表記した邦題も,変わっていていいですね。
 さて,選集第7巻の本作も,ベティー・ニールズらしいオランダ人医師もの。ヒロインの職業が看護師ではなく,いわゆる秘書的業務をする事務員(当時はタイピスト)となっています。オランダの男爵位をもつマルク・テル・フォーレンの秘書が退職し,派遣タイピストとしてやってきたのが本作のヒロイン,サリーナ・プラウドフット25歳です。自身はどこといって特徴のない美人でもなく,何か特技があるわけでもない普通の女性と思っています。ヒーローのマルクは独身の医師で,女性なら誰しも憧れる風貌と,医師としての優しさ,そして仕事中毒でデートする暇もないという男性です。ちょっとつっけんどんな対応をしてしまうマルクに初めは腹を立てるサリーナですが,実はサリーナが困らないように陰でいろいろな配慮をしているのがマルクでした。そして,オランダへの出張と実家への招待,母を連れてのサリーナのオランダ行きで,マルクへの愛を確信するサリーナですが,ちっともそれらしいことを言ってくれないマルク。そしてロンドンに戻ってから看護師たちの噂で聞こえてきた近々マルクが結婚するらしいという噂。ついに堪忍袋の緒が切れたサリーナは辞表を出すと宣言するのですが,それを当然のように受け止めるマルクに絶望し,アパートで泣き暮らすサリーナのもとに,ノックの音が・・・。予想どおりの結末に,なんと読者はホッとさせられるのでしょうか。結末が見えているからこそ感じられるベティ・ニールズ作品への安心感。これがベティ・ファンを辞められない理由の一つなのかもしれません。


タグ:イマージュ
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伯爵との一夜のあとで [ジェシカ・ギルモア]

SHALOCKMEMO1170
伯爵との一夜のあとで Expecting the Earl's Baby
Summer Wedding 2 ) 2015」
ジェシカ・ギルモア 小池 桂





 ジェシカ・ギルモアの初邦訳です。イギリス貴族の伯爵位を継いだばかりのオックスフォードの歴史学者セバスチャン(セブ)・ベレスフォードがヒーローです。その管理する城,ホークスリー城は結婚式場として一般に貸し出されていますが,その結婚式にウエディングフォトグラファーとして訪れたデイジー・ハンティンドン=クロスがヒロインです。ミュージシャンの父と女優兼モデルの母と花の名前を持つデイジー,ヴァイオレット,ローズの三人は有名人を両親に持つ美女三姉妹として常にマスコミに追われる存在でした。長女のローズと次女ヴァイオレットは双子。ローズはマスコミから逃れるためにニューヨークに渡って仕事をしています。末っ子のデイジーは姉たちと常に比較され,跳ねっ返り娘として常に問題に巻き込まれ,16歳で学校を退学させられたことで名を売ってきました。なんとか普通の公立高校を卒業し,家族に面倒をかけないように芸術専攻の大学に進み写真家として目立たずに,独立した生活を目指してきたのです。経済的にはなんの心配もいらない富裕な家庭ですが,親に甘えることなく自立の道をたどってきたデイジーの独立心とたくましさは尊敬に値する,と,彼女の話を聞いたセブは思うのでした。二人が出会った初日,雪で立ち往生して帰れなくなったデイジーをセブは城の中に案内し,そのまま二人は深い関係を結び,やがてデイジーの妊娠が判明します。父親になることを知らせておくべきだと考えたデイジーは再びホークスリー城を訪れますが,最初城の管理人だとばかり思っていたセブが実は城の持ち主で伯爵位をもっていることを明かされて驚きます。自身も祖先に准男爵を持つ家系にいることをデイジーは知っていましたが,二人の間の子供のことを考えて結婚しようと言ってきたセブの考えにはすぐにYESは言えませんでした。盛大な結婚式と愛にあふれた幸せな家庭を当然と思ってきたデイジーにとって子供のための便宜的結婚は想定外だったからです。しかし結婚した両親から生まれた子供でなければホークスリー城も伯爵位も継ぐことができないと言うセブの説得に負けて,デイジーは結婚を承諾します。そして家族には妊娠のことを明かさずに婚約のことだけを告げたのでした。さっそく翌日からデイジーの母シェリー・ハンティンドンがスタッフを引き連れて城にやってきて3週間後の結婚式の準備に取りかかったのです。マスコミにサラされるのを嫌い内輪で内々に結婚式を挙げたいと考えていたセブの思惑はすっかりシェリーの勢いに揺さぶられてしまいます。しかしデイジーの小さいときからのみんなに祝ってもらえる盛大な結婚式という想いを叶えてあげるのも必要と考え,全面的にシェリーに任せることにするのでした。二人の間に危機が訪れたのは結婚式の3日前。マリッジブルーというのか,やはり愛のない便宜的結婚が目前に迫ったときデイジーの心に迷いが生じたのです。セブに告げずに城を出て実家に戻ったデイジーを父親のリック・クロスが結婚式で演奏しようと準備していた曲をギターで弾いて聞かせ,どんな形であれ,デイジーの味方であると慰めてくれる父に,時には人に頼ることも必要だと気付くデイジーでした。一方デイジーが見当たらなくなったことで,その日の朝にホークスリー城の改革案を熱心に披露したのを冷たく断ったせいだと後悔し始めたセブは,どうやったらデイジーの心を取り戻せるか思案し,ニューヨークのローズに連絡を取ってサプライズの計画を立てるのでした。
 盛大な結婚式の様子はその準備段階での様子を中心に描かれ,あまりページが割かれていませんが,準備どおりにうまくいったことを読むだけでその様子が伝わってきます。そして家族に妊娠を打ち明けたことで,愛想を尽かされると思っていたデイジーの予想に反し,返って家族がこの結婚を喜んでくれたことで,デイジーにもすっかり二人の結婚の将来に大きな夢を抱くことができたようです。セブ,デイジーそれぞれの成長譚にもなっています。そんな良好な関係の家族を描いたこのシリーズ,長女のローズのロマンスはスカーレット・ウィルソンが,次女ヴァイオレットのロマンスはソフィー・ペンブロークが描きます。


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