秘密に満ちた恋 [キャサリン・ジョージ]
SHALOCKMEMO1172
「秘密に満ちた恋 Evidence of Sin
( Pennington 6 ) 1994」
キャサリン・ジョージ シュカートゆう子
原題「罪の形跡」はなにやら意味深な感じがしますが,ヒーローが法廷弁護士なので,法的な別の意味があるのかもしれません。英語にあまり詳しくないのでよくわかりませんが・・・。
マーカス,ジェシカ,そしてヒロインのクロエ。クロエは母の連れ子で教区牧師だった父の養女となりましたが,血の繋がらない義兄マーカスに小さいときから憧れをもっていました。自分では愛だと思い込んでいましたが,ヒーローのピアズ・オードリーと会った瞬間,その気持ちは憧れに過ぎなかったことに気付いたのです。しかし,ピアズにマーカスの婚約披露パーティで家の物陰で泣いているところを見られて以来,クロエのマーカスに対する秘めた想いを知る唯一の人として,ピアズとクロエの間に秘密の共有という深い関係ができていきます。これがこのストーリーの中核で,「秘密に満ちた恋」という邦題もここから来ているようです。
クロエは元モデルとして複数のテレビCMにも登場したことのある身長178センチのスリムな体型と赤毛の美女。それも義父の教区牧師が亡くなりマーカス,ジェシカという義兄姉が医学生として学費を必要としていた時期だったことから経済的に苦しくなった家計を助けるためにしていたことでした。その後,二人とも医師になったことからきっぱりとモデルの仕事から足を洗い,今はロンドンから離れた家の近くの薬品会社の営業部に勤め,実力を買われて営業部長代理まで務めるキャリアウーマンとして活躍していたのでした。美貌と知力を兼ね備えた女性としてクロエに出会ったピアズも,理想的な独身男性として女性たちから狙われているハンサムな男性でしたが,二人は理想的なカップルになったのです。言葉の端端にマーカスとの関係を仄めかすピアズにちょっぴり腹を立てながらも,次第にピアズを愛することを認めるようになったクロエは,ついに自分からピアズに身を捧げるのでした。そしてピアズのプロポーズを受け入れたころ,マーカスはクロエが自分に想いを寄せていたことを知ってしまうのでした。婚約中だったマーカスがクロエの部屋を訪れたところに運悪くピアズが顔を出し,二人の関係を誤解してしまいます。クロエはマーカスを押しのけようとしていたのですが,戸口に立っていたピアズには二人が抱き合っているように見えたのでした。怒ったピアズと連絡が取れなくなってしまったころ,かつてピアズが弁護した人物が逆恨みをしてピアズに復讐と身代金目的でクロエを誘拐し,家から数十キロ離れた廃屋に閉じ込めるという事件が起こります。さぁ,この事件が二人の関係にどんな影響を及ぼすのでしょうか。
義兄への秘められた想いというちょっと暗くなりがちなストーリー展開ですが,ピアズとクロエの互いをからかう軽口の応酬や,後半の閉じ込められた廃屋からのクロエの脱出劇がはなばなしく語られるサスペンス風味の爽やかな読後感を得られる秀作です。