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侯爵に言えない秘密 [アンナ・クリアリー]

SHALOCKMEMO1226
侯爵に言えない秘密 At the Boss's Beck and Call
( Undressed by the Boss 7 ) 2009」
アンナ・クリアリー すなみ 翔





 原題は「上司に呼び出され支配されて」
 舞台:シドニー
 ヒロイン:ラーラ・メドーズ(27歳)/出版社の編集者/ブロンドの髪,きりっとした顎,すらりとした脚/
 ヒーロー:アレッサンドロ(サンドロ)・ヴィンチェンティ(35歳)/出版社の新社長,ヴェネツィアの侯爵/190センチ,黒く濃いまつげ,高い頬骨,くっきりした顎,漆黒の目/
 アンナ・クリアリー5年ぶりの新訳です。もともと年1冊ぐらいしか出していない作家ですが,まだ最新作が未訳で,もう少し訳本が出てもよい作家だと思います。これを機会に全作の訳本出版が望まれます。本作はいわゆるシークレット・ベビーものです。スティレット出版社に勤務する編集者ラーラは一児の母,いわゆるシングルマザーですが,前社長ビル・カーマイケルに認められ編集者として子供を育てながら働いてきました。ところが,社がヨーロッパの大企業スカラ・エンタープライズに身売りすることになり,会社から派遣されてきたのがかつてのラーラの恋人で子供の父親でもあるアレッサンドロでした。ヴェネツィアの侯爵で凄腕の実業家でもあるアレッサンドロは中世には復讐に命を賭けたと噂される,かの有名な?ヴィンチェンティ家の末裔で,6年前にラーラと激しい恋に落ち,ラーラにはヴィヴィアン(ヴィヴィ)という愛らしい一粒種の娘が産まれたのでした。6年前にシドニーで開催された国際出版会議で出会った二人は「ザ・シーズンズホテル」のスイートルームで激しく恋に落ち会議の期間中共に過ごしたのですが,イタリアに一緒に来てくれないかというアレッサンドロの誘いをラーラはきっぱり断り,映画「めぐり逢い」のシーンをまねて日時指定でシドニーのセンターポイント・タワーで会う約束を取り交わすのでした。ところがその後大規模な山火事が起こり,ラーラは大怪我を負い,家も父親も失ってしまいます。母親と命からがら逃れて,小さな家で暮らしてきたのでした。当然約束の日時にいくことなど出来なかったのです。さらに,偶然みた雑誌でアレッサンドロがイタリア名家の美女と結婚した記事を目にしたラーラは当然アレッサンドロも約束を果たせなかったはずだと,思い込んでしまい,ヴィヴィアンの存在を告げることを諦めたのでした。ふたたびラーラの元に現れたアレッサンドロに「ヴィヴィの存在を知られるわけにはいかない。」とラーラは考えます。なぜなら,「イタリア人は家族が崩壊することを極度に怖がっていて,経済的にどれほど苦しくてもあらゆることを犠牲にして子供に立派な教育を受けさせようとする。ヴィヴィはまだ幼く,生まれ育った国から乱暴に引き抜いてヴェネツィアであれロンドンであれ,見知らぬ国に植え直すことなど出来はしない。」と考えたからです。アレッサンドロはヴィヴィの存在を知ればきっと自分の国に連れ去ってしまう,そしてそれだけの財力と権力も持っていることは明らかだったからです。
 実はアレッサンドロはあの約束の日にシドニーに来ていたのでした。前後3日間滞在し,ラーラに連絡を取ろうとしたのですが,ラーラは姿を見せず,電話も繋がらないままでした。きっと自分との関係は嫌になったのだと思ったアレッサンドロは,山火事やラーラの怪我のことまで想像することも出来ず失意のうちにイタリアに帰ったのでした。しかし,偶然再会した今,アレッサンドロはラーラにまだ惹かれていることを認めないわけにはいきませんでした。惹かれる気持ちと裏切られた気持ち。愛と怒り。その狭間で苦しむアレッサンドロ。ラーラもまた,アレッサンドロがイタリアに妻がいると思い込んでおり,ヴィヴィの存在を知られたくないという気持ちが強く自分のこととを詳しく語るわけにはいきません。会社の新社長が決まれば,アレッサンドロはまた帰国するはずで,それまでなんとか持ちこたえられればという気持ちと,アレッサンドロを思うと未だに自分の欲望に火がついてしまう反応にも戸惑うのでした。アレッサンドロの結婚相手ジュリア・モレロは,雑誌の写真によると裕福な家の出で絶世の美女。でもアレッサンドロの左手には結婚指輪が嵌められていないことに気付いたラーラ。それを二人でいるときに聞いてみると,「僕に妻はいないよ」という答えが返ってきます。実はジュリアとアレッサンドロは家同士が知り合いの幼なじみ。かつてジュリアは間違った相手と結婚し,その男性に離婚後もしつこく言い寄られ,さらに暴力まで振るわれて困っていたのでした。それを解決するためにアレッサンドロと偽装結婚をし,問題解決した後に関係を持たないまま離婚したのでした。相手の男性に信用させるため大々的な結婚式を挙げたところをマスコミが取り上げ,それが記事になったのでした。ラーラに捨てられたと思っていたアレッサンドロにとっては,それをラーラに告げる気持ちもその手段もなかったのでした。そしてアレッサンドロに誘われるままにラーラはふたたび関係を持ちます。そして突然家を訪ねてきたアレッサンドロにヴィヴィの存在を知られてしまうのでした。互いの事情が分かり,しかも二人の間の子供の存在が,二人の関係の複雑さをさらに深めていきます。シドニーとヴェネツィア,この距離を乗り越えて二人は結びつきを深められるのでしょうか。ヴィヴィはアレッサンドロの存在を好意的に受け止め,もはや父であることの名乗りを上げようとするアレッサンドロを止めることは出来なくなってしまいます。この葛藤を解決するためにアレッサンドロは思い切った手段をとるために一度イタリアに帰っていきます。二人の関係を心配するラーラの母。さて,その解決策とは・・・。ヴィヴィの本名を聞いたときのアレッサンドロのしたり顔が思い浮かび,読者の心を癒やしてくれます。
 互いの心が通い合ったときの軽口の言い合いや,ラーラの明るくたくましく生きる姿がとてもすがすがしく,読後感の素晴らしい作品です。


タグ:ディザイア
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大富豪の忘れえぬ妻 [イヴォンヌ・リンゼイ]

SHALOCKMEMO1225
大富豪の忘れえぬ妻 The Wife He Couldn't Forget 2015」
イヴォンヌ・リンゼイ 佐藤奈緒子





 原題は「彼が忘れられなかった妻」
 舞台:ニュージーランドのオークランド
 ヒロイン:オリヴィア・ジャクソン/元高校の美術教師,画家/女性らしいカーブを描く目,まっすぐな鼻,ふくよかな唇,赤い髪,なめらかな肌,大きく青い瞳
 ヒーロー:ザンダー・ジャクソン/投資銀行の共同経営者,オリヴィアの夫/
 夫が事故で記憶喪失になり,離婚寸前の妻との新婚時代以来の2年間の記憶を失ってしまったことを利用して,愛を取り戻そうとする妻と夫の記憶回復までを描いたロマンスです。「外傷後健忘症」は重度の脳損傷を受けた患者が回復の過程で患う症状。思考の混乱,記憶の不保持,短期記憶障害が生じる,という医師の診断を聞いたオリヴィアに,別居していたザンダーは,愛があった頃の態度でオリヴィアに接するのでした。二人の間の子供パーカーを失い,その事故の原因を巡って夫婦間の間に気持ちのすれ違いが生じ,そのままザンダーは家を出てしまいます。ザンダーの会社の秘書がザンダーに想いを寄せ,オリヴィアとの間に確執があることもザンダーは知りません。「この耐えがたい孤独な二年の間,オリヴィアは無理にでも自分に言い聞かせてきた。努力さえすれば,恋に落ちるのと同じくらい簡単に恋を忘れられるのだと。でも愛はそんなに単純ではない。」と感じてきたオリヴィアはこの機会を利用して,今も惹かれるザンダーと新たな関係を築けたらと考え,無理にザンダーの記憶を回復させることをせずにかつて二人が共に暮らしてきた家でザンダーの面倒を見ることで愛を復活させようと決意したのでした。息子パーカーの存在もその死も隠したままで・・・。そして別棟のアトリエの隣室をザンダーの書斎に改装し,一日中一緒に過ごせるようにして愛を深め合うのでしたが,オリヴィアの作品が完成し,画廊に絵を搬入している間に,屋根裏部屋に隠していたパーカーの思い出の品をザンダーが見つけてしまい,一気にザンダーの記憶が戻ります。そしてザンダーはふたたび家を出てしまうのでした。追いかけてザンダーのフラットで話し合っているところに折悪しくザンダーの秘書レイチェルがフラットの鍵を開けて入ってきてしまい,ザンダーと秘書の関係が続いていたことを知ったオリヴィアは,一時は離婚手続きを再開しようと,届けにサインをして弁護士に連絡してしまうのでした。もう,このままでは悲恋で終わってしまうのかと思わせて,最後の大逆転を狙う作者です。
 互いに愛し合いながらも互いの行動の裏にある気持ちを確かめずにすれ違ってしまう二人の葛藤と心の動き,そして困難を乗り越えることに寄る心の成長を描きながら,愛を復活を成し遂げるまでを描いた秀作です。


タグ:ディザイア
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一夜にできた秘密 [キャンディ・シェパード]

SHALOCKMEMO1224
一夜にできた秘密 From Paradise... to Pregnant! 2015」
キャンディ・シェパード 宇丹貴代実





 原題は「天国から妊娠へ」
 ヒロイン:ゾーイ・サマーズ(27歳)/会計事務所経営/
 ヒーロー:ミッチ・ベイリー(27歳)/プロのサッカー選手/
 オーストラリア,シドニーの作家キャンディ・シェパードの初邦訳作品です。高校時代の同級生同士という,以外と少ないように思えるカップルのロマンス。再燃する惹かれる気持ち,ヒーローは高校時代すでに女子生徒から憧れの的,そしてヒロインは当時は目立たない風貌の学業成績一位の才媛。ミッチを勉強面で助けたことのあるゾーイですが,ミッチの周りには特にブロンド美女たちが群がり,ラーラというその中でももっとも美しい女性が公然の交際相手だったのでゾーイにはチャンスは見込めませんでした。それから10年後,今はゾーイも自分で会計事務所を経営し,女性としても磨きをかけ,プチ整形までしているバリバリのキャリアパーソンに変身しています。そんな二人がバリ島の休暇で出会います。そんなとき突然大きな地震が・・・。ホテルのエステ中だったゾーイはタオルをまいただけの格好で表に・・・。ミッチもまたプールから飛びだしてきて水泳姿のまま・・・。ゾーイは気付かれないように隠れようとしますが,ミッチはそんなゾーイに声を掛けてきます。ミッチは押しも押されぬスペインのクラブチームで活躍するサッカー選手。公にもかなり顔を知られています。ゾーイはもし二人でいるところパパラッチにでも見つかるとミッチに迷惑がかかるからと逃げようとしますが,ミッチはそれもファンサービスの一環だと気にしない様子です。そして,気軽に話が出来る二人は意気投合し,やがて一夜を共にするのでした。少し出発を遅らせた二人ですが,ゾーイは連絡先を残さないままミッチを残してシドニーに戻ります。数週間は連絡が取れずにいたのですが,突然ミッチがゾーイの会社を訪れ,関係が再会します。すでに両親を亡くし,祖母の元で厳格に育てられたゾーイ。そして自分の母親がゾーイを生んだことで祖母の息子つまりゾーイの父親が不幸になったとことあるごとにいわれ傷ついていました。仕方なく結婚するのではなく,愛し合い,愛されて結婚したいというのがゾーイの究極の結婚観なのでした。スペインで活躍するミッチとシドニーで経済的に自立しているゾーイ。二人の関係に将来性はありませんでした。どちらかが犠牲にならなければ二人の関係は成立しないのです。しかしそうしているうちに体調の悪化を気にし始めたゾーイに,ミッチは病院での診察を強く勧めます。そして仕方なく見てもらったゾーイは自分が妊娠していることを医師から告げられて驚くのでした。ミッチに伝えるべきか,親友に相談したらよいか,なかなかその話が出来ないうちに,ミッチは休日を一緒に過ごそうと誘ってきます。テーマパークでの楽しい一日。そしてその日の終わりには,ゾーイはミッチに事実を告げることになるのでした。結婚しようというミッチの言葉をゾーイは遮ります。そして再度愛のない結婚を望んでいないことを強く主張するのですが・・・。ミッチはどんな対応をするのでしょうか。
 ミッチの母親がこのあと結構いい役で登場します。ゾーイとミッチの母アマンダ,いわゆる嫁姑の苦々しい関係はなく,二人はすんなり良好な関係を築きます。すでに母親が他界しているゾーイにとっても自分と娘を大切に思ってくれるアマンダはなんとも心強い味方でもあったのです。ロマンスとしての成熟度や特異なストーリーテリングというものは感じられませんが,まあまあすんなり読めた作品だと思います。


タグ:イマージュ
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愛は深く静かに [ベティ・ニールズ]

SHALOCKMEMO1223
愛は深く静かに The Quiet Professor
(ベティ・ニールズ選集 8) 1992」
ベティ・ニールズ 泉由梨子




I-2416
16.04/¥710/156p

R-1051
93.12/¥640/156p


 原題は「静かなる教授」
 ヒロイン:メガン(メグ)・ロドナー(28歳)/外科病棟看護師長/
 ヒーロー:ヤケ・ファン・ベルフェルト(40歳)/病理学教授,男爵,オランダ人/長身,立派な鼻,しっかりした口もと,ハンサム
 ジョン・フォード監督ジョン・ウエイン主演のアカデミー賞受賞映画に「静かなる男(The Quiet Man)」というのを思い出します。本作の原題は1952年作のハリウッド映画のタイトルを意識したものだと思われますが,さすれば,ヒロイン,メグはモーリーン・オハラを思い浮かべれば良いのでしょう。それほどの大柄で赤毛の美女というわけです。

 さて,本作は,三月末のまだ寒さが残るロンドンの病院,リージェント病院のクイーンズ病棟の看護師長の一人を務めるメガン・ロドナーと,病理学教授でオランダとイギリスの両方の病院で活躍するオランダ人で男爵位をもつ医師,ヤケ・ファン・ベルフェルトが主人公です。メグはすでに病院のインターン医師オスカー・フィールディングと婚約しており,あとは結婚式の日取りを決めるばかりとなっていますが,オスカーを実家に伴ったとき,メグの妹メラニーとオスカーが互いに一目ぼれし,しかもオスカーの母のミセス・フィールディングは,職を持つ女性であるメグがお気に召さない様子,ついには,自分はオスカーを愛しているわけではないことにメグが気付く,という設定です。メグがこの自分の気持ちを受け入れるには若干の時間と相当量の涙が必要だったのですが,それと同時期に他の看護師や医師たちからは恐れられている医師のヤケ・ファン・ベルフェルト教授に自分が惹かれていることに気付いたからでもありました。メグとは対照的に恥ずかしがり屋でおとなしい娘のメラニーに,オスカーは理想の女性像を見,メグには結婚後もロンドンの病院でキャリアを積みたいと行っていたのもかかわらず,メラニーから言われると田舎の診療所でも一緒に暮らせるならそれでいいと言うようになったのでした。それほど互いに愛し合っているのなら,自分は潔く身を引いて二人を祝福しようと決意する独り言を飼い猫に聞かせる当たりが,読者の涙を誘います。互いに気まずい思いで同じ病院で働くのなら,と教授からオランダの小村の孤児院で働き口があると勧められたとき,一言もオランダ語を話せないことに迷いながらも,ひょっとして教授と自分が同じ場でさらに深く知り合うことが出来るかもしれないという期待を抱いたことも事実でした。教授は「待つことが出来る男」でした。メグが婚約解消の痛手から立ち直り,自分に愛情を持っていることを認めるようになるまで,ロンドンを離れることで,気持ちの整理を付けるまで待とう。そう考えての用意周到な機会を提供したのでした。休日には自分の祖母の元に連れて行き,密かに家族にもメグの存在を認めさせようというあたり,知恵者で,さすが静かに行動する男だという感じを持たせます。それまでロンドンでは自分の屋敷に連れて行って食事を提供したり,メグが実家に帰るときに車(ロールス・ロイス)で送るついでにメグの家族と知り合って自分を印象づけたりと,なにかと計画的にしかもメグが気付かないうちに家族を巻き込んでいってしまうなど,年長者の智慧をしっかり発揮してのメグのオランダ行きだったのでした。そしていよいよオランダでの仕事が終わったとき,一緒にイギリスに渡るということで車で迎えに行き,そのまま自分の家に向かう強引さも,なんだかすがすがしく,一回り違いの年齢差を感じさせ,自立心の強いメグをすっかり自分を頼らせるように仕向けていくあたり,さすが大人の対応だと思わせるかっこよさを感じさせます。ベティ・ニールズの作品らしい,「Nice Heroine」だけでなく「Nice Hero」の作品です。


タグ:イマージュ
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天使のためについた嘘 [ダニー・コリンズ]

SHALOCKMEMO1222
天使のためについた嘘 A Debt Paid in Passion 2014」
ダニー・コリンズ 小泉まや





 原題は「情熱で払う借金」
 ヒロイン:シレナ(シン)・アボット/秘書/ふっくらした唇,豊かな茶色い髪
 ヒーロー:ラウル・セシヘル/ソフトウェア会社CEO/長身,浅黒い肌/父はスイス人,母はスペイン人
 会社の金の横領。信頼していた秘書から裏切られたラウルは,元秘書を告訴します。そして泥棒呼ばわりし,徹底的に争う姿勢を魅せるのでした。シレナにも事情があって一時的にお金を借り,返す気持ちでいたところに父の事業の失敗でそれが出来なくなってしまいます。義妹の大学の入学金を用立てようとしたのがきっかけでした。継母との間の関係はよくありませんでしたが,義妹はとてもシレナにとっては近い存在で,義妹のためなら疑われることも承知で何でもしてやろうという気持ちにさせられるのでした。ラウルもまた父に裏切られた経験を持ち,義父の娘ミランダがいます。そんな境遇の二人でしたが,ラウルの傲慢さも父の裏切りを許せず,しかも精一杯働いて事業を持ち直し,大きくして来た自負があったからです。熱い夜を過ごした翌日の突然の告訴と逮捕。シレナが驚愕したこの状況は,さらにシレナの妊娠という形でより複雑化していきます。ラウルの子供であることは明らかなのに,シレナは他の男性の子かもしれないと匂わせ,ラウルが悩むに任せます。それぐらいしか自分を訴えたラウルへの反抗的態度は示せなかったのです。予定日の1カ月前,シレナは命を賭けてルーシーを出産します。自分の亡き母もまた出産により弟ともに命を落とした過去をもち,自分が出産に伴う危険の可能性を知っていましたが,それでもルーシーをこの世に送り出そうと決意していたからです。助産師から命懸けの出産であったことを聞かされたラウルは,そのことを自分に知らせてくれなかったと行ってさらにシレナを責めるのでした。自分勝手な解釈で次々とシレナを追い詰めていくラウル。しかし,ラウルの秘書だったシレナはそんなラウルの性格は知り抜いています。しかし自分を信用せず,告訴したことを許すことは出来ませんでした。結局わたしは信用されていない。自分の血を引いた娘を育てるためだけに自分を利用しようとしている。とシレナが思い込んだとしても不思議ではありません。この後,二人の関係はやや蜜月に近くなるのですが,ラウルの義母からの電話でネックレスが見えなくなったという言葉に,ラウルがシレナをちょっと見てしまったことから,ふたたび二人の関係は険悪になります。やはりラウルは自分を泥棒だと思っていると分かったからです。そしてシレナの父が倒れたという知らせ。オーストラリアにルーシーとともに旅立つシレナをラウルは付き添おうとせず,ニューヨークに向かってしまうのでした。険悪な関係から離婚の調停を始めようとした矢先のことでした。あれほど娘を大切にするラウル。離婚すればルーシーを取り上げられてしまうのではないかという恐れもあり,二人の関係の悪化を病気の父には言い出せないシレナ。そんなシレナを喜ばせるために実はラウルはある計画を練っていたのでした。簡単に挙げてしまった結婚式をやり直そうとしていたのです。結局ブレスレット紛失の謎も解け,疑いが晴れたシレナを苦しめてしまったと真剣にラウルは後悔し,これからも片時も離れたくないという思いを強くしたのでした。
 秘書として有能で上司であるラウルの世話をすることに喜びを感じているシレナの,苦しくても愛にあふれた行動にラウルも速く気付いてくれ,と叫びたくなる秀作です。


タグ:ロマンス
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ギリシア富豪と愛の結晶 [ジュリア・ジェイムズ]

SHALOCKMEMO1221
ギリシア富豪と愛の結晶 Captived by the Greek 2015」
ジュリア・ジェイムズ 萩原ちさと





 原題は「ギリシア人に魅せられて」
 舞台:ロンドン/バミューダ諸島
 ヒロイン:メル・クーパー/サンドイッチショップ店員/高い頬骨,なめらかな顎の輪郭,まっすぐな鼻,サファイヤ色の瞳,ブロンドの髪,長身/
 ヒーロー:ニコス・パラキス/投資銀行パラキス銀行の後継者/身長180センチ,黒い瞳,高い鼻,頑固そうな頬骨,つり上がった眉,長いまつげ,黒い瞳に金色の斑点/
 両親を幼くして亡くした後に引き取られた祖父,その祖父が認知症にかかり,看護に明け暮れた日々。そして三年後に祖父も亡くなり,やっと自分のことに集中できるようになったメル。そのメルの勤めるサンドイッチショップにある日傲慢で命令になれきった裕福そうなハンサムな男性が入ってきます。それがメルとニコスの出会いでした。ニコスはその時であったメルが自分に対して不服そうに応対したことを気付いていました。普段人からそんな扱いを受けることはほとんどなかったニコスでしたが,メルの対応をちょっと新鮮なものと受け取ったのです。しかも後で思い出しても,メルの美しさは忘れられないほどでした。会社に戻るやいなや秘書に命じたのはサンドイッチショップに花を贈ることでした。父と母がいつも言い争いをし,その間にたたなければならないことにうんざりしていたニコスは,結婚はしたくないと思っています。最近自分にかなり言い寄ってきている女性投資コンサルタントの出席する慈善パーティに参加しなければならない週末のことを考えると気が重くなるのですが,その時ニコスの頭に名案が浮かびます。あのサンドイッチショップの女性を同伴させれば,女性コンサルタントのフィオナ・ペリングハムをうまく避けられるのではないかと・・・。とにかく一晩パーティに一緒に参加してくれないかというニコスの申し出に,メルはその誘いを断るだけの勇気がないほど,ニコスに惹かれている自分に気付くのでした。パーティではメルは女性たちの会話にもメルの周囲の金融関係者たちとも良好な話し合いをうまくこなし,ニコスを驚かせます。あのフィオナでさえも,ハンサムなスウェーデン人の男性を紹介され,ニコスに言い寄ろうとしなくなったぐらいでした。
 次にニコスは次の出張予定のバミューダにメルを誘おうとします。パーティでのスピーチの前後2週間の休暇を取ろうとしたのです。祖父の介護から逃れ,世界中を旅して回る夢を叶えるためにサンドイッチショップと夜のレストランでのウエイトレスのアルバイトを掛け持ちしているメルに,バミューダ旅行をプレゼントしたいというのがその言い訳でした。あの一晩だけでさらにニコスの魅力を認識したメルにこの誘いを断るだけの考えももはやありませんでした。そして夢のようなバミューダでの日々。二人は翌日の夜からはもう片時も離れずに二人の深い関係にどっぷり浸る日々でした。やがて2週間の休暇も終わりに近づき,ニコスはさらにニューヨークに一緒に行こうと誘いますが,ギリシアで急ぎの仕事が入ってしまい,メルをギリシアに伴おうとします。しかし,休暇を過ごす予定で,しかもニューヨーク行きのチケットもすでに手に入れていた矢先のニコスの申し出に,メルは従おうとせず,予定どおりニューヨークに向けて旅立ってしまいます。互いに永続的な関係は望まないと言い合っていましたし,今ギリシアにニコスとともにいってしまっても,その後はどうなるのか,メルには不安がつきまとうようになっていたからです。ニコスも呆然とメルを見送ることしか出来ませんでした。その後メルはニューヨークからアメリカ各地を回り,ロンドンに戻りますが,あれだけ望んでいた一人での気ままな旅もニコスがいないとちっとも楽しめませんでした。どこに行ってもニコスのことが頭から離れなくなっていたのです。ニコスもまた,メルを見送ったとたんにそれを後悔し始めていました。そして仕事に集中することでメルを忘れようとしますが,重要な会議中でもメルへの思いが頭に浮かんできて集中できません。探偵事務所にメルの行方を追わせる一方,とにかく忙しくすることでなんとか日々を過ごそうとしていたのです。ロンドンに戻ってメルは体の異変に気付きます。そう,ニコスとの間の子供が授かっていたのでした。ニコスにこのことを告げなければとニコスの会社のロンドン支店に行こうと地下鉄に乗ったメルでしたが,ボンヤリしているうちに乗り過ごしてしまい,慌てて降りた駅のホームに張ってあったポスターに引かれて,無料の相談所に入ってみます。望まない妊娠をした女性の相談に乗っているところでした。そして話しをするうちに,メルはこの子を自分だけで育てようと決心します。やがてスペインに旅立ったメルのところに思いがけない人が現れます。ニコスが探偵事務所が探り当てたメルを追ってきたのでした。そして産婦人科の予約票を見たニコスはメルが自分との間の子供を産まない決意をしたと誤解します。メルの行った無料相談所ではその選択肢も相談内容に含めているところだったからです。すっかり誤解したニコスとメルとの間に緊張が走ります。メルを話しを聞こうとしないニコス。あの傲慢さが戻ってきたのはやっとメルに出逢えたという喜びを隠すことが出来なかったからです。愕然としたメルは思わず道に出てしまい,そこを通りかかった車にぶつかってしまいます。幸い大怪我ではなく,子供も無事でした。病院で二人は互いの気持ちを素直にぶつけ合うのでした。
 両親の不仲,そして祖父の介護からの解放とそれぞれの事情で結婚や子供に囚われない自由な生き方を求めていた二人が,互いに結びつくことで自由を得るのだという逆説的結びつきに気付いていくという作者独特の愛の姿を描いた傑作です。メルの,そしてニコスの描き方もとても明確で,二人の間のすれ違いを見事に描ききっています。また,バミューダの魅力もたっぷりと,そしてエピローグでの登場人物たちの結末もすっきりと書かれており,爽やかな読後感を得られる作品です。


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眠れぬ夜の情熱 [ジェニファー・ヘイワード]

SHALOCKMEMO1220
眠れぬ夜の情熱 The Italian's Deal for I Do
(大富豪の結婚の条件 1) 2015」
ジェニファー・ヘイワード 東みなみ





 ヒロイン:オリヴィア(リヴ)・フィッツジェラルド/元スーパーモデル,デザイナーの卵/
 ヒーロー:ロッコ・アントニオ・モンデッリ/ファッション企業「ハウス・オブ・モンデッリ」CFO/
 仲間のモデルの薬物過剰摂取による死にショックを受け,モデル業を廃業したスーパーモデルのオリヴィア(リヴ)は,母の元恋人の支援を受けて,デザイナーへの道を歩み始めました。ところが,その支援者が亡くなり,愛人ではないかと誤解した孫のロッコにより,むごい仕打ちを受け始めます。モデル時代に稼いでいたお金はマネージャーをしていた母が使い切っており,預金残高も0になっていたのです。そんな母との関係を知らないロッコは,自分の祖父が年齢の離れた愛人に利用されたと思い込み,オリヴィアの否定にもかかわらず,非難するのでした。祖父の存命時代からすでに会社のCFOとして実質的に会社を取り仕切り,発展させてきたロッコですが,祖父とともに会社を創業してきた役員たちは,そんなロッコの経営方針に賛同せず,何かと反対を唱え,ロッコが結婚して落ち着けばCEOに付けようと条件を出してきたのでした。ロッコはオリヴィアに惹かれる気持ちを抑えながら,祖父や父とは違う生き方,つまり会社のために全てを捧げて生きてきました。女性を愛することが自分の気持ちを弱くし,会社の業務に集中できなくなると思っていたのです。しかし,役員たちをなだめるために,仕方なくオリヴィアを利用することにします。今年のシーズンでオリヴィアのデザインしたものを前面に出し,しかも役員の目を眩ませるために1年契約でオリヴィアをモデルとして再登板させ,契約婚約を結ぶという計画を立てるのです。オリヴィアのデザイナーとしての夢を利用し,しかもモデルとしての実績,さらには婚約によるマスコミの利用と役員たちの懐柔という一石四丁を狙ったのでした。一方オリヴィアはデザイナーとしては名前も知られず,自分のブランドが大企業の後押しで檜舞台に出るというロッコの餌を断ることが出来ない状況で,脅迫に近いと分かっていながらも,ロッコの提案を逃れることが出来なくなってしまいます。しかも「すまない,僕ははじめから君をひどく誤解していたんだな,オリヴィア誤るよ。」と端端に優しさを示すロッコに急速に惹かれていくのでした。 ニューヨーク,ミラノ,パリとコレクションをなんとか無事に乗り切り,パニック発作もロッコの支えでなんとか乗り切ったオリヴィアは,パリコレの2週間半後に,ロッコと大々的に結婚式を挙げることになります。式の2日前,ニューヨークに飛んだオリヴィアは亡くなったかつての同僚ペトラの墓参りをして,過去との決別をします。しかし,問題はロッコが自分を愛してくれてはいないことでした。「何を求めているかは分かっているのに,頭は自分を守りなさいと必死に訴えかけてくる。わたしはロッコのせいで傷つくかもしれない。でも臆病になっていたらね生涯の愛を逃したのではないかと一生悩み苦しむ羽目になるのでは?」と心を決めたオリヴィアはコモ湖畔で開かれる結婚式に向かいます。ロッコはオリヴィアへの愛をどんな言葉で表すのでしょうか。作者は実に気の利いた言葉でオリヴィアの緊張を解くのでした。
 コロンビア大学で出会った四人の富豪の男性,ロッコ,クリスチャン,ステファン,ザイードの四人(コロンビア・フォー)が繰り広げるロマンスの競演の幕開けです。それを四人の新人作家たちが描くこのシリーズ,次作ではクリスチャンとロッコの妹で美貌の写真家アレッサンドラをミシェル・スマートが描くようです。


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十九歳の純潔 [キャロル・モーティマー]

SHALOCKMEMO1219
十九歳の純潔 Brand of Possession 1980」
キャロル・モーティマー 松尾当子





 原題は「所有の種類」
 ヒロイン:ステイシー・アダムズ(19歳)/女優/ロングの赤毛,小ぶりで上向きの鼻,口角の上がった大きめの唇,痩せた体/孤児院出身(16歳まで)
 ヒーロー:ジェイク・ウエストン(38歳)/作家/漆黒の髪,群青色の鋭い瞳,高い鼻,180センチ以上,広く力強い肩,引き締まった腰,筋肉質な腿,浅黒い肌,白い歯/父はアメリカ軍人,母はイギリス人
 年齢が倍も離れている男女のロマンスを描いた作品です。10歳程度は多いこのジャンルですが,倍はなかなかないですね。ステイシー・アダムズは新進女優。しかし身持ちが堅く,演技以外で男性との関係を持とうとは思っていません。自分を捧げるのは結婚初夜のみと決意しています。出演する作品の脚本を書いたジェイク・ウエストンはてっきり,中年の脂ぎった小柄な男と思っていたので,写真の公開されていないジェイク本人を,てっきりジェイクのスタッフだと思い込んでしまいます。そしてそんなジェイクに惹かれる想いを抱いてしまったことも,恋愛経験のなさ故でした。ジェイクは出会ったときから「君が欲しい」とストレートにぶつけてきます。「愛している」ではなく「欲しい」という言葉に,長い関係を持ちたがらない男性だと考えたのです。ジェイクの側にも直近の苦い体験から,「愛」を言葉にしにくい状況がありました。しかし,主演女優のテストイメージを見たときからジェイクはステイシーにすっかり惹かれていたのです。ステイシーにはマシューという男友達があり,その存在もジェイクに非難されてしまいます。さらに映画の相手役で女性に敬意を払わない性癖をもつポールの誘いを断ったことで,すっかりポールに付け狙われることになってしまいます。ちょっとした状況の変化であやうくポールに乱暴されそうになった時,ジェイクに危ういところを救われることになりますが,それでもジェイクの本心をつかめないステイシー。やがて撮影が終わり,国に帰ったステイシーですが,その後ジェイクからは何の音沙汰もなく,逆に寂しい思いをするステイシーなのでした。「ジェイクの妻になりたい。それは何より強い願いだ。毎朝目が覚めたときに隣にジェイクがいるという日々がずっと続いたら,愛する男性の妻になれたら,どんなに幸せだろう。」さて,ステイシーの願いは果たして叶うのでしょうか・・・。
19歳というステイシーの年齢が本当の愛を得られるほど成熟した年齢ではないと思いますが,それでも真剣に願えば夢は叶えられるのだというシンデレラストーリーです。


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大富豪と遅すぎた奇跡 [レベッカ・ウィンターズ]

SHALOCKMEMO1218
大富豪と遅すぎた奇跡 Along Came Twins...
(愛の使者 2) 2013」
レベッカ・ウィンターズ 宇丹貴代実





 原題は「双子が生まれるまでに」
 ヒロイン:ケリー・ペトラリア(28歳)/元会社員/ハニーブロンドの髪,菫色の瞳
 ヒーロー:レアンドロス・ルソス・ペトラリア(34歳)/実業家/身長190センチ,筋肉質
 「エーゲ海の独身貴族(SHALOCKMEMO1160)」の姉妹編です。本作は,離婚が間近に迫った夫婦が結婚カウンセリングを受けることで互いの心の中にあったことが次々に明るみに出,正直に気持ちを打ち明け合えていればこんなに関係が悪くならなかったのに,互いにちょっとした勇気と正直さがあれば離婚の危機は乗り越えられる,ということを中心にした物語です。前作でギリシア旅行に来たフランとケリーのうち,フランが運命の人と出会ったのと同じように本作のヒロイン,ケリーもまたレアンドロスと出会います。ところが,この二人は結婚したとたんに,ぎくしゃくとした関係が始まっていくのでした。前妻を亡くしたレアンドロスと,初婚のため夫の気持ちよりも自分の気持ちを振り返る余裕がなく,それを夫や前妻のせいにしてしまったために,遂には離婚を決意するところまで来たものの,不妊治療の結果双子を妊娠してしまい,それから互いのことを知り合おうとカウンセリングを受けることを決意するという荒筋です。このカウンセラーがまた,優れた人でした。長年にわたる相談経験と,ズバリと本音に迫っていく手法は見事で,それに乗せられる格好でどんどん二人の心の内側が明かされていきます。その面白さはちょっと他の追随を許さないほどですね。敵役になるのは,夫の前妻の妹ですが,この子もなんと精神を病んでいることが明らかになっていきます。疑わしい話し合いは全て録音にとって共有したり,誰が誰に話しをするかを綿密に話し合いで計画したりと,なるほどこういうものかという提案がたくさんなされていくのも本作の魅力ですが,時々周囲の人々が二人のことを思ってルールをちょっとずつ曲げてみたりすることも,本作の温かい雰囲気作りに一役買っています。精神的な部分が中心でやや暗くなりがちなテーマですが,それと実際の行動がうまく合致して,暗さやいやらしさを感じないで最後まで読み続けられるのも,作者の筆力とストーリーテリングの見事さだと思います。姉妹編とは言え,全く違った魅力を持った2作でした。


タグ:イマージュ
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愛の一夜 [レベッカ・ウィンターズ]

SHALOCKMEMO1217
愛の一夜 Claiming His Baby 2001」
レベッカ・ウィンターズ 大島ともこ




K-194
13.11/¥650/156p

I-1554
02.08/¥672/156p


 原題は「彼の赤ちゃんだと主張して」
 ヒロイン:ヘザー・サンダース(25歳)/ピアニスト,ジュリアード音楽院学生,産科医の娘,ジナ・バッカウアー・国際ピアノコンクールの優勝者/ソルトレーク出身/金髪でブルー(サファイア色)の瞳,透き通るような白い肌,高い頬骨,ふっくらした唇と柔らかな丸みを帯びた顎/
 ヒーロー:ラウール・カルディナス(37歳)/外科医/アルゼンチンで地域医療に従事
 2カ月ぶりのレベッカ・ウィンターズです。名付け親で心臓専門医のドーニー夫妻の元で医学の修行をしたラウールの話しを良く聞いていたヘザーは,実際にラウールと出会う前からすでに恋に落ちていました。地元の病気の子供の治療で助言を求めに来ていたラウールは,ヘザーの受賞記念コンサートでラフマニノフとチャイコフスキーのピアノ曲の演奏を聴き,すっかり恋に落ちてしまうのでした。帰国を伸ばしたラウールは,ニューヨークに立ち寄り,ジュリアードの練習室でブラームスを弾いているヘザーを訪れます。ヘザーもまたもう会えないと思っていたラウールがやってきたことに興奮し,自ら身を投げ出して一夜を共にするのでした。その後演奏旅行でヨーロッパ周りをすることになったヘザーと,地元に戻ったラウール。ヘザーは演奏旅行が一段落するとアルゼンチンへと飛行機を乗り継いでラウールのいる村へとやってきます。しかし,会議から戻ってきたラウールがヘザーの姿を目にすると,翌朝アメリカに帰るようにと冷たい言葉をあびせます。そして,ラウールと一緒に活動しているエレインという美しい産科医がいることが冷たい態度の裏側にあるのではないかと誤解するのでした。母が結婚によって演奏家になる夢を捨ててしまったことを知っていたヘザーは,母のためにコンクールでの優勝を勝ち取ったのですが,将来演奏家になることは考えていませんでした。しかしそのことを父には自分からは言い出せないでいたのでした。てっきり夢への第一歩を踏み出したと考えていた父は,ヘザーのいないところで,ラウールに娘との交際について釘を刺していたのですが,そのことをヘザーは知りませんでした。アルゼンチンのラウールのもとを訪れたときラウールが取った態度は,この父の頼みを尊重してのことだったのです。しかし,翌朝,ヘザーがブエノスアイレスに向かう軽飛行機が離陸直後にエンジントラブルで林に突っ込んでしまい,ヘザーも腕の骨を折る怪我を負ってしまいます。とりあえず怪我が治るまでと診療所のバンガローで暮らすことになったヘザー。しかし体調が少しずつ悪化し,食欲もなく,吐き気もでてきます。しかしその間,ヘザーはラウールや診療所の人たちのためにバンガローの改装や,植物についてインディオたちに教えたりと,次第に周囲に溶け込んでいくのでした。怪我が治ればアメリカに帰らなければならないという思いがあり,体重の減少は精神的なストレスだと思っていたのですが・・・。健康診断の結果,ヘザーの妊娠が発見されます。ラウールはこのことを恐れていたのでした。実はヘザーの母にも妊娠中毒症の既往があり,8回の流産の後でヘザーがやっと生まれたという事情をヘザーの父から聞いていたラウールは,熱帯の過酷な生活でヘザーの身体に異変が起こってはいけないという心配が大きかったからです。ラウールはヘザーとの結婚を決め,9歳の時から自分を育ててくれたブエノスアイレスの伯父伯母の元へ行き,結婚式を挙げます。そして都会にアパートを借り,ヘザーをそこに住まわせようとするのですが・・・。ヘザーはすっかりこのことで,ラウールはやはり自分を遠ざけたいのだと思い込んでしまいます。言い争いをする二人。しかしその姿を式に参列してくれた人たちには見せられません。なんとかラウールを説得し,ヘザーはふたたび奥地に向かいます。そして,臨月1カ月前に,ラウールの恐れていた妊娠中毒症の症状が出てきたのです。さぁ二人の間に愛児は無事誕生するのでしょうか。そして二人の愛の行方は・・・。
 いつもながらのスケール大きな舞台設定と,美貌にあふれ,才能に恵まれたヒロイン,ヘザーの登場で,読み応えのある作品を提供してくれるレベッカ。本作もまた期待を裏切らない一気読み間違いなしの傑作です。


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