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青ざめた薔薇 [サラ・クレイヴン]

SHALOCKMEMO1247
青ざめた薔薇 Bride of Desire
( Wedlocked 41 ) 2006」
サラ・クレイヴン 遠藤靖子





 原題は「欲望の花嫁」
 ヒロイン:アリース(アリー)・マーチントン(22歳)/未亡人/
 ヒーロー:レミー・ド・ブリザ(?歳)/医師/高い鼻,意志の強さを感じさせる割れた顎,頑固そうな口もと,ペールブルーとトルコブルーの中間の色の瞳/
 過去と現在が交差してちょっと不思議の国に迷い込んだかのような作品です。端的に言ってしまえばかつての恋人を捨てて結婚してしまったヒロインが結婚後ヒーローの子どもを身ごもっていたことを知り,その秘密を隠したまま再び彼と出会い,恋が再燃するものの,既婚者であることを知ったヒーローがヒロインに辛く当たる不倫物語という内容です。Wedlocked(既婚)シリーズの作品ですが,ヒロインの主体性が感じられず,脇役ばかりが活躍するという筋立てに,ちょっとついて行けないなぁと感じられる作品でした。ただ,ヒーローやヒロインの大叔母の住むブルターニュ地方と,嫁ぎ先のイギリスの貴族社会という英仏間の感情のもつれや考え方の違い,つまり対面を大切にするイギリスと愛を大切にするフランスという国民性の違いの間に挟まれたヒロインの悲哀や,マザコン夫に悩まされ,すべてを取り仕切ろうとする義母と嫁の確執という,結構アジア的な雰囲気,そしてヒーローを追い求める美人だけれど心の狭い娘との三角関係などかなり人間関係のごちゃごちゃした中で物語が進行する,なんか詰め込みすぎの作品になってしまっています。ヒロインがそこそこ美人であるとは思いますが,特にその風貌の記述もなく,ヒロインの心の言葉ばかりが描かれているので,読者がヒロインになりきるよう仕組まれているのですが,結構自分勝手なヒロインに気付いてみると,それも冷めてしまうように思うのですが・・・。ヒーローも医師の仕事のことはほとんど描かれず,ヒロインに去られるとすぐに海外に出かけてしまうような身勝手な男性で,あまり魅力が感じられません。相手を責めることで自分の鬱憤を晴らそうとする心の狭さが目立ちますし,ヒーローとしてなにか悩みがあるわけでもなく,ただのかっこいい青年のように感じられてしまいます。ヒロインの嫁ぎ先の義母と夫の驚くべき欺瞞が嫁いびりと言うより常軌を逸した態度であることもちょっと不快に感じられてしまい,ロマンス作品としての良さが見いだせないのではないでしょうか。


タグ:ロマンス
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いけない魔法 [キャシー・ウィリアムズ]

SHALOCKMEMO1246
いけない魔法 A Pawn in the Playboy's Game 2015」
キャシー・ウィリアムズ 春野ひろこ





 原題は「プレイボーイのゲームの駒」
 ヒロイン:ローラ・リード(26歳)/小学校教師/豊かな髪,ふっくらした柔らかそうな唇,不思議な魅力のあるハート型の愛らしい顔立ち,鼻にそばかす,小柄で豊満な体型,緑色の瞳/
 ヒーロー:アレッサンドロ・ファルコーネ(?歳)/実業家,企業グループの代表/ロンドンのペントハウス在住/
 頑固者の父と気まずい関係が続いてもう何年にもなります。スコットランドに住む,すっかり老いてしまった父の健康を気遣い,自分の近くのフラットを準備しようとしたアレッサンドロですが・・・。アレッサンドロは7歳で寄宿学校へ追いやられ,休暇になるとスコットランドの,広く寒々とした屋敷に帰ってきてはいましたが,父との関係にぬくもりは感じられませんでした。財産を受け継ぐことを拒否し独力で現在の企業グループを築き上げたアレッサンドロ。父ロベルトは10年前までは企業帝国を率いて君臨していましたが,今はただの老人になってしまいました。ただ敬意だけは絶やさず,父との関係は維持してきたアレッサンドロですが,ロンドンの自分の近くに住み,万一の場合にも最高の医療を受けさせ,自分もすぐに駆けつけられるようにと考えたのでした。すっかり準備を整えて父のもとへとやって来たのですが,父からは了承の返事をもらえません。アレッサンドロの知る限り現在の父は使用人と植物を相手に朝から晩まで家に閉じこもっている様子です。そんな時,父の元を若い女性が訪れます。すっかり父の通いの使用人ではないかと疑うアレッサンドロに,その女性ローラ・リードはロベルトに会いに来たと言います。ひょっとして若い愛人?アレッサンドロはローラを父の財産狙いの女性と勘違いしてしまうのでした。自分のことを父の友人だと主張するこの若い女性にふとアレッサンドロは興味を持ちます。これまで刹那的な関係で付き合ってきたモデル体形の美女とは違い,ハンサムな自分に媚びを売らずしかも出るべきところは出ているような女性らしい体型の女性に,これまでとは違った魅力を感じたのです。かつてロンドンで秘書として働いていたローラは,上司の男性が既婚者であることを知らずに関係を持ち,裏切られたことに失望して辞表を出し,スコットランドの祖母のもとに帰り,小学校で教師をしていたのでした。隣人であるアレッサンドロの父とは,園芸の趣味が一致し,またチェスの相手として館を訪ねたりしていたのです。息子からこの地を離れてロンドンに移るように言われていることをローラもロベルトから聞き及び,気の置けない話し相手に囲まれている今の暮らしを離れることをいやがっていることを知っていたのです。父に疎まれていると言うアレッサンドロに対して「ロベルトにだって落ち度はあるかもしれない。だけど,あなたの方は何の努力もしていないじゃない。ずっと父親を知ろうとする努力さえしなかった。」と責めるような言い方をするローラをアレッサンドロは強く否定しながらも,父親のことをさっぱり知らないことに気付くのでした。ローラの祖母とロベルトは友人のように互いに言いたいことを言い合っている様子を見て,アレッサンドロは父の別の一面を見たような気がし始めます。「祖母はロベルトにもノーと言える人なの。祖母が彼にああしなさい,こうしなさいと言うと,ロベルトは子羊みたいに従うわ。」とローラに言われ,父がこの地に住むことを認めつつも,もっとこじんまりした便利な家に移住することを望むようになったアレッサンドロ。互いの妥協点としてそれが最も現実的なことになっていきます。ローラに惹かれる思いを我強くなっていくアレッサンドロですが,ローラの方もアレッサンドロと一緒にいることが,かつて男性に裏切られた心の傷を忘れさせてくれる楽しみにもなって行きます。もう二度と男性との関係を持つまいと思っていたローラですが「あの決意をしたのは彼と出会う前だった。この世界のどこかに私の慎重な人生計画をすっかり忘れさせるような男性がいるなんて,当時は思ってもみなかった。こと男女の関係となるとアレッサンドロ・ファルコーネは奪う人だ。」という気持ちの変化に戸惑い,しかし「自分の家庭を持ちたいとも思っていないし,愛というものを信じていない。一人の相手を愛し続けることも出来ない。彼は私が嫌悪するものの象徴とさえ言える。」と自分に納得させようとしますが・・・。遂にはローラは自分の欲望に負け,アレッサンドロと関係を持つことを決意します。そしてアレッサンドロと父との和解の時がやって来ます。妻を亡くしたとき絶望のあまり二人の間の息子の存在すら妻を思い出させるからと敢えて遠ざけてしまった父の気持ちを知り,アレッサンドロは再び人を愛する勇気を持とうと決意するのでした。父にローラとの関係を問いただされたアレッサンドロは「特別な絆」が生まれていると返答します。ローラにはこお「特別な絆」が何を意味するかいぶかしげに思いますが,そんな時ロベルトと祖母から意外な提案が為されます。アレッサンドロと二人で休暇旅行に行ってきなさいと言う提案です。カリブ海の別荘に出かけた二人。そこでローラはアレッサンドロがいかにお金持ちであるかと言うことを肌で実感するのでした。しかしそのことよりも自分が如何にアレッサンドロを愛し始めているかに気付いて,心の傷を癒やすどころではなく一生をこの男性と過ごすことを真剣に考えるようになります。しかし彼の気持ちは・・・。アレッサンドロもまた「どうして僕は相変わらず彼女が欲しいのだろう。彼女が去ることを考えるとなぜ不安と困惑に襲われるんだ?」とローラへの気持ちが真剣なことに気付くのでした。しかし互いに素直な気持ちを言い出せない二人。イギリスに帰った二人が互いの気持ちに素直になれるときはいつなのでしょうか。
 トリニダード・トバコ出身の作者が,カリブ海の美しさと魅力をうまく作品に生かした愛にあふれた作品です。


タグ:ロマンス
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