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億万長者の非情な提案 [トレイシー・ウルフ]

SHALOCKMEMO1251
億万長者の非情な提案 Claimed
( Diamond Tycoons 1 ) 2015」
トレイシー・ウルフ 中野 恵





 原題は「損害賠償請求」
 舞台:サンディエゴ
 ヒロイン:イザベラ・モレノ(アイサ・ヴァリン)(27歳)/米国宝石学会(GIA)教授/
 ヒーロー:マーク・デュランド(?歳)/宝石会社「ビジュー・コーポレーション」CEO/
 複数のペンネームをもち,広いジャンルで作品を書いている作者のトレイシー・ウルフの初邦訳作品です。姉妹編としてヒーロー,マークの弟ニックが登場する「Pursued」もすでに原作は書かれています。宝石泥棒を父に持つ娘アイサ(現在はイザベラと名告っている)は6年前に宝石会社CEOのマークと出会い,激しく交際していました。しかし,アイサの父が会社の宝石を盗み,それを知ったアイサは父と恋人との間に立って苦しみ,結局父の犯行であることを言い出せませんでした。会社は信用を失い倒産ぎりぎりのところまで追い詰められますが,アイサは宝石を会社に返し,真実をマークに告げるのでした。ところがマークはそれを感謝するどころか一緒に住んでいたフラットから着の身着のままで追い出してしまうのでした。その後,会社は持ち直し現在では業界第二位まで成長します。フラットを追い出しはしたもののそのことを後悔したマークはその後アイサを捜しますが,すでにアイサは名前を変えてしまったため,見つけられずに6年が経過したのでした。今回二人の再会はマークがGIAの臨時講師に招かれ建物を案内してもらっているところでアイサが講義中の部屋にも立ち寄り,すぐに二人は互いに気付きます。そしてマークはアイサの帰宅を待ち伏せ,この6年間どこに行っていたと問い詰めるのでした。自分はすっかり憎まれていると思っていたアイサはマークが自分と一緒に業界のパーティに行って欲しいというのに驚き,とっさに友人のギデオンと約束があるからと断ります。自分の知らない男性とアイサが交際しているのではとマークの心には嫉妬が渦巻くのでした。自分が腹を立てて追い出した女性への未練,自分よりも父をかばったと腹を立てる身勝手さ,そして6年も経ってからもアイサが自分を求めてくれているはずだと思う勘違い。本当にマーク・デュランドは男の風上にも置けない心根の狭い身勝手男です。見栄えは良いかもしれませんし,仕事は出来るのかもしれませんが,こんな本性の男性を上司にしている会社の従業員たちも大変ですね。その後2度目の宝石盗難事件が起こり,アイサに宝石の調査を頼んでいたマークはまたもやアイサに裏切られたと思って追い出すのですが,それでも愛想を尽かさないアイサの,これは家庭内暴力に耐え,他の人から自分の夫は悪くないという被害者妻と同じではないかという気さえしてきます。
 結局会社内部の者の犯行らしいことは分かるのですが本作では犯人は明らかにされません。おそらく次作以降でそれが明らかになるのでしょうが,ワンマンなマークに対する恨みによる犯行ではないかと予想されるほど,このヒーローは最悪ですね。アイサに対する同情票だけでもNiceHeroineに該当します。ま,次作に期待しましょう。


タグ:ディザイア
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明かせない秘密 [キャサリン・マン]

SHALOCKMEMO1250
明かせない秘密 Baby, I'm Yours
( Beachcombers 1 ) 2006」
キャサリン・マン 北園えりか





 原題は「赤ちゃん,私はあなたのものよ」
 ヒロイン:クレア・マクダーモット(30歳代)/レストラン経営者/キャラメル色の髪,ライラックの香水/
 ヒーロー:ヴィック・ジャンセン(39歳)/獣医/コーネル大学卒/
 SHALOCKMEMO1250の節目の作品となりました。この節目にふさわしく大御所キャサリン・マンの2006年の作品です。
里親の元に残った3人の娘。クレア,スター,アシュリー。もちろん3人ともそれぞれ実父母がいますので苗字が違うのですが,実の姉妹以上の関係で,里親であるリビーおばの残してくれた屋敷をレストランに改装し,クレアが料理を,スターがバーとウエイトレスを,アシュリーが経理をとそれぞれ仕事を分担して経営しています。アシュリーは大学へも通っていて,関連作「身分違いのフィアンセ(SHALOCKMEMO755)」のヒロインでもあります。「身分違いの・・・」は,ヒーローのマシュー側から描かれていますが,作品の中でビーチコーマーズと呼ばれるこのレストランが古くなった配線のショートで失火するということが述べられていますが,その前にもいくつか不思議なトラブルが続いていました。本作ではアシュリーの義姉のクレアがヒロインとなります。クレアの義妹スターの物語はシリーズ2作目「Under the Millionaire's Influence 2007」で,本作にも登場するデイビッドがヒーローとなっているようです。また,大きく家族が広がっていくようですね。
 さて,物語ですが,クレアたちの経営するレストランは港の一等地にある結構広い屋敷のようですが,なにせ古い建物。屋敷以外財産のないクレアたちにとってはその建物の維持管理も結構手間と費用のかかるものです。この地を買収して大きな観光地として再編しようとする開発業者から譲って欲しいとオファーがあるのですが,クレアには自分を育ててくれたリビーおばの残してくれたものをそう易々とは売却することは出来ません。それが原因で時々建物に侵入したりトラブルを起こす輩が出てきたのではないかとヴィックが気付きます。ヴィックは自分の責任で娘を失い,それが原因で妻とも離婚しています。そしてノースダコタの動物診療所や自分の屋敷を売って,この地サウス/カロライナ州チャールストンに逃げるようにやって来たのでした。ヨット「ダコタ・ラット号」で生活しています。ヨットからはクレアのレストランの様子が遠目に分かる距離です。ヴィックの妹や義弟も近くにいるのがこの地を選んだ理由でした。そしてクレアと出会います。「友達になって六ヶ月,恋人になって三日目」二人は避妊を失敗したことを知り,それから三ヶ月後クレアの妊娠が明らかになります。クレア自身4年前に短期間婚約していた経緯がありますが,恋人に裏切られそれからは仕事一筋に生きてきました。子供のために結婚しようというヴィックの申し出にもう少し時間をかけて考えたいというクレアの言葉にショックを受けつつも,その判断を待つことにしたヴィック。姉妹の中でもスターが最も目立ち生き生きとしているのに対し,クレアはどちらかというと几帳面で計画どおりに物事を進めようとしますので衝動的な行動をあまり取る方ではありません。ここで邦訳版の表紙を目にしてみると,今月のベストイメージですが,茶色の瞳の顎のすっきりした,でも美しいだけではなく愛情豊かそうな落ち着いた女性がモデルになっています。まさにクレアのイメージぴったりのモデルさんです。MB版の方はちょっと奔放なイメージで,物語の内容とは違いがあるようです。あまりに忙しく働き過ぎるクレアは時々めまいを起こして倒れてしまいます。その都度ヴィックの助けで事なきを得るのですが,その都度ヴィックはクレアと赤ちゃんを守らなければという気持ちを強くするのです。そしてレストランでのいろいろなトラブルの犯人が,最も大きなイベント婚約パーティでの事件で発覚します。その時もすっかり自分たちを助けてくれたヴィックの行動に,クレアはやっと自分が信頼できる男性だと信じることが出来たのでした。
 悲しい過去を持ち,今でも必死に生きているクレアですが,物語は終始静かに進行し,成熟した男女の物語らしい落ち着いた雰囲気が醸し出された優しいロマンスです。次作では妹スターとデイビッドのロマンス。本作とはかなり雰囲気が異なるでしょうね。


タグ:ディザイア
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