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永遠に失われた初夜 [キャシー・ウィリアムズ]

SHALOCKMEMO1269
永遠に失われた初夜 The Wedding Night Debt 2015」
キャシー・ウィリアムズ 山科みずき





 原題は「初夜の負債」
 ヒロイン:ルーシー(ルース)・ルイス(24歳)/ボランティアの教師/葦のように細い175センチあまりの長身,バニラブロンドの髪,数学学士/
 ヒーロー:ディオ・ルイス(?歳)/実業家/漆黒の髪,ブロンズの肌,銀灰色の瞳,黒く濃いまつげ,引き締まった口もと/
 6月20日刊の作品がダウンロードされましたので,購入した作品を整理しました。出版順からすると逆ですが,本作から読み始めました。ノンシリーズ作品です。5月刊の「いけない魔法(SHALOCKMEMO1246)」のヒロインが小学校教師でしたが,本作のヒロイン,ルーシーはあまり環境の良くない地区にある民間の放課後クラブ(児童館のようなもの?)でボランティアとして働きます。2年前,会社社長の娘だったルーシーが憧れていたハンサムなディオからプロポーズされときは天にも昇るような気持ちでした。育ちが良く世事に疎かったルーシーは,このプロポーズが企業買収がらみの便宜的なものだという婚約者と父の話を立ち聞きしてしまいます。「父は娘を身代わりに生き延び,ディオは大金を積むだけでは手に入らないものを,つまりは家柄の良い妻を得るというわけだ。」ということに気付いたルーシーですが,父から認められたいと幼い頃から頑張ってきたルーシーはおとなしくこの便宜的結婚に従います。それから一年半もの間,ルーシーは夫の社交的な行事に付き合い,寝室は別にするいわゆる仮面夫婦を演じてきたのでした。柳の木のように細く,髪はブロンドに輝き,圧倒的な美しさを備え,華やかな容姿の下に汚れのない気品を漂わせ,気高い美しさはモデルや社交界の女性たちも及ばない理想的な妻をルーシーは演じ続けます。そして,父の死。ルーシーはもはや仮面夫婦を演じ続ける意味は無いと判断して,ディオに離婚を申し出ようとするのです。しかしルーシーは自分の父が会社の経営を悪化させてしまったというぐらいのことしか父を理解していませんでした。実は父ロバート・ビショップはあくどい手法でディオの父を苦しめていたのです。そのためディオは復讐のため会社の乗っ取りを計画していたのでした。ルーシーはいわばそのためのおまけに過ぎなかったのです。おまけで結婚した女性,ところが,ディオにとってルーシーはそれだけの存在ではなく「彼女の顔立ちの何かが常に彼の心をとらえる。あからさまな性的魅力は無いし,親しみやすい美しさでもない。それでいて,彼女のもつこの世のものとも思えない魅力についてささやく声が,いつも彼の心を引きつけてきた」のでした。すでにこの時点でディオはルーシーを愛していたのです。離婚をいいだした妻に対し,この気持ちをあからさまにしたくないディオのプライドがルーシーを引き留めるのをためらわせます。そして,気付いたときにはルーシーはもう家を出ていたのでした。
行方を捜し当てて再会したルーシーは,白いTシャツに色あせたジーンズをはいてポニーテールに髪を結んだ若々しい女性に変身していました。これまで見たこともないルーシーの姿にディオは逆に若さと性的魅力を感じてしまうのです。そして家に戻るように説得しようとするディオにルーシーは真っ向から立ち向かおうとします。「そう,私はディオを憎んでいる。彼は不純な動機で私を結婚に追いやった。」教師になりたいという夢を結婚という檻の中に押し込めてしまったディオから逃れ,今は環境の良くない地域の恵まれない子供たちに勉強を教えるボランティナの教師として働いていたのです。しかしディオはこの環境の良くない地域に自分の妻が生活していることに危機感を持ちました。そしてルーシーが教えている崩壊しそうになっている建物を改装してやるから家に帰るようにルーシーを説得しようとするのです。お金で何でも解決できると考えているディオにルーシーは再び憤りを感じます。そしてそんなディオに惹かれている自分の体に最も憤りを感じてしまうのでした。その後のディオの素早い行動力に押しまくられるルーシー。そしてそれに気持ちは反抗しつつもつい従ってしまうルーシー,これまで父に従い,夫に従ってきた習性から逃れられない自分にいらだつ気持ち,そんな複雑なコンプレックス状況の中で,「ディオはプライドが高くて,頑固で,でも私はそんな彼をどうしようもなく愛している。」そして,その気持ちをディオに知られたくないというかなりねじ曲がった状態のルーシーでした。そして,昔語りに自分の父とディオの父のトラブルを聞き,自分が如何に世間知らずでディオの言葉を勘違いしていたかを知ったルーシーは・・・。キャシー・ウィリアムズお得意の揺れ動く主人公たちの気持ちの変化を見事に描ききった作品です。


タグ:ロマンス
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二人のバレンタイン [ジャクリーン・バード]

SHALOCKMEMO1268
二人のバレンタイン The Valentine Child
( Wedlocked 8 ) 1995」
ジャクリーン・バード 春野ひろこ




HQB-641
15.02/¥670/200p

R-1738
02.01/¥672/156p


 原題は「バレンタインの子供」
 ヒロイン:ゾーイ・ギフォード(25歳)/グラフィック・アーティスト,両親は俳優で飛行機事故死/シルバー・ブロンドの髪,小柄でマイセン焼きの人形のような卵形の顔,つんと上を向いた胸,細いウエスト,サファイアブルーの瞳/
 ヒーロー:ジャスティン・ギフォード(39歳)/国際法専門弁護士/180センチ以上,濃い茶色の瞳,漆黒の髪,オリーブがかった肌,スペイン系/
 20歳で結婚し,21歳の誕生日パーティをバレンタインデーに祝ってもらっていた幸せ絶頂のゾーイに,訪問客の噂話が聞こえてしまいました。夫のジャスティンは,ゾーイの伯父に頼まれて法律事務所を経営することと引き替えにゾーイとの結婚を承諾した,というものでした。14歳から憧れてやっと結婚した相手が自分を愛してくれていない,しかも夫からだと思っていた毎年送られてきたバレンタインカードの贈り主が客としてやって来た両親の親友でハリウッドスターのウエイン・サットン(ウエインが姓ではなく名前の方だということが面白い)だと知ったから,二重の意味で傷つくのでした。そして極めつけは夫と同じ事務所の所属する若手弁護士の連れは,ゾーイの18歳の誕生パーティに夫が連れてきた恋人のジャネット・オードも現れ,自分とジャスティンの関係が続いていることを匂わせたことに及んでは,もはや夫を信頼することができないという思いに駆られてしまいます。その夜自分を求める夫に応えつつも,ゾーイはアメリカに帰ることを決意し,ウエインに当座の住まいを頼み込むのでした。そして4年が過ぎます。
 アメリカに帰ってから生まれたジャスティンとの愛しの息子をゾーイはバレンタイン(バル)と名づけ,美術学校で学んだ技術を生かして手書きの絵はがきを売る仕事を始め,商売としても成功を収めています。ところが貧血がちになったバルの病気を専門医に見せたところ,ファンコーニ貧血症(先天性再生不良性貧血=35万人に一人の割合の遺伝子疾患)であることが判明し,骨髄移植が唯一の治療法だということ。父親であるジャスティンの骨髄移植か,あるいはもう一人自分が子供を産めば子供からの骨髄移植でもかまわないという医師のすすめを得たのです。4年間も息子の存在を秘密にしてきたことが知られれば,きっとジャスティンは怒り狂う。それよりももう一度イギリスに渡ってジャスティンを誘惑し,自分が妊娠すればいいと考えたゾーイ。自分を裏切った夫であれ息子のためならどんなことでもする覚悟のゾーイでした。本作は1995年の作品ですが,ロンドン,ニューヨーク間にはまだコンコルドが飛んでいます(2003年にコンコルドが完全に退役)。メーン州の家からニューヨーク経由でコンコルドでロンドンに向かったゾーイ。少なくとも通常の旅客機より倍も値段のするコンコルドに乗るだけの経済的余裕があったのは,両親が残してくれた遺産のおかげでしょう。両親の親友だったウエインが遺産管理をしてくれていたのでした。そして,ジャスティンの住まいを訪ねたゾーイ。うまい具合に誘惑に乗ってくれてジャスティンはゾーイと深い関係を持つのですが,ゾーイもまたジャスティンに対する熱い思いが消えていないことを思い知らされます。勇気を持ってバルの存在を告げたゾーイ。しかもジャスティンは事情を聞きバルが自分とゾーイとの間の息子であることを確信した様子です。ところがジャスティンの住まいを訪れたときに居た女性はゾーイの顔を見るといきなり「何しに来た」と激しい言葉をかけるではありませんか。この女性は実はジャスティンの異母妹ジェスだったのですが,別居後に出来た新しい恋人だと思い込んだゾーイは,心穏やかではありません。とにかくロンドン訪問の目的は果たしたのですが,ジャスティンはすぐにアメリカに行き適合検査を受けると言い出します。電話でバルと話をしたジャスティンは,間髪を入れず日程調整をし,二人は再びコンコルドで帰米します。幸いジャスティンの骨髄が適合することが判明し,感謝の言葉を述べた矢先,廊下ですれ違った医師が,「自分が妊娠すればいい」とアドバイスしたことをジャスティンにバラしてしまい,ジャスティンはプライドを傷つけられて激高するのでした。
 なんとも早とちりで,勝手な思い込みをしやすいゾーイです。一回り以上も年の離れた女性を守りたい気持ちからジャスティンは詳しいことを話さないでしまうところにも二人のすれ違いの原因があるのですが,それにしても「どうして」という率直な言葉を言い出せないゾーイに,そしてそんなゾーイの本姓を見抜けないでいるジャスティンにも原因はあるのでしょうが・・・。このあと二人の関係はどうなるのでしょうか。ある人のアドバイスで意外とあっさり解決を見るところが,とてもすっきりしていて読後感のいい作品です。


タグ:ロマンス
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大聖堂のある町 [ベティ・ニールズ]

SHALOCKMEMO1267
大聖堂のある街 When Two Paths Meet 1988」
ベティ・ニールズ 塚田由美子




HQB-620
14.11/¥670/208p

R-0695
89.08/¥570/155p


 原題は「二つの道が出会うとき」
 ヒロイン:キャサリン(ケーティ)・マーシュ(21歳)/家事手伝い,看護助手/小柄でやせっぽち,どこといって特徴の無い顔立ち,濃いまつげに縁取られた美しいグレーの瞳,薄いブラウンの髪/
 ヒーロー:ジェーソン・フィッツロイ(36歳)/内科専門医/金髪,真っ直ぐな眉の下の眠そうな青い瞳,大きな引き締まった口もと,立派なわし鼻/
 ひと月以上ベティ・ニールズ作品を読んでいなかったので未読の本作を手にしました。今回の舞台となるのはソールズベリ。大聖堂で有名な町ですが,近くにストーンヘンジもあり,ちょっと不思議な魅力を持つ町のようですね。大体は門前町は落ち着いた雰囲気をもっていますが,本作も登場する場所が割と近くにあり,移動時間も少ないことで,物語にスピード感があふれています。相変わらず静かな雰囲気の中にヒロインが巻き込まれるエピソードが次々に登場し,あっという間にエピソードに到達するという感じです。
 母を亡くし19歳で兄夫婦に引き取られて2年になるキャサリンですが,兄や兄嫁から家政婦同然にこき使われ,甥姪たちもさっぱり言うことを聞かず,しかも子供の世話をキャサリンに任せきりで義姉は母親の務めを果たそうとしない,そんな生活を送っていました。ある早朝玄関をノックする音が聞こえ,慎重にドアを開けてみると男性が赤ん坊を抱いており,ちょっと台所を貸してくれないかといいます。道端に捨てられていた小さな赤ん坊。子供の世話になれているキャサリンはすぐに必要なことが分かり,男性の手伝いをするのでした。男性は病院の医師だというだけでこの時点では名前も分かりません。病院に連れて行くまで子供を抱っこしていてくれないかと頼まれ,車に乗り込みますが,もうこの時点でキャサリンは名前も知らないこの男性に恋してしまったのでした。一方年の差のある小柄なこの女性が,指示される前から次々と手際よく手伝ってくれることに驚き,医師のジェーソンは興味を持ちます。そして家の中であまり良い待遇をされていないことを見抜いて,老夫妻の世話係として働かないかと持ちかけるのでした。家事と子守を無料で一手に引き受けてくれていたキャサリンを失うまいと兄夫婦は反対するのですが,断固とした態度で仕事をすると言い切るキャサリンにジェーソンも口添えをしてくれ,数日後からこの家に住み込んで家政婦を手伝い老夫婦の世話係として働くことになるのでした。ところがこの老夫婦の孫娘がジェーソンと交際しているらしいことが分かり,キャサリンはがっかりします。しかもこの娘ドディー・グレンジャーは完全な我が儘娘。ジェーソンと自分は結婚するのだと決めてかかり,新たにグレンジャー家に入り込んだキャサリンに何かと意地悪な物言いをするばかりでなく,あらゆる機会を捉えてキャサリンを追い出そうと画策するのでした。他の作品とは異なりあまり露骨な表現は出てきませんが,イギリス的な階級差を感じさせる言葉の応酬で意地悪ぶりはかなりよく分かります。そして遂に老夫婦を長期の移転に誘い出すことに成功したドディー。キャサリンは仕事を失い,家を出ることになります。そこにジェーソンが病院で看護助手を必要としているからとキャサリンを推薦してくれ,翌週から勤務することになるのでした。そして家政婦の妹のやっている下宿屋まで紹介してくれ,なんとか兄の家に戻らずに済むように取りはからってくれたのです。働いて,その対価としての収入で自立して生活していく。それがスムーズにいったことで幸福感を感じるキャサリンでした。噂ではドディーとジェーソンはいずれ結婚するだろうともっぱらの評判。そしてジェームズの後輩医師エドワードが休暇でやってきて,キャサリンを何かと誘うのをジェーソンも認めているように見えます。気安く話せるエドワードは,しかしキャサリンが愛する人ではありませんでした。その後クリスマス前後の病院内のこまごました様子や,下宿の女主人の病気に気付いたキャサリンがジェームズの助けを借りて看病したことなどが語られ,ある時ジェームズが僕と結婚してくれないかと言い出したのに驚きます。その後何度か会った時をとらえてはプロポーズの言葉を繰り返すジェームズ。しかしそれを本気にしないキャサリン。やがてドディーが別の富豪と婚約したことが地元新聞で報道され・・・。
 相変わらずスピーディな物語展開のうちに少女から独り立ちした女性へと変身を遂げていくキャサリンのシンデレラストーリーで,楽しめる作品です。


タグ:ロマンス
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デイジー・メイ [エマ・ダーシー]

SHALOCKMEMO1266
デイジー・メイ The Impossible Woman 1985」
エマ・ダーシー 小谷正子




HQSP-92
15.07/¥540/200p

I-0404
88.01/¥520/156p


 原題は「不可能な女」
 舞台:シドニー郊外
 ヒロイン:ジュディ・キャンベル(22歳)/造園師/可愛らしい,身長150センチ,大きな青い瞳,カールした長いまつげ,天井を向いた鼻,顎のとがったハート型の顔,淡い金髪/
 ヒーロー:マルコム(マル)・スチュアート(30歳代)/建築家/緑色の悪戯っぽい目,ハンサムというより人目を惹く非凡な顔立ち,広くて高い頬骨,筋の通った鼻,大きな口もと/
 「デイジー・メイ」は昔のコミック漫画に出てきた美女の名前,と説明されています。これって実在?よく分かりませんが,まぁ人形のように愛らしい女の子と言うことでしょう。22歳なのに,しかも造園師という男勝りの仕事をしているのに,この容貌で大分損をしているようです。芝植えに行った豪邸で出会った日雇い労働者のような風貌の男性に芝植えを手伝わせてしまいます。それこそ,この家の家主で建築家で有名なマルコム・スチュアート,通称マルでした。障害を持つ弟を抱えていますが両親と仲良く愛のある家族と過ごしているジュディは,22歳でまだ男性経験はありませんが,おとぎ話に出てくるような結婚相手を待っている女性です。そんなおとぎ話などあり得ない,というのが原題の「Impossible Woman」になっているのでしょうか。ところがこの日雇い労働者のような男性に一目ぼれしてしまうジュディ。30歳前後だと思われるのですが,初対面の男性にかつてもったことのない惹かれる思いをもってしまったのです。まさに運命の出会い,それはマルコムの方もそうでした。両親の不幸な結婚生活を見て育ったマルは,結婚という形式を嫌いこれまで独身をとおしてきたのですが,デイジー・メイのようなジュディにはすっかり惹かれてしまったのです。物怖じしない,しかも造園に関してはプロの知識を持つ不思議な魅力をジュディに感じたマル。マルはその日のうちにディナー・パーティにジュディを誘います。そしてマルの書斎に入り込んでしまったジュディは,マルが単なるマルコムではなく,あのマルコム・スチュアートだと気付き,騙されたと思います。一人の人間としてみて欲しかったので敢えて君の勘違いを質そうとはしなかったというマルの言い分にかすかな期待を抱きはするものの,マルの所属する社会的環境と自分の環境のあまりの差に怖れを成してしまうジュディ。しかしディナー・パーティに誘われ,一日だけでもそれに浸ってみたいという思いを振り切れず誘いに乗ってしまうジュディです。そしてそのパーティでマルコムに執拗に迫るパーティの主宰者の妻ヴィヴィアンやジュディの愛らしさにいやらしい目を向けてくる小父さんに嫌気がさしつつ,撞球で父から仕込まれた普通の人には出来ないワザを見せつけて溜飲を下げるジュディ。しかし作家夫妻の気取らない,しかも愛にあふれた姿に憧れを抱くという収穫はありました。その後,スチュアート家の庭の造園を担当し,見事な腕前を見せたジュディにマルコムはますます惚れ込んでいくのですが・・・。ついに深い関係を持ち「愛している」と互いに告白し合う二人ですが,マルコムは結婚だけは決してしないと釘を刺し,庭の完成と共に別れを告げ,帰宅して泣き崩れるジュディ。
 翌日,契約終了のため父を連れてスチュアート家を訪れ,事務的に処理しようとするジュディ。そこに小説家夫妻のハガン夫妻が訪れ完成を祝ってくれるのでした。ハガン夫人ルースはスチュアートが建築中の大規模建築の庭園部分の造園をジュディに担当させるために骨を折ったことを聞かされるのですが,ジュディは「あなたからの仕事は欲しくない」ときっぱり断ります。このジュディの潔さがとても見事です。そして数日後,食事中のキャンベル家をマルコムが訪ねてきます。娘の決断を尊重するとマルコムを追い返そうとする父に感謝しているところに,マルコムはさらに爆弾発言をするのですが・・・。
 普通は持てる才能を恵まれない容色が邪魔をするという設定が多い中,恵まれているがために才能を認められないという希有な悩みを抱え,しかし敢然と夢を追求するジュディの潔さに拍手を送りたくなる傑作です。HQSP版のモデルさんは自然の中で生き生きと見える美女ですがちょっと大柄な感じがします。それに対してHQB版の方が小柄で若々しいジュディの感じが良く出ているように思います。


タグ:イマージュ
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ひと月の恋人 [ジェシカ・ハート]

SHALOCKMEMO1265
ひと月の恋人 Cinderella's Wedding Wish
( In Her Shoes 2 ) 2009」
ジェシカ・ハート 湯元リカ





 原題は「シンデレラの結婚式での望み」
 ヒロイン:ミランダ・フェアチャイルド(?歳)/派遣社員,倒産した会社の娘,3人姉妹の真ん中/澄んだグリーンの瞳,真っ直ぐな背中,きめの細かい肌,涼やかな顔立ち/
 ヒーロー:レイフ・ナイトン(35歳)/「ナイトン・グループ」会長兼社長/ダークブルーの目/
 恋愛ベタな二人の恋の顛末です。ヒロイン,ミランダが自分の上司であるレイフに対して歯に衣を着せぬ発言をばしばししていくのが快く,ついつい読み進んでしまう快作です。美人3姉妹の中で唯一父の事業の失敗の責任を取ろうとする姉妹の真ん中ミランダが健気で素敵です。自分に自信が無いミランダですらレイフから見てすこぶる美女であるとすると,姉のベリンダと妹のオクタヴィアはどれだけすごい美女なのでしょうか。おそらくタイプの異なる美女ということなのでしょうね。MB版の表紙がミランダが少なくともスタイル抜群で嫌みの無い自然な美しさを持つ美女であることを伺わせます。ふつう3姉妹がいればそれで3部作となるのでしょうが,今のところこれは続編が見当たりません。
 自分の美貌に自信の無いミランダを親友のシェフ,ロージーの後押しや二人をあたたかく見守るレイフの祖母エルヴィラの助言で,心を開いていく二人。そして終盤レストランでスパゲッティをレイフの頭から掛けて捨て台詞を残して去るミランダの潔さが読者をスカッとさせる場面など,ちょっとした舞台劇のような設定のオススメ作品です。


タグ:イマージュ
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君の声が聞きたい [ジャスティン・デイビス]

SHALOCKMEMO1264
君の声が聞きたい A Whole Lot of Love 2000」
ジャスティン・デイビス 南 和子





 原題は「愛の競売のすべて」
 ヒロイン:ライラ・ララウェイ(31歳)/マリーナ・デル・マール・アルツハイマー病センター職員/身長177センチ,豊満な胸,均整の取れたプロポーション,くびれたウエスト,綺麗な脚,ブロンドの長髪/
 ヒーロー:イーサン・ウィンズロー(35歳)/ウエストコースト・テクノロジー経営者/青い瞳,長身でハンサム/
 ロマサスや富豪一族ものばかりと思っていたジャスティン・デイビスのディザイア作品です。どんな男性をも惹きつけてしまう魅力的な声の持ち主,しかし少々大柄なだけなのに過去に婚約破棄されすっかり自分に自信を持てなくなってしまったライラ・ララウェイと,10代で両親を失い幼い二人の妹を抱えて必死に働き富を築き上げてきた結婚したい男性No1のイーサン・ウィンズローとの,淡く優しい中に勇気を振り絞って自分を取り戻していこうとする強さを感じさせる作品です。感動の中に一気読み間違いなしの秀作です。4月に電子書籍で復刊された作品ですが復刊にふさわしい作品でした。
 アルツハイマー病センターの慈善オークションを仕切るライラは,その往年の女優を彷彿とさせる魔法のようなセクシーな声でオークションへの参加者に電話で了承を求めオークションを成功させる実力の持ち主です。しかし電話で了承しても実際に彼女に会うとがっかりされてしまうことが多く,過去に婚約者から捨てられた経験からも自分の容姿にすっかり自信を無くしているのでした。一方ヒーローのイーサン・ウィンズローは両親を亡くし17歳で二人の幼い妹と離ればなれになってしまうところを,恩人である「ウエストコースト・テクノロジー」の経営者ピート・コリンズによって救われ,やがてピートの右腕として,さらに後継者として富豪となり,今や押しも押されぬ若手経営者として成功したハンサムな男性ですが,恩人のピートがアルツハイマーで施設に収容されたことで,恩を返せなくなり罪悪感を持ち続けていました。今回チャリティ・オークションへの参加要請でライラから電話がありましたが,初めは断るつもりが,なぜか断り切れないのが不思議でオークションにやって来たのでした。実際にライラに出会ったイーサンは一瞬声と違和感のある体形に驚きますが,すぐに笑顔に戻ります。初対面の普通の男性ならあからさまに嫌な顔をせずとも,すぐに自分から離れていってしまうことが多い中でこのイーサンの反応はちょっと変わっていました。そしてイーサンが自分に対して優しくしてくれたのだということを感じ取ったライラでした。これが,その後の二人の関係に大きな影響を及ぼす出会いでした。そしてオークションの最後に挨拶を述べようとステージに向かったライラを,司会者が突然オークションの対象にしてしまうという悪ふざけをします。一瞬会場がざわめくのですが,その時イーサンが今日の最高値を付けると言いだし,ライラの体面を保つのでした。そして数日後イーサンはライラを訪ねオークションの計画を実行しようと持ちかけます。あの場の雰囲気を和ませるためだけに最高値を付けたとばかり思っていたライラはイーサンが本当に自分と出かけたいと思っていることに驚きます。そして二人はヨットで一日を過ごすというリラックスした時間をもつのでした。自然と互いのことを話し合う二人。ライラも父がアルツハイマーになり介護した経験を持ち現在の仕事に就いたことを話し,イーサンは17歳で背負った二人の妹の世話をしてきたことを打ち明けます。しかしピート・コリンズに対する罪悪感を打ち明けるまでにはいきませんでした。その日一日だけのつもりだったイーサンですが,互いに何か理由を付けては連絡を取ろうとするのでした。ライラがイーサンの会社に書類を届けたとき,ちょうどイーサンの末の妹サラが来ていてライラに話しかけます。そしてすっかりライラと仲良くなったサラは,イーサンを焚きつけてライラを昼食に誘うようにさせるのでした。成長し兄妹でなかなか本音を言い出せないでいるところを,ライラには本音で話せることにライラの本当の魅力を感じたイーサンは次第にライラに本気で惹かれていきます。しかしライラが自分の体形を気にして男女関係にはかなり慎重になっていることを知っていたイーサンは,急がずに少しずつライラとの距離を縮めていこうと考えていたのでした。そして何度か出会う内にイーサンもピートへの罪悪感をライラに気付かれて指摘され,何も言うことが出来なくなってしまいます。イーサンがもう二度と自分に連絡してこないだろうと泣き続けていたライラの元に親友ステファニーが来て理由をすっかり打ち明けてしまいます。ライラはステファニーをイーサンに紹介しようとしていたのでした。自分と違って美人でスタイルの良いステファニーならばイーサンとぴったりのカップルになると考えていたからです。そしてライラはピートの様子を確かめ,イーサンの苦しみを理解するのでした。しかし,イーサンは迷いませんでした。自分からピートには二度と来るなと言われたことを言い訳にしていたことに気付き,ライラを伴ってピートの元を訪れたのです。そして罪悪感から立ち直ったイーサンはついにライラにプロポーズします。驚いたライラは,きっぱりとプロポーズを断るのでした。気持ちが通じ合っていると思っていたイーサンはライラに拒絶されたことに驚き,体形のことがライラを深いところまで傷つけていることに思い至るのでした。さて,二人のどちらが問題を打開するために声を掛けていくのでしょうか。
 大きな事件が起こるわけでもなく,二人の関係が激しく燃え上がるのでもないのですが,静かな中に思いやりや信頼に裏打ちされたしっかりとした感情の交流が見事に描かれた不思議な作品です。二人を取り巻くイーサンの妹たちやライラの親友ステファニーも二人の苦労を知っていて,目立たないように後押ししていくところも本作のあたたかい雰囲気を作り上げています。


タグ:ディザイア
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婚約のシナリオ [ジェシカ・ハート]

SHALOCKMEMO1263
婚約のシナリオ Temporary Engagement
( Marrying the Boss 4 ) 1998」
ジェシカ・ハート 夏木さやか




HQB-735
16.06/¥670/208p

R-1724
01.11/¥672/156p


 原題は「臨時雇いの婚約者」
 ヒロイン:フローラ・メーソン(?歳)/臨時個人秘書,ページの大学時代からの親友/金髪よりは濃いが茶色とは言えない髪,最小限の化粧,ストッキングなしの脚,頑固そうな顎,青い瞳,大きすぎる鼻/
 ヒーロー:マット・ダベンポート(38歳)/エレクトロニクス企業「エレックス」のヨーロッパ支局長/長身,黒髪,浅黒い肌,厳しい顔立ち,緑の瞳/
 「君が生意気だとはページは言ってなかったよ」「あなたがユーモアのセンスのない人だとは聞いていなかったわ」 友人のページから頼み込まれて臨時に個人秘書になったフローラが上司のマットと最初にかわした会話です。普通マットの冷たい緑の瞳でにらまれると大概の人は怖れを成してしまうのですが,フローラにその目つきは効き目がありません。フローラは世界一周をするのが夢。そのために定職に就かず臨時雇いの仕事を中心に資金集めをしているところです。「彼女はどこか無視出来ない存在感がある。」というのがマットが始めに感じたフローラへの印象でした。ところが会社にモデル体形の美女ベネチアがやってきます。マットにすがりつくように食事に出かけてしまうベネチア。その後互いの生い立ちについて少し突っ込んだ話しをする機会がありますが,マットは数日間仕事でニューヨークに戻ることになります。不在の間フローラはマットがいないことに寂しさを感じ,マットもまたニューヨークでの仕事中フローラのことが気になっている自分にいらだちます。ロンドンへの帰郷後二人は食事を共にしたりするのですが,それが新聞で新たな恋人出現かとすっぱ抜かれてしまい,マットはフローラが情報を流したと疑うのでした。それはフローラの元恋人セバスチャンが記者であることも関係していたのです。しかし真犯人は意外な人でした。そしてマットは意外な提案をしてきます。結婚しろと口やかましい母を一時的に黙らせるために婚約したことにしようとフローラを説得しにかかったのです。その前にパーティに一緒に行って欲しいとフローラがマットを誘い,友人たちの目を欺くためにマットとフローラが付き合っていると言ってしまったからでした。互いの目的のためにもそれが妥当だと言い切るマット。友人たちへの冗談とは違い,母親を騙すことになるようなことはすべきではないと断ろうとするフローラですが,世界一周の航空券という条件を付けられてしまっては断ることが出来なくなってしまいます。実はマットはこの扱いにくい秘書のフローラの美点に気付き始め,心を乱されつつあったのでした。フローラもまた冷たい上司と言われてきたマットが実は優しい面をもったゴージャスな男であることに惹かれていたのです。「私が彼と恋に落ちるようなことを,彼は望んでいない。あり得ないことだ。」と自分に言い聞かせるフローラ。「一体この女性の何が僕をこんなにも動揺させるのだろう?彼女は普通の女性だ。絶世の美女でもなければ特別頭が良いわけでもない。唯一注目すべき点はフローラがそばにいると僕が自制心を失ってしまうことだ。」と考えてしまうマット。そしてマットの母ネルとの出会いはフローラの心をさらいマットに近づけていくのでした。すっかり意気投合してしまったフローラと母をみて,マットは「どれほど深くフローラを愛してしまったかに急に気付き」ます。そして互いの気持ちを告白し合う二人。あの新聞記事の情報を漏らしたのはなんと母のネルが無意識のうちに記者に語ったことだったことが判明します。もう二人の間には隠し事はなくなってしまうのでした。
 なんともハッピーな読後感を得られる作者得意の秘書・上司ものです。読了してから,ジェシカ・ハート作品は初めての読了本だと気付いた次第です。


タグ:ロマンス
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愛,ふたたび [アン・メイザー]

SHALOCKMEMO1262
愛,ふたたび Sandstorm 1980」
アン・メイザー 細郷妙子




HQSP-118
16.07/¥540/208p

R-0467
86.06/¥578/156p


 原題は「砂嵐」
 ヒロイン:アビゲイル(アビー)・ギレスピー(22歳)/秘書/長身175センチ,細いなりに豊満な胸やなまめかしい腰の曲線/
 ヒーロー:ラシード(?歳)/アバレーン国王子/長身185センチ,芳醇なワインのようにきめ細かくてこくのある低い声,母はイギリス人/
 7月にHQSP版で出る本作をHQB版KINDLEで読みました。HQSP版の表紙はちょっとものうげなヒロインの姿がいいですね。HQB版の方は背景にモスクふうの建物とクッションのおかれた長いすがが写っており,ストーリーをうまく表していますが,残念ながらヒロインを思わせるモデルさんが使われていないのでいまいちです。さて,シークものの本作ですが,3年前結婚した相手は中東の国アバレーン国の王子ラシード。離婚の話をしに来たと思ったアビーですが,「アビー,君は僕の妻なんだから,僕の家こそ君のいるべき場所だ」と言うではありませんか。首都ザンシアの王宮での生活はアビーにとってはみじめなものでした。夫の父である国王からは歓迎されず,二人の間に3年間子供が出来なかったことがアビーにとっては大きな負担でした。そして決定的だったのが夫の不倫。弟の妻の姉ファラとの間に子供がいたことを知り,アビーはイギリスに帰ってきていたのでした。そして秘書として働いている上司ブラッドがいろいろと親切に心配してくれるのに甘えていたのです。最近ブラッドが仕事以外のところでも個人的にアビーに言葉をかけてくるようになり,ちょっと困惑していたところでもありました。そしてやって来たラシードに誘われて夕食をとり,別れ話をしようとした矢先,ホテルの部屋でラシードが昨夜から病にかかり苦しんでいることを伝えられ,ラシードの部屋へ案内されます。しかしラシードは起きており,誘われるままにベッドを共にしてしまうアビー。そして数ヶ月後,判明した妊娠。離婚を前提としていたのに再びラシードの元に行かざるを得なくなるアビーは,ラシードの愛が信じられません。「やっぱり,そう。あなたの関心は子供だけなのよ。私に戻って欲しいとかなんとか言っても,息子を産むために必要なだけなのね。」出産までの期間だけという限定付きの妻という存在に,アビーのプライドはずたずたになります。王宮に戻ったアビーの元にラシードはほとんど顔を見せず,末の妹ソフィアだけが3年前と同じようにアビーに優しく接してくれます。そしてアビー付きの使用人スニがいろいろと気遣ってくれるのでした。ラシード兄弟の祖母ノーナが帰国します。ラシードとアビーが別に暮らしていると聞いてノーナは心配し,いろいろと策略を仕掛けてくるのでした。それに気付いているアビーですが,夫にかまわれない寂しさよりもノーナの心遣いの方が嬉しく思えてアビーもそれを受け入れていくのです。そして衝撃の事実をノーナの口から聞いたアビー。その事実がアビーとラシードの間にあった障壁を完全に崩していくのです。やがて,生まれる息子カリド・ロバート。もはや親子三人での幸せな暮らしを妨げるものは何も無いのでした。
 19歳という若いときに結婚してしまったアビーが出産をとおして精神的に夫への深い愛に目覚めていく成長譚です。オススメの作品。


タグ:ロマンス
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天使の誘惑 [ジャクリーン・バード]

SHALOCKMEMO1261
天使の誘惑 Guilty Passion 1992」
ジャクリーン・バード 柊 羊子




K-286
15.01/¥670/156p

R-1761
02.04/¥672/156p


 原題は「やましい情熱」
 ヒロイン:レベッカ(ベッキー)・ブラケットグリーン(22歳)/大学研究助手/身長152センチ,すみれ色の瞳,長い黒髪/
 ヒーロー:ベネディクト(ベン)・マクスウェル(34歳)/人類学者/濃い金褐色の瞳,身長180センチ位,広い肩幅,厚い胸,引き締まった腰,驚くほど長い脚,長めの黒い髪,広い額,黒く濃い眉,高いかぎ鼻,角張った顎/
 ベンに出会ってすぐに恋に落ちてしまった22歳のレベッカは,付き合う度にベンに惹かれていきます。周囲の人たちもベンには注意するように忠告してくれますが,恋するレベッカには役に立ちません。時々ベンが見せる自分に対する冷たい目線が何を意味するのかも気付きませんでした。オックスフォードで研究助手を務め,就職のために教職課程を取りたいと考えているレベッカは17歳のとき,ある男性と交際した期間がありました。しかしその男性が事故で亡くなり,深い関係になる前に失ってしまっていたのでした。ところがその男性こそ,ベンの父親違いの弟ゴードンだったのです。ベンはレベッカが弟の死に関係していると母から聞き,レベッカを自分の魅力で惹きつけ,最後の土壇場でこの事実を知らせて復讐しようと思っていたのです。自分が愛してしまった相手,婚約までした相手に愛されるより憎まれていると知ったレベッカ。それから時を遡り,ゴードンとレベッカの過ごした日々の回想が綴られます。しかし,ゴードンの事故死をベンとゴードンの母は,レベッカのせいだとベンに告げていたのでした。しかも当時ゴードンの死が「事故か自殺か」と三流紙に報じられてしまったこともあり,「小柄なロリータ」と報じられたレベッカを恨む気持ちを抱き続けてきたベンが,レベッカを弟の敵と考えたことも当然のことでした。それに気付かず,姓も違うため事情を知らずにベンを愛してしまったレベッカ。そしてベンの正体が単なる人類学者というだけでなく,「M&M(モンテーヌ&マクスウェル)」という電子機器会社の経営者であることが知らされたことによって,それに追い打ちをかけます。それを彼女に告げたのはベンの腕に寄りかかるのが得意なフィオナ・グリーヴズというとびきりの美女とあっては,なおさらレベッカを落ち込ませることになるのでした。
 5年後,シングルマザーとなり,教員として働いているレベッカ。課外活動で生徒を引率してフランスの海岸に出かけたレベッカは偶然ベンに出会ってしまいます。この再会場面に結構なページが割かれていますので,本作の謂わば中心部分の一つです。他の教員や生徒たちにたちまち取り入ってしまうベン。レベッカはベントの出会いを極力避けたかったのですが,周囲からはやし立てられてベンと食事をすることになってしまいます。5年経ってもベンの魅力は損なわれていませんでした。5年前,レベッカがベンの元を立ち去ったとき,ベンは弟ゴードンの死の真相を母親ではなく叔父に確認してみたのでした。そしてレベッカのいうとおり事故であったことを知り,レベッカに対して取ってきた行動を謝罪したいと思っていたのですが,なかなかレベッカの所在が分からず,探しあぐねていたのでした。そして帰国後,ベンがレベッカの元を探し出してきます。レベッカは,「彼が今,私を求めているということは疑いようがない。でも,明日はどうなの?その先の未来は?いいえ,ベネディクトとの間に未来なんてないのよ。」そして,そこにはベンとの間の子ダニエルがいるのを隠し切れなくなってしまいます。ベンはすでにレベッカの同僚からダニエルのことを聞き,5年間その存在をベンに知らせなかったとレベッカを責めるのでした。そしてレベッカに自分との結婚を迫るベン。そこに昼寝から起きてきたダニエルがやってきて,ベンは自分がパパだと名告ってしまいます。混乱すると思っていたダニエルはベンがパパだと聞いて大喜びしているではありませんか。自分が必死で育ててきたダニエルがこんなにも父親を欲しがっていたとは,と傷つくレベッカ。一度は結婚を断るレベッカですが法的手段に訴えてもダニエルを手に入れると脅すベンに,5年前と同じようにこの結婚もまたダニエルの存在をベン知らせなかったことへの復讐なのだと確信するレベッカでした。さらに,あのフィオナ・グリーヴズがベンの会社に勤めていることを知り,「彼が欲しいのは子供だもの。大きくなってさほど母親が必要でなくなったら,あなたはお払い箱よ」というフィオナの言葉に傷つくレベッカ。そして二人の結婚式が行われます。全てを3日間で準備したベン。レベッカの花嫁衣装ですらベンが全て独断で準備したのでした。ダニエルはすっかりパパを好きになり,自分は母親の務めだけ果たそうと決意するレベッカですがベンに愛されていないことへの不安は消えません。二人の結婚生活は惨憺たるものでした。唯一ダニエルを間に挟むときは二人は仲むつまじい夫婦ですが二人きりになると気持ちのすれ違いが明白でした。数日後寝ているベンが突然熱病にうなされたように叫んでいるのに気付いたレベッカ。人類学者としてフィールドワークにいっている間にかかったマラリアに似た病が時々出てきたのでした。主治医を呼び,なんとか落ち着いたベンを見てレベッカはやはりベンを愛し,愛おしく思っていることに気付き,しかも弱ったベンがレベッカに「愛している」と告白するのでした。二人の間には不幸なすれ違いにより何年もの間不信が心が渦巻いてきたのですが,本当は初めて出会ったときから愛がしっかり根付いていたのです。そして紆余曲折を経てそのことを素直に言い合える関係にやっとたどり着いたのでした。「信じられないわ。大きなあなたが152センチのわたしにおびえるなんて。」「そのすみれ色の瞳で冷たくにらまれるだけで充分だよ。知らなかったのかい?」という軽口の応酬が,すでに二人の気持ちが完全に一致したことを思わせる巧みな表現になっています。


タグ:ロマンス
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伯爵家のシンデレラ [ジャクリーン・バード]

SHALOCKMEMO1260
伯爵家のシンデレラ The Italian's Runaway Bride 2001」
ジャクリーン・バード 加藤由紀





 原題は「イタリア人の逃げだした妻」
 ヒロイン:ケリー・マッケンジー(21歳)/化学者,ベルトーニ家の臨時ナニー/シルバーブロンドの髪,野性的な青い目,肉感的な唇,豊かな胸,ほっそりしたウエスト,長い脚/
 ヒーロー:ジャンフランコ(ジャンニ)・マルディーニ(31歳)/企業家,イタリアの伯爵/180センチを越える身長,広い肩,引き締まった腰,長い脚,黒い瞳,豊かな黒い巻き毛と眉/
 7月発売のHQ文庫をHQロマンスのKINDLE版で読みました。イタリア人伯爵と正体を知らずに漁師と勘違いして出会い,深い関係を持ってしまった若いケリーのシンデレラストーリー,と思いきや,小姑ともいうべき伯爵の義姉未亡人の徹底した虐めに負けずに伯爵の愛を獲得していくまでの成長譚でした。親友ジュディの初産を助けるためにベルトーニ家で夏の間だけナニーのアルバイトをしてた大学を卒業したばかりのケリーは,イタリアの海岸でハンサムな漁師と思しき男性と知り合います。初心なケリーはたちまちジャンフランコ(ジャンニ)に夢中になり,デートを重ね,深い関係を持ってしまうのでした。そしてジュディと出かけた野外オペラの会場で出会ったジャンニが漁師ではなくジャンフランコ・マルディーニ伯爵だと知ったケリーは裏切られた思いと,ジャンニのそばにひっついている美女の姿に傷つきます。しかもこの美女がジャンニの亡き兄の妻だったことにも。「彼はジャンフランコ・マルディーニ。信じられないほど傲慢で不誠実な男」と気付いたケリーは,急遽ジュディ夫妻と帰国し,この子を一人で産んで育てようと決意します。それから数ヶ月後の一月の金曜日の夜,突然ジャンニが現れます。「君を守ることは僕の使命だ。君は僕の子供の母親なんだから」というジャンニの言葉に深く傷つくケリー。ジャンニが求めているのは自分ではなく子供なのだということに・・・。そしてあれよあれよと言うままに子供のために結婚してしまった二人。しかし結婚はゴールではなくこれから始まる受難のスタートに過ぎませんでした。両親を失い学業では素晴らしい成績を修め化学者として政府の研究所で働く予定になっていたケリーですが,貴族の家の奥様になるということは予想もしていませんでした。しかも,その家には義母と義姉まで同居していたのです。仕事の忙しいジャンニは,帰宅するとケリーに優しくするのですが,数日間の出張も多く,日中はケリーの体を心配して外出も許可されないのです。しかも義姉のオリビアが隠れてケリーに意地悪をすることをジャンニに告げても取り合ってくれません。唯一メイドのアンナだけが味方で他の使用人はケリーには冷たく接するのでした。独りぼっちで嫁いできた嫁ぎ先で夫は母と義姉の言うことしか信じず,孤独な生活をせざるを得ないケリー。夫が出張中のある晩,義姉オリビアは「ケリーを財産目当てのあばずれ女とののしり,ジャンニはケリーを愛していない,愛しているのは子供だけだ」と言い,反論しかけたケリーにワインを浴びせたのでした。そして帰宅したジャンニ書斎で義姉と抱き合っている姿を見かけたケリーは遂に,カーサ・マルディーニを跡にします。
 それから3年。ケリーは一人娘アンナ・ルイーズ,通称アナルウと二人で幸せに暮らしていました。そこにジャンニがやってくるのですが・・・。結局再びイタリアに連れ戻されたケリーとアナルウ。しかしそこにはあの底意地の悪いオリビアの姿はありませんでした。ほぼ狂気に駆られていたとしか思えなかったオリビアの行動の理由や,ジャンニがもうこれ以上子供は要らないと言っていた理由も丁寧に説明され,物語はハッピーエンドに向かうのですが,世間知らずだったケリーも出産して3年間の間に大人として成長し,ジャンニの行動や義母の行動を許すだけの精神的成長も遂げていたのです。この当たりの作者の描き方も素晴らしく,そして用意されている,さらなるハッピーエンディングに大満足を得られる作品です。


タグ:ロマンス
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