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貞淑な愛人 [リン・グレアム]

SHALOCKMEMO1255
貞淑な愛人 The Greek Commands His Mistress
(噂のギリシア大富豪 2) 2015」
リン・グレアム 茅野久枝





 原題は「ギリシア人は彼の愛人に命じる」
 ヒロイン:デライラ(ライラ)・ムーア(23歳)/父の経営する会社の会社員/小柄160センチ程度,古紙に届くほど長いつややかな黒い巻き毛,シミ一つないクリーム色の肌,青い目,小ぶりの胸,形の良い膝と踵/
 ヒーロー:バスティエン・ジコス(?歳)/投資家/長身190センチ弱,高くせり出した頬骨,傲慢なほど高い鼻,がっしりとした顎のライン,スーパーモデル並みの体型/
 前作「授かりし受難(SHALOCKMEMO1239)のヒーロー,レオ・ジコスの腹違いの弟バスティエン・ジコスと,デライラ(ライラ)・ムーアのロマンスです。腹違いとはいえ,レオとバスティエンの風貌はかなり似ているように思います,彫りの深い端整な顔立ち,そして父親の不倫により女性を信じていないのも共通しています。バスティエンの方がいわゆる愛人の子ですのでその思いは強いようです。一方ライラの方も,父ロバートが不倫を繰り返しそのことに頭を痛めていた家族でしたが,現在の継母ヴィッキーと結婚したことをきっかけにすっかり仕事と家庭に集中する良き父親になっており,ライラも愛に基づいた結婚をしたいと思っていました。さて,二人は二年前に出会います。バスティエンに惹かれ,ライラは数日付き合いますが,父の会社を買い取ろうとしていたバスティエンを拒絶し,二人の関係は深まらずに終わってしまいます。しかしその時の強烈な印象をたがいに忘れようと必死になった2年間でもありました。「ムーア・コンポーネンツ」が大きな投資計画の契約に失敗し,資金繰りに困っているという情報を得たバスティエンは,この機会を逃すまいと「ムーア・コンポーネンツ」を買い取ります。そして会社に現れたバスティエンはライラを呼びつけ,3つの選択肢を与えるのでした。第1の選択肢を選べば会社はばらばらにされて売却され,バスティエンの一人勝ちになります。2番目の選択肢でも自分が損をするだけで,バスティエンだけがおいしい思いをします。結局3番目の選択肢,つまり自分がバスティエンの愛人になる代わりに父は会社の経営を引き続き行い,会社に資金を投入して事業を安定させる,という選択肢しか残されなかったのです。会社を利用して2年前自分が拒絶した腹いせをしようとするバスティエンの悪巧みに怒り心頭のライラ。考える時間は翌朝10時まで・・・。調べてみると合っていたなかった2年間もバスティエンは数々のブロンドのモデルたちと浮き名を流しており,なぜ自分のような小柄で貧弱な体型の女性にバスティエンがこだわるのか理解できないライラです。しかし,ライラは父や親友にバスティエンの個人秘書として働くことになったと言い訳をして,結局第3の選択肢にOKを出さざるを得ないのでした。普通自分に声を掛けられればどんな女性も喜んで自分に従い,また金銭的な要求をしてくるはずだと思っているバスティエンにとって,ライラは常に予想を外れた返答と態度をしてくる謎の女性でもありました。そのことに新鮮さを覚えて離れがたい思いをするのかと思っているバスティエンですが,次第に聞きにくいこともズバリ聞いてきたり,自分の心の中に踏み込んでこようとする,そしてそれを断っても予想外のことを言ってくるライラの行動に次第に飲み込まれていき,それを不快に思わない自分を発見するバスティエンでした。ライラもまたいつも自分の要求に従わせようとするバスティエンの傲慢さにある意味惹かれていってしまう自分に戸惑いを覚えつつ,結局は自分が愛人の立場であることを時々思い起こさせるバスティエンに愛憎両方の気持ちをもっていることで自分を納得させるのでした。1週間の休暇を取り,バスティエンの買い取ったフランスのサント・モニク城で過ごす二人。愛人としての務めを果たしても別々の部屋で休む奇妙な生活が始まって数日,夜中にうなされる声で目覚めたライラはバスティエンが夢でうなされていることに気付き揺り起こしに行きます。そして驚くべきことに目を覚ましたバスティエンから聞いた幼少の頃の話に同情を禁じ得ず,遂に身を捧げるのでした。妊娠の可能性に気付いたバスティエンは今度は結婚すると言い出すのです。かつて愛した女性が自分の子供を中絶したことを忘れられないバスティエンはライラに子供を産んでもらいたいと結婚を言いだしたのでした。この,かつて愛した女性の話は前作でもレオとバスティエンが仲違いするきっかけになったエピソードとして登場しています。あれよあれよと言うままに出張で城を留守にするバスティエンの言うがままに結婚式になってしまったライラ。どちらの両親も親族も出席しない本当に形だけの結婚式でしたが,帰宅後ライラはバスティエンの妻になったことを実感するのでした。そして数日後,バスティエンの父アナトーレ・ジコスが倒れて病院に運ばれたという知らせが入ります。二人で向かった病院でライラは奇妙なジコス一家の対応に驚きます。愛人の子と面と向かって非難する継母のクレタ,それを止めようともしない義兄のレオス。しかしレオスの妻グレイス(前作のヒロイン)とはすぐに仲良くなりました。そこにあのバスティエンのかつての恋人マリナ・クーロスが表れ,あたかも親族のように振る舞っているのにライラは立腹します。過去にマリナが兄弟の仲を引き裂いたことを指摘したライラ,そしてちょうどそこに来合わせたバスティエンはライラを責めるのでした。ライラは愛人から妻になり,なんとかバスティエンを守ろうとしたのでした。この気持ちがバスティエンに伝わるでしょうか・・・。連作のエピローグということで,二組の夫婦とそれぞれの家族が登場しての大団円となりますが,大御所リン・グレアムの作品にふさわしい充実のロマンス作品です。


タグ:ロマンス
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