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屋根裏の聖母 [シャロン・ケンドリック]

SHALOCKMEMO1270
屋根裏の聖母 Claimed for Makarov's Baby
( Bond of Billionaires 1 ) 2015」
シャロン・ケンドリック 中村美穂





 原題は「マカロフの赤ちゃんのための要求」
 ヒロイン:エリン・ターナー(?歳)/元秘書,カフェの店員/緑色の目,茶色の髪,ホッソリとした体/
 ヒーロー:ディミトリ・マカロフ(36歳)/実業家,ロシアの新興財閥/金色の髪,ファベルジュと盆栽を収集,彫りが深く威厳のあるロシア系の顔立ち/
 左のMB版とHQ版を比較するとこれは,もう明らかにHQ版の勝ちですね。ヒーロー,ヒロインのイメージがMB版ではすっかり損なわれてしまっています。シャロン・ケンドリック作品は「シンデレラは似合わない(SHALOCKMEMO1187)」で,ロキシーというとても魅力的なヒロインを読みましたですが,もうあれから三カ月も経っていたのですね。さて,本作は連作「Bond of Billionaires」の第1作。次作「The Sheikh's Christmas Conquest(2015)」のヒーロー,ジャズタランの国王,サラディン・アル・メクタラも本作に登場します。
 ヒロイン,エリン・ターナーはかつて新興財閥(オリガルヒ)ディミトリ・マカロフの秘書として働いていた時期がありました,ディミトリの仕事中毒,そして無軌道な私生活について行けずに,辞職したのですが,もっともそのきっかけになったのは出張から帰国したはずなのに連絡が取れなくなったディミトリを心配して家に行ってみると,見知らぬ美女がいるのに驚きます。女性を追い出したディミトリはエリンを求め,秘書とボスの関係を超える関係を持ってしまいます。秘書としてこれ以上やっていけないと,エリンは辞職を願い出るのですが,アッサリとうなずかれてしまったのでした。数年後,エリンは妹と二人で小さなカフェを経営し,カフェの上階の屋根部屋で,ディミトリとの子レオと二人暮らしをしてきたのでした。そして,カフェの経営を安定させ,レオの将来の生活資金を確保するため,同性愛者のシコと偽装結婚をしようとしていたところに,ディミトリが現れたのです。いずれレオの存在は知られてしまうかもしれないと覚悟していたエリンですが,レオを隠していたことを非難され,レオに会わせろと要求するディミトリに,レオが混乱しないように少し時間が欲しいと必至に頼み込むエリン。富豪である自分に経済的援助を求めず,独力で息子を育てようとするエリンを,ディミトリは敬意を感じたのでした。エリンの居場所をディミトリに教えたのは妹のタラでした。レオが次第に大きくなり父親の存在を知りたがる時期がやがて来ることを心配したタラが,エリンとディミトリの関係修復を願ってしたことなので,エリンはタラを責めることが出来ませんでしたが,やはりレオに突然ディミトリに会わせパパだよと教えることは絶対に避けたいことでした。レオは丁度その時間幼稚園に行っている時間で,ディミトリとエリンがリムジンで待っていると,レオが幸せそうにカフェに帰っていく姿を目にし,レオの将来についてあれこれと思いを巡らせるディミトリでした。二人はそのままディミトリの契約相手である中東の国王に会うため,エリンを秘書として連れて行くことになります。この中東の国王が次作のヒーロー,サラディン・アル・メクタラです。やむを得ずディミトリに従って行かざるを得ないエリン。そして彼の国で,乗馬の名手であるサラディンの挑戦を受けて乗馬勝負に挑むディミトリを,危険を承知で仕事にのめり込む昔の姿を見たエリンは怪我のないことを祈るばかりでした。しかし案の定,サラディンの馬が突然前足を挙げたときに助けようとしたディミトリが全身打撲を負ってしまいエリンの心配は的中するのでした。君が去って以来自分は変わったというディミトリですが,エリンは言葉とは裏腹にディミトリの本来の姿は変わっていないのではないかとディミトリを信用することは出来ませんでした。このことがきっかけで契約はうまくいき,帰国後,遂にレオとディミトリは対面を果たします。これほど優しくなれるかと思えるほどディミトリはレオに優しく接し二人は意気投合してしまいます。この姿に多少の嫉妬を交えながらもエリンはレオの将来についてディミトリと交渉しようと決意するのでした。そしてディミトリの古里ロシアへの休暇旅行。そしてエリンはディミトリがなぜこれほどまでに仕事にのめり込み,永続的な関係を結ぼうとしないのか問い詰めていきます。やはり両親の虚飾の結婚生活がその背景にあることが分かり,エリンは少しディミトリを理解できたような気がするのでした。さて二人の関係はどうなるのでしょうか。そしてレオの将来は・・・。
 自分の生活を含め,秘書以上の思いをディミトリに捧げてくれるエリンの気持ちが次第にディミトリの生活や人生観を変えていくことが克明に描かれた秀作です。そして息子を愛し,ディミトリにタイしても影響力を与えていくまさに聖母のような存在,そんなエリンの姿が素敵です。


タグ:ロマンス
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永遠に失われた初夜 [キャシー・ウィリアムズ]

SHALOCKMEMO1269
永遠に失われた初夜 The Wedding Night Debt 2015」
キャシー・ウィリアムズ 山科みずき





 原題は「初夜の負債」
 ヒロイン:ルーシー(ルース)・ルイス(24歳)/ボランティアの教師/葦のように細い175センチあまりの長身,バニラブロンドの髪,数学学士/
 ヒーロー:ディオ・ルイス(?歳)/実業家/漆黒の髪,ブロンズの肌,銀灰色の瞳,黒く濃いまつげ,引き締まった口もと/
 6月20日刊の作品がダウンロードされましたので,購入した作品を整理しました。出版順からすると逆ですが,本作から読み始めました。ノンシリーズ作品です。5月刊の「いけない魔法(SHALOCKMEMO1246)」のヒロインが小学校教師でしたが,本作のヒロイン,ルーシーはあまり環境の良くない地区にある民間の放課後クラブ(児童館のようなもの?)でボランティアとして働きます。2年前,会社社長の娘だったルーシーが憧れていたハンサムなディオからプロポーズされときは天にも昇るような気持ちでした。育ちが良く世事に疎かったルーシーは,このプロポーズが企業買収がらみの便宜的なものだという婚約者と父の話を立ち聞きしてしまいます。「父は娘を身代わりに生き延び,ディオは大金を積むだけでは手に入らないものを,つまりは家柄の良い妻を得るというわけだ。」ということに気付いたルーシーですが,父から認められたいと幼い頃から頑張ってきたルーシーはおとなしくこの便宜的結婚に従います。それから一年半もの間,ルーシーは夫の社交的な行事に付き合い,寝室は別にするいわゆる仮面夫婦を演じてきたのでした。柳の木のように細く,髪はブロンドに輝き,圧倒的な美しさを備え,華やかな容姿の下に汚れのない気品を漂わせ,気高い美しさはモデルや社交界の女性たちも及ばない理想的な妻をルーシーは演じ続けます。そして,父の死。ルーシーはもはや仮面夫婦を演じ続ける意味は無いと判断して,ディオに離婚を申し出ようとするのです。しかしルーシーは自分の父が会社の経営を悪化させてしまったというぐらいのことしか父を理解していませんでした。実は父ロバート・ビショップはあくどい手法でディオの父を苦しめていたのです。そのためディオは復讐のため会社の乗っ取りを計画していたのでした。ルーシーはいわばそのためのおまけに過ぎなかったのです。おまけで結婚した女性,ところが,ディオにとってルーシーはそれだけの存在ではなく「彼女の顔立ちの何かが常に彼の心をとらえる。あからさまな性的魅力は無いし,親しみやすい美しさでもない。それでいて,彼女のもつこの世のものとも思えない魅力についてささやく声が,いつも彼の心を引きつけてきた」のでした。すでにこの時点でディオはルーシーを愛していたのです。離婚をいいだした妻に対し,この気持ちをあからさまにしたくないディオのプライドがルーシーを引き留めるのをためらわせます。そして,気付いたときにはルーシーはもう家を出ていたのでした。
行方を捜し当てて再会したルーシーは,白いTシャツに色あせたジーンズをはいてポニーテールに髪を結んだ若々しい女性に変身していました。これまで見たこともないルーシーの姿にディオは逆に若さと性的魅力を感じてしまうのです。そして家に戻るように説得しようとするディオにルーシーは真っ向から立ち向かおうとします。「そう,私はディオを憎んでいる。彼は不純な動機で私を結婚に追いやった。」教師になりたいという夢を結婚という檻の中に押し込めてしまったディオから逃れ,今は環境の良くない地域の恵まれない子供たちに勉強を教えるボランティナの教師として働いていたのです。しかしディオはこの環境の良くない地域に自分の妻が生活していることに危機感を持ちました。そしてルーシーが教えている崩壊しそうになっている建物を改装してやるから家に帰るようにルーシーを説得しようとするのです。お金で何でも解決できると考えているディオにルーシーは再び憤りを感じます。そしてそんなディオに惹かれている自分の体に最も憤りを感じてしまうのでした。その後のディオの素早い行動力に押しまくられるルーシー。そしてそれに気持ちは反抗しつつもつい従ってしまうルーシー,これまで父に従い,夫に従ってきた習性から逃れられない自分にいらだつ気持ち,そんな複雑なコンプレックス状況の中で,「ディオはプライドが高くて,頑固で,でも私はそんな彼をどうしようもなく愛している。」そして,その気持ちをディオに知られたくないというかなりねじ曲がった状態のルーシーでした。そして,昔語りに自分の父とディオの父のトラブルを聞き,自分が如何に世間知らずでディオの言葉を勘違いしていたかを知ったルーシーは・・・。キャシー・ウィリアムズお得意の揺れ動く主人公たちの気持ちの変化を見事に描ききった作品です。


タグ:ロマンス
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