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7月のまとめ [toppage]

ラニーニャの影響か梅雨が長引く7月でしたがやっと梅雨明けし,連日の猛暑が始まりました。
さて,7月はついにSHALOCKMEMOが1300を達成しました。今月は31日間で30冊の読了。まずまずのペースです。
さて今月の閲覧履歴のベストスリーは,
1位 公爵と内気な乙女 クリスティン・メリルSHALOCKMEMO1280
2位 幻を愛した大富豪 ケイトリン・クルーズSHALOCKMEMO1295
3位 ペントハウスの無垢な愛人 キャロル・モーティマーSHALOCKMEMO1294
となりました。「公爵と・・・」はぶっちぎりの1位でした。

なお,7月のイチオシ作品は,
○ 公爵と内気な乙女 クリスティン・メリルSHALOCKMEMO1280
○ 薄幸のシンデレラ レベッカ・ウィンターズSHALOCKMEMO1282
○ 灼熱の足枷 メイシー・イエーツSHALOCKMEMO1285
○ ひと夏かぎりの情事 マギー・コックスSHALOCKMEMO1289
○ 情熱の罠 リン・グレアムSHALOCKMEMO1293
○ 鷹王と純潔の踊り子(大富豪の結婚の条件 4) アンディ・ブロックSHALOCKMEMO1298
○ 億万長者の残酷な求婚 モーリーン・チャイルドSHALOCKMEMO1308
の7作となりました。
タグ:閲覧履歴
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スペイン富豪の完璧な妻 [ミシェル・スマート]

SHALOCKMEMO1309
スペイン富豪の完璧な妻 The Perfect Cazorla Wife 2015」
ミシェル・スマート 井上絵里





 原題は「完璧なカソルラの妻」
 ヒロイン:シャーロット(チャーリー)・カソルラ(26歳)/障害者児童デイケアセンターのボランティア/普通の背丈,女らしい曲線美,情熱的で朗らかな笑い声,バニラの香りの肌/
 ヒーロー:ラウル・カソルラ(?歳)/ホテルチェーン・オーナー/青い目,高い頬骨に熱い唇がっしりした顎/
 父との不和から家業を捨ててIT企業を興し成功を収めたラウルでしたが,父が病に倒れ,自分の企業を売って家業のホテル業を継ぎ,経営を立て直しました。しかし,車椅子生活を送る父からは相変わらず自分の成果を無視され続けています。一方,やはり父から捨てられ,母とともに暮らしていたチャーリーはホテルのエンタテイナーをしている時にラウルと出会って目眩く1カ月を過ごし,たちまち富豪との結婚というシンデレラのような出来事に夢中になっていました。ところがスペイン名家のカソルラ家の嫁にふさわしい知性と振る舞いを要求され,息の詰まるような日々を送っていました。ある日夫と激しく口論したチャーリーは勝手にしろという夫の言葉を真に受けてカソルラ家を後にします。そして夫の金でいくつかの事業に取り組みましたがどれも成功せず,今は障害を持ったこどもたちのデイケアセンター,「ポコ・リオ」でスタッフとして働いているのでした。ところがセンターの経営が行き詰まりつつあることを知り,恥を忍んで夫に資金援助を申し込もうと,事務所を訪れたのでした。ラウルからは別居後1000万ユーロが送られてきましたが,チャーリーは自分のためにそれを使わず,父や異母兄たち,シングルマザーだった母のために家を購入するなど,家族のために使うだけでした。今のセンターでの仕事は気取ったカソルラ家での生活とは異なり,自分らしさを取り戻し,子供たちとの交流をすっかり楽しんでいたのです。しかしこのままではセンターの古びた建物は売却されて子供たちも行き場を失ってしまいます。近くに新しいセンターとして格好の物件があるのですが,そこを買い取るだけの資金がありません。2年間も別居生活を送り,一度も自分を訪ねてこない,つまりすっかり愛を失ってしまった夫にもう一度自分に資金を提供して欲しいと頼むのは,やりきれない思いでしたが,もうそれしか方法は残されていませんでした。ラウルは条件つきで資金提供を承諾します。それは新しい物件の改築が住むまでの4カ月間,再度家に戻り,自分と夫婦生活を続けるというものでした。3年間の結婚生活の後ラウルは別居していた2年間チャーリーを忘れることが出来ず,他の女性との関係は一切持っていませんでしたが,いつもマスコミから注目されているラウルが他の女性たちといる姿は何度か報道されています。チャーリーはそれを自分への愛がすでに無くなっているものと思い込んでいます。しかし4カ月だけ仮面夫婦を演じれば無事に離婚し,センターで自分らしい生活を送れることを考えるとこの申し出は断ることの出来ないものでした。そして契約書に書かれた自分名義でない物件の購入の内容に激怒したチャーリー,それをチャーリーの事業能力のなさを指摘され,完成まで自分の監視の下で事業を成功を確実にするのだと冷静に説明され,反論することが出来なくなるのでした。売買契約の完成までの4日間はベッドを共にしないと言い切るチャーリー。どこまでも自分を嫌い,頑なに妻であることを否定しようとするチャーリーを,誘惑することで家を出て行った妻を罰しようとする気持ちも働いて,ラウルはひたすら妻との生活を待ち望むのでした。その後,チャーリーが作った改築計画を超有名建築家が褒めそやしたことや,資金集めのための船上パーティーにチャーリーがしっかりした計画を作っていること,そして何よりチャーリーを迎えに行ったときセンターの子供たちを直に見てその交流を楽しんでいる自分を発見したことなど,ラウルは次第に妻を誤解し,その気持ちを考えてこなかったのではないかと思うようになって行きます。そして決定的だったスペインのトマト祭りにセンターの子供たちを連れて行くのに付き合わされ,楽しい数時間を過ごしたことなどから,これまで自分が如何に高慢で妻の能力を低く見ていたかを知らされます。自分が父からいつも冷たくその能力を疑われてきたことから,父のようにはなるまいと思ってきたラウルが実はチャーリーに対して同じコトヲしていたことに気付き,愕然とするのでした。それからはラウルは妻の計画を全面的にバックアップし,遂に船上パーティを大成功させて得たチャリティ資金100万ユーロを改築の他にも数カ所のセンター開所に向けてチャーリーを助けていくことを提案するのでした。そして,嬉しい知らせをチャーリーから聞かされるのです。エピローグは3年後のカソルラ家を描き,ハッピーで暖かな気持ちに読者を導いてくれます。バルセロナとバレンシアを舞台にしたオススメの1作。


タグ:ロマンス
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億万長者の残酷な求婚 [モーリーン・チャイルド]

SHALOCKMEMO1308
億万長者の残酷な求婚 Having Her Boss's Baby
( Pregnant by the Boss 1 ) 2015」
モーリーン・チャイルド 八坂よしみ





 原題は「上司の赤ちゃんを身ごもって」
 ヒロイン:アーニャ・ドノバン(28歳)/アイルランドのホテルのマネージャー/鳶色の髪,グリーンの瞳,長身/
 ヒーロー:ブレイディ・フィン(?歳)/ゲーム会社共同経営者/黒髪,がっしりした顎,ブルーの目/
 なかなか頑固なヒロインの登場です。もうこれだけでNiceHeroineですね。男性に頼らず,自分の主張をしっかりもち,しかしヒーローの魅力にメロメロになりながらも,妊娠した結果を自分で受け止め,自分を愛してくれる人でなければプロポーズさえ断ってしまうプライドの高さ。読者誰もが,ヒーローに速く愛に気付け!と言いたくなってしまうストーリー展開です。ディザイア作品としてはありがちなストーリーではありますが,ヒロインの魅力にすっかり嵌まってしまうこと間違いなしです。ヒロインの職業がホテルマネージャーですが,「城」と言われるほど古い歴史的建造物をホテルとして残すためにこの建物を買い取ったヒーローに自分の思い描く改修計画を納得させ,さらにヒーローの愛をも勝ち取ってしまうしたたかさが,このアイルランド娘,アーニャ・ドノバンにはあります。そして妊娠をヒーローのブレイディ・フィンに隠して自分一人で育てよう考えているアーニャに愛の在り方を説き,自分の心の声に従いなさいと諭すアーニャの母の姿や言葉も説得力があります。ヒーローの職業がゲーム会社の共同経営者と現代的な姿と,古さを尊重し家族を大切にするアイルランドらしい頑固さとがうまくマッチして,変化に富むカップルの姿を融合させていく作者の腕前に脱帽です。間違いなく楽しめる作品。イチオシです。さて,次作では,ブレイディの共同経営者ライアン兄弟の兄マイクと,本作でもちょっと顔を出すジェニー・マーシャルとのなにか曰くありげな関係が発展していくようです。そして3作目はその弟ショーンが登場しますので3部作のこれからが楽しみです。


タグ:ディザイア
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愛し合った記憶 [スーザン・スティーヴンス]

SHALOCKMEMO1307
愛し合った記憶 Ruthless Boss, Dream Baby
(恋という名の奇跡 2=Untamed 2 ) 2011」
スーザン・スティーヴンス 小池 桂





 原題は「冷酷な上司,夢の赤ちゃん」
 ヒロイン:マジェンタ・スティール(28歳)/「スティール・デザイン」企画担当/長い黒髪/
 ヒーロー:グレイ・クイン(32歳)/「スティール・デザイン」新社長/背が高く肩幅が広い,黒髪,やや緑がかったブルーの目,バランスの取れた精悍な顔立ち/
 オフィスでうたた寝をしているうちにタイムスリップ・・・。これは本当の意味でのタイムスリップという奇跡ではないように思います。夢なのかはたまた現実なのか,その辺りが不明瞭なまま物語が進行していきます。「『不思議の国のアリス』が眠っている間にウサギの穴に落ちたように,私も眠っている間に六十年代に迷い込んでしまったのだ」という一文が,その後のストーリーを決定づけます。1960年代イギリスという男性中心社会の時代を描いて,男女の社会的地位の差やセクハラに対する感覚などネタは盛り沢山ですが,これはまぁどの時代でもロマンスと妊娠という普通のテーマに時代的色づけをしたという感じになってしまっています。夢の世界での妊娠が現実ではどうなのか・・・そんなところにも興味を引きつけ,その辺りがタイムスリップもののテーマかなと思いましたが,全編にわたる軽口の応酬が作品をちょっとふざけた感じにしているため,やっぱり夢じゃなかったの?と思わせてしまう,これは翻訳のなせるワザなのかもしれませんが,深刻にならずに終わってしまうところが軽い読み物的で,逆に楽しい気持ちにさせる効果をもたらしてくれます。


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夕映えのロンドン [シャーロット・ラム]

SHALOCKMEMO1306
夕映えのロンドン Pagan Encounter 1978」
シャーロット・ラム 馬渕早苗




PB-168
16.05/¥700/174p

R-0044
80.07/¥450/174p


 原題は「快楽主義者との遭遇」
 ヒロイン:リー・ウエスト(27歳)/弁護士事務所秘書/長身,卵形の顔,青い眼,淡いブロンドの髪,スリムな姿態/
 ヒーロー:マティソン(マット)・ヒューム(?歳)/ワールド・ガゼット社社長/灰色の目,銀筋の混じった黒髪/
 「ロマンスタイムマシンの1作」です
従妹のアンが恋人に捨てられたという訴えに腹を立てているリー。アンの就職先である大新聞社の「ワールド・ガゼット社」の社長,マット・ヒュームがその相手でした。愛らしく末っ子で両親の愛を一身に受け,兄姉たちとはいつも一人特別扱いされていたアンはリーを頼ることがしばしばあり,リーもアンの頼みをいつも聞いてしまうのでした。リーは小さい頃から独立心を持ち,17歳で最初の恋に落ちますが,今はフィリップというコンピューター技師と婚約しています。しかし,結婚まではフィルの要求には従えないといつも断りの言葉を口にしています。ところがフィリップがサウジアラビアへの六ヶ月の出張の前に結婚しようと申し出たのにリーは出張後に結論を出そうとやんわりと断ります。ところがエレベーターの中で出会った男性から突然キスされ,不思議とそれに反応してしまっている自分に気付き愕然としたのでした。そしてその男性こそ,アンを捨てたマットだったのです。ここからマットの傲慢で容赦ないリーへの侵攻が始まります。なんとかその魔手を逃れようともがくリーですが,同時に身を投げ出したいという気持ちとも戦うことになります。そして自分の秘書としてリーを新聞社に無理やりヘッドハンティングしてしまいます。そんなこんなで,すっかりマティソンに取り込まれてしまうリー。マットを付け狙う美女キャシー・ロードとのいざこざもちょっとしたエピソードに終わり,マットへの愛におぼれていくリー。ちょっとヒロインとしては情けないかぎりのリーのロマンスの物語。1978年のシャーロット・ラムの作品です。


タグ:ロマンス
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幸福の幻影 [ケイ・ソープ]

SHALOCKMEMO1305
幸福の幻影 Mother and Mistress 2003」
ケイ・ソープ 村山汎子





 原題は「母で恋人」
 ヒロイン:ローレン・ターナー(29歳)/イギリス人ナニー,元カナダの「マン・フライデー・エージェンシー」所属/身長170センチ,金髪,くっきりした目鼻立ち,/
 ヒーロー:ブラッド・ラクストン(39歳)/国際企業の社長/身長185センチ,黒髪,青い目,広い肩,分厚い胸,筋肉質の腕/
 イギリスの富豪の一人娘のナニーに飛び込みで応募してきた女性,それは実は娘の実の母親だった。こんな幕開けの物語です。16歳で妊娠し,相手には捨てられ,一家でカナダに移住したローレンは12年後,探偵を雇い娘の行方を突き止めます。それが大企業の社長ブラッドでした。町のパブでこれからどうしようと悩んでいたときナニーを募集していることを小耳に挟みます。娘に一目会いたい一心でラヴェーラ屋敷の扉をノックします。使用人が出てくるとばかり思っていたローレンは,ブラッド本人が扉を開けたのに驚き,屋敷に入ってすぐに魅力的なブラッドに惹かれてしまいます。のちに,ブラッド本人もこのローレンとの初めの出会いが,自分にとって愛する人を見つけたと思わせる運命の出会いでした。娘のケリーとの相性を確かめたいと,そのまま荷物を取りに行き,屋敷に住み込むことになります。初めはもうナニーが必要な年齢ではないとローレンを無視しようとしていたケリーですが,次第にローレンとの会話が成り立つようになり,いつしか二人は大の仲良しになって行くのでした。そしてブラッドの誘惑が始まります。ケリーに気付かれないようにと心がけるローレンも,いつしかブラッドの誘惑が待ちきれなくなってしまい,ついに二人は深い関係を築いていき,ついにブラッドはローレンとの結婚を決意します。そしてケリーもまたローレンが継母になることを喜んでいることが分かります。いつ,ケリーが実の娘だと告白しようかと気をもむローレン。しかしその事実は意外な人から明かされてしまうのです。ローレンのかつての同級生と偶然観劇の会場で出会ったことがきっかけでした。モーリンは軽薄で豊かな生活を送ることだけを考えている欲深な女性でした。数日してローレンとブラッドの結婚の記事が出たことを知り,披露パーティに招待もしないのに押しかけてきたモーリン。そしてローレンに強請を賭けてきたのです。翌朝強気でモーリンの要求をはねつけている会話をブラッドに聞きつけられてしまいます。そしてケリーの実母であることを知られてしまうのでした。通常であれば,ここで結婚は解消され,ローレンが家を出て行く場面ですが,ローレンは家に残り,ブラッドとケリーを説得しようと試みます。この当たりが他の作品との大きな違いです。さて,ローレンの挑戦は成功するのでしょうか?
 エピローグでは10年後のラクストン家が描かれていますが,乗馬の得意なケリーはなんとあの職業を目指しているのでした。全編にあふれる母性と深い愛情を持つローレンの姿が描かれている秀作です。


タグ:ロマンス
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忘れられぬ抱擁 [メラニー・ミルバーン]

SHALOCKMEMO1304
忘れられぬ抱擁 Melendez Fogotten Marriage
( Bride on Approval 2 ) 2010」
メラニー・ミルバーン 茅野久枝





 原題は「メレンデスの忘れていた結婚」
 舞台:ロンドン,セビーリャ
 ヒロイン:エミリア・ルイーズ・メレンデス(旧姓:シェルヴァートン)(27歳)/ホテルのバー「シルバー・ルーム」ピアニスト/小柄,手と脚は日に焼けていてお腹のたるみはない,灰色がかった青い目,蜂蜜色の髪/
 ヒーロー:ハビエル・メレンデス(?歳)/企業買収会社経営/長身,真っ黒な瞳,濃い眉,漆黒の髪,鼻筋が通り顎は力強く,深く豊かな声/
 成長譚を描いては力量を発揮するメラニーのちょっと前の作品です。このシリーズは2011年の邦訳が多く出ましたが,まだほとんどが未読ですが,「同意の花嫁」とするシリーズ名は,本当は同意していないのに・・・という言外の意味が含まれているのかもしれません。本作を読んでそんな感じを持ちました。記憶喪失ものと夫婦の復活を描いた作品ということで,斜麓駈の好きなテーマです。ロマンス度がちょっと高すぎる気もしますが,夫婦ものにはありがち。それよりヒロインが結婚していた間の2年間の記憶だけ都合良くなくなっていることが,ややわざとらしさを感じさせてしまい,他の方の読後感を読んでもあまり良い印象を本作に持っていないことが気がかりです。思えばヒーローもヒロインも親の子供に対する責任放棄のしわ寄せを受けて育ってきた,いわゆる愛情不足者たち。ヒロインはだからこそ夫の愛が欲しいと願っているのに,ヒーローはだから愛を信じちゃいけないと思っている,このすれ違いが,本作の中心になるテーマなのだと思います。かなり深い夫婦者をテーマにしているんじゃないかと思うのですが,これは舞台で演じたり映画化したりすると面白いなという感じがします。決して雪に閉じ込められた別荘での物語ではありませんし,それより逆に陽光に照りつけられるセビリア(訳ではセビーリャとなっていますが,セビリアという表記の方が慣れているので敢えてそうします)の大邸宅で繰り広げられる点では真逆なのですが,なんだか共通点があるような閉塞感を感じてしまうのは,舞台的な演出のせいでしょうか。表現が映像的なせいでしょうか。それでもヒロインのエミリア,ヒーロー,ハビエルのインナーワールドに読者を誘い込むメラニーの巧みな筆裁きによるものではないかという気がします。いつエミリアの記憶が戻っていくのかというサスペンス要素もその要因になっているような気がします。その面で,本作を記憶喪失ものにしたメラニーの術中に易々と嵌まってしまったのかもしれません。妊娠と流産,その事実を淡々と告げる医師たちのドライな言動も逆に客観性を感じさせ,ヒロインを嫌う家政婦の言動もちょっと不気味な雰囲気を感じさせます。唯一明るい面はエミリアとハビエルの妹イザベラとの心の交流ですね。最後はハビエルの背中を押すイザベラがとても爽やかで,温かく,本作を兄への思いやりと幸福感を感じさせるハッピーな役柄を一人で背負っている感じがします。
 MB版の表紙イメージのモデルさんのお腹のすっきり具合がすごく綺麗で,背後の男性モデルさんの腹筋の割れ具合と合わせて,とても目につく作品です。エミリアの風貌は最低限しか表記されていないのですが,この表紙イメージを見ただけでヒーローがなぜ惹かれたかがイメージできる点がいいですね。


タグ:ロマンス
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パリの青い空 [シャーロット・ラム]

SHALOCKMEMO1303
パリの青い空 Dangerous 1981」
シャーロット・ラム 加藤しをり




HQB-742
16.07/¥670/208p

R-0430
85.12/¥550/156p


 原題は「危険」
 ヒロイン:ローラ・クローフォード(?歳)/療養中の看護師/ほっそりした華奢な体つき,褐色の髪,色白の肌/
 ヒーロー:ドメニコス・アエゲソス(?歳)/富豪/すらりとした長身,せっかちな歩き方,頑固そうに張り出した顎,引き締まった褐色の肌,鼻筋が通り,髪は黒,180センチ以上の身長,幅広い肩/
 働き過ぎで肺炎を悪化させてしまった看護師ローラ。病後の療養を兼ねて16歳の少女アマンダとその祖母グレイ夫人の付添人兼家庭教師としてパリへ旅立つことになります。父親に反抗して奇抜な服装ばかりするアマンダ。「年長者をからかい,相手が怒り出すまで反抗を試みて楽しんでいる」ティーン・エイジャー独特の行動パターンを父親のギリシア系富豪のドメニコスは理解できずにいます。4歳で実の母に死に別れ,8歳の頃から寄宿学校に追いやられていたアマンダの心中をおもんぱかり,ある程度自由を与えつつ信頼を勝ち得ようと少しずつアマンダの心の中に入り込んでいくローラの見事な話術が光ります。18歳の頃からずっと同じ病院で看護師としてくる日も来る日も病院の中で生活してきたローラにとっては,我が儘を言う患者に対応する仕方はお手の物でした。ローラ自身は15歳の時両親とともに乗っていた車の事故で自分だけが助かり,その後看護師の道を目指してきたのです。ユーモアのセンスにあふれつつ真面目な性格のローラ。娘のアマンダばかりでなくグレイ夫人の信頼も得,ドメニコスも仕事を兼ねてパリにやって来ます。パリ見物で出会った少年ピエールとその叔父マルセル・マランとの交際が始まってしまいます。その様子を見て嫌みを言ったりマルセルを敵のような目で見るドメニコス。自分の命に従わずに次々とアマンダやグレイ夫人の信頼を得てしまうローラに,実はドメニコスが最も惹かれていたのでした。しかし自分の母親であるグレイ夫人の過去の過ちを絶対に許せない気持ち,そして妻に裏切られ,一人娘を押しつけられてしまい,その娘すら反抗ばかりしているドメニコスにとっては女性は絶対に信頼してはいけない存在。そんな思いを隠そうともせずにローラとマルセルの関係を疑ってかかり,さらにはアマンダと親しく話すピエールを遺産目当ての危険な存在と思い込むドメニコスに,実はローラも惹かれていくのでした。何故に?と思ってしまうのですが,そこは恋は理屈を超えるということなのでしょう。やがて和解の時がやって来ます。「君のような人は初めてだ。例外のない規則はないというが,君はその例外かもしれない。君のことだけは僕も本当に信じられそうな気がする。」と,ドメニコスに言わせるまでになりますが,ローラはそれでもまだ気を許せません。そして女性を信じられなくなったドメニコスは自分の心の傷を打ち明け始めます。その心の傷を癒やしたいと思ってしまうローラでした。「愛とは僕が考えていたようなものとは違うらしい。」「みんなそうよ。愛ってそういうものなのよ。何が出てくるか誰にもわからないわ」「愛はクリスマスのようなものだな」という二人の会話がパリを舞台にとても洒落ていて素敵な作品です。


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氷の結婚 [ジャクリーン・バード]

SHALOCKMEMO1302
氷の結婚 Husband on Trust
( Greek Tycoons 4 ) 2000」
ジャクリーン・バード すなみ 翔




HQSP-84
15.04/¥540/201p

R-1649
01.02/¥672/156p


 原題は「信頼できる夫」
 ヒロイン:リサ・ローソン(23歳)/同族会社「ローソン・デザイナー・ガラス」経営者/175センチの長身,抜群のプロポーション,つんとそり上がった胸,細いウエスト,引き締まったヒップ,すらりと伸びた長い脚,プラチナ色の筋が混じった金髪/
 ヒーロー:アレックス・ソロモス(35歳)/巨大企業「ソロモス・インターナショナル」の代表者/筋肉質の体に185センチの長身,濃い茶色の目,きりりとした眉,びしっと通った鼻筋/
 同族会社の企業乗っ取りにからむ夫婦のトラブルを題材に夫婦の信頼をテーマにした作品です。ビジネスの世界では誰も信頼できない。たとえ愛する夫でも。企業乗っ取りのためには結婚すらビジネスの対象とするかもしれない夫を愛してしまった女性リサがヒロインです。自身親から受け継いだ会社の株52パーセントをもつリサは,母の死後,社会への還元で善行を施そうと5パーセントを寄付します。義父が13パーセントをもっていますが,義父の息子,義理の兄はかつて自分に言い寄った信用できない男性。義父は母亡き後も自分を大切にしてくれており,信頼できるのですがそれでもいい加減な男である自分の息子には弱い面があります。残り35パーセントは共同経営者のリー家がもっていますが,これも含めて義父のもつ株を義兄が哀れっぽく頼み込んだらどうなるか分かりません。そんな状況になった時あの寄付した5パーセントの株が会社の経営権を維持するためにはどうにも必要になってくるのです。しかしそのことに気付いたのは自分が夫に騙されていたことに気付いた後でした。夫はギリシア人で大企業の代表者アレックス。その男性的な魅力にすっかりメロメロになりあっという間にそのプロポーズを受け入れ結婚したのですが,夫の企業の子会社が自社の株を取得していたことに気付いたのはずっと後のことでした。そして夫の不倫の現場を見て離婚を切り出したとき,会社そのものを奪われつつあることにやっと気付いたのです。そして,リサは義兄と夫が結託していることを深夜の二人の会話を偶然耳にしたとき知らされます。二人の結婚が企業乗っ取りが目的であったことに・・・。もはや夫は信頼できない,会社も奪われ,結婚生活も失敗に終わってしまい,自分はこの後どう生きたら良いのだろう。義父の株はやはり夫がすでに買い取っており,残った株もすでに子会社買い占めていました。もう会社株の53パーセントは夫の手に渡っていたのです。そして夫は,「君を守るため」と下手な言い訳をします。「そうよ,彼にとってはわたしそのものがジョークなのよ。無知で世間知らずで,好きなとき好きなように利用できるただの人形。」「あなたは悪魔よ。肉体で私を虜にして全てを奪った。」「あんな道義心のかけらもない男に,いったいなんだって恋してしまったのかしら?女性の純真さにつけいり,まんまと結婚にこぎ着け,そして最も残忍なことに,その女性の相続財産を奪うなんて。」「そして,彼が愛を信じていないことも・・・」「こんな人を愛しているなんて,どうかしている。愛するに値しない人なのに。」こんな思いを夫に抱いたときですら,リサは夫に会うと夫に惹かれてしまう自分と戦い続けているのです。夫の行動にはなにか理由があるのでしょうか。こんな自分を傷つけて・・・。終結部分でそれが明らかにされますが,全編をちょっと悲しい雰囲気が漂い続ける作品です。


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さよならは言わないで [サンドラ・マートン]

SHALOCKMEMO1301
さよならは言わないで Blackwolf's Redemption
(恋という名の奇跡 1="Untamed 1") 2010」
サンドラ・マートン 松尾当子





 原題は「ブラックウルフの贖い」
 ヒロイン:シエンナ・カミングズ(?歳)/コロンビア大学院生人類学専攻/すみれ色の瞳,茶色と金色とベージュの混じった髪/
 ヒーロー:ジェシー・ブラックウルフ(?歳)/元軍人,投資家,ネイティブ・アメリカン/黒い瞳,高い頬骨,逞しい体/
 「自然のままの,野性の」という意味の「Untamed」シリーズの第1巻。HQロマンスの整理をしているうちに,「時空を超えたロマンス」のコメントを見つけて興味を持ちました。いわゆるタイムトラベルものですが,この手のもので作家が苦労するのは現在からどのくらいの時間が離れているかで調査の方も大変になるのでしょう。中世が舞台となるヒストリカルロマンスのようにかなり離れた時間であれば,多少のほころびも愛嬌のうちになるでしょうか近過去や近未来,特に数十年単位では,今は特に電子機器やファッションなど時代を象徴する物質的なものは記録が残っているので調べやすいのですが,本作のように一般の人々の女性に対する認識の違いなどを敏感に取り上げていくとなかなか微妙な問題も出てくるのだろうと思います。そういう点では本作はかなり優れた時代認識の差を,35年というあまり遠くない過去からの時の流れを取り上げ,読者に感じさせる記述が見事だと思います。2010年から1975年にタイムスリップしてきたヒロインのシエンナ・カミングズは,仲間とともに教授の指導の下,コロンビア大学でアメリカ国内の伝説的な場所のフィールドワーク中でした。ブラックウルフ山というコロラド州のネイティブアメリカンの遺跡を調査中でした。まもなくこの土地が民間に売りに出され,ゴルフ場や住宅地に変わってしまう予定です。工事に入る前に残っている遺跡を是非調査しておこうというもくろみでした。調査中にわかに黒雲と稲妻が襲い,シエンナは気を失ってしまいます。そして遺跡の巨大な岩の上にタイムスリップしてしまっていたのでした。土地を売る前に遺跡を訪れていた持ち主のジェシー・ブラックウルフは,気候の突然の変化とともに見知らぬ女性が現れたことに驚きますが,速く助けなければ助からなくなってしまうと,女性を抱き上げながら岩を慎重に降り,愛馬を駆って牧場に戻ります。若い頃妻との結婚生活がうまくいかずに離婚を経験しているジェシーですが,この女性を見たとたんしばらくぶりに守りたいという気持ちと欲望を感じたのです。低体温症にならないようにさまざまな手を尽くしている途中で美しいこの女性に手を触れないように必死で自分を抑えなければならなくなってしまいます。一方自分が1975年にタイムスリップしてしまったことをジェシーから聞いたシエンナはこのことを告げても信用してもらえないだろうという絶望感と,この男性なら自分を守ってくれるのではないかという思いとの間で揺れ動きます。そして荒天のため停電になり不安になった深夜,ジェシーに身を許してしまいそうになってしまいますが,プライドを取り戻し部屋に閉じこもってしまいます。元の時空に戻れるか,この時代に取り残されるのか。何の見通しも立たないまま翌日牧場を後にしようとするのです。ジェシーはそんなシエンナを車で町まで送り,長距離バス丁まで送るのですが,お金もバッグも持たずに車を降りたシエンナを見捨てられずバス丁に戻り,涙を流しているシエンナを抱きしめるのでした。そのまま家に連れて帰り,自分の牧場で秘書として働かないかと提案します。数日後,サンフランシスコでの商談にシエンナを伴い記録を取るようにと秘書の仕事をさせようとしたところで,思わずシエンナが投資先について口出ししてしまい,商談がまとまらないままになってしまいます。このサンフランシスコのブティック,会社,レストランでことごとく自分の存在を主張しようとするシエンナのプライドの高さに密かに魅力を感じるジェシー。離婚の痛手から二度と女性と深い関係になるまいと思っていたジェシーですが,この時シエンナを愛してしまったことに気付くのでした。そして生涯を共にしようとシエンナに先祖伝来の宝石を贈りプロポーズしようと遺跡を訪れた二人を再び雷鳴と稲妻が襲い,一瞬のうちにシエンナが消えてしまいます。2010年に戻ったシエンナが意識を失っていたのはほんの数分の間だったのです。このまま二人は時空に隔てられてしまうのでしょうか。作者はこのあと二人に奇跡とも言うべき再会の機会を設けるのですが・・・。
 再会に至る場面ではかなり無理やりシエンナの行動とジェシーの行動のタイミングを合わせようとしていますが超自然の力が無ければ二人の出会いも別れもないわけなので,まぁこれはまさに「恋という名の奇跡」というシリーズ名にふさわしい設定として許せる気がしますし,なかなか読み応えのある作品に仕上がっています。


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