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メイドを拾った億万長者 [キャロル・マリネッリ]

SHALOCKMEMO1286
メイドを拾った億万長者 His Sicilian Cinderella
( Playboy's of Sicily 3 ) 2015」
キャロル・マリネッリ 漆原 麗





 原題は「彼のシチリアのシンデレラ」
 ヒロイン:ベラ・ガッティ(23歳)/ホテルのメイド,デザイナー/黒い髪に緑の瞳/
 ヒーロー:マッテオ・サンティーニ(?歳)/実業家/黒い髪,ダークグレーの瞳/
 「涙のエンゲージリング(SHALOCKMEMO1179)」「メイドが愛した億万長者(SHALOCKMEMO1204)」に続く,シリーズ最終巻。イタリアの熱い物語がはじけます。幼なじみで美貌のベラと親友のソフィー,そしてヒーローのマッテオと親友のルカ,この二組の恋人同士のロマンスを描いた秀作です。ルカの父でシチリア西部の町ボルド・デル・チェーロのボス,マルヴォリオが遂に亡くなります。それまでこの街はマルヴォリオによって支配され,ベラの両親もこのボスによって人生を支配されてきました。ボスに逆らうことはすなわち死を意味します。まさに血の誓いによって支配された金と欲と血の関係。そんな生々しい関係の中で翻弄されるベラの人生。優れたデザイン感覚を持ちながらホテルのメイドでしかいられないのは,ベラの父がマルヴォリオの右腕であり,さらに母は身を売るしか生きるすべがないという悲惨な状況にあったからでした。5年前,まだ少年少女だったベラとマッテオは恋人同士になりますが,周囲の人々から蔑まれ,母を捨てることが出来ないベラはマッテオが島から逃れてローマに行こうと誘われたにもかかわらず,マッテオについて行くことは出来ませんでした。それをマッテオは自分がベラに捨てられたと思い込んでしまいます。しかしベラを忘れることは出来ませんでした。今はまっとうな実業家として成功したマッテオに対し,ベラは相変わらずホテルのメイドに甘んじていなければならなかったのです。その母も亡くなり,やっとのことでマルヴォリオが亡くなり,その支配下から逃れることができても,町ではいつも蔑まれた生活を送らざるを得ないベラでした。しかし親友のソフィーとルカの結婚式にベラは自分の才能の限りをつくしてウェディングドレスを縫い上げます。ボスに支配されていた人々がマルヴォリオの死により解放され,ルカとソフィーの結婚式はその最初で最大のイベントとなりました。そしてそこで再燃するマッテオとベラの関係。マッテオの熱い視線,ベラもまた今の自分の状況から逃れるためにマッテオの重荷になりたくないという最後のプライドからマッテオの誘いを断っていくのですが・・・。
 自分のせいでなく,生きるためには究極の選択をせざるを得なかった二人の美しくも儚い愛の軌跡を,熱いシチリアの空気の中で歌い上げた,まるでゴッドファーザーのような作品です。でも,あそこまで凄惨ではないところがロマンス小説らしさでしょうね。


タグ:ロマンス
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灼熱の足枷 [メイシー・イエーツ]

SHALOCKMEMO1285
灼熱の足枷 To Defy a Sheikh 2014」
メイシー・イエーツ 馬場あきこ





 原題は「シークに反抗」
 ヒロイン:サマラ・アル・アゼム(21歳)/ジャハール国王女(シーカ)/小柄,黒髪,黒い瞳,小麦色の肌/
 ヒーロー:フェラン・バシャール(31歳)/カドラ王国シーク/黒い瞳,引き締まった長身/
 16年前の事件がきっかけで親を失った二人。というより親同士の不倫がきっかけでサマラは国を失い,フェランはサマラの父を手にかけて復讐を果たします。そして復讐の刃は大人になったサマラがフェランを狙って仕掛けるという段階になったのでした。これはもうシェークスピア以上の国を賭けた復讐譚になるかと思いきや,一瞬の逡巡がサマラの手からナイフを奪ったフェランの勝利となり,フェランはサマラとの結婚こそこの長い間の復讐劇の終焉をもたらすものだと考えます。そこに愛情はなくともジャハールとカドラの民衆や政権を納得させられる方法だというフェランの説得にサマラも,それ以外の解決方法はなく,自分も復讐だけが生きる方法だと思っていたところから,未来に向けて生きることが出来るのだという希望が見えてくるのでした。オアシスでの二人だけの数日間ののちに,二人は宮殿に戻り,公式の場へと向かうことにします。ところがフェランにはサマラに告げなければならない事実がありました。15歳の彼が惨劇の間,ただ隠れていただけではなく,自らサマラの父に手をかけたのでした。それが自分を殺人者だという後悔の念に彼を駆り立てていたのです。サマラを愛し始めていたフェランはサマラに許しを得られるのか,というぎりぎりのところで愛を認められずに感情を押し殺す大人に成長させてしまっていたのでした。
 そしてサマラもまた,感情を押し殺すことが唯一生き残り復讐を遂げるためには必要なことだったのです。二人の結婚には互いの許しが必要でした。それを積極的にフェランに解き始めるサマラ。こんな複雑な運命に翻弄される二人の若者の心理描写がとても見事な作品です。激しい言葉の応酬の中に真実の愛の姿を描ききったイチオシ作品です。


タグ:ロマンス
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