SSブログ

暴君とナニー [アン・ハンプソン]

SHALOCKMEMO1291
暴君とナニー The Autocrat of Melhurst 1970」
アン・ハンプソン 柿沼摩耶





 原題は「メルハーストの独裁者」
 ヒロイン:クレア・ハリス(22歳)/乗馬学校アシスタント,ナニー/
 ヒーロー:サイモン・コンドリフ(37歳)/大地主/
 久しぶりの紙の本です。メルハースト・タワー,通称「タワー館」の主サイモン・コンドリフは村の大地主。両親を亡くした姪のリンディを引き取ったものの,どうも二人の関係はしっくりしていないようです。乗馬学校でアシスタントの職に就いたばかりのクレアは,親戚の家で世話になっていますが,リンディの乗馬学校での落馬がクレアの不注意によるものだとされて,解雇通告を受けます。ところが,サイモンはクレアに姪のリンディの世話係を頼むと依頼してきたのでした。タワー館に住むことになったクレア。表向きはナニーですが,6歳のリンディにとって,たった一人の身内であり叔父であるサイモンとは一生関係していかなければならない相手だと,リンディとサイモンの関係修復を心がけるクレアでした。そして,時々訪ねてくる隣の敷地の富豪の娘ウルスラ・コーウェルが出会ったときから自分を敵視していることに気付きます。サイモンに対する思いを誰にも話していないのに,そのことをウルスラが知るはずもありません。自分を敵視する必要に首をかしげるクレアですが・・・。クレアには当地にやってくる前に牧師のケンと友情を育んできました。メルハーストの牧師館の牧師が転地することを計画していることを知り,クレアはケンに募集に応募してみるよう勧めます。そしてそれがサイモンとクレアの間の関係に大きな影響を及ぼすとは想像もしていませんでした。まだ22歳と若いクレアは,男女間の感情の機微には余りに経験が無く,サイモンが自分にどんな気持ちを抱いているかもわかりません。自分が思いをもっているのと同じくらいの思いをもって欲しいと願ってはいても相手は大地主,自分は単なる雇われ人。二人の関係が進展することすら考えられませんでした。しかしなんとなく,ケンがもし牧師館に住むことになれば,サイモンは自分とケンの間を疑うことになるかもしれないという可能性には気付いていました。リンディは次第に落ち着きを見せ,サイモンとの関係も次第に親密になってきたのですが,時々ウルスラがあること無いことをサイモンに告げ口し,リンディや自分とサイモンとの関係を悪化させようともくろんでいることは明らかでした。しかしサイモンは全くそれに気付かず,その可能性を匂わせてみても,ウルスラがそんなことをするはずがないの一点張りです。そんな時,サイモンはクレアにプロポーズし,婚約することになります。突然のことに驚き,しかもウルスラとサイモンの関係は村の人たちが皆結婚するだろうと予想していることを知っているクレアにとって,このプロポーズはリンディがらみの利便的な方法に過ぎないと思うのでした。自分の出した方針に逆らうと逆ギレするサイモンですが,理屈が通ることには辛抱強く対応するサイモン。そんなサイモンの性格を見越して次々に新手の悪口を吹き込むウルスラ。サイモンを信じてはいるものの,時にウルスラの甘言に乗せられてしまう人の良いクレア。そして牧師館に引っ越してきたケンとの関係。悩みが尽きないクレアですが,ウルスラの父が亡くなってしまったことをきっかけに物語は急展開を迎えます。
 互いに相手を愛していてもそれを素直に口に出来ずにいるサイモンとクレアにリンディが時々子供らしい無邪気な台詞を言い,二人の関係を進展させていくところがなんともユーモラスでホッとさせられる作品です。


タグ:ロマンス
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

運命の回転ドア [シャーロット・ラム]

SHALOCKMEMO1290
運命の回転ドア Body and Soul 1994」
シャーロット・ラム 高田真紗子




K-406
16.06/¥670/156p

R-1291
96.12/¥640/156p


 原題は「肉体と魂」
 ヒロイン:マーティーン・アーチャー(27歳)/証券銀行社員/150センチぐらいの小柄で痩せ型,グリーンの瞳,赤褐色の髪/
 ヒーロー:ブルーノ・ファルカッチ(?歳)/銀行家/180センチくらいの長身,小麦色の肌,石に刻まれたような顔立ち,黒い髪,黒い瞳/
 複雑に入り組んだ愛憎をテーマにさせては右に出るものがいないシャーロット・ラムの作品。本作も憎んでいるように見せかけて本当は心から愛している相手との愛の物語です。そして何より驚くのが,脳腫瘍にかかった患者が生きがいをもって生きる意欲をもつことで腫瘍が小さくなり元気になっていくというストーリーです。原題の「Body and Soul」はそんな意味があるのでしょうか?
 証券銀行の経営者チャールズのもとで働き始め,元々持っていた才能を開花させて昇進を続け,みんなに頼りにされているマーティーン。しかし,チャールズは従弟のブルーノをイタリアから呼び寄せ,いずれ経営を任せるつもりだと言い出します。そのブルーノとマーティーンはある日偶然会議が行われるホテル入り口の回転ドアで一緒に挟まってしまい,互いをののしり合ったのが出会いでした。互いにその時,気持ちの中に互いを深く印象づけたのでした。会社にやって来たブルーノに表面的には慇懃に対応しているマーティーンですが,その男性的魅力に太刀打ちするためにはなんとか自分の気持ちを抑えつけなければならずに苦労しています。そして体調の悪いチャールズの代わりにブルーノが行くことになったローマの銀行家会議の最終日に遂に二人は深い関係を持ってしまうのでした。帰国を一日早めて先に帰ってきたマーティーンはその日のうちからインフルエンザで体調を崩し,出勤できなくなってしまいます。ブルーノはその話しを信じず,マーティーンが故意に自分を避けてしまったと感じているのですが,数日後マーティーンのフラットを急襲し,細々とマーティーンの世話を焼くという思いがけない行動に出るのでした。チャールズとマーティーンの関係を疑うブルーノの言葉に敢えて説明も打ち消しの言葉も話さないため,ブルーノはさらに二人の関係を疑い,長期の出張に出てしまうのでした。その間,マーティーンは自分の体調の変化がインフルエンザだけでなく,妊娠によるものだと気付きます。当初誰にも,両親にすらそのことを告げずにいたのですが,次第に服では隠せない状況になって始めて友人にそのことを打ち明けていたとき,出張から帰ってきたブルーノにその話を聞かれてしまいます。チャールズの子か,自分の子か,と聞かれたマーティーンはブルーノを避ける言葉しか話さず,ますますブルーノの疑心はつのっていくのでした。この当たりの緊張感に読者はドキドキしますし,その後,事情を知らないチャールズに子供をどう育てようとしているのか聞かれたマーティーンは,自分だけで育てると言い切るのでした。それに対してチャールズは自分と結婚すれば問題は解決するとプロポーズをしてくれますが,友人以外の感情を持っていないチャールズとの結婚はマーティーンの選択肢にはありませんでした。やがて,チャールズの病気の深刻さを知ったマーティーンは誘われるままにクリスマスをウィーンでチャールズと過ごします。しかしプロポーズを断ったマーティーンとチャールズは気まずい想いを抱いたまま帰国するのでした。ここまで頑固に二人の男性からの求愛を断り続けるヒロインの姿に拍手を送りたくなります。やがて地下鉄事故の影響で産気づいたマーティーンに,病院に駆けつけたチャールズ。そして入院を聞きつけて病院にやって来たブルーノに病院の看護師たちが病室に入れるのは一人の父親だけだといい,後からやって来たブルーノに冷たく対応する様子に思わず読者もクスリとするでしょう。愛らしい女の子が産まれ,名前をローマと名づけるマーティーン。この洒落た命名にも思わず拍手を送りたくなります。次々と溜飲を下げてくれる作者の見事な腕前に完全に参ってしまう秀作です。なお,ホテル入り口の回転ドアは日本では事故が起きてからほとんど姿を消すか,近くに普通のスライド式のドアが付けられるようになりましたが,欧米ではまだ残っているようですね。韓流ドラマでも一流ホテルでは結構見かけます。かつて「スライディング・ドア 1998」という名画があり,ヒロインのグィネス・パルトローの清純な美しさが際立っていた記憶がありますが,ちょっとそれを思い出してしまいました。今はAmazonPrimeにも入っていますから手軽に見れるようになってうれしいですね。


タグ:ロマンス
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

ひと夏かぎりの情事 [マギー・コックス]

SHALOCKMEMO1289
ひと夏かぎりの情事 A Devilishly Dark Deal
( Deal with the Devil 1 ) 2012」
マギー・コックス 山本みと





 原題は「悪魔的で暗い取引」
 ヒロイン:グレイス・フォークナー(25歳)/慈善団体職員/淡い金色の髪,横顔でさえ天使のように見える,優美な細く長い腕,魅力的な笑み,ブルーの瞳,嫋やかながら砂時計を連想させる豊満な体,染み一つなくなめらかで美しい肌/
 ヒーロー:マルコ・アギラール(?歳)/実業家/緑色の目,日に焼けた肌,セクシーな濃い茶色の瞳,贅肉のない男性的な腰,イタリアルネサンス時代の彫刻家の掘ったような崇高な美しい顔立ち/
 聖女の誕生です。そしてポルトガルが舞台となるというロマンスとしては珍しい設定です。アルガルヴェというリゾート地。そこで幼少時代を過ごしたヒーローのマルコ・アギラールは親に捨てられ養護施設で育ちます。その後土地開発で巨万の富を得て富豪となったマルコに,休暇中だったヒロインのグレイスはアフリカの貧しい地域での養護施設の改築への寄付を得ようと,勇気を出して近づきます。突然の駆け寄りにマスコミのインタビューアーかと思ったマルコは始めグレイスをにらみつけますが,その清純な美しさに興味を持ち,寄付の内容についての説明を聞きたいと翌日会うことを提案します。それが二人の出会いでした。冷たい態度だけれども男性としての魅力にあふれた独身男性のマルコに,簡単に退けられてしまうと思っていたグレイスはこの展開に驚きます。自分がごく普通の冴えない女性だとしか思っていないグレイスにとっては,マルコが自分に興味を持つなどということには思いも至らなかったからです。自分の身の危険すら捨てても,人のためには尽くさないと気が済まないグレイス。そんなグレイスの行動や正直に心の内を話す性格に,これまで熾烈なビジネスの社会で生き抜いてきたマルコは,新鮮な驚きと人間としてのあるべき理想の姿を垣間見るような気がして,次第にグレイスに気を許し,そしてどうしようもなく惹かれていきます。ロマンスにありがちな敵役や意地の悪い女性も表だっては登場せず,しかも性格のねじ曲がってしまったマルコに家政婦や運転手,ボディガードといった人々が温かく見守り,グレイスとの関係が深まるのを喜ぶ姿がとても爽やかで心が温まるように感じられる,明るい癒やしの作品です。原題の「devilishly」や「dark」な感じは全くありませんので,どうしてこんなタイトルが付けられたのか不思議です。
 マーティーンというのがマルコの秘書の名前ですが,このあまり使われない名前が,同時に読書中のシャロン・サラの作品にも登場するのでちょっと面白いと思いました。


タグ:ロマンス
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。