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さよならは言わないで [サンドラ・マートン]

SHALOCKMEMO1301
さよならは言わないで Blackwolf's Redemption
(恋という名の奇跡 1="Untamed 1") 2010」
サンドラ・マートン 松尾当子





 原題は「ブラックウルフの贖い」
 ヒロイン:シエンナ・カミングズ(?歳)/コロンビア大学院生人類学専攻/すみれ色の瞳,茶色と金色とベージュの混じった髪/
 ヒーロー:ジェシー・ブラックウルフ(?歳)/元軍人,投資家,ネイティブ・アメリカン/黒い瞳,高い頬骨,逞しい体/
 「自然のままの,野性の」という意味の「Untamed」シリーズの第1巻。HQロマンスの整理をしているうちに,「時空を超えたロマンス」のコメントを見つけて興味を持ちました。いわゆるタイムトラベルものですが,この手のもので作家が苦労するのは現在からどのくらいの時間が離れているかで調査の方も大変になるのでしょう。中世が舞台となるヒストリカルロマンスのようにかなり離れた時間であれば,多少のほころびも愛嬌のうちになるでしょうか近過去や近未来,特に数十年単位では,今は特に電子機器やファッションなど時代を象徴する物質的なものは記録が残っているので調べやすいのですが,本作のように一般の人々の女性に対する認識の違いなどを敏感に取り上げていくとなかなか微妙な問題も出てくるのだろうと思います。そういう点では本作はかなり優れた時代認識の差を,35年というあまり遠くない過去からの時の流れを取り上げ,読者に感じさせる記述が見事だと思います。2010年から1975年にタイムスリップしてきたヒロインのシエンナ・カミングズは,仲間とともに教授の指導の下,コロンビア大学でアメリカ国内の伝説的な場所のフィールドワーク中でした。ブラックウルフ山というコロラド州のネイティブアメリカンの遺跡を調査中でした。まもなくこの土地が民間に売りに出され,ゴルフ場や住宅地に変わってしまう予定です。工事に入る前に残っている遺跡を是非調査しておこうというもくろみでした。調査中にわかに黒雲と稲妻が襲い,シエンナは気を失ってしまいます。そして遺跡の巨大な岩の上にタイムスリップしてしまっていたのでした。土地を売る前に遺跡を訪れていた持ち主のジェシー・ブラックウルフは,気候の突然の変化とともに見知らぬ女性が現れたことに驚きますが,速く助けなければ助からなくなってしまうと,女性を抱き上げながら岩を慎重に降り,愛馬を駆って牧場に戻ります。若い頃妻との結婚生活がうまくいかずに離婚を経験しているジェシーですが,この女性を見たとたんしばらくぶりに守りたいという気持ちと欲望を感じたのです。低体温症にならないようにさまざまな手を尽くしている途中で美しいこの女性に手を触れないように必死で自分を抑えなければならなくなってしまいます。一方自分が1975年にタイムスリップしてしまったことをジェシーから聞いたシエンナはこのことを告げても信用してもらえないだろうという絶望感と,この男性なら自分を守ってくれるのではないかという思いとの間で揺れ動きます。そして荒天のため停電になり不安になった深夜,ジェシーに身を許してしまいそうになってしまいますが,プライドを取り戻し部屋に閉じこもってしまいます。元の時空に戻れるか,この時代に取り残されるのか。何の見通しも立たないまま翌日牧場を後にしようとするのです。ジェシーはそんなシエンナを車で町まで送り,長距離バス丁まで送るのですが,お金もバッグも持たずに車を降りたシエンナを見捨てられずバス丁に戻り,涙を流しているシエンナを抱きしめるのでした。そのまま家に連れて帰り,自分の牧場で秘書として働かないかと提案します。数日後,サンフランシスコでの商談にシエンナを伴い記録を取るようにと秘書の仕事をさせようとしたところで,思わずシエンナが投資先について口出ししてしまい,商談がまとまらないままになってしまいます。このサンフランシスコのブティック,会社,レストランでことごとく自分の存在を主張しようとするシエンナのプライドの高さに密かに魅力を感じるジェシー。離婚の痛手から二度と女性と深い関係になるまいと思っていたジェシーですが,この時シエンナを愛してしまったことに気付くのでした。そして生涯を共にしようとシエンナに先祖伝来の宝石を贈りプロポーズしようと遺跡を訪れた二人を再び雷鳴と稲妻が襲い,一瞬のうちにシエンナが消えてしまいます。2010年に戻ったシエンナが意識を失っていたのはほんの数分の間だったのです。このまま二人は時空に隔てられてしまうのでしょうか。作者はこのあと二人に奇跡とも言うべき再会の機会を設けるのですが・・・。
 再会に至る場面ではかなり無理やりシエンナの行動とジェシーの行動のタイミングを合わせようとしていますが超自然の力が無ければ二人の出会いも別れもないわけなので,まぁこれはまさに「恋という名の奇跡」というシリーズ名にふさわしい設定として許せる気がしますし,なかなか読み応えのある作品に仕上がっています。


タグ:ロマンス
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ティアラは似合わない [ジェシカ・ハート]

SHALOCKMEMO1300
ティアラは似合わない Ordinary Girl in a Tiara
(取り替えられた運命 1) 2011」
ジェシカ・ハート 泉 智子





 原題は「ティアラを付けた普通の娘」
 ヒロイン:キャロライン(キャロ)・カートライト(?歳)/保険会社の臨時雇い/どうどうとした体つきにシルクのような手触りのする栗色の髪,白い肌,長めの上唇,青い目,豊かな笑い声/
 ヒーロー:フィリップ・サヴィエ・シャルル・ド・モンヴィヴェネ(30歳)/モンリュースのプリンス/オリーブ色の肌,黒い髪,銀色の目,長身で細身の力強い体/
 SHALOCKMEMO1300号の節目の作品になりました。この節目の作品にベティ・ニールズ,ダイアナ・パーマー,リン・グレアム,ノーラ・ロバーツなどの作品を選ぼうかと考えていましたが,ロイヤルものをが読みたいと思い,本作を取り上げました。
 ヨーロッパ山中の小さな国モンリュース。運命の悪戯で傍系の父が王位を継ぐことになり,さらにその長男が湖で事故死したため皇位継承者の順位が上がってしまったプリンス・フィリップ。そのフィリップの頼みを断り切れずに婚約者の振りをすることになったキャロことキャロライン・カートライトは食べることが大好きでモデル体形とはほど遠く,しかも着る服がいつも奇抜な普通の女の子でした。両親の働くセント・ウルフリーダ学園でも浮いた存在でしたが,唯一の親友がモンリュースのプリンセス,ロッティことシャルロッテでした。ロッティはフィリップとは父親同士が兄弟で,すでにロッティの父親はなくなっていますが,フィリップからの頼み事が出来るのは親友のキャロしかいなかったのです。そうでなければブランシュ皇太后の決定に従って,フィリップといとこ同士の結婚を強制されてしまうところだったからです。キャロの父は学園の技師を,母は教師をしていましたが,キャロは15歳で父を亡くし,20歳で母を亡くし,天涯孤独。現在は保険会社で臨時雇いとしてなんとか生活していますが,恋人のジョージに捨てられ体形を変えようとダイエット中でしたが,なかなかうまくいっているとは言えない状態でした。フィリップが始めてキャロのアパートを訪れたときにも室内は雑然とし,変わった衣装を着ている彼女を見て眉をひそめたのですが,食事をしにいったレストランでキャロの元恋人に焼き餅を焼かせようと手を触れた瞬間二人の間には電流が走ります。それでも名目的に婚約者として国に帰るためには二人のスキンシップが必要だと練習のキスをしたとき二人はそれに夢中になってしまいます。宮殿についてキャロは普通の生活のままに宮殿での暮らしを始めますが,それがフィリップや皇太后にとっては驚くことでした。使用人たちや厨房の人たち,庭師までもキャロの性格と人なつこさに惹かれていきます。また市場で身振り手振りでチーズを買おうとしているキャロに町の人々は親切に応対してくれていますがフィリップが現れたとたん緊張してしまったようです。それでもキャロはそんなフィリップにチーズを食べさせ,手に一杯食料を買って宮殿に戻るのでした。その場面が翌朝の新聞に載り,フィリップは皇太后に呼ばれます。叱責されるかと思いきや皇太后はしばらくキャロを利用して国民の一部から反対されているパイプライン建設の報道から目をそらさせたいと言い出すのでした。パイプライン建設問題は環境破壊の可能性を指摘する声もあり根強い国民の反対の対象になっています。建設を安価に仕上げようとする企業側と風光明媚な自然破壊に繋がるとする国民側との間で意見の食い違いが大きいのでした。官僚からサインを求められたフィリップは,キャロを連れて美しい湖の畔に出かけます。そこをパイプラインが通る予定でした。しばらく考え事をしていたフィリップはそのままキャロを連れて反対派が座り込みをしているところにいき,妥協点を見つけようと話し合いをするのでした。そしてフィリップはパイプラインを地下にとおすことを条件にして計画を見直させることに同意するのです。ヨーロッパ中の新聞がこれを好意的にかき立て,「小国のプリンスが大企業に勝った」と持ち上げたのでした。その結果モンリュースへの観光客が爆発的に増え,観光業も潤うようになったのはフィリップの決断によるものでしたが,フィリップはそれをキャロの成果だと考えるようになっていました。父皇太子の計画を変更させたことで,父も皇太后もフィリップを叱責しましたが結果オーライになったのでした。そして皇太后は宮殿で開かれる盛大な舞踏会をフィリップとキャロに任せると言いだしたのです。二人とも舞踏会の仕切りなどをしたことがなかったのですが,協力して計画を仕上げ,無事大役を果たすことが出来ます。いよいよ宮殿に留まる理由がなくなったキャロは,皆に見送られながら帰国してしまいます。初めからの計画よりずいぶんと長く,また思った以上の思い出が詰まった宮殿をあとにし,キャロは帰国してから,少しずつ新たな生活を築き上げようとします。そして出会い系サイトに新たなメンバーが登場し,キャロは該当者と会うことにするのですが,待ち合わせ場所に現れたのはなんと・・・。
 連作で次作にはロッティがヒロインになります。キャロの飾らない性格,誰にも愛されるようになる行動が真のプリンセスとしてのキャロを開花させていく成長譚で,読者も惹かれること間違いなしのNiceHeroineです。


タグ:イマージュ
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