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忘れられぬ抱擁 [メラニー・ミルバーン]

SHALOCKMEMO1304
忘れられぬ抱擁 Melendez Fogotten Marriage
( Bride on Approval 2 ) 2010」
メラニー・ミルバーン 茅野久枝





 原題は「メレンデスの忘れていた結婚」
 舞台:ロンドン,セビーリャ
 ヒロイン:エミリア・ルイーズ・メレンデス(旧姓:シェルヴァートン)(27歳)/ホテルのバー「シルバー・ルーム」ピアニスト/小柄,手と脚は日に焼けていてお腹のたるみはない,灰色がかった青い目,蜂蜜色の髪/
 ヒーロー:ハビエル・メレンデス(?歳)/企業買収会社経営/長身,真っ黒な瞳,濃い眉,漆黒の髪,鼻筋が通り顎は力強く,深く豊かな声/
 成長譚を描いては力量を発揮するメラニーのちょっと前の作品です。このシリーズは2011年の邦訳が多く出ましたが,まだほとんどが未読ですが,「同意の花嫁」とするシリーズ名は,本当は同意していないのに・・・という言外の意味が含まれているのかもしれません。本作を読んでそんな感じを持ちました。記憶喪失ものと夫婦の復活を描いた作品ということで,斜麓駈の好きなテーマです。ロマンス度がちょっと高すぎる気もしますが,夫婦ものにはありがち。それよりヒロインが結婚していた間の2年間の記憶だけ都合良くなくなっていることが,ややわざとらしさを感じさせてしまい,他の方の読後感を読んでもあまり良い印象を本作に持っていないことが気がかりです。思えばヒーローもヒロインも親の子供に対する責任放棄のしわ寄せを受けて育ってきた,いわゆる愛情不足者たち。ヒロインはだからこそ夫の愛が欲しいと願っているのに,ヒーローはだから愛を信じちゃいけないと思っている,このすれ違いが,本作の中心になるテーマなのだと思います。かなり深い夫婦者をテーマにしているんじゃないかと思うのですが,これは舞台で演じたり映画化したりすると面白いなという感じがします。決して雪に閉じ込められた別荘での物語ではありませんし,それより逆に陽光に照りつけられるセビリア(訳ではセビーリャとなっていますが,セビリアという表記の方が慣れているので敢えてそうします)の大邸宅で繰り広げられる点では真逆なのですが,なんだか共通点があるような閉塞感を感じてしまうのは,舞台的な演出のせいでしょうか。表現が映像的なせいでしょうか。それでもヒロインのエミリア,ヒーロー,ハビエルのインナーワールドに読者を誘い込むメラニーの巧みな筆裁きによるものではないかという気がします。いつエミリアの記憶が戻っていくのかというサスペンス要素もその要因になっているような気がします。その面で,本作を記憶喪失ものにしたメラニーの術中に易々と嵌まってしまったのかもしれません。妊娠と流産,その事実を淡々と告げる医師たちのドライな言動も逆に客観性を感じさせ,ヒロインを嫌う家政婦の言動もちょっと不気味な雰囲気を感じさせます。唯一明るい面はエミリアとハビエルの妹イザベラとの心の交流ですね。最後はハビエルの背中を押すイザベラがとても爽やかで,温かく,本作を兄への思いやりと幸福感を感じさせるハッピーな役柄を一人で背負っている感じがします。
 MB版の表紙イメージのモデルさんのお腹のすっきり具合がすごく綺麗で,背後の男性モデルさんの腹筋の割れ具合と合わせて,とても目につく作品です。エミリアの風貌は最低限しか表記されていないのですが,この表紙イメージを見ただけでヒーローがなぜ惹かれたかがイメージできる点がいいですね。


タグ:ロマンス
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パリの青い空 [シャーロット・ラム]

SHALOCKMEMO1303
パリの青い空 Dangerous 1981」
シャーロット・ラム 加藤しをり




HQB-742
16.07/¥670/208p

R-0430
85.12/¥550/156p


 原題は「危険」
 ヒロイン:ローラ・クローフォード(?歳)/療養中の看護師/ほっそりした華奢な体つき,褐色の髪,色白の肌/
 ヒーロー:ドメニコス・アエゲソス(?歳)/富豪/すらりとした長身,せっかちな歩き方,頑固そうに張り出した顎,引き締まった褐色の肌,鼻筋が通り,髪は黒,180センチ以上の身長,幅広い肩/
 働き過ぎで肺炎を悪化させてしまった看護師ローラ。病後の療養を兼ねて16歳の少女アマンダとその祖母グレイ夫人の付添人兼家庭教師としてパリへ旅立つことになります。父親に反抗して奇抜な服装ばかりするアマンダ。「年長者をからかい,相手が怒り出すまで反抗を試みて楽しんでいる」ティーン・エイジャー独特の行動パターンを父親のギリシア系富豪のドメニコスは理解できずにいます。4歳で実の母に死に別れ,8歳の頃から寄宿学校に追いやられていたアマンダの心中をおもんぱかり,ある程度自由を与えつつ信頼を勝ち得ようと少しずつアマンダの心の中に入り込んでいくローラの見事な話術が光ります。18歳の頃からずっと同じ病院で看護師としてくる日も来る日も病院の中で生活してきたローラにとっては,我が儘を言う患者に対応する仕方はお手の物でした。ローラ自身は15歳の時両親とともに乗っていた車の事故で自分だけが助かり,その後看護師の道を目指してきたのです。ユーモアのセンスにあふれつつ真面目な性格のローラ。娘のアマンダばかりでなくグレイ夫人の信頼も得,ドメニコスも仕事を兼ねてパリにやって来ます。パリ見物で出会った少年ピエールとその叔父マルセル・マランとの交際が始まってしまいます。その様子を見て嫌みを言ったりマルセルを敵のような目で見るドメニコス。自分の命に従わずに次々とアマンダやグレイ夫人の信頼を得てしまうローラに,実はドメニコスが最も惹かれていたのでした。しかし自分の母親であるグレイ夫人の過去の過ちを絶対に許せない気持ち,そして妻に裏切られ,一人娘を押しつけられてしまい,その娘すら反抗ばかりしているドメニコスにとっては女性は絶対に信頼してはいけない存在。そんな思いを隠そうともせずにローラとマルセルの関係を疑ってかかり,さらにはアマンダと親しく話すピエールを遺産目当ての危険な存在と思い込むドメニコスに,実はローラも惹かれていくのでした。何故に?と思ってしまうのですが,そこは恋は理屈を超えるということなのでしょう。やがて和解の時がやって来ます。「君のような人は初めてだ。例外のない規則はないというが,君はその例外かもしれない。君のことだけは僕も本当に信じられそうな気がする。」と,ドメニコスに言わせるまでになりますが,ローラはそれでもまだ気を許せません。そして女性を信じられなくなったドメニコスは自分の心の傷を打ち明け始めます。その心の傷を癒やしたいと思ってしまうローラでした。「愛とは僕が考えていたようなものとは違うらしい。」「みんなそうよ。愛ってそういうものなのよ。何が出てくるか誰にもわからないわ」「愛はクリスマスのようなものだな」という二人の会話がパリを舞台にとても洒落ていて素敵な作品です。


タグ:ロマンス
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