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炎と燃えた夏 [ミランダ・リー]

SHALOCKMEMO1314
炎と燃えた夏 The Millionaire's Mistress
( Passion 3 ) 1998」
ミランダ・リー 小長光弘美




HQB-749
16.08/¥670/224p

I-1277
99.09/¥641/156p


 原題は「富豪の愛人」
 ヒロイン:ジャスティン(ジャシー)・モンゴメリ(21歳)/大学生/褐色が駆った長いブロンド,青く輝く瞳,笑いのこぼれる魅力的な口元/
 ヒーロー:マーカス・オズボーン(30代半ば)/銀行頭取/ハンサム,彫りの深い顔,官能的な唇,黒い瞳/
 「没落した富裕な家庭の我が儘娘の自立の物語」
 「君が部屋を歩けば,周囲にさっと温もりが広がる。一気に明るくなる。君には人の心を引きつける魅力的なオーラが備わっているんだ。君は生命そのものだ」とマーカス・オズボーンに言わしめたヒロイン,ジャスティンの成長譚です。不適切な取引条件で融資を行っていた部下職員をクビにし,代わりに融資交渉に当たった銀行頭取のマーカスですが,自ら交渉に臨もうとしたのは,交渉相手を別のパーティで見たとたん愛人にしたいと思ったからでした。妻から手ひどく裏切られ,もう結婚はこりごりだと思って仕事一筋に生きていたマーカスですが,たった一年でジャスティンに惹かれてしまうとは,なんと節操のない男性でしょうか。それにしてもゴージャスで明るいジャスティンの非常識な融資申込にOKを出さざるを得なくなるほど妄想が広がってしまったのですから仕方ありません。大学1年をもう三年も続けているジャスティン。これまではちょっと自分の魅力を振りまくと男性が何でも言うことを聞いてくれるようになっていた経験から,本当に自分のキャリアを作り上げていかなければならないと考え直すきっかけになったのは父の死でした。しかも50万ドルもの借金を抱え,ひたすら悲運を嘆いてばかりいるお嬢様育ちの母の面倒を見ながら,自分が生活をなんとかしなければという思いがその決意を促したのです。ところが,友人といえばいつも男性のことしか頭にない自称美女のトゥルーディだけ。これがまた,いつもジャスティンに余計な知恵を付けてしまうのですから,ジャスティンもかわいそうです。しかし,時に友人のアドバイスを自分の意志で断り,結えなく自分に大金を投じようとしているマーカスに,仕事をした分だけ給与を払ってくれればいい,ただそのチャンスだけは欲しいと言い切るかっこよさに,ジャスティンの決意のほどがうかがえます。愛人として生きた方が楽なはずですが,あえて厳しい道を歩こうとするジャスティンに,マーカスはこれまでのジャスティンへの見方を見直さざるを得なくなるのです。「急がば回れ」とはこのことを指す言葉なのでしょうね。そして自分を身売りすることなく,マーカスへの愛を貫いていく生き方も,そしてオーストラリア独特の自然火災で家を失ったショックにも負けないたくましさを発揮していく姿にも読者は感動を覚えます。その熱い生き方には一回り以上の年齢差などは何の障害にはなりません。まさしくシリーズタイトルの「Passion」にふさわしいヒロイン,ジャスティンの物語です。
 タイトルの「炎と燃えた」は恋心だけでなく,家までも・・・。


タグ:イマージュ
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ひと夏のシンデレラ [リン・グレアム]

SHALOCKMEMO1313
ひと夏のシンデレラ The Frenchman's Love-Child
(異国の王子さま 1 ) 2003」
リン・グレアム 藤村華奈美




HQB-746
16.08/¥670/208p

R-1979
04.07/¥672/156p


 原題は「フランス人の愛息子」
 ヒロイン:タビサ(タビー)・バーンサイド(21歳)/細密画家/キャラメルブロンドの髪,緑色の瞳,古風な砂時計の形にも似た体つき,えくぼ,鼻は大きめ,口も少々大きい,背が低く優雅とは言えない/
 ヒーロー:クリスチャン・ラロッシュ(29歳)/航空会社社長/黒髪,ブロンズ色の顔,黒い瞳/
 すでにハーレクイン・プレゼンツで再販されてい「異国の王子さま」シリーズの第1巻です。第2巻の「ナポリから来た恋人」ではピッパが,第3巻「誰も知らない結婚(SHALOCKMEMO83)」でヒラリーがヒロインを務めますが,本作のヒロインタビーの友人としても登場します。本作をきっかけにシリーズ全体を読み直してみたい気持ちもありますが・・・。さて,「異国の」の第1巻はフランス人王子さまクリスチャンです。王子さまといっても本物の王族ではなく物語の王子さまという意味で,いわゆる大富豪のことです。ヒロインがもともと裕福な家の出自ですからシンデレラストーリーというわけでもありませんが,結婚するなら自分だけを愛してくれる王子様・・・という女の子らしい夢をさしているシリーズ名です。さて,いくつかの一族が交流していた昔,タビーの父が妻を亡くした悲しみで泥酔した状態で車を飛ばし,タビーの友人の親たちの乗った車に衝突してしまい自身を含め,何人かが命を失ったあの事故。以来,当時高校生だったタビーは家を失い,名誉も失い,友人も失ってしまったタビーですが,今回クリスチャンの住むフランスのラロッシュ家の大伯母ソランジュが亡くなり,タビーに遺産としてラロッシュ家の領地デュベルネの隅にあるコテージを残してくれたのです。領地を大切にし,こだわりを持つフランス人からしてみれば,かつての事故の敵バーンサイド家娘が自分たちの領地の片隅にでも財産をもつことは,忌まわしい出来事を思い出させるだけでなく名誉にもかかわることだったのです。なんとかこのコテージをタビーから買い取るために使わされたのがクリスチャンでした。「私の夫を殺した男の娘にご褒美を与えるなんて!」「夫の死から四年近く経った今も,マティルド・ラロッシュはパリのアパートメントで喪に服している」というクリスチャンの母の思いを復讐という形でクリスチャンはタビーに迫ろうとしていたのでした。4年前,クリスチャンに憧れ,年齢を偽って身を投げ出したタビーが,たまたま知り合ったバイク乗りの男性にさよならのキスをされているところをクリスチャンに見られてしまい,去られてしまった当時の事情をタビーは知らず,クリスチャンに捨てられ,父の事故の責任を問う裁判でも無視されたことから,妊娠,出産という事情を打ち明けられないまま叔母のアリソン・デイビスに引き取られ,息子ジェイクの子育てをしながら美大に通い,画家としてのキャリアをスタートさせたばかりのところでした。当時クリスチャンの大伯母ソランジュ・ルーセルは「あなたとクリスチャンの間に家族が立ちふさがってしまったのね。あってはならないことなのに」とラロッシュ家で唯一タビーに同情を寄せてくれていたのですが,それが今回の遺産という形になったようです。しかしそれは表面的なことで,ソランジュ大伯母にはさらに深い深慮遠謀があったことに二人が気付くのは物語の終盤になります。叔母のアリソンと恋人が話をしているのを偶然聞いてしまったタビーは自分とジェイクが叔母の元に留まるのを恋人が邪魔に思っていることを知ったタビーはこの遺産を受け取る決心をし,住むための準備をするために単身フランスに渡るのでした。そこにクリスチャンがやって来ます。憎い敵の娘と思いながら,再びタビーに会ってその魅力に抗えなくなってしまうクリスチャン。自分を憎んでいることを知りながらクリスチャンに触れられると逆らえなくなってしまうタビー。二人の間の引力は4年経った今でも強烈に存在していたのです。そしてジェイクの存在をクリスチャンに知られることに・・・。一目見て我が子だと確信したクリスチャンは知らせてくれなかったタビーを強烈に責めまくります。しかし審理裁判の時自分の話を聞いてくれるように頼んだのにもかかわらず自分を無視したのは誰だと反論するタビー。そしてあっという間にジェイクの歓心を買ってしまったクリスチャンにも腹を立てつつ,その魅力に我を忘れてしまうタビーの悲しい運命に読者の関心は引きつけられます。果たして4年前の真実はどのように明かされるのでしょうか。
 裕福な銀行家の娘ベロニクとクリスチャンは幼なじみであり,事業に成功したクリスチャンは仕事上の付き合いに便利だとベロニクとの結婚を考え,婚約していましたが,タビーとの再会を機にこの婚約を解消します。表面的にはこの婚約解消を承諾したベロニクですが,クリスチャンを諦める気は元々なかったのです。ラロッシュ家の敵の娘であるタビーにいずれクリスチャンは飽きるだろうと,4年前から実はなにかと裏でタビーにクリスチャンとの別れを画策していたのです。このベロニクの腹黒さに気付いていたソランジュ大伯母でした。そして婚約していたことをタビーに知らせていなかったクリスチャンは,ベロニクがこのことをタビーに告げて腹いせをしたことにも気付いていなかったのです。しかし逆にこのベロニクの画策が真実をクリスチャンに気付かせるきっかけになるとは,さすがの腹黒女も自分で首を絞める結果になってしまうのです。読者にしてみればこのことがカタルシスの解消に大いに役立ちます。まさに策士策におぼれるという次第。終盤に互いの誤解が解け,ソランジュの計画は大成功に終わります。天性の楽天的で繊細なタビーの性格が,本作の魅力を最も盛り上げてくれる秀作です。


タグ:ロマンス
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9カ月目の赤い糸 [マリー・フェラレーラ]

SHALOCKMEMO1312
9カ月目の赤い糸 Do You Take This Child ?
( Baby of the Month Club 5 ) 1996」
マリー・フェラレーラ 庭植奈穂子





 原題は「あなたがこの子を取るの?」
 ヒロイン:シーラ・ポラック(30代?)/ハリス記念病院産婦人科医/長身でほっそり,ブロンドの髪,大きくて春の矢車草のように青い目/
 ヒーロー:スレイド・ギャレット(33歳)/新聞社特派員/身長185センチ,茶色の目,ダークブラウンの髪/
 マリー・フェラレーラと言えば「ボディガード」や「闇の使徒たち」といったロマサスの作家というイメージが強くありましたが,本作のようにイマージュの作品もあるんですね。1996年作品ですから20年前の作品になりますが,その生き生きした筆力は,その後のスピード感あふれる作品をうかがわせるに十分な表現力だと思います。さて,本作は両親とも医師で自らも産婦人科医のシーラが,出会ったばかりのスレイドとプライベートビーチで一夜の時を過ごし,妊娠し,再開後二人の関係が再燃していくというOne Night Babyものの物語です。一方ヒーローのスレイドは戦闘中の危険な場所にも飛び込んでいく命知らずの特派員ですが,いわゆるロマサス的な雰囲気のヒーローではなく,仕事として戦地には行くものの,その記す記事は思いやりにあふれたヒューマンなものであるようです。そこが医師のもののイマージュの中にロマサス的設定を取り入れた作者の工夫だと言えるでしょう。両親が仕事一辺倒で自分が面倒を見られたことのない自立した医師のヒロインに対し,妊娠が分かってからのスレイドのシーラべったりの働きぶりには思わずニンマリさせられますし,日頃妊産婦たちを診察しているヒロインが,自分の子供のこととなると医師としての判断力を失いあたふたしてしまうところが実に微笑ましく,とても温かな気持ちをかき立てられる作品です。今の暑い時期ではなく,冬の寒い時期に読むと心がホンワカしてくるような作品ではないでしょうか。


タグ:イマージュ
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