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ガラスの靴はいらない [レイ・マイケルズ]

SHALOCKMEMO1327
ガラスの靴はいらない The Corporate Marriage Campaign
( Nine to Five 35 ) 2005」
レイ・マイケルズ 有森ジュン





 原題は「企業結婚キャンペーン」
 ヒロイン:ダーシー・マローン(27歳)/グラフィックデザイナー,弁護士デイヴ・マローンの妹,シカゴ西部郊外の生まれ,8年前に両親を車の事故で失い兄と二人暮らし/褐色がかったグリーンの瞳/
 ヒーロー:アンドルー(トレイ)・パトリック・ケント三世(32歳)/「ケントウェルズ・デパート」経営者,キャロライン・ケントの兄/ルネッサンスの名匠が彫ったような横顔,長身,広い肩,ダークブラウンの髪,丁寧に仕立てたピンストライプのスーツ,尊大な表情,貴公子然としたスタイル/
 ダーシー:「ガラスの靴は履き心地が悪そうだから」,トレイ:「いいぞ,その調子だ。デイヴが言ったとおりだ。彼女を起用したのは正解だった。機知に富み,溌剌としていて,一瞬たりとも契約を忘れそうにない」。ダーシーとトレイのこのテンポ感の良い機知に富んだ言葉の応酬が実にアメリカ的で心地よい作品です。独立心が強く,ふとしたところで自分の才能を発揮していくダーシー。マローンと言えば弁護士の代名詞に使われる姓ですので作者はそれも意識にあったのでしょうか(弁護士マローンはクレイグ・ライスの著名な作品群の主人公)。経営の傾いた一族経営のデパートの建て直しを請け負うことになった弁護士のトレイは,売却前に一大キャンペーンを展開することにします。店の売り上げを少しでも上げておく必要があったからです。初めは妹とその婚約者の結婚までの様子を撮影する予定でしたが,妹は婚約者に暴力を振るわれ,撮影を続けることができなくなりました。そこでピンチヒッターに建てられてのが,旧友の弁護士デイヴ・マローンの妹ダーシーというわけです。西海岸から帰ってきて就職の求人応募票を大量に出そうとしていたダーシーに就職までの3カ月間のアルバイトとして偽の婚約者としてトレイと二人で主役を務めて欲しいというのがその依頼でした。初めは二の足を踏んでいたダーシーですが,傷ついたキャロライン・ケントの様子を見て,トレイの申し出を断れなくなってしまいます。しかし契約婚約であることを他の人に気付かれないようにするためには最低限の幸せそうな表情と身体的接触は欠かせなくなってきます。西部で男性の甘言に乗せられたあげく痛い目に遭って古里に戻ってきたばかりだけに,男女関係には敏感になっていたダーシーですが,トレイとの婚約者ごっこの仕事がだんだん板についてきてしまい,仕事とプライベートの区別がつきにくくなってきてしまいます。結局はトレイの誘いに乗りベッドを共にしてしまうのでした。しかし,ショッピングモールの反対側にある大手デパート「タイラー・ロイヤル・デパート」の経営者ロイ・クレイトンとトレイの会話から,このキャンペーンがデパートの売却を前提としたものであったことを知ったとき,またもや男性に利用されたことに気付き,頭に血が上ってしまうダーシーでした。
 ケント家の大伯母ミリセント・アーチボルドやトレイの従弟ジェイソン,デイヴの恋人ジンジャーなど個性豊かな登場人物が賑やかに物語を盛り上げますが,冒頭に書いたようになんといってもダーシーとトレイの洒落た軽口の応酬が心地よい秀作です。エピローグも深刻にならず心地よくハッピーエンドになるところが作者の腕の見せ所ですね。


タグ:イマージュ
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誘惑のらせん階段 [キャシー・ウィリアムズ]

SHALOCKMEMO1326
誘惑のらせん階段 Rafael's Suitable Bride 2008」
キャシー・ウィリアムズ 青海まこ





 原題は「ラファエルの“適切な”花嫁」
 ヒロイン:クリスティーナ(24歳)/花屋/158センチ,ずんぐりした体形,豊かな胸と腰のくびれ,小麦色の肌/
 ヒーロー:ラファエル・ロッキ(36歳)/企業グループ経営者/180センチ超,彫りの深い顔立ち,黒髪,茶色の瞳/
 ヒロインはイタリアの宝石のチェーン店を経営する裕福な家の娘というだけで,苗字が示されていません。一方ヒーローのラファエルはロッキ帝国と呼ばれる企業グループを一人で取り仕切るスーパー仕事人間で,女性との付き合いも長くもったことがありません。若かりし頃結婚した相手は9歳も年上のデパートガールで,ラファエルのお金目当てで近づき,浮気を繰り返したあげくアメリカで事故死したのでした。その経験から結婚を言い出す女性には警戒心が強かったのです。三姉妹の末っ子で姉二人はモデル体形の完全無欠な美女で,すでに他家に嫁いでおり,自分だけが父親に似た体型で幼少の頃から自然とのふれあいを好み,活発でスポーツを得意としていたため,姉妹仲はいいのですがクリスティーナ自身は寄宿学校からイギリスで育っているのでした。そのナチュラルで気取らない性格,自分を決して美人だと思わずに誰に対しても率直で思ったことを口に出してしまうくせ,そして夫と子供と自然に囲まれて幸せな家庭生活を夢見る乙女でもありました。二人の出会いは冬の雪道で始まります。ロッキの母の主宰するパーティーにロンドンからそれぞれ来るまでやって来た二人ですが,雪道に嵌まってしまったクリスティーナの車に危うくぶつかりそうになったロッキのフェラーリ。結局泥だらけで雪の中に落ちたコンタクトを探していたクリスティーナを乗せて行くことになり,二人の両親が知り合い同士だということが分かります。結局クリスティーナの車はバッテリーが上がってしまって修理が必要であり,ラファエルはクリスティーナをロンドンまで送ることになるのですが・・・。ここから二人の付き合いが始まります。女子サッカーチームのコーチを務めることになったクリスティーナを助けたり,外食に出かけたりと少しずつ互いの心の中に入っていく二人ですが,これまで付き合っていたモデル体形のすらりとした女性たちとは異なり,ややポッチャリ気味でも砂時計のようにカーブを描くクリスティーナの体形,そして子犬を思わせる茶色の瞳は,自分が守ってやりたいと男性に思わせる魅力を持っていたのです。妄想の中でしか存在しなかった素敵な男性が自分に興味を持ってくれていると知ったクリスティーナに,自身の経営する花屋の従業員アンシアには注意を促されていたものの,プロポーズされ,すぐにイエスと答えてしまいます。瞬く間に三ヶ月が過ぎ,二人は互いに離れがたい存在になっていた後のことでした。しかしラファエルの母マリアが何気なく言った一言がクリスティーナの耳に残ります。「息子がとうとう私の言うことを聞いてくれてどんなに嬉しいか。身を固めなさいと言ったの。“適切な妻”を見つけなさい。でないと哀れで孤独な老人になると脅したの。」,つまり自分は“適切な妻”に過ぎないのだ。ラファエルが自分を愛しているわけではないのだ。「ラファエルは私を愛していると一度も行ったことがなかった。なのに愚かにも私は,それが彼の愛を疑う理由になると考えなかった。愛されているに違いないと信じていた。さもなければ,結婚を申し込むはずはないと・・・」。クリスティーナは婚約の解消を宣言します。ラファエルにはクリスティーナがなにを怒っているのか想像もつきませんでした。“適切な妻”という一言が何故そんなに問題になるのかということも・・・。その後一週間も互いに連絡を取らなかった二人。しかし互いに何度も連絡を取ろうとしていたのですが,最後の一歩が踏み出せないでいるのです。そんなやきもきした状況が続き,ついに最近知り合った女性シンディを利用してパーティを開き,クリスティーナに見せつけて嫉妬させようと画策しますが,現れたクリスティーナのけばけばしい服装を見,男性陣がクリスティーナに興味津々な様子を見て,逆に自分が嫉妬に駆られてしまい,パーティはさんざんな結果になってしまいます。そして自分から去ろうとしているクリスティーナをこれ以上放ってはおけなくなってしまうのでした。
 かつての結婚の失敗から女性の愛を信じられなくなってしまったラファエルが,クリスティーナの真心に触れて,自分を解放していくまでの顛末を描いた成長譚です。飾り気がなく,純真で育ちの良いクリスティーナの人物造型が光るオススメ作品です。


タグ:ロマンス
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