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シンデレラは偽りの妻 [キャシー・ウィリアムズ]

SHALOCKMEMO1349
シンデレラは偽りの妻 Wearing the De Angelis Ring
( Italian Titans 1 ) 2015」
キャシー・ウィリアムズ 龍崎瑞穂





 原題は「デ・アンジェリスの指輪をはめて」
 ヒロイン:アレクサ・カルディーニ(26歳)/弁護士事務所勤務/卵形の顔,長い黒髪,黒い眉毛と長いまつげ,ターコイズブルーの目,身長162センチの砂時計のような体型,趣味は読書/
 ヒーロー:テオ・デ・アンジェリス(32歳)/実業家/身長,短く刈り込まれた漆黒の髪,彫りの深い顔,独特な色合いのグリーンの目,ふさふさしたまつげ/
 今月はとにかく読了冊数が激減しました。なぜ?仕事が忙しかったせいだけではなかったのです。朝の読書時間だけでなく日中や夜間の読書量が減ったことと,その理由がウェブページの更新に時間をかけたからだと思います。更新中にどうしても「これは読みたい」というものが多くなり,新刊に取りかかることが少なかったことも大きな要因だと思います。SHALOCKMEMO1350はあっという間に今月中に終わるものと思っていましたが,未だ到達せず!ちょっと意外な結果になってしまいました。
 さて,本作です。10月5日刊のHQロマンスです。邦題には「シンデレラ」とありますが,ヒロインも育ちの良いお嬢様。両親の強制的ないわゆる企業合同のための子女の便宜的結婚のストーリーです。アレクサの父カルロ・カルディーニの会社の共同経営者の大規模な横領で会社の経営が傾いてしまい,どうしても資金協力が必要になります。かつての友人で今はあまり仲良くしていなかったステファノ・デ・アンジェリスに救いの手を求めると,その条件として,お宅のお嬢さんをうちの息子の嫁に欲しいと言われたのでした。欧米ではいわゆる見合い結婚は過去の遺物。しかしお金持ち同士の間ではいわゆる身分が厳然として存在している,というのが一般的です。デ・アンジェリス家は息子が二人いますが,カルディーニ家は一人娘。ステファノ・カルディーニは一人娘を差し出す代わりに資金援助を受けるしか会社の存続は難しくなっていました。しかもデ・アンジェリス家の長男テオは弟のダニエルとは異なり,堅実な会社経営をしており,謂わばお堅いビジネスマンです。いずれ二人が結婚したらカルロは引退して会社経営そのものをテオに任せたいと考えたのでした。カルロの妻でアレクサの母コーラは持病で身体が弱っており,会社経営よりもカルロは妻に寄り添っていたかったのです。愛情深い二人に育てられたアレクサは自身も愛にあふれた結婚をし,子供を育てながら幸せな一生を送りたいと両親の結婚生活と同じような人生を夢見ていました。何人かのボーイフレンドはいましたが深い付き合いをすることなくこれまで生きてきています。「自分も特権階級に生まれながら,アレクサは彼らのような男性を避けて生きていた。金と権力はあっても中身がない男なら,周りに大勢いてよく知っている。神から与えられた権利であるかのように,自分勝手を通す男たち。彼らは女性のことも好き勝手に扱う」こう考えるアレクサが初めてテオに会ったとき,テオもまたこういう上流階級の俗物だろうと思っていたのです。いわゆるモデル体形ではないことは中学生の時に周囲の女子生徒たちから噂されてしまっており,自分に自信が持てずに弁護士事務所に務めながら週3日はシェルターのボランティアをしています。悩みを抱えた人たちを助ける仕事に生きがいを感じていました。しかしロンドンからイタリアに呼び戻され,そして父から懇願されテオと会うことに。初めて会った瞬間女性たちが皆憧れるハンサムなテオと自分とでは釣り合わないと感じたアレクサはことごとくテオの言葉に反抗してしまいます。テオもまたこれまでの女性たちとは異なるアレクサの態度,そして体型に面食らいながらも強い興味を抱くのでした。アレクサはテオを避けようとしつつも時折見せるテオの持つ人に対する優しさに次第に自分の態度が子供っぽいものだと反省するようになります。ことごとく自分に反抗するアレクサの姿も,要するに自分に自信がないせいだと気付いたテオは,アレクサを守ってあげたいという思いに駆られていくのでした。そしてニューヨークの出張にアレクサを伴い,マスコミに二人の婚約が広まるようにわざと身体に触れているうちに,次第に二人とも触れずにいられない気持ちになって行くのでした。恋愛になれていないアレクサがはじめにテオに夢中になってしまい愛を認めざるを得なくなります。テオもまた自分を求めてくるアレクサに愛情を持つのですが,父が結婚して仕事を放りだしてしまった過去の経緯から学んだ,愛は人を弱くするという固定観念からアレクサへの思いを認めたくないのです。
 アメリカ滞在中にアレクサの父から電話がありイタリアに帰ってくるようにと知らせが入ります。母の具合が悪くなったのではと心配して滞在を短縮して帰国してみると,カルロとステファノの間の密約がカルロの妻コーラの知るところとなり,愛のない結婚をする必要はないと3者の間で話がついたというのです。すでに互いを愛してしまった二人ですが,それを打ち明けるだけの勇気も持たなかった二人。アレクサはそのままロンドンに戻って仕事を探すことにします。テオからはその後連絡が途絶えてしまうのでした。さぁ二人の関係はどうなるのでしょうか。
 ゴージャスではない普通の女性アレクサの愛情あふれる性格が両親から得たすばらしい才能だということが「シンデレラ」という表現になったのかもしれませんね。連作のテオの弟ダニエル・デ・アンジェリスとデリラ・ショーのロマンスは,次作「イタリア富豪の秘密の休日」で11月刊行予定です。


タグ:ロマンス
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口づけの代償 [クリスティーン・フリン]

SHALOCKMEMO1348
口づけの代償 The Housekeeper's Daughter
(愛を知った日 1) 2004」
クリスティーン・フリン 佐藤たかみ





 原題は「家政婦の娘」
 ヒロイン:アディ・ロウ(27歳)/ケンドリック家の庭師,学生/髪はブラウン,身長160センチ程度,寡黙で目立たないことを得意とする/
 ヒーロー:ゲイブ・ケンドリック(35歳)/バージニア州上院議員,知事候補,母は元ルツァンドリアの王位継承者/セクシーな口もと,意志の強さを感じさせる顎,グレーの目,豊かな黒髪,長身/
 今月は,なぜか仕入れの月のようです。いろんな作品の少しずつ味見してしまい,読了本がかなしいほど少なくなってしまっています。また,ウェブ整理しながら,面白そうな作品やシリーズをちょっとずつかじっているので余計読了が遅くなっている状態です。
 身分違いの恋がテーマの本作。シリーズ第1弾です。バージニア州の名門ケンドリック家の3兄妹弟を主人公にした3部作で,本作のヒーローは長男で上院議員,知事候補として選挙戦を開始しようとしているゲイブ・ケンドリックです。ケンドリック家の令夫人キャサリン・テレサ・ソフィアは元ルツァンドリア国の王女で,王位継承者でしたが,ゲイブの父と結婚するため王位と称号を捨ててアメリカに渡ってきた真の貴族。キャサリンの家政婦として働いていたのはアディの母ローズと庭師として働いていた父トム・ロウの娘として,敷地内のロッジで育ったアディは,5年前に父が亡くなったため,大学を途中で休業し庭師として2人のアシスタントともに敷地の植物管理を務めていました。それによって,ロッジから出ることなく母ローズと一緒に住むことができていたのでした。この処遇に一役買ったのがゲイブでした。ゲイブは生前のトムと大変親しく,悩み事があるとトムに相談してきたのですが,トム亡き後はアディにアドバイスを求めることにしていたのです。庭師として小柄なアディは目立たないトップスとジーンズという地味な服装でいつも仕事をしていましたが,そんなアディをゲイブは心から信頼していたのです。アディはその後植物学の講座を取るために冬の机間だけ集中的に大学に通っていたのですがそこで,忘れられた歴史的庭園の計画図を発見し,町の歴史協会長の元に届けたのですが,協会長のヘレンはそれを自分のもののように保護申請してしまいます。しかしアディにはそのことに異議を唱えるだけの学歴も知名度もありません。その話を聞いたゲイブはアディを協会の定例会に連れて行き,プロジェクトのリーダーにするようにヘレンに求めます。すっかり自分の悪巧みを指摘されてしまったヘレンはそこで復讐するためにあたかもゲイブとアディが男女の仲のようにマスコミにリークするのでした。そうすればアディを協会から追い出せると考えたのです。スキャンダルとなるだろう使用人である庭師と上院議員の不適切な関係,そんな記事が報道されると,アディはこれまでと同じように自分から身を引こうとします。自分の仕事や居場所を確保してくれようとしたゲイブが苦境に陥ってしまったのは自分のせい,選挙戦に不利になる自分の存在が申し訳なくなり,ケンドリック家から身を引くアディでした。母ローズもゲイブとの関係を憂慮し,何度も気をつけるようにアディを注意します。実は母ロースには若い頃議員の男性に憧れ,選挙事務所に勤めていたことがあるのでした。深い関係から妊娠そして捨てられて・・・。そんな時ローズを救ってくれたのがアディの父トムでした。しかし流産。数年後にアディが生まれます。ローズの目にはかつて自分を捨てた男性とゲイブが重なって見えていたのです。ケンドリック家をでたアディをしつこくマスコミが追いかけます。そして行方を捜して訪ねてきたゲイブと会っているところをまたもやマスコミのカメラにとらえられ・・・。いよいよマスコミとの対決と,そして庭園のプロジェクトの実施に向けての協会の定例会に力を貸してくれたのは意外なことに,ゲイブの母キャサリンでした。そして,普通寡黙なアディが打った最大のヒットは・・・。
 アディのシンデレラストーリーですが,上流社会に属していないアディ母娘が仕えるケンドリック家,特にキャサリン元王妃の,ある意味庶民的で公平な感覚が素晴らしく,勇気を持って自分の愛を追い求めようとしていくアディとゲイブに拍手を送りたくなる作品です。次作では長女アシュリーが登場します。


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伯爵の無垢な乙女 [エリザベス・ロールズ]

SHALOCKMEMO1347
伯爵の無垢な乙女 In Debt to the Earl 2015」
エリザベス・ロールズ 小林ルミ子





 原題は「伯爵への借金」
 ヒロイン:ルーシー・アーミテージ(ヘンズリー)/7歳で母を亡くし,引き取ってくれた祖母も16歳で失い,祖母の面倒を見ていた伯父伯母からも追い出されギャンブルに狂う父には面倒を見てもらえず苦労している娘/緑色の目,赤毛の巻き毛/
 ヒーロー:ジェームズ・レミングトン/キャンボーン伯爵/長身,ハンサム/
 1802年3月に始まり,11月20日までの8カ月のヒストリカルロマンスです。舞台はロンドン。議員を務める伯父伯母のもとを追い出され,父親に連れられてロンドンに暮らすルーシー。しかしその父親は妻を亡くしてからギャンブルにその寂しさを紛らそうとし,ついに多額の借金を背負って行方をくらましてしまいます。教師を夢見ていたルーシーですが,その父親の借金を返すために働かざるを得ませんでした。男の子の格好をし,得意のバイオリンを路上で演奏しながら僅かな投げ銭を得,なんとか現在の下宿の家主に週ごとの家賃を渡す生活。ぎりぎりに切り詰め,真冬でも暖房のための石炭や薪を買えないため重ね着をしてなんとか寒さをしのぎ,食事も一日一回にするまでになっていました。さて,身元を知られないためキャプテン・ヘンズリーという通り名で知られる父に賭博で借金をつくってしまった従兄弟ニックがある晩襲われて怪我を負ってしまい,その後始末をするために頼られたのがキャンボーン伯爵ジェームズでした。ヘンズリーに掛け合うために訪れた部屋でジェームズはルーシーに出会います。みすぼらしく暮らすルーシーに父の居所を尋ねても要領を得ません。きっと父親とぐるになっていると勘ぐったジェームズは何度かルーシーの元を訪れますが,本当に切り詰めた生活をするルーシーに次第に同情の気持ちと男性としてルーシーを求める気持ち,そしてルーシーを守ってやりたいという気持ちが芽生えているのに気付きます。暖を取るための石炭を大家から買うと,金持ちを捕まえたと勘違いした大家から家賃を上げられてしまったり,ジェームズがルーシーのためを思って打つ手立てがことごとく裏目に回ってしまいます。しかし,無垢なルーシーもまた,親切にしてくれるジェームズ,自分を守ってくれそうになるジェームズに憧れの気持ちを抑えることができません。そしてついにジェームズから自分の元に来ないかと誘われ,愛人になるように要求されているのだと気付いたルーシーは,父の借財の身代わりとして自分を愛人に使用としているのではと思い,はじめはジェームズの誘いを断るのですが,次第にジェームズに惹かれている自分に気付き,例え愛人でもジェームズの元にいたいと思うようになって行くのです。ジェームズの名付け親のフォックス卿と愛人エリザベス。二人の元にルーシーを連れて行きます。フォックス卿とエリザベスの間の愛し合う二人の姿をうらやましく思うルーシーですが,愛人になれば自分がいつ捨てられるかもしれない,それでもジェームズを愛する気持ちは捨てられないと自らジェームズを求めてしまうルーシーでした。前後してルーシーの父が部屋に戻ってくるのですが,ジェームズとの会話で父の借金が100ポンドではなく1000ポンドであることを知ります。とても一生かかっても返せる金額ではありません。しかも父とジェームズの間にルーシーに隠している秘密があるようで,てっきり,父の借金の肩代わりに自分はジェームズに買われるのだと落胆してしまいます。ジェームズは自分を愛してはくれないのだと・・・。ジェームズは必死でルーシーの誤解を解こうとしますが,そんなとき,ヘンズリーの借財の証書を買い取った悪漢キルビーと売春宿の女将によるルーシーの誘拐とオークションが開かれていることを知ったジェームズは友人や使用人に武装させ,オークションが行われている場所に駆けつけます。そしてルーシーの身を守るためにジェームズは2000ポンドでルーシーを落札するのでした。同時にストリート・ボウに通報していたため,キルビーの手下たちは捕まえることができます。翌日小切手を現金化した女将も捕まえることができます。しかしキルビーは行方をくらましています。その夜キルビーはルーシーの住まいとルーシーの若い友人フィッチ少年にナイフを突きつけるキルビー。ルーシーの様子がおかしいことに気付いた使用人の機転でジェームズはキルビーに銃弾を撃ち込みルーシーとフィッチを守ることができるのでした。
 貴族と路上生活者の恋。身分を落としてしまったものの無垢な純情と知性そして音楽の才をもったルーシーが伯爵ジェームズの愛を勝ち取るまでの純愛物語です。1802年ということでまだナポレオンの影もなく,時代的特徴も強調されないため純愛が強調される作品となっています。


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迷子の花嫁 [リアン・バンクス]

SHALOCKMEMO1346
迷子の花嫁 The Five-Minute Bride
(プリンセスをつかまえて 1) 1997」
リアン・バンクス 鈴木リコ





 原題は「5分間の花嫁」
 ヒロイン:エミリー・セント・クレア(25歳)/令嬢,慈善事業家,美術修士/シミ一つない透き通るような肌,ばら色の頬,かすかに開いた唇,ブロンドの巻き毛,青い瞳/
 ヒーロー:ボウ・ラムジー(歳)/保安官/長身,黒く豊かな髪,黒い眉,茶色の瞳/
 98年のディザイアがKINDLE版になっていましたので,購入しました。「ルールは不要」シリーズの前のシリーズということで,作者初期の作品といって良いのでしょう。3部作のこのシリーズは幼なじみのエミリー,マディー,ジェナ・ジーンの3人がヒロインとなり,それぞれが愛をつかみ取るまでのロマンスです。
 シリーズ1作目の本作は良家の令嬢エミリー・セントクレアがヒロインです。舞台はノースカロライナ州ラクストンという小さな町。待ちの保安官ボウ・ラムジーは3人の姉にしょっちゅう身を固めるように圧迫を受けているのですが,気軽な独身生活を諦めるつもりはありません。そんなボウのもとに飛び込んできたのは高価なウエディングドレスを身にまとって結婚式から逃れてきたエミリーでした。良家の令嬢にふさわしく母や義理の父のいうことをひたすら聴いてきた良い子だったエミリーはどうしても愛してもいない親の決めた男性との結婚に踏み切れずに,結婚式をドタキャンして逃げてきたのでした。このエミリーの存在が町の男性たちに大きなざわめきをもたらすことになります。町のダイナーで働き始めたエミリーを見ようと男性客たちが押しかける中,町の平和を守る立場のボウは次第にエミリーに惹かれていきます。大学でコンピュータを副専攻にしていたエミリーは郡の申し出を受けて昼間は保安官事務所でデータ整理やコンピューの扱いの指導をし,夜はウエイトレスと忙しい日々を過ごしますが,そんなとき親友のマディーとジェナが訪ねてきます。そしてボウとの関係を見事に見抜いてエミリーをけしかけ去って行くのでした。果たして結婚式をドタキャンして1カ月ほどで他の男性に惹かれて良いものだろうか。必至にボウへの思いを自分に否定しようとするエミリー。450人もの招待客を裏切って結婚式をドタキャンした自分を母親は決して許してくれないだろう。今さら家に戻ることもできない。しかし,ボウとの間の温度は急激に高まり,二人はついに愛を交わします。これまで独身主義を貫いてきたボウもまた,自分に何も要求しようとしない,無私の愛を捧げてくれたエミリーに気持ちが高まるばかりです。そしてついにボウはエミリーにプロポーズするのでした。
 良家の令嬢として育ち,親のいうままに暮らしてきたエミリーが自分の生き方と生きがいを見直し,ボウへの愛をベースにして自己実現していくまでを描いた成長譚です。爽やかで思わず微笑んでしまうエミリーとボウのやりとりでほっこりあったかい読後感をもたらす良著です。シーズン第2作目は,御転婆娘マディーがヒロインです。


タグ:ディザイア
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愛のマナーを教えて [リアン・バンクス]

SHALOCKMEMO1345
愛のマナーを教えて Tall, Dark and Royal
( 愛と裏切りのコネリー家 1 ) 2002」
リアン・バンクス 速水えり





 原題は「長身,浅黒そして王室の」
 ヒロイン:エリン・ローレンス(22歳)/アルタリア王室礼儀作法講師兼御用係/アルタリア国外務大臣の娘/ブロンド,ブルーの目,形の良い脚と良いスタイル/
 ヒーロー:ダニエル・コネリー(34歳)/アルタリア国王位継承者/コネリー社マーケティング担当副社長/コネリー家長男/長身,グリーンの目,焦げ茶色の眉/
 「フィアンセに片想い(SHALOCKMEMO1342)」から読み始めてしまった「愛と裏切りのコネリー家」シリーズ。紙本とKINDLEで織り交ぜて全巻そろえました。やはり第1巻を読んでみないとシリーズの設定が分からないと思いKINDLEのない本作を紙本で購入してみると,なんと,コネリー家の家系図があるではありませんか。これさえあったら第8巻の理解もずいぶん違っていたでしょうに・・・。KINDLE版にも是非これを付けるべきです。
 さて,全12巻に及ぶ大シリーズの幕開けですので,ちょっと長くなるのですが,アルタリア国の王家の系統をなぞってみましょう。勿論家系図があれば一目瞭然ではあるのですが,この図を著作権の関係でそのままウェブには載せられませんので,文字化せざるを得ないのが残念ですが,アルタリアの先代国王トマス・ローズメアとルーシンダ王妃の間には長女エマ王女とマーク皇太子の2人の子供がありました。マーク皇太子はエマ王妃の実弟で,ソニア・アントン嬢との間にキャサリン王女がいます。しかし本作の時点でトマス国王とマーク皇太子が海難事故で亡くなっています。そのため王位はエマ王女が嫁いだグラント・コネリー家の長男ダニエル・コネリーのところに転げ込んでいくことになります。アルタリアの法律では男子のみが王位を継げるからです。さて,エマ王女の嫁ぎ先のコネリー家はシカゴでトバイアス・コネリーとリリー夫妻によって大企業化していました。トバイアス,リリー夫妻は存命中です。夫妻の子供グラントがエマ王女と結婚し,なんと五男三女の8人の子供たちがいます。グラントを長男に,次男レイフ,長女アレクサンドラ,三男ジャスティン,四男ブレット,五男ドルー,次女タラと三女マギー,さらにグラントの先妻ハンナ・バーネットとの間には双子のダグラス・バーネットとチャンス・バーネットの男子二人,さらに結婚に至らなかったアンジー・ドナヒューとの間に婚外子のセス・コネリーがいます。ダニエルの世代でいえばエマとの間の8人のこの他に3人の男子,そしてエマの弟である皇太子マークの娘のキャサリンと,合計12人の子供たちがいることになるのです。この12人が毎号のヒーロー,ヒロインを務めていくことになります。8人の子供を産み育てたことでも分かるように王女エマは母性にあふれ,しかも王女然とした気品と知性に満ちた女性です。本作プロローグでは,エマ王女が34歳になるグラントに国王になり,住み慣れたシカゴの地を離れ,仕事も捨て,本来であれば背負わなくてもいい王としての責任と国の運営とを背負っていかなければならなくなったことに配慮する言葉をかけているのですが,グラントはどうも今の仕事だけでは物足りなさを感じており,国王としての立場に挑戦したいという意欲に満ちあふれていることがうかがえます。さてアメリカという王室のない国で育ったグラントのために,作法や国情の指南役としてアルタリアの外務大臣の娘エリン・ローレンスがダニエルの元にやって来ます。作法の先生ということできっと年配の婦人がやって来るものと期待せずに会ってみると,なんと22歳のうら若き美女。しかし幼少からスイスの寄宿学校,いわゆる全寮制のお嬢様学校でしっかり礼儀作法を身に付けた生真面目な女性です。そしてエリンは父の外務大臣からあるミッションを託されてシカゴにやって来たのです。コネリー家のフレンドリーで大家族な中に放り込まれたエリンは,一人っ子で速く母を亡くし寄宿学校で育った自分とダニエルとを比して,その違いに感動しながらも,父からのミッション,つまりダニエルが父たちの傀儡として,何も影響力のない国王になる人物かどうか見極め,できれば王位に就くのをあきらめるよう働きかけること,というミッションを重荷に感じてしまいます。ダニエルであれば国と国民のために良い国王になれるだろうとすぐに見抜いたからです。父とダニエルとの間で悩むエリン。そして自分が仕える王としてよりも,次第に男性としてのダニエルに惹かれ始め,そのことにも悩むエリンでした。二人がシカゴの町に出かけたとき,突然周囲を振るわせる大きな音がして目の前のガラスが割れ,とっさにエリンをかばって身をかがめたダニエルの耳元を銃弾がかすめます。2発の銃弾が二人を襲ったのです。そして秘密裏にアルタリアの国情と国王と皇太子の死について調査を依頼していたダニエルの元に,二人の死は事故死ではないかもしれないという知らせが届きます。銃撃事件を捜査するためにシカゴ警察刑事とFBI特別捜査官が任命されたことも知るのでした。
 王室への到着を早め,警備員を引き連れてアルタリアについたダニエル一行。侍従を始め意に沿わない態度の使用人を取り替える程度で王宮での生活はエリンの指南の元に始められますが,来客を送り出したついでにエリンを捜していると,エリンの父の外務大臣とエリンの会話が耳に入ってきました。外務大臣がエリンに託したミッションの内容を聞いてしまったダニエルは,エリンに裏切られた気持ちをもち,顔を合わせようとしなくなります。しかし,ダニエルの誤解を解こうとエリンは積極的に身の回りの世話をして,ついにその信頼を再び勝ち取るのでした。女性ばかりの寄宿学校でほとんどの時を過ごし,男性との付き合いの経験のほとんどなかったエリンに取ってみれば,ダニエルは本当の意味で初めて出会う男性でした。しかも自分が仕える国王という究極の上司。そんなダニエルに男性としての魅力と気持ちを抱くことが果たして許されるのか・・・。王妃候補としたやって来た首相の娘に嫉妬したり,ダニエルに裏切り者と言われることに恥ずかしさと腹立たしさを感じたり,そしてなによりダニエルの元に寄り添っていたいという恋心との間で苦しむエリンですが,そんなエリンの心を知ってか知らずか,ダニエルもまたこの国で本当に信頼できるのはエリンしかいないことに気付いていくのでした。二人のロマンスは終盤の僅かなスペースしか描かれていませんが,表紙のイメージを見る限り,セクシーでダニエルに対する絶対的な想いをあふれんばかりに表しているエリンの表情が,気持ちの強さを表していると思います。シリーズ全体を通して二人は何度も登場してくるでしょうから,さすがリアン・バンクスのHQの限られたスペースの中での効率的に精一杯,ロマンスを描いたものだとその手腕に脱帽です。


タグ:ディザイア
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オアシスの愛と砂漠の掟 [キャロル・マリネッリ]

SHALOCKMEMO1344
オアシスの愛と砂漠の掟 Beholden to the Throne 2013」
キャロル・マリネッリ 柴田礼子





 原題は「玉座への義務」
 ヒロイン:エイミー・バネスター(?歳)/アルザン王室付きナニー/ブロンドの巻き毛/
 ヒーロー:シーク・アミール(?歳)/アルザン国王/180センチ超の身長,肩幅が広く肌が浅黒い,黒い瞳,目の上に傷/
 双子国アルザンとアルジルズ。かつて一つの王家だったものが代々双子が産まれ,ある時点でそれぞれが国を継承することになります。しかし,一方が継承者がいなければ他方がもう一方を吸収することになるのです。現在のそれぞれの王家はアルザン国のアミールとアルジルズ国のラカールによって支配されているのですが,アミールの王妃は双子の女子を出産したのち亡くなってしまいます。ラカールの妻ナターシャ王妃は丁度臨月で,作品終盤でついに男児を出産するのです。アルジルズ国の法律では女子でも王位を継承できるのですが,アルザン国の法律は王位を継げるのは男児のみ。いずれアルザン国はアルジルズ国のもとに吸収されてしまうことになるのでした。アミールの王妃ハンナの死から一年が経ちます。アミールは双子の娘クレミラとナキアのナニーであるエイミーというイギリス娘と恋仲になってしまうのですが,それは双子の娘たちが物心つく前に母親であるハンナ王妃が亡くなってしまい,ナニーであるエイミーを母親と思ってしまっていることや,砂漠の掟に従わず,イギリス流になにかと自分の命令に反抗してくるエイミーの態度に,新鮮さを感じてしまうからでした。しかし運命は皮肉です。エイミーはかつて落馬して馬に踏まれてしまい,首に傷跡が残ったばかりでなく子供が産めない身体になってしまっていたからです。エイミーもまたアミールを愛してしまうのですが,アミールと結婚しても,自分は男子を産むことができないという事実に苦しみます。それでもなんとか砂漠の掟を乗り越えようと,帰国してしまったエイミーを迎えに行って結婚式までこぎ着けようとしたアミールですが,式当日,妊娠出来ない事実を隠したまま結婚すれば多くの人を騙すことになることに耐えられなくなったエイミーは気を失ってしまい・・・。
 過酷な砂漠の予言と運命に翻弄される王とナニーのロマンスです。次々と予想外の展開が現れ二人の人生をめまぐるしく変化させていく面白さに,一気読み間違いなしのシークものです。MB版の表紙のエイミーのモデルさんの,まるで中世の女闘士のようなブロンドで細身ながらも堂々とした姿,豊かな胸ときりっとした顔立ちとグレーの瞳に間違いなく惹かれるNICE_HEROINEです。


タグ:ロマンス
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命のブーケ [キャサリン・スペンサー]

SHALOCKMEMO1343
命のブーケ Dominic's Child
( From Here to Paternity 1 ) 1996」
キャサリン・スペンサー 井上京子




K-426
16.09/¥670/156p

R-1726
01.11/¥672/156p


 原題は「ドミニクの赤ちゃん」
 ヒロイン:ソフィー・カスン(27歳)/景観設計士/金髪で灰色の目,長い脚/
 ヒーロー:ドミニク・ウィンター(35歳)/建設業者/広い額,黒髪,鼻骨を折った跡,強烈で断固とした横顔,緑色の目,長身/
 「「さあ,ブーケよ,ソフィー」エレインが手渡してくれた。」白百合の美しいブーケが象徴するエピローグに描かれているこの場面が,本作の邦題になったことは言うまでもありません。すれ違った二人の気持ちとは裏腹にソフィーのお腹の中で順調に育ってきて,帝王切開で産まれたライアン。ドミニクとソフィーのこの男の子が産まれ,二人の結婚式が三人での式になった最後の場面が,いかにもロマンス小説らしい幸福感と安堵感に満たされたクリスマスのカナダ,パーマーズタウンでの一幕です。初めは行方不明になったウェクスラー夫妻の一人娘バーバラの身を案じるドミニクとソフィーの口論から始まります。夫妻の家のエクステリアを設計するソフィーと,バーバラの婚約者で建設業者のドミニク。ソフィーはドミニクの独善的でどんなときにも冷静さを失わない性質を好きになれませんでしたが,逆に男性らしさにあふれたドミニクに惹かれてしまっていることも頭の片隅に残っています。しかし,自分に責任のない,いえ,無責任で我が儘なバーバラの失踪の原因を自分に着せられるのに納得できないでいるソフィーですが,ドミニクはそんなソフィーの気持ちにはいっこうに頓着せず言いたい放題をいっています。ところが,泥酔したドミニクを慰めたくなり,そしてそのまま二人は深い関係に陥ってしまうのです。その結果の妊娠。妊娠検査薬を買ってきたその晩,再度ソフィーの家を訪れたドミニクによって,速く検査したらどうかと無慈悲な要求をされ,それでも気になっていた検査を済ませると按の情の陽性反応。ソフィーもまたかつてある男性と付き合い,無垢ではありませんでしたが,あまりに無神経なドミニクの言動に腹を立てながらも,どうしてなのかドミニクの言うとおりに自分が行動してしまいます。初めはこのソフィーの情けない行動にイライラしながら読み進めていくことになるのですが,やがて,幸せな日々を過ごすソフィーとドミニクの元に,バーバラが突然生き返ったようにやってくるのです。すでに妊娠の結果二人はウェクスラー夫妻の了承も得て結婚を間近にしていたのですが,バーバラの出現と私妊娠したのよという告白に,ソフィーは自分が身を引くことが当然とばかり,ドミニクの元を去って身を隠したのです。双子の兄ポールとその妻ジェニーの元へと。ソフィーは両親には妊娠のことは話しておらず,打ち明けたのは親友のエレインと兄夫妻だけでした。ドミニクとの婚約が破れた今となっては,両親の元に帰ることもできません。イギリスに身を隠したソフィーは鬱々と日々を過ごしているのでした。一方バーバラの嘘に振り回され,ソフィーに去られてしまったドミニクも親友の弁護士から背中を押され,ソフィーを再び手に入れるために,ある計略を巡らし,同時にソフィーの両親からソフィーがイギリスの兄夫妻の元にいるらしいと言う情報を得て,一通の手紙をソフィーの元に送るのでした。かつて住んでいたパーマーズタウンの家で待っていたソフィーは突然腹痛に襲われ・・・。
 プライド同士のぶつかり合い,そして愛されなかった過去を持つドミニクがソフィーへの純粋な愛に気付いて行く過程が丁寧に描かれています。我が儘なお嬢様で美貌のバーバラに比べて,職業人としての落ち着いた雰囲気と美しい脚線美をもつ平凡な女性ソフィーの対比が,本作の雰囲気を作り上げていきます。めずらしいカナダ・ロマンスの独特の雰囲気が本作の魅力です。


タグ:ロマンス
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フィアンセに片想い [クリスティ・ゴールド]

SHALOCKMEMO1342
フィアンセに片想い His E-mail Order Wife
(愛と裏切りのコネリー家 8) 2002」
クリスティ・ゴールド 南 和子





 原題は「彼のEメールでオーダーした妻」
 ヒロイン:クリスティーナ・シモンズ(27歳)/教師/身長180センチ,豊かな胸とヒップの女性らしい体型,アイルランド系らしい赤褐色の髪,大きな茶色の瞳,ふっくらした唇,日に焼けた肌/
 ヒーロー:ドルー・コネリー(27歳)/繊維会社コネリー社海外経営担当副社長/青い目,ウエーブのかかった黒い髪/
 このブログの親ウェブ「ロマンスは危険」発足当時(2003年8月)から注目していたシリーズ「愛と裏切りのコネリー家」についに手を出し始めました。当時はまだノーラ・ロバーツやサンドラ・ブラウンといった大御所の作品,そしてのちに「富豪一族」シリーズからヒストリカルへと興味の対象を移していき始めたロマンス小説への入口にたどり着いたばかりの頃で,ディザイア作品にはあまり興味を持っていなかった時期でしたが,シリーズをまとめてみると1年間に及ぶ12冊のシリーズというのは出版的にもかなり充実した,また一面リスクにも直面したシリーズ翻訳になったのではないかと思います。連作シリーズは作家によって出来不出来の差が大きいときがあり,売れる,売れないの差が激しい面もあろうかと思いますが,読者側からしても読破にちょっと我慢のいる場合もあるのではないかと思います。クリスティ・ゴールド作品をまとめているうちに本作が目に入り,13年前に注目していた本シリーズを本格的に読みたいと思わせる作品に当たったように思います。第1作目から読んだわけではありませんので,シリーズの前提がよく分かりませんが,時折作品中に登場するコネリー家の人々が,シリーズを読み進めればわかるのだろうと半ば楽しみでもあります。かつて「富豪一族」シリーズを読み始めたときも,その全貌をとらえることはなかなか難しく,長期間かかって「伝説」や「肖像」に手を出していきましたが,その後すっかり飽きてしまい,またHQ側のPR不足もあってか全巻制覇はなかなか難しく,未だに取りそろえて・・・というわけにはいかなくなっています。また「チャッツ・フィールド」シリーズのような最近も原作が書き続けられているシリーズの訳もまだまだ原作を多数残したまま,シーズン○○という形で何年かにわたって断続的に出版されていくことだろうと思います。シリーズ物は登場人物がときおり再登場するため,旧知の人に出会ったように,その後どうなったの?という興味を惹くので安心感がありますが,同時に飽きっぽい私にとっては続けて読むことでちょっとうんざりしてくるという面があることも否めません。3部作からせいぜい6部作ぐらいまでが限界でしょうか。そういう意味でも本シリーズの全巻制覇まだまだ先の長い話になりますので,ここで全部読むぞと言う宣言はしないで置きたいと思います。
 さて,前置きが長くなりましたが,本作の魅力はなんといってもヒーローとヒロインの出会いの設定がユニークです。孫の再婚の心配をしている祖母のリリーが,孫ドルーの海外出張中にひ孫のアマンダ(マンディ)と共謀してドルーの再婚相手をウェブサイトへ紹介し,1カ月にわたってドルーになりすましてメールのやりとりをし,ドルーが帰国する日に合わせてシカゴのコネリー家を訪問させ,無理やり会わせてしまうという設定なのです。そしてマンディがその秘密をドルーに話してしまいます。「パパに奥さんを見つけてあげたの」という言葉とともに・・・。大柄で女性らしい体型のクリスティーナは,幼児教育の専門家。「見かけだけで男性から判断されてきた。平均以上の身長と豊かすぎるほどの胸やヒップをもてあますことはなくなってきたものの,違う体型だったら良かったのにと望んだことは一度や二度ではすまなかった」と自分の体型に自信のないクリスティーナですが,ドルーはそんなクリスティーナの内面の美しさに惹かれてしまうのです。すでにメールで何度も(往復50通ほど)言葉を交わしているマンディとクリスティーナは出会った瞬間から共感し合い,ドルーはそのことにも困惑してしまいます。仕事が忙しく亡き妻が悩んでいたことに気付かないまま薬の多量摂取で亡くなってしまった苦い経験から,もう同じ苦しみは味わいたくないと思っています。なんとか祖母のリリー・コネリーが自分になりすましてEメールを送っていたことを知られないうちに,クリスティーナにこの偽婚約の解消を申し出させたいと思いつつも,次第にクリスティーナから離れがたくなっていきます。マンディのお泊まりパジャマパーティへの参加や,亡くなった妻タリアの物であったピアノをマンディとクリスティーナが弾いている様子をみて,腹を立てながらも,幼児教育の専門家クリスティーのマンディへの接し方を見て,再婚もありかな?思い描くようになるのでした。クリスティーの方も出会った瞬間からドルーに惹かれるものの,両親から冷たくされて成長してきた自分がコネリー家のような大家族の中で戸惑いを感じていることに結婚への怖れを感じてもいるのです。ユーモアのセンスに富むクリスティーナとドルーの会話は次第に熱を帯びていきます。そしてジェニーヴァ湖の近くのロッジで家族で週末を過ごす計画を母親のエマ・コネリーに話したとき,クリスティーナを家族に紹介するように計画を立てられ,婚約者としてクリスティーナを家族に紹介せざるを得ないことになってしまいます。しかし互いの思いを二人ははっきりと言い出せず,それでも婚約者の振りをしているうちに,周囲はすっかりクリスティーナをドルーの婚約者として気に入ってしまいます。「ドルーにとって気晴らし以上の存在になりたい。彼のすべてになりたい。それ以下で納得することはできないわ。」という気持ちの高まりにクリスティーナは深い関係を望むようになって行きます。しかし亡き妻に対する思いをドルーが断ち切れないでいるだろうと一方でドルーを思いやることも忘れないクリスティーナでした。楽しいロッジでの週末の間にリリーが二人っきりにしてあげようと画策し,ついに二人は結ばれるのでした。ところが,Eメールを出したのがリリーだったことをマンディが明かしてしまい,クリスティーナは裏切られた気持ちになり,腹立ちの気持ちをドルーにぶつけるのでした。「明朝一番で家を出て行きます。」こう宣言するクリスティーナをなんとかなだめ,これからも彼女を守っていきたいと願うドルー。さて二人の関係は発展するのでしょうか・・・。
 お茶目で孫やひ孫を心配するリリーの大胆な行動。そして気付かないうちに息子の再婚相手としてクリスティーナを応援してしまうエマと,コネリー家の大家族主義に巻き込まれてしまうクリスティーナの幸福感が随所に伝わってくる温かい作品です。


タグ:ディザイア
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一夜の子のために [マヤ・ブレイク]

SHALOCKMEMO1341
一夜の子のために Brunetti's Secret Son
( Secret Heirs of Billionaires 3 ) 2015」
マヤ・ブレイク 松本果蓮





 原題は「ブルネッティの秘密の息子」
 ヒロイン:メイジー・オコーネル(29歳)/イタリア料理店「メイジーズ」オーナー,元弁護士/天使のような顔と男をそそる罪な身体の持ち主,明るいブルーの瞳,暗い炎の色の腰までの髪/
 ヒーロー:ロメオ・ブルネッティ(35歳)/高級リゾートホテル業「ブルネッティ・インターナショナル」CEO/ハンサム,富豪,独身/
 「幻を愛した大富豪(SHALOCKMEMO1295)」に続くシリーズ第2弾です。前作のヒーロー,ラファエル・カステリの関連作「純潔の未亡人」は10月刊の予定ですが,本シリーズには入っていないようで,ちょっと不思議です。本作のヒロイン,メイジーの圧倒的な美しさは左表紙イメージで明確ですが,MB版はブルネット,邦訳版は赤毛と異なっていますが,作中ではダブリン出身,暗い炎の色と記されていますから邦訳版の方が正しいでしょう。ただどちらにしても若々しい愛らしい顔と女性らしい姿態は共通項ですね。しかも,弁護士として働いたのちに一粒種のためにレストラン経営という新たな職業を選択したことでも分かるように,頭が良く,愛情に満ち,しかも美貌に恵まれるという三拍子揃った素晴らしい女性であることは間違いないようです。ただ,両親の愛情には恵まれなかった生い立ちには,その才能を打ち消してしまう決定的な劣等感を彼女に植えつけてしまっています。ところで,Amazonさん,9月刊の紙版のイメージがウェブページに載らないのには何か理由があるのでしょうか。KIDNLE版のイメージはあるのですから,普通発売日までにはアップされるのですから,すでに5日刊についてはあってもおかしくないし,7netやhonto版には載っているのですからハーパーコリンズ側の問題ではないようです。KINDLEの売れ行きが芳しくなく,売らんがための方策を取っているのではないかなどと勘ぐってしまいます。まあ,斜麓駈としてはKINDLE版の方がイメージも大きく,嬉しいのですが,KINDLE版のない作品のイメージを示せないのがちょっと困ってしまいます。ケイ・ソープの「夫を忘れた花嫁」(KINDLE版なし)はきちんと紙版の表紙イメージがあるのですから,理解に苦しみます。
 さて,本作のヒーローは実父がマフィアのボスというちょっと危ないヒーロー。しかし,彼自身は実父に妊娠させられた実母が実父から捨てられ路上生活を送った経験もあり,いわゆる暴力否定するために実父の影響下から逃れてきた経歴を持ち,事業家として大成功した努力家であります。しかし,実父であるドンが亡くなり遺言で彼に遺産を受け継ぐように右腕のロレンツォに託したことから物語が始まります。そしてその時明かされたのは,ヒーロー,ロメオには5年前に一夜の関係を持った女性との間に息子がいることでした。丁度は母が亡くなったとき訪れた故郷パレルモで,もう自分には誰も残されていないと寂しさを紛らわすためにバーで飲んでいて出会った女性に慰めを求め,翌朝部屋を去ったきり一度も連絡を取っていない女性メイジーが男子を出産し,その子を育てているというのです。家族を持たず,これからももつ予定の亡かったロメオの人生に降って沸いたように登場した一人息子。その存在がこれからの自分にどんな影響を及ぼしてくるのだろうか,そしてその母親であるメイジーとの関係をどうしたらよいのだろうか。詳細を弁護士に調べさせ,ロメオはメイジーの暮らしているダブリン郊外の町ラネラに赴きます。現在は「メイジーズ」というイタリア料理店を経営しているというメイジー。5年前は弁護士と聞いていたはずなのに・・・。一方,不審な高級車が表に停まっていると従業員から指摘されたメイジーですが,客かと思って顔を上げたメイジーはいっぺんで入ってきたのがロメオだと気付き,動揺を抑えきれません。そして二階のメイジーのフラットで,息子はどこにいる?と聞かれるに及んで,どうして彼がそのことを知っているのかと愕然とします。ここに至る経緯を聞き,息子ジャンルッカ(ルッカ)にはまだ父親であると言わないで欲しいと頼みます。公園にロメオを案内したメイジーは息子との間に自然に紐帯ができているロメオに驚かされます。ロメオはメイジーがあまりに自分に自然に接し,しかも自分がいまや「ブルネッティ・インターナショナル」という世界的ホテルチェーンのオーナーだとは知らない様子に驚きと新鮮さを感じます。たった一夜を過ごしただけの見知らぬ男性でロメオという名前しか,苗字すら知らなかった男性,それがメイジーにとってのロメオでした。改めて互いのことを知らせ会う機会をもたなければ。そう考えたロメオは一度ホテルに戻った体制を整えなければと考えます。今,実父の右腕だったロレンツォがジャンルッカやメイジーの存在を知っていることに危機感を感じながら,数人のボディガードを周辺に侍らせているものの,これから二人を守っていくためにはどうすれば良いか。ロメオはメイジーに自分との便宜的な結婚を申し出ます。マフィアは元来家族をとても大切にするもの。自分と家族になればメイジーとルッカは守れる。ロメオはそう考えたのでした。一時返事を留保したメイジーですが,マフィアから息子を守るためと言われて断ることができませんでした。ロンドンで簡単な結婚式を挙げた後,ハワイのロメオの経営する「ブルネッティ・インターナショナル・リゾート・マウイ」のヴィラで過ごすことになります。あくまでも息子のためということで互いの感情は抜きにしての結婚生活。しかし次第にそれは互いにとって窮屈で苦しいものになってきました。互いに魅力を感じながら離れていることに不自然さを感じたからです。そこで食事のときを通して互いの生き方や過去の問題点を,そして出会った5年前のことを打ち明け合い,理解が深まったようでした。しかし二人の関係はなかなか進展しません。休暇で訪れていたロメオの共同経営者ザッケオと妻のエヴァとの交流も二人の間の微妙な雰囲気に影響を与え始めます。暗くなってからエヴァとメイジーが海で泳いでいる様子を見つけたロメオは過剰に反応してしまい,メイジーが泳ぎの名手であり危険がないように予防措置を執ったことも知らずにメイジーを助けるために海に飛び込み,さらにヴィラまで抱き上げて運びます。自分に対する気持ちが単なる便宜的な物では亡いのではと期待したメイジーは遂にロメオとの関係を深めます。しかしロメオの口からメイジーに対する愛の言葉は聞かれません。「あなたは素晴らしい父親だし,私にはとうてい与えられないチャンスや支えをルッカに与えてくれると思う。それでもあなたとはいられない。」という言葉とともに,ルッカの4歳の誕生日を祝ったのち,メイジーとルッカはダブリンに帰ってしまうのでした。メイジーの両親は有名な大学教授で,一人娘であるメイジーも研究者になることを期待されていたのですが,幼い頃から勉強漬けの生活をしながらも毎年の知能テストでなかなかIQが伸びないため,すっかり両親から見放され,一時は弁護士になることで小康状態にはあったもののイタリアで知らない男性と付き合って妊娠し,さらにイタリア料理店を開くという反抗的な行動にすっかり腹を立て,ほとんど連絡すらしない関係になっていました。一人息子ルッカはメイジーにとって唯一の家族ですべての愛情を注ぐ存在でもあったのです。そこに入り込んできたロメオの存在。しかも互いに深い関係を持ちながらも心の仲間では踏み込ませない関係に,メイジーはすっかり希望を失っていたのです。そんなメイジーを励ましたのはレストランの経営を任せても良いと思っている友人のブローナでした。もう一度だけ,ルッカの将来のためロメオと対決してみよう。そう決意したメイジーはルッカをブローナに預け,パレルモに向かうのでした。
 両親から愛をもらえず愛を知らずに育ったヒーロー,ヒロインですが,ヒロインは息子を慈しむことから愛を知り,ヒーローをも愛していきます。そんなヒロインを愛せずにはいられなくなるヒーローという構図はロマンスの王道ですが,マフィアのボスの婚外子という特殊な環境にあるヒーローの存在感はかなり大きいですね。あまり風貌については書かれていませんが,雰囲気を持った男性だと言うことは想像に難くありません。ところで,本作をKINDLE版で読みましたが珍しくヒーローの名前の誤記が目立ちました。ロメオという名前を3個所も間違っています。「ロッコ」「ロメ」「ロミオ」という誤記が散見されました。紙版はどうでしょうか。


タグ:ロマンス
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悲しみの白い薔薇 [キャロル・マリネッリ]

SHALOCKMEMO1340
悲しみの白い薔薇 The Cost of the Forbidden
(氷の掟 2) 2015」
キャロル・マリネッリ 山科みずき





 原題は「禁じられた代価」
 ヒロイン:ナオミ・ジョンソン(25歳)/個人秘書/濃茶色の髪,ふっくらした唇,丸い頬,濃茶の瞳,フローラル系の香り/
 ヒーロー:セバスチャン(セヴ)・デルジャーヴィン(歳)/IT専門家/ブラウン(灰黒色)の瞳,黒髪,白い肌,長い脚/
 「大富豪の約束なき情熱(SHALOCKMEMO1321)に続く,キャロル・マリネッリの「氷の掟」シリーズの第2弾でロシアの養護施設で育った兄弟同然の4人の同士たちのシリーズです。前作のヒーロー,ダニールとヒロインのリビーは結婚し,二人の子供がまもなく産まれようとしています。本作では,この二人の他に,ヒーロー,セヴの私的にも仕事的にも親しい友人シーク・アレムとジャマール夫妻という魅力的なカップルも登場します。この二人のロマンスもそのうちシリーズの中に入るかもしれませんね。ヒーロー,セヴの家族関係についても登場しますが,ヒロイン,ナオミの家族関係もちょっと複雑なようです。父親は後妻を迎え,異母妹たちとの関係はすこぶるよいのですが,両親との関係はよくありません。実父アンダーソン・アンダーソン(姓名が同じ)に無視され,なんとか父に自分に振り向いて欲しいと願う娘のナオミは,時折実家にプレゼントをたくさんかかえて帰るのですが,留守番や家事を頼まれるだけで,体の良い家政婦のように扱われ,あまつさえ父の50歳の誕生パーティにすら呼ばれないという状況です。そしてもちろんヒーロー,セヴもまた親に捨てられて養護施設で育ち,母親と姉には見向きもされていません。さらには養護施設時代の親友ニコライの命を救うことができなかったという罪悪感をずっと抱えて生きています。11月12日のバッキンガム宮殿での再会を願いつつ・・・。
 さて,本作は個人秘書募集にナオミが応募してきたところから始まります。当初はセヴに気に入られなかったナオミですが,現秘書が書き置きを残して去ってしまったことから,謂わば仕方なく(それでももう一人の秘書候補がいたのですが)破格の待遇でナオミを雇うことになります。24時間体制ですべての時間を雇い主のために費やす覚悟で務めなければならないこの仕事。その見返りとしての給与やボーナスは数ヶ月で一財産になろうかという金額。しかも衣装準備費から住まいまで提供されるという。なんとか蓄財して父に認めてもらおうとするナオミにとっては,願ってもない条件ですが,現在アンドルーというフィアンセと婚約中の身。そんな長時間にわたる勤務に耐えられるだろうかという不安と裏腹に,ボスとしてのセヴに男性としての魅力を感じ,強く引きつけられながら仕事を優先しなければという板挟みにも苦しみます。何かと出張で自家用機で世界中を飛び回るセヴに同行しなければならないことも負担です。しかし,ナオミは見事にボスの要求に応えていきます。そしてアンドルーとの婚約を解消してしまうのでした。もはやアンドルーには魅力を感じなくなっていたからです。もともと父に認めてもらおうと生活の安定のために無理やり承諾した婚約でしたから,それっきり連絡も取らずにいます。終盤,このアンドルーが登場し事件を起こすのですが,それでナオミの気持ちが変わるわけではありませんでした。邦題の「白い薔薇」は,セヴが女性との交際に飽きてしまい,別れるときに秘書であるナオミがセヴの指示で相手女性に送るものです。個人秘書だけにボスの私生活も含めてすべてのことに気を配らなければなりません。仕事の内容は多岐にわたるようです。それでもその要求に応えられるだけの素晴らしい能力にナオミは恵まれていたようです。しかし当初の契約の3カ月をなんとか乗り切り,シーク夫妻の要請でドバイを訪れたとき,ナオミはセヴに辞表を出します。セヴは引き留めもせずに辞表を受け取り,後任の個人秘書の人選を指示するだけでした。この後はロンドンに立ち寄る予定でしたから,そこでナオミは元の生活に戻るつもりでした。二人の間にある男女の感情の火花をみてとったセヴの友人でもあるシーク夫妻は,一計を案じ,ドバイでの仕事の合間に二人が休暇を過ごしつつ互いの気持ちに気付かせようとします。この地を去ったのちは後腐れなく別れることになり,二人は思い出づくりに目眩く時間を過ごします。そしてロンドン。この地での目的をセヴは誰にも言わないでいます。11月12日のバッキンガム宮殿前。その話しをナオミにだけは話すセヴでした。ところがロンドンの空港でいきなりアンドルーが現れ,セヴにパンチを浴びせます。セヴは数分間気絶してしまい,ナオミは自分のせいだとセヴの介護をするのでした。これが最後の秘書としての仕事・・・。さて二人の関係はこれで終わるのでしょうか,さらにナオミと両親の関係は?またセヴと家族の関係は・・・。
 シリーズの中核でもある4人の養護施設仲間の動向も描かれます。前作の主役のダニールとリビーもセヴとナオミの二人の関係にかかわりハッピーエンドを迎えるのですが,次作(原作が2016年5月刊)への予告めいたローマンとアーニャ,そして謎のニコライも登場し,エピローグは締めくくられます。


タグ:ロマンス
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