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イタリア大富豪と小さな命 [レベッカ・ウィンターズ]

SHALOCKMEMO1352
イタリア大富豪と小さな命 The Billionaire's Baby Swap
(モンタナーリ家の結婚 1) 2016」
レベッカ・ウィンターズ 大谷真理子





 原題は「億万長者の取り違えられた赤ちゃん」
 ヒロイン:ヴァレンティーナ・モンタナーリ(23歳)/工学部大学院生いわゆる理系女でシングルマザー/金髪,ブルーの目/
 ヒーロー:ジョヴァンニ・ラウリート(32歳)/医療機器メーカーのCEO/黒い目,黒髪でV字の生え際/
 モンタナーリ家の3兄妹のシリーズの第1巻です。これは3作のシリーズになるのでしょうか。次作の「The Billionaire Who Saw Her Beauty」は原作がすでに書かれており兄妹の長兄リニエーリ(32歳)がヒーローとなっているようですが,次兄のカルロ(30歳)がヒーローとなる第3作目はまだ原作が書かれていないようです。ともかく第1作の本作は長女で兄妹の末っ子ヴァレンティーナがヒロインとなります。舞台は風光明媚なイタリアのカンパニア州サレルノ県アマルフィ。ナポリに近いリゾート地です。アマルフィという都市は「帰れソレントへ」で有名なソレントから東へ20キロ弱,州都ナポリから南東へ40キロ弱という位置関係にあるようですイタリア半島の名が靴の形の丁度弁慶の泣き所の辺りに位置する部分で,人生一度はいってみたいところでしょうね。作中にもクラシックの曲やオペラの歌い手たちの名前が何人か出てきます。音楽好きな人には容易に雰囲気が想像ができる名前が頻出するため,斜麓駈にとってもこの部分はすごく好きなところです。ルチアーノ・パヴァロッティ(1935-2007)はもちろん,ナポリ出身のエンリコ・カルーソー(1873-1921),盲目のテノール歌手アンドレア・ボチェッリ(1958-),マリオ・ランツァ(1921-1959/USA=映画「歌劇王カルーソ」)などの歌手の名前が出てくるとともに,エドゥアルド・グリーグ(1843-1907/NOR)のピアノ・コンチェルトや「トロルドハウゲンの婚礼の日(抒情小曲集第8集第6曲)」などの曲名が登場します。ヒロイン,ヴァレンティーナな妊娠中にこのグリーグのピアノコンチェルトをよく聴いたというのですが,あんな重々しく悲しげな曲を聴いて果たして胎教に良いかと言われると首をかしげざるをえませんが,まあそれも好き好きかもしれません。日本だったら普通はモーツァルトやシューベルトなどの軽めのものが好まれるのでしょうが・・・。
 さて,ストーリーですが,産気づいて病院に向かうヴァレンティーナと兄のリニエーリの車に,そして同じ頃同じように産気づいて病院に向かうジョヴァンニの別れた妻タターニア・コルレートの救急車が出会い頭の事故。そして二人の男の子が産まれます。ところが病院で赤ちゃんの足に付けるネームを取り違えてしまいます。退院後ヴァレンティーナ自分の子供が自分だけでなく,両親にも似ていないことに気付いてしまいます。念のためとDNA検査を要請するヴァレンティーナたちモンタナーリ家。そして同日に生まれたもう一人の赤ちゃんと取り違えた可能性が発覚します。ジョヴァンニは出張中に電話で呼び出され,病院での説明を受け,血液検査を受けますが,やはり自分の子供だったと思っていた赤ん坊が取り違えられていたことが分かるのでした。しかし,互いに赤ん坊を交換したところが双方の赤ん坊とも激しく泣き叫びます。声が聞こえたジョヴァンニが赤ん坊を抱いたまま廊下に出てみると,やはり赤ん坊を抱えたヴァレンティーナとばったり。交換してみると赤ん坊たちはすっかりおとなしくなってしまいます。生まれてからの2週間半の間互いの子供たちはすっかり刷り込みができてしまい,産みの親よりも育ての親の方に馴染んでしまっていたのでした。病院を訴えようかと祖父母たちが騒いでいるのに対して,ヴァレンティーナはそれは子供のためにはならないという考えをジョヴァンニに話し,ジョヴァンニも同意見でした。ヴァレンティーナは大学の先生であるマッテオに騙されて妊娠してしまい,母親からも恥だと言われ,兄たちの支えを頼りにしています。ジョヴァンニもまた,元妻のタターニアが仕事中毒のジョヴァンニに離婚を突きつけ,別れた跡に妊娠に気付いたため,子供の顔も見たくないという元妻の言葉に傷ついています。しかし二人とも子供たちをこよなく愛する気持ちは強く,なんとか子供たちがそれぞれの本来の親の元にうまくなじめるように数日間一緒に過ごしてみようと言うことになるのでした。そしてそれぞれが,これまで出会ったことのない異性への興味を感じてしまうのです。赤ん坊取り違えという社会的問題を扱うのかと思いきや,親同士のロマンスに発展するという意外な展開が続いていきます。出産したばかりのヴァレンティーナはもちろんジョヴァンニとの深い関係は結べませんが,互いの信頼度がどんどん高まっていき,ベストパートナーという位置づけで一緒に過ごすようになります。もう互いの愛は確実になっているのですが,元妻タターニアの父は娘とジョヴァンニとの復縁を望み,会社のCEOの地位と引き替えに策略を練ってくるのでした。自分がいることで愛するジョヴァンニが苦労する姿は見たくないとヴァレンティーナはジョヴァンニの家を出るのですが・・・。そしてジョヴァンニが取った思い切った行動とは・・・。
 MB版の表紙のヴァレンティーナはかなり大柄な感じの,23歳とは思えない老けぶりで表情が写っており,ジョヴァンニの言うように「これほどの美しい女性」とは見えないのでちょっと興ざめですが,互いに資産家の家に生まれ周囲の人々にも大切にされている二人であっても,心の中に隙間があり,その隙間を埋める存在として,いわば運命の二人として出会っていくようすが巧みに描かれているところが本作の魅力だと思います。美しいイタリアの景色と幸せな家族を作り上げていく二人の愛がほのぼのとした幸福感を醸成する癒やしの作品です。


タグ:イマージュ
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