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命の芽吹くパリで [アニー・ウエスト]

SHALOCKMEMO1386
命の芽吹くパリで A Vow to Secure His Legacy
( One Night with Consequences 13 ) 2016」
アニー・ウエスト 柿沼摩耶





 原題は「保証された彼の遺産への誓い」
 ヒロイン:イモジェン・ホルゲイト(25歳)/会計士/ほっそりした首,つややかな黒髪,ハート型の顔,ふっくらした赤い唇,つんと上を向いた鼻,はしばみ色の瞳,緑色に変化する瞳,バニラシュガーの香り,黒いまつげ,弓の形をした唇/
 ヒーロー:ティエリー・ジラール(34歳)/会社のCEO/エスプレッソ色の瞳,太い眉,彫りの深い端整な顔立ち,長身でアスリートのような体格,豊かな黒髪,高い頬骨/
 「君の好きなものを3つ教えてくれ」という質問に対するイモジェンの答えは,「(1)読書」「(2)数字」「(3)料理」というとても普通なことでした。ティエリーの方はスピードを競うスキーの滑降競技や急流下り,ラリーだったりのアウトドア派。ふたりに共通点は全くないように思えます。ジラール家では夕食は青の間で取ると決まれば代々ずっと,ジラール家の男は外交団か軍隊に入りその後は一族が所有する企業の一つを経営する,という具合にすべて規則に縛られた生活をせざるを得ませんでした。ティエリーはそれを嫌い,「常に冒険を求め」た生活を送ってきたのです。二日で準備した結婚式を挙げ,その後シドニーに戻らずにジラール家の所有するシャトーについたとき,イモジェンはティエリーと自分の間に横たわる格差に愕然とします。そんなイモジェンの様子をみて,ティエリーはこれまでつきあってきた女性との違いに改めて惹かれていきます。ティエリーの持つ圧倒的な男性としての魅力とジラール家のもつ血筋と裕福さに惹かれる女性が大半だったのに,イモジェンは逆にシャトーに臆する様子を見せたからです。不治の病でつい最近亡くなった母と同じ遺伝子を持つことを医師に告げられていたイモジェンは自分の命がそんなに長くはないと思い込み,最後の冒険の旅としてパリを初めイギリスやアメリカを渡ってシドニーに帰り死出の旅路の準備をするつもりでいたのです。ところがデザイナーだった双子の妹のつくった大胆なドレスを着て参加したパーティでティエリーに出会ってしまい,一夜を共にし,妊娠してしまいます。自分の命の灯火が消えるのと我が子が産まれるのとどちらが早いかという究極の選択に迫られ,再びパリに向かったイモジェンはティエリーに妊娠を告げたのでした。その結果,ティエリーは結婚を持ち出し,その言葉に従わざるを得ないことを承諾したイモジェンでしたが,ティエリーは産まれてくる子供への責任感から便宜的な結婚を申し出たのだと自分に言い聞かせるのでした。最後まで子供が産まれる場面,エピローグで1年後などはありません。二人の関係が愛によるものか,それとも単にビジネス的な便宜的なものか,ということを延々と語っていくのですが,敵役として後半登場するティエリーの元恋人で絶世のブロンド美女のサンドリーヌでさえ,ティエリーにとってはイモジェンの魅力に敵わないのです。イモジェンの方も「彼のすべてが欲しい。でも彼は愛を信じていない。いつか信じることはあるの?その相手は私?それとも彼と同じ特権階級の洗練された女性?」と自分を信じることができません。周囲の人々はティエリーのイモジェンを見つめる目に,そしてイモジェンがティエリーを見つめる目の中に互いに恋い焦がれている様子を見て取っているのですが・・・。そんなこんなのすれ違いが,読者を惹きつけていく作品です。


タグ:ロマンス
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