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鳥かごのシンデレラ [ペニー・ジョーダン]

SHALOCKMEMO1408
鳥かごのシンデレラ Some Sort of Spell
(ベレア家の愛の呪縛 1) 1987」
ペニー・ジョーダン ( Frances Roding 名義) 松本果蓮





 原題は「あるタイプの女性の魅力」
 ヒロイン:ベアトリス(ビー)・ベレア(27歳)/作曲家個人秘書/小柄で丸みを帯びた体型,鳶色の髪,はしばみ色の瞳,なめらかな肌/
 ヒーロー:エリオット・チャーマーズ(30歳代)/実業家/190センチ,シルバーグレーの瞳,焦げ茶色の髪/
 ウィンブルドンにあるビクトリア朝様式の立派な屋敷。俳優だった両親が亡くなり,兄弟姉妹の面倒を見ながら母親代わりを勤めるベアトリスは,もう27歳ながら,男性との交際の経験もなく青春を過ごしてきました。双子の弟に妹そして末の弟,そこに両親の再婚によって生まれた異父妹とその異母兄。大家族といっても過言ではない七人の男女が織りなすシリーズの開幕です。といっても,本作で一気に二人が片づく予定ですから(笑)。5年前に亡くなったペニー・ジョーダンが前世紀末に別名義フランセス・ロディングで描いた未訳のシリーズです。さて,双子のベネディクトとセバスチャンは背が高く金髪の21歳,18歳のミランダは黒っぽい髪,末弟で17歳のウィリアムは金髪とそれぞれ両親の特徴を引き継いでいるようです。ベアトリスの両親チャールズとクレシダは結婚,離婚,再婚とクレシダが19歳でベアトリスを出産し,その後すぐ離婚,そしてそれぞれが再婚し,クレシダは歳の離れた実業家と再婚し,前妻の子供エリオットと,再婚相手との娘ルシーラが誕生します。つまり母の再婚によりベアトリスには義妹とその異母兄という複雑な兄弟ができたわけですが,エリオットとはまったく血のつながりがないことになります。その後,両親は再度結婚し,前述の四人の弟妹が誕生したという複雑な関係になっています。本作ではこの血のつながりのない義兄エリオットとベアトリスの運命的なロマンスを描いています。俳優同士の元も生まれた四人と美貌の母後を受け継ぐルシーラはそれぞれ美しさもスタイルの良さも兼ね備えた男女でした。一人ベアトリスのみが女性らしい起伏に富んだ体型をしており,自分は弟妹たちのようにはなれないとあきらめの気持ちが先に立ってしまいます。そのため,エリオットがフラットの修理を理由に同居し,ベアトリスになにかとちょっかいを出しても,逆に自分はからかわれているだけだと物語の終盤に至るまでずっと思い込んでいるのです。亡き母の美貌を受け継ぎ女優を目指すルシーラは,ベアトリスを「醜いアヒルの子」と呼び,平凡で地味なかっこうしかしないベアトリスに何かと難癖を付け自分勝手に生きています。下の弟妹たちはすっかりベアトリスを母親代わりとして頼り切り,ビーと呼んでなにかと頼み事をするのですが,そろそろ自分自身の人生も考えていかなければと一念発起して秘書として働くことを決意したのでした。それには弟妹たちはみな反対するのですが,一時交際していたロジャーもベアトリスとの将来は弟妹たちもついてくることだと知り,さっさと逃げだしたのでした。そんな状況がいつまでも続いては人生がなくなってしまうと,一大決心したのです。きょうだいたちの面倒を見る新たな家政婦も必要ですが,エリオットのナニーだったヘンリエッタ・パーカーが来てくれ,我が儘な弟妹たちともうまく生活してくれるようになり,ベアトリスの仕事もうまくいき始めます。
 エリオットが,このウィンブルドンの屋敷に越してきたのはもちろんフラットの改修という理由もあるのですが,それは言い訳で,本当はベアトリスへの気持ちを抑えきれなくなっていたからでした。しかし,大勢の兄弟の中でベアトリスに気持ちを伝えることはできません。そのため何かと理由を付けてはベアトリスを連れ出し,時々気のあるそぶりを見せるのですが,男性経験のないベアトリスはそれに気づかないこともあり,逆にエリオットを意識するあまり反抗的な態度も取るのでした。それを弟妹たちから指摘されるとますますエリオットへの反感が増してくるのですが,次第にエリオットを男性として意識するようになっていきます。「エリオットが女性としての私に興味があるように振る舞った理由を突き止めよう。絶対に何か裏があるはずだもの」と考えてしまうベアトリスでした。しかしエリオットに連れ回されるたびに,「私はなぜエリオットの言いなりになっているのかしら」という思いと「人生を一変させる真実が,波のようにのみこむ・・・私はエリオットを心から愛している」と気づいたことで,少女の心から大人の女性への心へとベアトリスが成長したことがうかがえます。エリオットのベアトリスへの褒め言葉「最高の骨格と透明感のある美しい肌を持つ君」という表現はまるで人物模型を表現するようでこの言葉で女性が自分が褒められたとは感じないだろうと思うのですが・・・。
 シリーズ開幕とあって登場人物が多いので,二人のロマンスにはあまり触れられませんでしたが,ベアトリスがエリオットから逃げ回りつつも深い関係になっていく様子がいかにも純情な少女らしさと相俟って思わず微笑んでしまう作品になっています。出張先のイタリアで出会ったルチアによって本来の美しさに気付き,女性としての自信をもっていくところがとても印象的です。


タグ:ロマンス
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