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閉ざされた記憶 [ペニー・ジョーダン]

SHALOCKMEMO1410
閉ざされた記憶
Back in the Marriage Bed 2000」
ペニー・ジョーダン 橋 由美




R-1714
01.10/¥672/155p

HR-098
05.07/¥966/378p
(記憶をなくしたら)


 原題は「新床への帰還」
 ヒロイン:アニー(23歳)/交通事故で記憶を失った女性,施設育ち/大きくて知的なグレーの目,卵形の顔,ブロンドの髪,華奢な体つき,事故の後遺症で右腕が少々不自由/
 ヒーロー:ドミニク・カーライル(33歳)/顧問海洋生物学者/深いブルーの目,日焼けした肌,ブルーブラックの髪,長身/
 親に捨てられて孤児院で育った少女アニーが18歳で出会ったドミニク。二人は強い愛に結ばれ結婚しますが,ドミニクは自分のキャリアを高めるため中東に数年間出張することになります。そして妊娠したと誤解したアニーはドミニクの子供は要らないという言葉に傷つき,二人に未来はないと絶望して出奔するのでした。そして妊娠が間違いだと気づいてドミニクの出発する日に飛行場に向かう途中で車にはねられ記憶をなくしてしまうのでした。右腕を失う大怪我を救ったのは外科医のヘレナ。退院後ヘレナ夫妻に引き取られて事故から5年が経過していました。パートで勤めていた石油会社に新たなプロジェクトで赴任してきたのは夫ドミニク・カーライル。歓迎パーティで偶然出逢った二人は顔を見合わせ互いに驚愕します。アニーは入院中たびたび夢に出てきた男性が目の前に立っていたこと,そしてドミニクは自分を捨てて出ていった妻が悪びれもせず自分を見つめて立ちすくんでいたこと。二人の再会がアニーのなくした記憶を取り戻す旅路へと新たな展開を迎えます。名手ペニー・ジョーダンの2000年の作品ですが,HQロマンス版が電子再刊されたので,(HQリクエスト版は紙版で持っていましたが)取りかかったものです。初めは自分を捨てていった妻への恨み,憎しみ,そしてその理由にこだわっていたドミニクですが,取りあえず記憶が戻るまで自分のアパートで監視することにします。自分を捨てた理由がわかったら離婚に応じようという言い訳を考えて・・・。ところが5年の歳月を経て子供だったアニーが23歳の大人の女性として再び現れたことで,すっかりアニーの魅力に取り憑かれてしまうドミニク。そして記憶を失ったアニーはもともと惹かれていたドミニクにすっかり夢中です。無理やりにでも記憶を取り戻そうと苦しむアニーを見かねていたドミニクの心の中に,記憶を取り戻すことよりも新しく二人の関係を作り上げたいという気持ちも湧いてきます。そしてドミニクが数日の出張で家を離れている間に,ついにアニーは記憶を取り戻します。そしてそのことと同時に今度は本当に自分が妊娠していることに気づくのです。記憶を取り戻したことをドミニクに告げ,妊娠のことは黙っていようと決意したアニーは,ドミニクの会社で話した方が冷静に話ができるだろうと会社に向かった時,再び車がアニーに向かってきます。それを見つけたドミニクが一瞬差でアニーをかばい自分が車に引っ掛けられてしまうのです。再び起こる事故。まさかこんなに都合良く,と思ってしまいますが,アニーはよっぽどボンヤリと舗道を渡ろうとしているのだなぁと逆にそのボンヤリぶりに感心してしまいます。きっとそれほど癒やし系の愛らしい女性なのでしょう。怪我をしたドミニクが目覚めてすぐにアニーは問いかけ,入院先で看護師や医師から聞いたことば,「奥さんは大丈夫ですよ。お腹の赤ちゃんも含めて」に衝撃を受けるドミニク。しかし退院してからもアニーは一切妊娠のことを話そうとはしません。ふとした会話の途中でアニーがドミニクの食べ物の好みのことに触れた瞬間,ドミニクはアニーが記憶を取り戻したのかと問い詰めます。さぁいよいよ終盤。「わかった。いいわよ。話すわ,何もかも。」と居直るアニー。「遂にこの時が来た。恐れていた対決の時。ドミニクとの暮らしに区切りを付け,先に進んでいくために,このハードルはどうしても越えなければならない。」「あなたと別れるわ,ドミニク。この家にはこれ以上いられないの。」「あなたは,私の親が誰かわからないから,私には悪い血が流れているから,あなたの子供を産んで欲しくないと言ったのよ。」という思い込みには,ちょっと韓流ドラマによくあるようなアニーの発想がありますね。「そばにいてやれない父親の存在が,子供の心の重荷になると言いたかったんだ。」と,自分の幼少の頃の経験を話すドミニク。5年前は互いに精神的に未熟だった。離れていた5年の間に二人とも辛い経験をして互いを思いやり互いを深く愛する気持ちを持ち続けていたことに改めて気づいたのです。
 記憶喪失ものの面白いところは記憶を取り戻すまでの過程だけではなく,記憶を取り戻してからの二人の関係がどのように変化し,あるいは深まり,本当の愛を見つけて行くかというところにあるのだと思います。本作はまさしくそういう点で記憶喪失ものの王道を行く名作だと思います。


タグ:ロマンス
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