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愛なき富豪が授けた命 [サラ・オーウィグ]

SHALOCKMEMO1412
愛なき富豪が授けた命 Pregnant at the Wedding
( Plainaum Grooms 1 ) 2008」
サラ・オーウィグ 北岡みなみ





 原題は「結婚式の妊婦」
 ヒロイン:アシュリー・スミス(25歳)/ウエディング・プランナー,農場育ち/身長175センチの長身,ブロンドの髪/
 ヒーロー:ライアン・ワーナー(32歳)/「ワーナー・ホテルチェーン」経営者/190センチ以上の長身,黒い髪,緑の瞳,広い肩,硬い胸,三人兄弟の長男/
 新刊としては2011年3月以来のサラ・オーウィグのお目見えです。この6年間原作が出版されていなかったわけではなくシリーズものも次々と出版されていたのですが,なぜか訳本がなく「幻の作家」になりつつあったサラ。この当たりに何か事情があったのかHQに聞いてみたいものです。一昨年KINDLEで復刊された「狼の住む場所(SHALOCKMEMO1396)」は先日読みましたが,記憶喪失ものだったために目についただけ,とはいえ素晴らしい作品でした。本作を含む「Platinum Grooms」シリーズは,ライアン・ワーナー,ニック・コルトン,ジェイク・ソーンの三人をヒーローにした三部作で,2008年の作品です。「Stetsons & CEOs」「Lone Star Legacy」「Lone Star Legends」「Callahan's Clan」など,次々にシリーズ作品を出しているサラ作品の翻訳を期待したいものです。
 アシュリーは16歳で,ライアンは18歳で母を亡くしています。どちらも現在は父親や兄弟姉妹たち,そして祖母など,家族が仲良く暮らしている恵まれた家庭環境にあるのですが,母親を亡くしたという共通点があるのでした。なんとか二人とも共通点を見つけようと話し合っている間に打ち明け合ったことでした。現在の経済的状況はアシュリー側は苦しく,ライアンは富豪となり格差がありますが,ライアンがアシュリーの妊娠を知って次々に援助を申し出るのに対して,アシュリーは頑固に自分の独立を主張していくのですが,あまりにもライアンの攻勢が素早く,ついにはアシュリーもそれを拒みきれなくなり,ラインのプロポーズを不承不承受け入れていきます。2週間というところで落ち着き,二人は結婚式を迎えるのですが,アシュリーは自分がライアンに恋してしまった反面,ライアンから愛の言葉を聞かされていないため,ライアンは子供が欲しいためだけに結婚を申し出たと思い込んでいます。自分は愛されていないのではないか,間違った結婚をしてしまったのではという不安をぬぐいきれません。結婚式の入場の直前にライアンの元恋人ケイラがアシュリーの元を訪れ,ライアンがあなたと結婚するのは愛しているからではなく妊娠しているからに違いないと爆弾発言をし,ライアンが自分たちのことを元恋人に教えたのではないかと疑心暗鬼に陥ります。直後にアシュリーの青い顔を見た父親ベン・スミスが,車のキーをアシュリーに渡して,逃げるなら今しかないと気遣いますが,アシュリーは逃げることは自分の家族へのライアンの支援が望めなくなることだと考え,不安なままバージンロードを歩いて行くのでした。
 ウエディングプランナーが自らの結婚式をプランニングしたら・・・。自身の理想のウエディングを企画し,お金に糸目を付けなくて良いとしたらとてつもなく豪勢なものになるのでしょうか。しかし,アシュリーは父の入院費や弟の学費などのために自分の生活を節約して家族に仕送りをしている身,たった一度の週末を共にしたライアンとの間に生まれた感情を簡単に捨てることもできず,結局ライアンの申し出を受けて結婚することになってしまったのです。愛のためではなく将来の子供のための便宜的結婚,という気持ちが前面に出ているライアンの言葉に傷つきながら・・・。ライアンが自分を求めていることは間違いないけれども,あのケイラの悪意に満ちた言葉に本当の信頼をライアンに寄せることはできません。こんなアシュリーの気持ちをライアンは理解してくれるのでしょうか。「何度も言ったように,あなたは強引に主導権を握って,何でも勝手に決めてしまう。不幸な結婚はこの子にとってもプラスにならない」とかつてライアンのプロポーズを断ったこともあります。「僕と結婚するんだ。それで君の問題は解決する。」つまり問題解決のための結婚というライアンの言葉と「ライアンと一緒にいると,欲望に体が反応してしまう」という心と体の反応の乖離にアシュリーはどのように対処していくのでしょうか。「ライアンと多くの時間を過ごし,彼についていろいろなことを知った。そしてライアンに好意を持っているというより,恋してしまいそうだった。もしかしたらすでにライアンに恋をしているのだろうか。彼は愛してはくれないのに。」何度も自問するアシュリー。そして式の前にケイラが自分に爆弾発言をしたことをライアンに告げると「きみは彼女の言い分に耳を貸したのか?」と怒りをあらわにするライアンに「あなたを信頼することにする。私は世界で最も騙されやすい女かも知れないけれど,あなたの言葉を受け入れるわ」といったんは納得し,新婚旅行中はまさに蜜月の時を過ごします。ところが,旅行後互いに仕事に出かけ,出張を終えて早めに帰宅したアシュリーが目にしたのは,合鍵を持ち昨晩はライアンと一緒に過ごしたというケイラでした。「ライアンとの結婚はカードで作った家のようにもろかった。どうして彼を信頼してしまったのだろう?父親が警告してくれたのに。」決定的な証拠を握ったアシュリーが取るべき行動はたった一つでした。さぁ二人の行く末は・・・
 さっさと愛しているといえば良いのに,といつもヒーローにいいたくなってしまうロマンス小説ですが,そんなカタルシスを生み出す作者の罠に今回もはまってしまいました。充分楽しめる作品です。


タグ:ディザイア
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脅迫された愛人契約 [ティナ・ダンカン]

SHALOCKMEMO1411
脅迫された愛人契約 Da Silva's Mistress
( Mistress Bride 2 ) 2009」
ティナ・ダンカン 東みなみ





 原題は「ダ・シルヴァの愛人」
 ヒロイン:モーガン・マーカス(24歳)/「エニグマ・マーケティング」社員/長身,ほっそり,肩まで伸びる漆黒の髪,上品な顔立ち,純真さと官能性を兼ね備えている,肌はマグノリアの花びらのように白く,鴉の濡れ羽色のような髪,唇はふっくら,オレンジの香りが漂うシャンプーの香り,濃いまつげの下の黒い瞳,高い頬骨,誘うような唇の形/
 ヒーロー:ルカ・ダ・シルヴァ(34歳)/複合企業の経営者/黒髪,黒い目,黒い瞳の中に金色の斑点,長く黒々としたまつげ,鍛え上げられたからだ,黄金色の肌,誰もが振り向くカリスマ性/
 オーストラリアの作家ティナ・ダンカンの初訳作品です。幼少期をニューギニアで過ごし,現在はシドニーに生活する彼女は,ニューサウスウェールズ大学で商学士号を得たようです。作品としてはまだそれほど多くないようですが,本作を読む限りかなり内容の濃い,緊張感溢れる作品を描く作家のようです。未訳作品としては「Playing His Dangerous Game 2011」「Her Secret, His Love-Child 2010 ( Claiming His Love-Child 2 )」の2作があり今後の翻訳が期待されます。出版年からして本作がデビュー作ではないかと思われます。とてもシンプルな名前なので彼女のwebは見つかりませんでした。現時点では,ハーレクインgoodreadsには関連ページがあるようです。
 さて,本作の原題はそのものずばりの題名ですが,邦題「脅迫された愛人契約」は日本語としてはちょっと違和感を感じます。というのは愛人契約が脅迫されたというように,契約を擬人化した意味に取られかねないからです。「愛人契約を脅迫された愛人」という意味であることは間違いないのですが,冒頭の「脅迫された」が愛人にかかるのか愛人契約そのものにかかるのかによって,不明瞭な意味になってしまっています。まぁわからなくもないですが,この辺は編集部さんに再考願いたいところです。次にヒロインの名前ですが,モーガンというのはオーストラリアでは女の子の名前としては普通にあるものなのでしょうか。モーガン・フリーマンのように男の子の名前というイメージがあったので,初めはちょっと混乱しました。初めの方でこの名前が出てきたときはヒーローのルカの友人かと思ってしまいました。複合企業の経営者で「ダ・シルヴァ・チョコレート」ロンドン本社の経営者でもあるルカ・ダ・シルヴァはイタリア系の富豪です。両親を交通事故で亡くし,姉のステファニア・ラングドンを守るのが自分の使命と強く思っている男性です。この事故の時姉が重大な怪我を負い,妊娠出来にくい体になってしまったことになぜか弟のルカは責任を感じてしまっていたのです。そしてステファニアの夫,ジョセフ・ラングドンが不倫しているのではないかと会社の部下オリヴィアに指摘されたことにより,なんとしても姉を守らなければという思いを強く持ちます。そしてジョセフの相手として浮上してきたのがエニグマ・マーケティング社の社員でとびきりの美女モーガン・マーカスだったのです。もしそれほどの美女でなければ,その思いを強く持つこともなかったのかも知れませんが,ルカ自身がモーガンに強く惹かれてしまったことからも相当の美しさを持つ女性であることは間違いありません。なにせルカの周囲には多くの美しい女性が列を成して自分の順番を待つほどのイタリア人独特の美貌と財力を持っていたからです。義兄とその愛人に手を切らせるために,ルカが仕組んだこととは・・・。まず,彼女の会社のCEOに掛け合い,彼女を解雇させます。そして義兄との関係を問い詰めると「親しい友人」としか答えません。最後の手段としてルカは復讐と実益を兼ねてモーガンに自分の愛人になるよう契約を持ちかけます。いや持ちかけると言うよりyesと言わざるを得ないように追い詰めていくのでした。5万ポンドという金額提示にもモーガンはyesと言いません。ジョセフ・ラングトンは死んだ・・・。の先を言おうとしたとき,モーガンは気を失ってしまいます。「死んだと思え」と言うつもりが・・・。それはまさしく彼女と義兄の関係を証明しているように思われるのでした。そして抱き起こした彼女からは義兄の付けているコロンの匂いがしていることに気づきます。ここまでくるとルカにはモーガンが義兄の愛人であること以外の可能性は全く考えられなくなるのでした。この関係を最初に匂わせた社員のオリヴィアの奸計であることには全く思いも及ばなかったのです。モーガンは自分がジョセフの愛人だと思われていることに気付きますが,それを否定し,ジョセフが実の父であることを打ち明けることがちらと頭に浮かびますが,ジョセフからこのことは他言無用と約束したことで,真実を打ち明けられませんでした。もし真実を打ち明ければジョセフが他の女性と関係を持っていたことを知られ,それがステファニアを深く傷つけてしまうことを恐れたからでした。長い間自分には母親しかいなかったことから,最後の瞬間に母から真実を打ち明けられ,やっとできた唯一の身内である父との関係を壊すわけにはいかなかったからでした。ルカも慎重に探偵を雇って二人の関係を調査させれば真実はもっと早く明らかになったことでしょうが,姉に余計な心配をかけたくないというルカの責任感が当然やるべきことを躊躇させ,そしてモーガンを追い込むことしか思い浮かばなかったのです。「恋人が欲しいなら,僕がなろう」とルカは愛人契約を命じます。翌日返事をということで一端別れた二人ですが,翌日noをつきつけたモーガンの耳に,ルカにかかってきた電話でジョセフが救急科に入院したという知らせが聞こえてきます。しかしジョセフへの連絡すら一切禁じられた状態で,心配のあまり,ルカの身近にいることでなんとか父の病状を知ること以外に方法がないことに気づいたモーガンはついにyesを告げることになるのでした。ただ1週間は体の関係を持たないことを条件として・・・。
 次々に変化していく状況,このジェットコースターストーリーに読者はすっかり引き込まれていってしまいます。そしてルカの魅力にもはや抵抗できないことを悟ったモーガンは自分からルカに迫っていくのですが,ルカは1週間という期限を守ろうとします。そのことでルカへの信頼を強くしたモーガンはもはやルカを愛していることを否定できなくなるのでした。
 最後のジョセフとルカの対決,そして姉との関係,さらにタブロイド紙への情報提供者は誰なのかなど,多くの謎が末尾に凝縮され,最高の盛り上がりで締めくくられます。ルカの運転手兼ボディガードのジーノやモーガンの親友ステラとグレック夫妻も結構良い味を出しています。イチオシの作品です。


タグ:ロマンス
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