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イタリア富豪の孤独な妻 [ダニー・コリンズ]

SHALOCKMEMO1420
イタリア富豪の孤独な妻 The Marriage He Must Keep 2015」
ダニー・コリンズ 竹内さくら





 原題は「彼が守らなければならない結婚」
 ヒロイン:オクタヴィア・フェランテ(23歳)/主婦/従順で誠実,読書好き,控えめながら磨けば輝くような美しさ/
 ヒーロー:アレッサンドロ(サンドロ)・フェランテ(30歳)/複合企業のCEO/広い肩,キリッとした口もと,知的な眉,端整な顔立ち,深いグリーンの瞳/
 今月の赤ん坊取り違えものの二つ目です。こちらは取り違えが病院のミスではなく,悪意のある犯罪でスタートします。どうも自分の赤ん坊とは違うようだと母親同士が気がつきます。ヒロイン,オクタヴィアの夫アレッサンドロが病院内の監視カメラで確認したところ,アレッサンドロのいとこでオクタヴィアにつきまとっていたプリモが意図的に取り替えた様子が映っていたのです。プリモは産気づいたオクタヴィアが救急車と病院への連絡を頼んだのにもかかわらず,わざと連絡を遅らせ,いよいよ大変な事態になってから救急車を呼び,あやうく母子の命を奪おうとしたにもかかわらず,さらに出張中のアレッサンドロにはオクタヴィアが自分を避けているために気づくのが遅れたと夫婦間の不信感をつのらせるような言い方をしたのでした。信頼していたいとこがなぜこのような犯罪行為を犯したのか理由がわからずに初めは信じがたいと思っていたアレッサンドロでしたが,画面の映像という証拠と妻のそれまでプリモから受けた嫌がらせから,断固たる措置を執ることにしたのです。結局どちらが自分たちの子供か検査結果がはっきりするまで通常の入院よりさらに1週間がかかってしまいます。その後イタリアの祖父の家にやって来た三人ですが,アレッサンドロの叔父であるプリモの父や従姉妹たちの冷たい視線といやみという対応に会います。そして祖父までもがオクタヴィアに対して冷たい態度を取るのです。妻と息子を守らなければ・・・。アレッサンドロの心に強い決心が浮かびます。ここにおいて,初めて本当の意味で結婚の重みと妻に対する愛に目覚めたアレッサンドロでした。しかし夫婦愛が強い絆となっていきます。オクタヴィアもまた,ただおとなしいだけの妻というこれまでの自分から,かつて父親の死に責任を感じ続けてきたアレッサンドロの心の闇を知り,深い愛情を感じ,夫を守りたいという思いを抱くのでした。これまで父親の言うとおり自分の気持ちを殺して言うとおりにしてきたオクタヴィアですが,両親に孫のロレンツォを見せに行ったとき,ついに感情が爆発し,二度と会わないと宣言します。その後はオクタヴィアもフェランテ家の城ともいうべき我が家の女主人として自分の感情を押し殺すことなく,いうべきことを堂々と述べるようになるのでした。そして赤ん坊取り違えの時以来連絡を取ってきたスペイン人のソーチャとセサルの夫妻を別荘に招いてチャリティー・オークション・パーティを開いたのでした。夫妻とは幸せな週末を過ごし,その後アレッサンドロの祖父との関係も改善し,アレッサンドロの母もしきりと孫に会うために城に来るようになり,幸せな状況の中で唯一オクタヴィアの心を塞いでいるのは,二人の結婚がいわば便宜結婚であり夫の愛を信じられずにいることでした。これほど信号を出しているのに互いに愛を確信できないでいる二人に読者はいら立ちを覚えてしまうのですが,出会いのきっかけがきっかけだっただけに言葉にすることが必要なのでしょうか。そして,ついに言い争いに発展してしまいます。さて二人は本当に愛を信じ合えるのでしょうか。第11章とエピローグまで解決を待たなければなりません。
 犯罪的な赤ん坊取り違え事件をきっかけに夫婦が本当の愛に至るまでの過程を丹念に描いた本作。前読作とは違った意味で夫婦の精神的成長が描かれた良作です。


タグ:ロマンス
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ぼうやはキューピッド [レベッカ・ウィンターズ]

SHALOCKMEMO1419
ぼうやはキューピッド Both of Them 1992」
レベッカ・ウィンターズ 寺田ちせ




HQB-793
17.03/¥670/200p

I-0798
93.06/¥622/156p


 原題は「二人とも」
 アメリカ南西部フェニックス ヒロイン:カサンドラ(キャシ-)・アーノルド(20代後半)/手芸家,「ミックス・アンド・マッチ・サウスウエスト」共同経営者/すらりとしているが女性らしい体型,身長160センチ,ブロンド,緑色の瞳/
 ヒーロー:トレイス・エリングズワース・ランゼイ三世(?歳)/銀行家,「グレーター・フェニックス銀行」頭取/黒いまつげ,深く青い瞳,右足の第三指と第四指の間に水かき,真っ直ぐな力強い鼻筋,豊かな唇,日に焼けたブロンズ色の頬,身長182センチ/
 今月は赤ん坊取り違え事件ものが二つ翻訳が出ました。本書と「イタリア富豪の孤独な妻(R-3230)/ダニー・コリンズ」です。まず,本作ですが,出産時に病院に化学工場の爆発事故による負傷者がたくさん運び込まれたどさくさで看護師が名札を取り違えるということがおこり,キャシーの甥で姉スーザンの子供のジャスティンと,トレイスの子供ジェイスンが入れ替わってしまったのでした。名前もJで始まる名前だったことも原因したのでしょうか?(でも生後すぐに名前がつくわけではないでしょうが・・・)。そしてスーザンと夫が亡くなり叔母のキャシーがジェイスンの実の親を求めて,数軒の家を訪ね廻り,最後にたどり着いたのがトレイスの勤め先の銀行だったということです。トレイスは妻とはすでに離婚しており,家政婦夫妻とナニーがジャスティンの面倒を見ていたのです。そしてジェイスンとうり二つのトレイスをみて,キャシーはこの人こそ実の父親だと確信したのです。トレイスもまた,ジェイスンの青い瞳と足の指にある水かきを確認し,自分の子供だと確信したのでした。そしてすでに愛情の湧いていたジャスティンと実子ジェイスンの「二人とも」を育てるためにトレイスはキャシーとの便宜結婚を提案するのです。キャシーには幼い頃から一緒に育ったロルフという恋人がいましたが,姉夫婦が亡くなるとロルフはキャシーを捨てて別の女性と婚約してしまったのです。キャシーが恋人でありながら,なかなか一線を超えようとしないこともその理由の一つだったようです。キャシーは本当に愛する人にしか体を許してはいけないと母親からしつけられて育ちました。そして姉夫婦の愛情溢れる様子を身近で見てその考えを自分の信条としていたのですが,ロルフが本当に自分の一生涯愛する人としてふさわしいとは自信をもって言えなかったのです。ところがトレイスを見た瞬間,これまで男性に感じたことのないような欲望を感じてしまうのです。この瞬間,キャシーはトレイスに恋をしたと言えるのですが,それが出会ったばかりのトレイスに対する愛だとは考えも及ばなかったのです。第4章で二人は簡略した結婚式を挙げ,子供たちを育てるための生活を始めますが,寝室は別にしていたのです。ときにトレイスはとてもやさしくなり,ときに自分に対して冷たい言葉を投げつけるなど,トレイスの本心をなかなかキャシーは理解できませんでした。ハネムーンを兼ねてスキー場へ出かける二人ですが,そこにはトレイスの二人の兄や姉のリーナも一緒に来ていたのです。二人きりの甘いハネムーンを思い描いていたキャシーにとっては,それはこの結婚が子供たちのためだということを改めて実感させることになってしまいます。トレイスの姉リーナの描いた絵が,銀行の頭取室やトレイスの家に飾ってあり,その絵を見てキャシーはリーナの才能が凡庸なものでないことに気づきます。そして手芸家としての題材のヒントにもなったのでした。リーナは自分の描いた絵に自身をなくし,学生時代に描いた作品をトレイスに譲って,その後は絵を描かなくなっていました。トレイスとしてはリーナに自身を持たせたいという思いがありそれをキャシーに知らせます。そしてキャシーが自らの手芸店を開きたいと考えていることを利用して,リーナとキャシーの作品を展示・販売する店舗を契約し,財政的な支援をすることにしたのでした。もし,この結婚が失敗に終わってしまえば,店舗を財政的に維持していくだけの自信をもてなかったキャシーは二の足を踏むのですが,リーナのためという理由での援助にはノーと言えずに計画に乗ることになります。店の開店は大成功でした。リーナも再び絵を描き出し,共同経営者になりたいと申し出ます。そしてキャシーが夫との間にわだかまりがあることを見抜いたリーナはなにくれとなくキャシーの相談に乗るのでした。遂に心を決めたキャシーは,トレイスに愛していると告げる決意をし,トレイスをモデルにした大きなワニのぬいぐるみをもって銀行に乗り込むのですが・・・。
 アメリカ南西部の大家族のもとで育ち,結婚に失敗した良家の実力者トレイスがついに真実の愛に目覚めることができるのでしょうか。太陽の降り注ぐフェニックスの雰囲気と,前向きに生きるキャシーのキャラクターが,赤ん坊取り違え事件という暗くなりがちなテーマを爽やかで純粋な愛のストーリーに昇華させていく秀作です。


タグ:イマージュ
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