追憶は波のように [アネット・ブロードリック]
SHALOCKMEMO1432
「追憶は波のように Love Texas Style!
(キャラウェイ・ダンディーズ 1) 1992」
アネット・ブロードリック 石川園枝
原題は「愛はテキサス式に」
ヒロイン：アリソン・アルバレス(32歳)／彫刻家，メイソンの町のアートギャラリー経営／小柄，黒い髪，白い肌，黒い眉，ラズベリー色の唇，細いウエスト，なだらかな曲線を描く腰，すらりとした脚／
ヒーロー：コール・キャラウェイ(35歳)／「キャラウェイ・エンタープライズ」経営者／赤茶色の髪（赤と濃いブロンドの混じった小麦色の髪）黒い瞳，長身／
15年前の一瞬の間にできた14歳の一人息子トニーを育てながらアートギャラリーを経営するアリソンは，サークルＣ牧場の牧童頭だった父，アントニオ・アルバレスが牧場から追い出された後に妊娠に気付き，父は悲嘆のあまり１年後に亡くなってしまい，苦労の末にやっとトニーとの幸せな暮らしを築き上げてきたのでした。しかし，運命の悪戯で，トニーは実の父親コール・キャラウェイと海岸で出会い，息子の存在を知られてしまいます。やっと見つけたアリソンの元を訪れようとしたその時，コールの携帯に弟コーディから，三人兄弟の真ん中キャメロンとその妻が交通事故に遭い，救急車で運ばれたという連絡を受けるのでした。キャメロンは一命を取り留めますが重傷。そして妻のアンドリアは即死し，家に残っていたトリーシャは無事だったのですが，叔母のレティシア（レティ）が面倒を見ているという状況になってしまいます。両親も又かつて交通事故で同時に亡くなり，家業の責任すべてがコールの肩にのしかかっていたのですが，責任感と家族愛の強いコールはその責任を当然のものとして背負い，逆に家業を大企業にまで発展させてきたのでした。キャメロンは弁護士として会社の経営にかかわり，末弟のコーディはいつも家を空けて気ままに暮らしている様子。政府機関に勤めているようですが詳しいことは本作ではわかりません。ちょうど５歳ずつ違うキャラウェイ家の３兄弟の古里はサークルＣ牧場ですが，現在は叔母のレティがそこを仕切っており，兄弟はそれぞれ別に家を持っているのでした。海岸で出会った少年トニーに母のアリソン，そして祖父がアントニオ・アルバレスであることをきいたコールは，キャラウェイ家の特徴を色濃くもつこの少年が自分の息子であることを一瞬のうちに確信します。しかし弟の事故の始末ですっかり時間を取られてしまい，アリソン母子が住む町を訪ねたのは数週間が過ぎてからでした。小柄ながら美しい顔と抜群のスタイルを持つ女性に成長したアリソンに出会った瞬間，コールはかつて自分の後をついてばかり来ていた少女から大人の女性に変貌した彼女に強い欲望を感じてしまいます。しかも自分の息子の母親。かつて東部の大学を卒業したら結婚する約束をしていながら，突然父とともに姿を消してしまった女性に，その理由を聞かなければという思いを強く持ってやって来たコールは，息子と過ごす時間が欲しいと，夏休みに入ったらトニーと二人でテキサスに来て欲しいと頼み込みます。トニーは学校でキャラウェイ一族のことを学び，コールに崇拝らしい気持ちを抱いているとのこと。トニーが友人の家に遊びに行っている間にアリソンの家を訪れたコールは，「あなたのご両親のお葬式が済んで一週間もしないうちにわたしと父が牧場を出たのは単純な理由よ。父はあなたのおばさまに予告なしに首にされ，四十八時間以内に荷物をまとめて出ていくように言われたわ」という信じがたい告白，さらに彼女がコール宛に出した多くの手紙のことも全く自分には心当たりがなく，さらに自分が出した数通の手紙もアリソンの元には届いていないことが判明したのです。」そして手紙の中にトニーのことを書いたというアリソンはコールからなしのつぶてだったことからその後打ち明けることができなかったといわれてしまいます。トニーとアリソンとの会話の中にエドという男性とアリソンに交際の事実があることも分かってきました。互いに周囲の誤解による行き違いで15年間も音信が途絶えていた二人の運命がここから再び回り始めます。そして後にレティ叔母がアリソンの父を追い出したのは，かつて結婚前にアントニオがレティに言い寄ったという事実があり，プライドの高かった当時のレティがそのことを逆恨みしてアントニオ父子を追い出したことが分かったのです。キャメロンによってレティ叔母がコールに対する態度と多の人たちに取る態度に大きな違いがあり，決して自分たちにとって良い人ではないという打ち明け話も，当初信用していなかったコールもこのアリソンの話を聞いて自分の間違いに気づいていきます。叔母には厳しくしばらく家を離れて欲しいと言い渡し，アリソン親子を家に招いて共に過ごすことにしたコールですが，アリソンはいずれコールに息子を取られてしまうのではないかという気持ちが心の片隅から消えません。夏休みも終わりに近づいた日，アリソンはトニーとともに帰宅することをコールに告げるのでした。コールがアリソンのプロポーズしたその直後に・・・。いまさら苦労して築き上げてきた経済的自立の道を捨ててしまうわけにはいかないというアリソンのプライドと不安が自分の気持ちとは裏腹な行動を取らせてしまったのでした。コールは再びアリソンを失ってしまうのでしょうか・・・。
三部作の縦糸の伏線として，キャラウェイ一族を襲う数々の不幸が，誰かの仕業によるものではないかということが所々で散見します。初めはレティ叔母の仕業かと思わせてみたり，読者を惑わすいろいろな罠も用意されており，第３作目まで読まないとこの謎は解決されないのだということが匂わされているところも，シリーズもののの楽しみの一つでもあります。州議員を務めているコールが次期州知事候補の筆頭にあげられ，それをコールが断ろうとしているところも，読者の興味をかなり引くところです。牧童頭の娘のアリソンが，頭脳の明晰さと美貌，そしてさらには芸術家としての才能も高く持っている点が名門キャラウェイ家の長男の嫁としてふさわしいか，という家名とプライドの狭間で揺れ動くアリソンの葛藤と相俟って，テキサスらしい登場人物たちの考え方に反映されているところが本作の魅力でもあります。
