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カリアキスの秘密の跡継ぎ [ミシェル・スマート]

SHALOCKMEMO1440
カリアキスの秘密の跡継ぎ Theseus Discovers His Heir
( Kalliakis Crown 2 ) 2015」
ミシェル・スマート 朝戸まり





 原題は「テセウスの跡継ぎの発見」
 ヒロイン:ジョアンヌ(ジョー)・ブルックス(26歳)/出版社社員/赤毛,ポッチャリ型の体型。色白,高い頬骨,ふっくらした唇,ブルーグリーンの瞳/
 ヒーロー:テセウス(テオ)・カリアキス(34歳)/アゴン王国第二王子/ゴツゴツした鼻,深くくぼんだダークブラウンの瞳,力強い顎,浅黒い肌,,殆ど黒に近い髪,身長195センチほど,細く引き締まった体/
 アゴン王国の王子を巡る3部作「カリアキスの王冠」シリーズの第2作です。作者ミシェル・スマートはかなり大胆な手法でこのシリーズを描いています。つまり3部作がほぼ同時期のストーリーを描いているのです。つまり王子たち3人のロマンスがほぼ同時進行で描かれているわけで,前作で読んだ内容が本作でも裏で進行しているというものなのです。作者の頭の中で3つの作品が同時に進行していないとどこかに破綻が生じてしまうという難しさがあるわけなのですが,前作では気づかなかったこの点に本作を読んでいて気づきました。さらに3人の王子たちの末弟から順に描かれていきますので,最後は長男で皇太子のストーリー展開となるわけです。このアゴン王国を支配してきたカリアキス家のアストライオス王の即位五十周年記念式典がいわばゴールになり,その準備のために前作では亡き王の后だったレアの幻の作品を演奏するバイオリニストを探し,三男タロスがアマリー・カートライトという舞台恐怖症の女性を見つけました。本作では,第二王子テセウスが祖父であり現王のアストライオス王の伝記を完成させるため依頼していたフィオナ・サマラスが急病で入院してしまい,代役として出版社の依頼を受けてやってきたのがジョアン(ジョー)・ブルックス。かつて二人は一夜を共にした経験を持ち,その結果ジョーには4歳になるテセウスとの間の一人息子トビーがいることがテセウスに知られ,その結果息子の存在をジョーがわざと隠していたのではないかという疑いをもたれてしまうというストーリーと,5年前に祖母であるレア妃の病の知らせで急に帰国せざるを得なくなり理由を言わないまま去ってしまったテセウスに自分は捨てられてしまったと思ったジョーがトビーの存在により自分のキャリアを獲得しつつ努力してきたストーリーとが交錯し,不幸な別れ方をした二人が再び愛を見つけ出していけるのかというところが本作の読みどころとなっています。若かりし頃常に注目され続ける王室で第二王子という,皇太子である兄のスペアとしての存在だとしか父親に言われなかったテセウスが,反抗的な行動を繰り返し,テオ・パタキスと名告ってイリア島で泥酔したあげくに慰めをジョーに求めた結果がトビーの誕生となったこと,また母親から期待されず,父親もアルコール中毒という破綻家族の中で,過食気味だった自分の体型に自信が持てずにいたところをハンサムなテセウスに大切にされ,白馬の王子様だと思っていたのに急に去られてしまったこと,そしてまさに本物の王子だと知ったことで二人の間に将来の関係は築けないと言われても,テセウスを愛することを止められない自分の想いを持て余す様子がちょっと哀れで,出産により細身になり充分美しさを獲得した後も自分に自信が持てないでいるジョーが,飾り気のない美しさを発揮していくところが,逆にテセウスの思慕をつのらせていくという絡まり続ける関係が面白さを盛り上げる作品です。


タグ:ロマンス

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