SSブログ

天使を抱いたシンデレラ [キャット・シールド]

SHALOCKMEMO1464
天使を抱いたシンデレラ Secret Child, Royal Scandal
( Sherdana Royals 3 ) 2016」
キャット・シールド 結城みちる





 原題は「秘密の子供と王室の醜聞」
 ヒロイン:ノエル・デュポン(27歳?)/ウエディングドレス・デザイナー/つややかなダークブラウンの髪,小柄でスレンダー,薄茶色の目(虹彩は緑色をおびている)/
 ヒーロー:クリスティアン・アレッサンドロ(30歳)/シェルダーナ大公国の第三王子/金色の目/
 訳者結城みちるさんの初仕事。ここまでシェルダーナ大公国の後継者を巡る問題も第1作「プリンスの望まれぬ花嫁(SHALOCKMEMO1332)」「王家の花嫁の条件(SHALOCKMEMO1415)」と続き,いよいよ三つ子の最後クリスティアンの物語となるわけですが,長男ガブリエルの妻オリヴィア,次男ニックの妻ブルックいずれも苦労の末愛を育んでいきます。妹アリアナもいますが,これは続編が書かれるのでしょうか。また大公位を継ぐのは誰になるのでしょうか。そんな期待を持ちながらじっくりと本作を読みました。
 5年前に事故で右半身に負った火傷の跡が肩や首,頬に残っているクリスティアン。ニックとブルックの結婚式で,花嫁のそばに付き添っている小柄でスレンダーな女性,ノエル・デュポンは高名なウエディングドレス・デザイナーです。彼女は長男の嫁オリヴィアのドレスデザインにも関わっていたのですが,クリスティアンとノエルはかつて関係を持ったことがあるのでした。5年前。シェルダーナに生まれデザイナーになるためにパリに渡り,高名なデザイナーについて学び,それからたった2年で頭角を現してイタリアの王子のウエディングドレスのデザインを手がけ一躍有名になっていたのです。それからは,各界の有名人のドレスデザインを手がけ,今では世界中の女性がノエルのドレスを求めるようになっています。「ノエル・デュポン。アレッサンドロ大公家で最も気まぐれな王子の心をなだめることができた唯一の女性」と評されているノエルは大きな秘密を抱えています。「末っ子のクリスティアンは甘やかされて育ち,その愚行はタブロイド紙を度々賑わせている。」つまり三つ子の中で最もスキャンダラスな王子というわけです。5年前浅はかな行動のせいで事故に巻き込まれ体と心に傷を負い,30歳の今,国のために後継者を作らなければならないという立場に立たされているのです。アレッサンドロ大公家が大公位を維持し続けるには,三人の王子の中で誰かが男子をもうける必要があります。妻の条件はヨーロッパの貴族階級出身かシェルダーナ国籍の女性ちいうものです。クリスティアンの母はヨーロッパの貴族階級の中から長いお妃候補のリストを作っていると妹のアリアナに脅かされ,「自分の妻を探すのに誰の助けも要らないよ」と言い返しはしますが,二人の兄たちが次々と王位を放棄し愛する相手を選んでしまった今,自分に期待が一身に集まっていることも十分承知しています。さらに5年ぶりに出会ったノエルは,よそよそしい振る舞いでクリスティアンをいらだたせています。「わたしはあなたにとって都合のいい女だったのよ。付き合っていた2年間など何の意味もなかったかのように突然」捨てられたと非難され,クリスティアンは友情から始まった二人の関係を,そして信頼できるノエルを,率直さと穏やかな優しさを併せ持つノエルに癒やしと慰めを求めたくなるのでした。「きみが必要なんだ」と打ち明けるクリスティアンに「もう,昔のわたしとは違うのよ」とクリスティアンの前を去って行くノエル。ノエルの秘密とは,クリスティアンとの間の息子マークの存在でした。母親と同居して息子の世話を頼み,仕事に打ち込んできたこの数年,クリスティアンにはいずれ分かってしまうと怖れを抱きつつも,マークに父親の存在を問われたときはいないと答えるしかなかったのです。もう少し成長したらその存在をクリスティアンに告げようと思ってはいましたが,5年前に自分は捨てられたという思いが強く,なかなか機会も決心もないままに現在に至ってしまったのでした。深い金色の目は父親そっくり。顔立ちも父親そっくりです。一目でアレッサンドロ家の血を引いていることは明白な息子。クリスティアンに再会して,マーくその存在が知られるのではと落ち着きません。母親からも反抗期を迎えた孫息子に男親の存在が必要なのよと言われてしまいます。結婚式が行われた日の夜の8時35分突然玄関ドアをノックする音がし,クリスティアンが訪ねてきます。今息子と母は2階に上がったばかり,なんとか息子が見つかる前に追い出さなくては,と終末のデートを約束して追い払おうとした瞬間,マークが2階から降りてきてしまいます。「殿下,わたしの息子マークです」というと「きみの息子だって?僕たちの息子だろう」とすぐに見抜かれてしまったのです。金色の目とダークブラウンの髪というアレッサンドロ一族の特徴を備えたマークを見てクリスティアンはすぐに気づいたのでした。さらにクリスティアンを見返し「ぼくが追い払ってあげる」と母親をかばうマークの大公然とした行動にクリスティアンはすぐにマークの父親だと打ち明けたくなるのですが,必至にそれを止めようとするノエルの様子に,一時は引きます。マークが二階に引っ込んだ後,二人は話し合いを持たざるを得ませんでした。「ぼくはマークの父親として認められたい」「息子にわたしと同じ苦しみを味わって欲しくないわ」と二人の意見は食い違います。ノエルは5年前自分がクリスティアンに捨てられたことを指し,いずれ息子もわたし同様父親から捨てられるかも知れないという疑いを捨てることはできなかったのです。
 それからは,クリスティアンによるマークとノエルへの働きかけが激しくなります。しかしノエルは5年前と同じようにクリスティアンへの愛を忘れたわけではありません。「あの子はきみだけの子供じゃない。アレッサンドロ家の血を引く者だ。シェルダーナ大公家の血をね。」と,ノエルへのプロポーズをするクリスティアン。しかし,ノエルはこれは便宜的な結婚に過ぎないと思い込んでいます。クリスティアンとマーク,ノエルの三人はそれからなにかと一緒に行動するようになります。そしてニューヨークからの大きな仕事の依頼があり,ノエルはマークを連れてニューヨークに行こうとするのですが,マークがグズグズしている間に,クリスティアンがやって来て一緒に行くと言い出すのです。ノエルが仕事をしている日中はぼくがマークの面倒を見ようと・・・。マークもまた初めはクリスティアンに敵対心を持っていたのに何日も一緒に過ごす内にクリスティアンをプリンス・パパと呼び,幼いながらも王子である自分の父親という存在に折り合いを付けるようになっていたのです。クリスティアンからのプロポーズを断り続けているノエル。その気持ちを大きく変えたのは,あの5年前になぜクリスティアンが自分の前から去ってしまったのかと言うことの本当の理由を知ったときでした。当時クリスティアンの仲間たちが,ノエルに対して良からぬ関心を持ち,それを偶然聞いてしまったクリスティアンは,ノエルの才能を生かしてパリに行くことを勧めることによって難を逃れようとしていたのでした。ニューヨークで昔ノエルの評判を落とす記事を書いた女性記者がノエルの才能はクリスティアンの力があったからこそ認められたに過ぎないと言ってきたことに疑問を感じ,クリスティアンを問い詰めて分かったことでした。ついにノエルはクリスティアンのプロポーズを受け入れます。シリーズ最終作であればエピローグで大団円となるところですが,なにか尻切れトンボのような感が否めません。これはきっと続編が書かれる気配です。


タグ:ディザイア
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

億万長者とかりそめの愛を [アニー・ウエスト]

SHALOCKMEMO1463
億万長者とかりそめの愛を Seducing His Enemy's Daughter 2015」
アニー・ウエスト 知花 凜





 原題は「敵の娘にそそのかされて」
 ヒロイン:エラ・サンダーソン(26歳)/訪問看護師/180センチに近い身長,すらりと伸びた脚,スリムだがくびれのある理想的な体型/
 ヒーロー:ドナート・サラザール(30代半ば)/企業買収の実業家/彫りの深い端正な顔,すっきりとした唇,長いまつげに縁取られた藍色の目,おおらかな笑い声/
 逃げた姉のフェリシティの身代わりとなったエラ。弟ロブも。亡くなった大伯母ビーがなんとも多大な影響を・・・。「選択の余地はない。おまえもよくわかっているだろう」という父の脅しにも近い言葉。それは「娘を自分の思いどおりにさせたいときの父の常套手段」でした。「わたしは変わった。フェリシティも,ロブも変わった。それなのに父は自分のこどもたちの変化にまったく気づいていない」,こんな父をもった三人きょうだい。しかも「父にとって,真ん中の子供はどうでもいい存在だ」とエラは「良心のかけらもない父親から逃げたい一心で,十代で家を飛びだし」ます。「相手はドナート・サラザールだぞ」と父の脅し文句はさらに続きます。「お前たちが結婚すれば,われわれの仕事上の繋がりは強固になる」「サラザールの援助がなければ,わたしの身は破滅する。それにエラ,わたしは家族との絆も強めたいと思っているんだ」と,手を変え品を変え,サンダーソン家に嫁ぐようエラを説得するのでした。「人生で本当に大切な物はお金では買えない。だが父にそう言い返したところで鼻で笑われるだけだ。」と訪問看護師として平凡な生活を送るエラは諦めの気持ちでした。しかしドナートにあった途端「この人は,(父)レグ・サンダーソンの言いなりになるような男性ではない。」「ドナート・サラザールは我が道を行く男。一匹狼タイプに違いない」そして「美しい」とエラは感じてしまいます。「美の化身」「自然が織りなす風景を連想させる雄々しい美しさ」「危険な匂いがする」男性と父のパーティで出会ったとき,エラはドナートに「君は美しい。怒ると銀色に輝く瞳も,威勢のいい言葉が次々と飛びだす唇も,悩ましげに揺れるヒップも,胸も,そして長い脚も,美しいとしか表現のしようがない」と手放しの賛辞を与えられ,「だって,父の思いつきはどう考えても常軌を逸しているもの」と言い,「フェリシティはあなたとは結婚しないのよ」とあくまで自分より美しいフェリシティにはパートナーをすでに得ていることを理由にドナートの誘いを断ろうとするのですが・・・。「遂に積年の恨みを晴らすときが来た。復讐は蜜の味と言うが,エラというおまけがついた今,その味はより甘美なものとなるだろう」,実は,ドナートがサンダーソン家に近づいたのには理由があったのです。ドナートはエラが去った後,エラの父レグ・サンダーソンが,「それはつまり,気に入ったということか?あのエラを?」とエラの美しさをまったく認めていないことに腹立たしさを覚えます。「尻軽」ではなく「頭の回転が速く,率直でもある」エラを,社交欄の記事で喧伝されている姉フェリシティの影に隠れてその存在すら今日まで知らなかったエラのことをよく知りたいと思うようになっていました。レグに問われるままに「結婚は」「したいと思っている」と答え,「こいつは,自ら進んで悪名高い男の腕の中に娘を押し込もうとしている。」ことにさらに腹を立て,復讐心がさらに高まるのでした。そしてエラへの連絡に携帯番号を聞いたのに,父親であるレグは娘の番号を自分の携帯電話に登録さえしていなかったことを知ります。ドナートの計画はエラとの結婚式を盛大なものにし,突然中止させてサンダーソンの資産を払底させ,騙されたことに気付いたときに復讐が果たされるというものでした。経済的に相手をどん底に突き落とす。その手段としてエラを活用しようとしていたのです。翌朝突然電話を寄越したドナートにサラは二度と会うつもりはないといいます。昨夜帰宅してからインターネットで調べたドナートの過去。「十代の頃に罪を犯して刑務所に入っていた」「彼の魂胆は分かっている。誘惑しようとしているのだ」。しかし次のドナートの言葉はエラを震撼させます。「僕の援助がなければ,きみの父親は破産する。彼は自分が生き残るためにけっこおんばなしを持ちかけてきた。きみが僕と結婚しなければ彼には1セントも入らない。レグ・サンダーソンは今まで築き上げてきたすべてを失い地に落ちるんだ。それでもいいのか?」結局,ドナートの方が1枚も2枚も上手だったのです。そしてシドニーの宿になっているドナートの友人宅に訪ねることになってしまいます。次々に繰り出されるドナートの誘惑。エラもまたドナートが欲しくてたまらなくなります。丁々発止の駆け引きの間,ドナートは純粋にエラに惹かれてしまっている自分に戸惑います。二人は瞬く間に恍惚の中に飛び込んでしまうのでした。そして,互いの生い立ちを話し合うことになります。ドナートはなぜ地味な自分と結婚したがっているのか,という問いがいつも頭から離れないエラ。自分を悪党だといいながらも,インターネットで調べた限り彼のスタッフが誰も辞めたがらないことからして見かけとは違う部分をもっているはずだと,看護師をしている経験から彼の人格を見抜いたエラ。「インターネットの記事を思い起こした。まだ十代だったドナートは40歳の男性を殴り,相手は病院へ運ばれたのだ」「あなたには守りたい人がいたのね?」「ぼくはただのろくでなしだよ」「彼は少年時代に負った傷を抱えて生きている」琴に気付き,エラは大胆で衝動的な行動を取っていきます。「彼とは体だけの関係」と心の中でつぶやきつつ,大粒の涙を流すのでした。この切ない感が溢れた場面が本作の読みどころの一つです。そんな時,レグからエラに電話が入ります。事業を立ち直らせるため,弟が蓄えた資金をつぎ込もうとする父。2週間後も二人はまだ会い続けています。クライミングや買い物など一緒に過ごすうちにどんどんドナートに惹かれていくエラ。そして時々見せる傷ついた心にエラはますます惹かれていきます。看護師としてのやさしさがドナートの心の傷を癒やしたくなっていくようです。ドナートもまた「お金でわたしは買えないわよ」とエラに言われたとき,自分の復讐にエラを利用するという考えに嫌気がさしていくのです。しかし親しくなればなるほど互いに子供時代の触れられたくない話題に触れそうになる微妙な会話に,互いに警戒心を抱いてしまう二人でした。しかし,二人は婚約し,結婚式に向けた準備に取りかかります。姉フェリシティとの電話で,姉がエラに申し訳ないと思っていることを打ち明け,頭のいいエラのようになりたかったといわれたことで姉妹の絆を感じるのでした。一方金銭面でドナートと言い争いになってしまったエラはドナートの過去を問いかけます。本物の恋人としてドナートの存在を感じ始めていたエラはやはり将来のことをどうしても頭に描いてしまうのです。経済的取引によるいわゆる便宜的な動機から始まった二人の関係。でも興味本位ではなくどうしてもドナートの本当の姿を知りたいと思うようになっていたのでした。そして12歳で母を失い,面倒を見てくれていた父親代わりにも死なれ,養護施設を転々としていた十代。そして母に暴力を振るった男性を殴って刑務所に入った過去。刑務所での生活と学んだことで出所後に大成功を収めたこと。そんな十代の頃のドナート少年に同情し,大人になった大胆不敵で情け容赦ない大物実業家を愛してしまったことにエラは幸福感をもっていました。そんなエラとの毎日の生活に「自分の中の何かが変わったのか。」と思い始めるドナート。そんなドナートにエラは自分の父のことを打ち明け始めます。「取引内容を記載した書類があっても,たとえあなたがそれに同意したとしても,決して父を信用しないで」とドナートを気遣うエラは弟の遺産に父が手を付けたことを打ち明けます。それはすでにドナートにとっては自明の事実だったのですが,「レグ・サンダーソンの犯した数々の犯罪が明るみに出たら」エラも傷つくのではないかと心が痛むのでした。今は,目的のためにエラを利用していることは忘れよう。
 ウエディングドレスを取りにいって,着ることのないドレスの素晴らしさにため息をつきながら,「でも,もしも本当に結婚するのなら・・・。もしも本物の恋人同士だったら・・・。」ともしもが頭の中で渦巻くエラ。「わたしは彼に強く惹かれている」ことを,「彼に恋をしている」ことを確信したエラは,これ以上偽りを続けられないと思います。「ドナートはロブを助けると言ってくれた」「お金の不安が消えた今,もうこれ以上演技をする必要はない。」と思う一方「ドナートは結婚を望んでいる?」「彼もわたしのことが好きなの?」と期待を打ち消すことができなくなっていました。その時ドナートにかかってきた電話が聞こえてきて,父を騙そうとしているドナートの企みに気づきます。ついに「きみの父親への復讐だ」と打ち明けるドナート。さぁ,いよいよ大詰めでエラはどちらを信用するのでしょうか。父か愛する人か・・・。
 月初めに読み終わっていた本作ですが,SHALOCKMEMOにまとめる余裕がなくて,今になってしまいました。改めてストーリーを追ってみて本作のスピード感溢れる,そして簡潔に二人の気持ちの動きが描かれた本作を一気読みしていたのだと気づきました。間違いなしのイチオシ作品です。


タグ:ロマンス
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。